幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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妖夢戦開始!
修行の成果を活かして戦い抜けるのか?!


第24話 閃鞘・月影

 魂魄妖夢との戦いが始まってから、まだそれほど時間は経っていない。

 それでも悠は、すでに何度も死線を潜っていた。

 妖夢の刀が、またしても目の前を通り過ぎる。

 悠は身体を捻り、紙一重で刃をかわした。

「くっ……!」

 そのまま後ろへ跳び、ショットガンを構える。

「チルノ、今だ!」

「分かってる!」

 チルノが横から氷の弾幕を放つ。

 無数の氷弾が妖夢へ向かって飛んでいく。

 妖夢は刀を振り、迫りくる弾幕を次々と切り裂いた。

「そんなものでは、私の動きを止められません!」

「だったら、これならどうだ!」

 悠は引き金を引いた。

 轟音と共に、無数の弾丸が妖夢へ向かって飛んでいく。

 しかし妖夢は身体を僅かに傾けただけで、そのほとんどを避けた。

 避けきれない弾だけを刀で斬り落とす。

「……嘘だろ」

「驚いている暇はありませんよ!」

 妖夢が一気に距離を詰めた。

「うわっ!」

 悠は慌てて後ろへ飛ぶ。

 目の前を刀が通り過ぎる。

「悠!」

「大丈夫!」

 悠は着地すると同時にショットガンを構え直した。

 妖夢は止まらない。

 再び刀を振り下ろす。

 悠は横へ飛んだ。

 その瞬間、チルノの弾幕が妖夢の背後から迫る。

「今度はあたしの番!」

 妖夢は振り返りざまに刀を振る。

 氷弾が次々と切り裂かれていく。

「……やっぱり、簡単には当たらないか」

 悠は小さく呟いた。

 妖夢は強い。

 近距離では自分よりも僅かに上。

 遠距離から撃っても、弾幕を抜けてくる。

 ならば、どうする。

 悠が考えている間にも、妖夢は再び刀を構えた。

 そして――。

 カチン。

 刀が鞘へ納まった。

「……?」

 悠は目を細める。

「悠、どうしたの?」

「……刀を納めた」

 妖夢は何も答えない。

 ただ、静かに構えている。

 悠はショットガンを握り直した。

「今なら……」

 攻撃できる。

 そう判断した。

 刀を鞘へ納めている以上、攻撃するには抜かなければならない。

 悠は一気に踏み込んだ。

「今だ!」

「悠、待って!」

 チルノの声が響く。

 だが悠は止まらない。

 ショットガンの銃口を妖夢へ向ける。

「これで――!」

 その瞬間。

 妖夢の目が鋭く光った。

「閃鞘・月影」

「――っ!」

 妖夢の姿が消えた。

 悠は反射的に身体を伏せる。

 直後、頭上を風が走った。

 いや。

 風ではない。

 刀だ。

 悠の髪が数本、宙を舞う。

 そのまま身体を転がし、妖夢から距離を取る。

「ぐっ……!」

 頬に熱が走った。

 悠は地面に手をつき、体勢を立て直す。

「悠!」

 チルノが駆け寄ろうとする。

「来るな!」

 悠が叫ぶ。

「えっ?」

「まだ終わってない!」

 悠は頬を拭った。

 指先についた赤い血を見る。

「……危なかった」

「血、出てるじゃん!」

「浅い。問題ない」

「問題あるでしょ!」

「本当に大丈夫だ。それより……」

 悠は妖夢を見る。

 妖夢はすでに刀を鞘へ戻していた。

「今の技……何なんだ?」

「私の剣技の一つです」

 妖夢は淡々と答える。

「刀を抜く、その一瞬に全てを込める技……そう思っていただければ」

「一瞬に、全て……」

 悠は先ほどの攻撃を思い出す。

 刀を抜いた瞬間、妖夢の姿が見えなくなった。

 そして気づいた時には、頬を斬られていた。

「近づいたら斬られるってことか」

「正確には、私の間合いに入った時点で危険だということです」

「だったら……近づかなきゃいい」

 悠はショットガンを構えた。

「そう簡単にいくと思いますか?」

 妖夢が踏み込んだ。

「来る!」

 悠も動く。

 刀とショットガンがぶつかった。

「くっ……!」

 悠は銃身で刀を受け流す。

 そのままナイフを抜いた。

「これならどうだ!」

 妖夢の刀とナイフがぶつかる。

 金属音が響いた。

「その武器……刀より短いですね」

「だから使いやすいんだよ!」

 悠はナイフで刀を受け流し、空いた隙間へショットガンを向ける。

「もらった!」

 妖夢が身体を捻る。

 轟音が響いた。

 弾丸が妖夢の服を掠める。

「……危ないですね」

「避けたか!」

「まだ終わりではありません!」

 妖夢が踏み込んだ。

 刀が横薙ぎに振られる。

 悠はナイフで受け止める。

「重っ……!」

 腕が痺れる。

 妖夢が力を込める。

「押し切ります!」

「させるか!」

 悠は身体を捻り、刀を横へ流した。

 そのまま妖夢の懐へ入ろうとする。

 しかし妖夢も一歩下がった。

「近づけない……!」

 悠は歯を食いしばる。

 その直後だった。

 妖夢の刀が再びナイフへ叩きつけられる。

 ガキンッ!

「なっ……」

 ナイフに亀裂が走った。

 妖夢がさらに一歩踏み込む。

「終わりです!」

 刀が振り抜かれる。

 ガキィン!

 ナイフが真っ二つに折れた。

「くそっ!」

 悠は咄嗟に後ろへ飛んだ。

 折れた刃が地面へ転がる。

「悠!」

「チルノ!」

 悠は叫んだ。

「前を頼めるか!」

「任せて!」

 チルノが悠の前へ飛び出した。

 悠は後ろへ下がり、ショットガンを構える。

「今度はあたしが相手!」

 チルノが妖夢を睨む。

「さっきまでのあたしとは違うんだから!」

「……そのようですね」

 妖夢も刀を構え直す。

「では、見せてもらいましょう」

 チルノは両手を広げた。

 周囲の冷気が一気に濃くなる。

「いくよ!」

 地面に霜が広がっていく。

 空気そのものが凍りつくようだった。

「ソードブリザード!」

 チルノの周囲に、無数の氷の剣が現れる。

 それらが空中へ浮かび上がった。

「無数の剣……?」

 妖夢が目を細める。

「全部、あたしの武器だよ!」

 一斉に氷の剣が降り注いだ。

 無数の【アイシクルソード】が妖夢へ向かって殺到する。

「これは……!」

 妖夢は走った。

 一本目を避ける。

 二本目を刀で弾く。

 三本目が地面へ突き刺さる。

 四本目。

 五本目。

 六本目。

 次々と氷の剣が降り注ぐ。

「逃がさない!」

 チルノがさらに氷の剣を放つ。

「まだまだ!」

「数が多い……!」

 妖夢は刀を振り、迫る剣を切り落としていく。

 だが、一本を避けた先に別の一本が落ちてくる。

 妖夢は大きく横へ跳んだ。

「……なるほど」

 妖夢が周囲を見る。

 地面には大量の氷の剣が突き刺さっている。

「この剣そのものを、次の武器にするのですね」

「そう!」

 チルノが笑う。

「剣が壊れても、まだいっぱいあるからね!」

 チルノは地面から一本を引き抜いた。

「まだ終わらないよ!」

 妖夢が刀を振る。

 チルノは氷の剣で受け止めた。

 ガキンッ!

 氷の剣に亀裂が走る。

「っ!」

 チルノはすぐに剣を手放した。

 その足元には、別の【アイシクルソード】がある。

 チルノはそれを拾い上げた。

「これでどうだ!」

 再び斬り込む。

 妖夢は刀で受け流す。

「以前とは違いますね」

「当たり前でしょ!」

 チルノはさらに攻撃を続ける。

「もう、剣が壊れたくらいで止まったりしない!」

 妖夢の動きが少しずつ鈍くなっていく。

 周囲の冷気が身体にまとわりついている。

「……寒い」

「へへっ。あたしは平気だよ!」

 チルノは笑う。

「むしろ、こっちの方が調子いいくらい!」

「なるほど……」

 妖夢は一度距離を取った。

 白い息が漏れる。

 足元には氷が広がっている。

 身体が重い。

 対してチルノは、冷気の中でも動きを落としていない。

 それどころか、時間が経つほど動きが良くなっている。

「このままじゃ、あたしの勝ちだよ!」

 チルノが追いかける。

「まだです!」

 妖夢が刀を振る。

 チルノは氷の剣で受ける。

 弾かれた。

 だが、すぐに別の剣を手に取る。

「ほら!」

 斬り込む。

 妖夢は避ける。

「まだ!」

 さらに一撃。

 妖夢が後ろへ下がる。

 その瞬間。

 チルノの動きが僅かに止まった。

「はぁ……はぁ……」

 息が荒い。

 悠はそれを見逃さなかった。

「チルノ……」

「大丈夫!」

「無理するな!」

「無理なんかしてない!」

 チルノは振り返らずに答える。

「あたいはまだやれる!」

「でも――」

「悠!」

 チルノが強い声で遮った。

「あたしだって、ちゃんと強くなったんだから!」

 悠は言葉を止めた。

 確かにチルノは変わった。

 剣が壊れても止まらない。

 周囲の氷を利用して戦う。

 以前とは比べ物にならないほど、近距離で戦えるようになっている。

「……分かった」

 悠はショットガンを構える。

「でも、無茶だけはするなよ」

「分かってるって!」

 チルノが再び妖夢へ向かっていく。

 妖夢はその動きを見つめていた。

 そして、気づく。

 チルノの呼吸が荒い。

 攻撃の速度も、ほんの僅かだが落ちている。

 この冷気の中でも、疲労そのものを消すことはできない。

 妖夢は静かに息を吐いた。

 ――そろそろ限界。

 そう判断した。

 ソードブリザードが終われば、周囲の冷気も弱まる。

 その瞬間なら。

 妖夢は刀の柄へ手を伸ばした。

「……」

 悠がそれを見る。

「また、あの技か」

 妖夢が刀を鞘へ納める。

 カチン。

 先ほどと同じ音が響いた。

 チルノはまだ気づいていない。

「どうしたの? 刀をしまって――」

 妖夢が静かに構える。

「次で終わらせます」

「え?」

 悠の目が鋭くなる。

「チルノ、下がれ!」

「えっ?」

「今すぐ!」

 チルノは振り返る。

 妖夢はすでに【閃鞘・月影】の構えに入っている。

 悠は妖夢を見つめた。

 先ほどの攻撃。

 あの瞬間、妖夢の動きは確かに見えなかった。

 だが――。

 悠は思い出す。

 妖夢は刀を抜く前に、必ず刀を鞘へ戻している。

 そして、構える。

 その一瞬だけ、動きが変わる。

「……そういうことか」

 悠が呟いた。

「悠?」

 チルノが振り返る。

「妖夢の技には、準備が必要なんだ」

「準備?」

「ああ。刀を納めて、構えて、それから抜く」

 悠はショットガンを握り直す。

「抜いた瞬間は速すぎて対応できない。でも――」

 悠の視線が妖夢の足元へ向く。

「抜く前なら、まだ止められる」

 妖夢が悠を見る。

「……気づきましたか」

「やっぱりな」

 悠は一歩前へ出た。

「だったら、次は俺が相手だ」

 チルノが驚く。

「悠、疲れてるでしょ!」

「チルノだって同じだろ」

「でも……」

「ここからは俺がやる」

 悠はショットガンを構えた。

 折れたナイフはもうない。

 残っている武器は、このショットガンだけ。

 それでも十分だった。

 妖夢が再び刀の柄を握る。

「来ますよ」

 悠は静かに息を吸う。

「来い」

 妖夢の身体が僅かに沈んだ。

 悠は一歩を踏み出す。

 その瞬間――。

 悠は確信した。

 【閃鞘・月影】。

 この技には、弱点がある。

 そして、その弱点を突ける距離にいるのは――。

 今の自分だ。

 悠は引き金に指をかけた。

 戦いは、まだ終わっていない。

 だが、勝つための一手は見えた。




読んでいただきありがとうございます!

妖夢の攻撃に対しての突破口はあるのか……
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