幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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無敵の妖夢居合をどう切り抜けるのか……


第25話 強敵

 妖夢は刀を鞘に納めたまま、悠を見据えていた。

 チルノは少し離れた場所で息を整えている。

 周囲には、ソードブリザードによって生み出された氷の剣が無数に突き刺さっていた。

「悠、本当に大丈夫?」

「ああ。チルノは少し休んでろ」

「でも……」

「ここは俺がやる」

 悠はショットガンを構え直した。

 折れたナイフはもうない。

 残された武器は、この一丁だけだった。

 妖夢はそんな悠を見て、静かに口を開く。

「ナイフを失った状態で、私と接近戦をするつもりですか?」

「接近戦をするつもりはない」

「では、どうするのです?」

「お前が近づいてくる前に終わらせる」

 妖夢の表情が僅かに変わった。

「……なるほど」

 妖夢が刀の柄を握る。

 悠はその動きを見逃さない。

 刀を抜く前に、必ず準備がある。

 ならば、その瞬間を狙う。

「行きます」

 妖夢が踏み込んだ。

 悠は引き金を引く。

 轟音。

 拡散した弾丸が妖夢へ向かう。

 妖夢は身体を横へ滑らせるようにして回避した。

 そのまま距離を詰めてくる。

「速い……!」

 悠は後ろへ下がった。

 妖夢の刀が振り下ろされる。

 悠は身体を捻って避ける。

 刃が肩を掠めた。

「くっ……!」

「先ほどよりも動きが読みやすいですね」

「そうかよ!」

 悠は再びショットガンを撃つ。

 妖夢は刀で弾を弾きながら、さらに距離を詰める。

 そして――。

 カチン。

 刀が鞘に戻った。

 悠の目が細くなる。

「来る……!」

 妖夢が腰を落とした。

「閃鞘・月影」

 妖夢が刀を抜く。

 悠は踏み込んだ。

 普通なら、避ける。

 しかし悠は逆だった。

 妖夢の懐へ飛び込む。

「なっ……!」

 妖夢の目が見開かれた。

 刀が抜かれる。

 その瞬間。

 悠はショットガンの銃口を、妖夢の身体へ押し付けた。

「これで――!」

 轟音が響いた。

 ゼロ距離から放たれた拡散弾。

 妖夢の身体が大きく吹き飛ぶ。

「きゃあっ!」

 妖夢は地面を転がり、数メートル先で止まった。

 悠はショットガンを下ろした。

 息が荒い。

 だが、妖夢は立ち上がった。

「……まさか」

 妖夢は自分の身体を確認する。

「技を放つ瞬間に、懐へ入るとは」

「避けるより、近づいた方がいいと思ったんだよ」

「ですが、あの技を知らなければ……」

「たぶん死んでた」

 悠は苦笑する。

「だから、二度目は失敗できなかった」

 妖夢は刀を構え直した。

 しかし、その動きには先ほどまでの鋭さがない。

 チルノが立ち上がる。

「やった! 悠!」

「まだだ」

 悠は妖夢から目を離さない。

 妖夢はしばらく悠を見つめたあと、刀を鞘へ戻した。

「……参りました」

「え?」

「これ以上続ければ、こちらも無傷では済みません」

 妖夢は刀から手を離した。

「あなたたちの目的は、私を倒すことではないのでしょう?」

「ああ。俺たちは、この異変の原因を探してる」

「でしたら、先へ進んでください」

 妖夢が道を空ける。

 悠は少し驚いた顔をした。

「いいのか?」

「この先には、幽々子様がおられます」

 妖夢は静かに答えた。

「私がここで時間を稼いだところで、何も変わりません」

「……分かった」

 悠は頷いた。

 そしてチルノの方を見る。

「行けるか?」

「もちろん!」

 チルノは胸を張った。

「まだまだ全然元気だよ!」

「さっきまで息切れしてただろ」

「そ、それは……ちょっとだけ!」

 悠は思わず笑った。

「じゃあ、行くぞ」

「うん!」

 二人は妖夢の横を通り抜け、さらに奥へ進んでいった。

 しばらく進むと、周囲の景色が変わり始めた。

 空気が重い。

 そして、どこか異様な気配が漂っている。

「……何だ、これ」

 悠が足を止める。

 チルノも周囲を見回した。

「なんか変……」

 二人が進んでいくと、前方から激しい音が聞こえてきた。

 轟音。

 爆発。

 そして、弾幕がぶつかる音。

「この音……」

 悠は走り出した。

「魔理沙か?」

「たぶん!」

 二人は音のする方向へ向かった。

 そして――。

 開けた場所へ出た瞬間、悠は足を止めた。

「……なんだ、これ」

 目の前で、凄まじい弾幕が飛び交っていた。

 その中心にいるのは、魔理沙。

 そして、その向かい側には――。

「幽々子……」

 チルノが呟いた。

 西行寺幽々子が、空中に浮かんでいる。

 その周囲には大量の桜色の光が舞っていた。

 魔理沙は箒に跨りながら、必死に弾幕を避けている。

「魔理沙!」

 悠が叫ぶ。

「お、やっと来たか!」

 魔理沙がこちらを振り向いた。

「悠! チルノ! ちょうどいいところに来たぜ!」

「何が起きてるんだ?」

「話は後だ! 今はこいつを止める!」

 魔理沙が再び幽々子へ向き直る。

 悠は幽々子を見る。

 その表情は穏やかだった。

 戦っているというのに、まるで楽しんでいるようにも見える。

「どうして……春を集めてるんだ?」

 悠が呟く。

 その言葉に、幽々子が悠を見る。

「あなたが悠ね」

「俺を知ってるのか?」

「ええ。妖夢から聞いているわ」

 幽々子は微笑む。

「ずいぶん面白い武器を持っているのね」

「そんなこと言ってる場合かよ」

 魔理沙が叫ぶ。

「この異変を終わらせるぞ!」

「……そうね」

 幽々子は微笑んだ。

「でも、その前に少しだけ遊びましょう?」

 再び大量の弾幕が放たれる。

「来るぞ!」

 悠が叫ぶ。

 チルノが氷の壁を作り出す。

 魔理沙は箒を加速させる。

 そして――。

 その戦いの裏で、悠たちの知らない場所では、異変の本当の目的が明らかになり始めていた。

 魔理沙が幽々子と対峙する少し前。

 魔理沙は一人で冥界を進んでいた。

「やっぱりここか……」

 周囲に集まる春の気配。

 雪に覆われた幻想郷とは、あまりにも不自然な光景だった。

 魔理沙はその先にいる幽々子を見つけた。

「幽々子、何をしてるんだ?」

「春を集めているのよ」

「それは見れば分かるぜ」

 魔理沙は箒から降りた。

「なんでそんなことをしてる?」

「理由が知りたい?」

「当然だろ」

 幽々子は少しだけ遠くを見る。

「この先にあるものを、咲かせたいの」

「咲かせたい?」

「ええ」

 幽々子は微笑んだ。

「そのためには、幻想郷中の春が必要なのよ」

「だから雪が降り続けてるのか」

「そういうこと」

 魔理沙は帽子を押さえた。

「だったら、集めた春を返してもらうぜ」

「それはできないわ」

「なら――」

 魔理沙がミニ八卦炉を構える。

「力ずくで返してもらうしかないな」

 幽々子が扇子を開く。

「そう。あなたはそういう子だったわね」

 次の瞬間。

 二人の間に、巨大な弾幕が生まれた。

「やっぱり話し合いじゃ終わらないか!」

 魔理沙が飛び上がる。

 幽々子の弾幕が空間を埋め尽くす。

 魔理沙はその隙間を縫うように飛び回った。

「こいつ……強いぜ!」

 魔理沙は笑う。

「でも、負ける気はしないぜ!」

 魔理沙が反撃する。

 巨大な魔力弾が幽々子へ向かって飛んでいく。

 幽々子はそれを避ける。

 そして再び弾幕を放つ。

 二人の戦いは、さらに激しさを増していった。

 一方その頃。

 悠とチルノは、魔理沙のいる場所へ向かっていた。

「悠! あれ!」

 チルノが指差す。

 目の前に、無数の何かが現れた。

「……なんだ?」

 悠はショットガンを構える。

 最初は数体だった。

 しかし。

 一体。

 十体。

 百体。

 その数は瞬く間に増えていく。

「嘘だろ……」

 チルノが呟く。

 悠は周囲を見回した。

 どこを見ても、幽霊。

 その数は、もはや数えることすらできない。

「チルノ」

「うん」

 二人は背中合わせになる。

 悠はショットガンを構えた。

 チルノは氷の剣を作り出す。

「これ……全部相手にするの?」

「みたいだな」

「数、多すぎない?」

「……一万くらいはいるんじゃないか?」

「一万!?」

 チルノが思わず叫ぶ。

 悠は苦笑した。

「文句言っても減らないぞ」

「分かってる!」

 チルノが氷の剣を構える。

「だったら、全部倒す!」

「その意気だ」

 幽霊の群れが、一斉に二人へ襲いかかった。

「来るぞ!」

「うおおおっ!」

 悠がショットガンを撃つ。

 チルノが氷の剣を振り抜く。

 冥界を埋め尽くすほどの幽霊との戦いが、始まった。

 




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