幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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頑張れチルノ!
やれるぞチルノ!

書くこと思いつきませんので続きどうぞ!
ps今回は後書きに番外編書いてるよー


第3話 氷の妖精

チルノが地面へ降り立つ。

 背中に浮かぶ氷の羽が、陽の光を受けて淡く輝いていた。

 悠は目の前の少女を改めて見る。

 青い髪に白い服。胸元には赤いリボン。そして、何よりも特徴的なのが背中に生えた六枚の羽だった。

 ゲームの画面越しに何度も見た姿。

 それが今は、自分の目の前にいる。

「……本物なんだよな」

「何が?」

「いや、こっちの話」

 悠の背後では、先ほど追いかけてきた妖怪が氷漬けになっている。

 完全に動きを止めたわけではないらしく、氷の隙間からこちらを睨みつけていた。

 チルノはそんな妖怪を見て、腰に手を当てる。

「さあ、観念しなさい!」

「……それ、俺にも言ってる?」

「違うよ!」

 チルノは振り返ると、得意げに笑った。

「あたいがやっつけてあげる!」

「……頼もしいな」

「でしょ?」

 褒められたのが嬉しかったのか、チルノの顔がさらに得意げになる。

 だが、悠はすぐに表情を引き締めた。

 目の前にいるのは妖怪だ。

 しかも、ついさっきまで自分を追い回していた。

 氷で動きを止められている今のうちに逃げるべきなのかもしれない。

 そう考えている間にも、氷に亀裂が走る。

「……まずい」

「任せて!」

 チルノが両手を前へ突き出す。

 周囲の空気が一気に冷たくなった。

 木々の葉が凍りつき、地面に白い霜が広がっていく。

「凍れ!」

 チルノの声と共に、いくつもの氷の塊が生まれた。

 それらが一斉に妖怪へ向かって飛んでいく。

 氷が砕ける。

 妖怪が身を捻って攻撃を避ける。

「避けた!?」

 悠が思わず声を上げる。

「まだまだ!」

 チルノが続けて氷を放つ。

 今度は数が増えた。

 大小様々な氷の弾が、森の中を縦横無尽に飛び交う。

 その光景を見て、悠は思わず足を止めた。

 綺麗だった。

 ゲームで見る弾幕とは違う。

 画面の中ではただの演出だったものが、今は目の前で本当に動いている。

 氷の一つ一つが光を反射しながら飛び、木々の間を抜けていく。

「……これが弾幕」

 思わず呟く。

 その瞬間、妖怪が氷を弾き飛ばした。

「危ない!」

 チルノが叫ぶ。

「っ!」

 悠は慌てて横へ飛んだ。

 直後、爪が目の前を通り過ぎる。

「うわっ!」

 地面へ転がる。

 土が服につく。

「ちょっと! ぼーっとしてないで!」

「悪い!」

 悠はすぐに立ち上がる。

 妖怪が再びこちらへ向かってきた。

「来るよ!」

 チルノが叫ぶ。

「分かってる!」

 逃げる。

 それしかない。

 悠には武器がない。

 弾幕を撃つこともできない。

 霊夢からもらった札はあるが、まだ使うべきなのか判断できない。

 ならば――。

「こっちだ!」

 悠は妖怪へ向かって走り出した。

「えっ!?」

 チルノが驚く。

 妖怪の横をすり抜け、そのまま森の奥へ駆けていく。

「おい!」

 妖怪が追ってくる。

 悠は振り返らない。

 ただ走る。

 木々の間を抜ける。

 坂を下る。

 そして、さらに走る。

「……まだいける」

 不思議だった。

 これだけ走っているのに、身体がまるで疲れない。

 息は乱れていない。

 足も重くない。

 むしろ、走れば走るほど身体が軽くなっていくような感覚すらあった。

「こっちだ!」

 妖怪を引きつける。

 後ろから迫ってくる気配を確認しながら、悠は方向を変えた。

 木を一周する。

 妖怪も追ってくる。

 さらに走る。

 何度も方向を変え、妖怪を振り回す。

「……これなら」

 悠が足を止めた。

 妖怪が目の前まで迫る。

 その瞬間――。

「そこ!」

 チルノの声が響いた。

 妖怪の足元が一瞬で凍りつく。

「なっ――」

 妖怪がバランスを崩す。

「今度こそ!」

 チルノが両手を掲げた。

 大量の氷が宙へ浮かび上がる。

 それらが一斉に妖怪へ向かって飛んでいった。

 轟音。

 氷が砕け、妖怪の身体が吹き飛ぶ。

 そのまま地面を何度か転がり、動かなくなった。

「……終わった?」

 悠が妖怪を見る。

「終わった!」

 チルノが胸を張る。

「やったね!」

「……お前、結構強いじゃん」

「当然!」

 チルノは満面の笑みを浮かべた。

「あたいは最強だから!」

「その台詞、本当に言うんだな」

「何それ!」

 チルノが頬を膨らませる。

「馬鹿にしてる?」

「してない、してない」

 悠は苦笑した。

 正直なところ、チルノがここまで戦えるとは思っていなかった。

 もちろん、先ほどの戦いを見る限り、何でも一人で倒せるほど圧倒的というわけではない。

 それでも、氷を自在に操り、弾幕として放つ力は十分に驚異的だった。

 そして何より――。

「……助かった」

「え?」

「さっき助けてくれただろ」

 悠は素直に頭を下げる。

「ありがとう」

「……」

 チルノが黙る。

 どうしたのかと思って顔を見ると、少しだけ不思議そうな表情をしていた。

「変なの」

「またそれか」

「あたいが助けるのは当たり前じゃん」

「そうなのか?」

「そう!」

 チルノは当然のことのように言った。

「困ってるなら助けるでしょ?」

「……そっか」

 悠は小さく笑った。

 やはり変な妖精だ。

 だが、悪い奴ではないらしい。

「それで、あんたは?」

「俺?」

「そう。さっきからずっと変な人間」

「神谷悠」

「かみや……ゆう?」

「ああ」

「ふーん」

 チルノは悠の名前を何度か口の中で転がすように呟いた。

「悠ね」

「そう」

「じゃあ悠でいいや」

「勝手に決めるなよ」

「別にいいでしょ?」

「まあ……いいけど」

 どうにも調子が狂う。

 そんなことを考えていると、遠くから声が聞こえてきた。

「悠ー!」

「……霊夢?」

 木々の向こうから、霊夢が姿を現す。

 悠はほっと息を吐いた。

「無事だったのね」

「ああ。何とか」

 霊夢は悠の身体をざっと確認する。

「怪我は?」

「ない」

「そう」

 霊夢が小さく息を吐く。

 その視線が悠の手元へ移った。

「札もちゃんと持ってるわね」

「ああ。使わずに済んだ」

「なら良かったわ」

 霊夢はそれだけ言うと、周囲を見渡した。

「妖怪は?」

「あそこ」

 悠が指を差す。

 先ほどの妖怪が地面に倒れている。

「……あんたがやったの?」

 霊夢がチルノを見る。

「そう!」

 チルノが胸を張る。

「あたいがやっつけた!」

「そう。なら助かったわね」

 霊夢はそれ以上何も言わなかった。

 そして、悠へ視線を戻す。

「もうすぐ人里よ。そこまで行けば、とりあえず安心できるわ」

「霊夢は?」

「私は神社に戻るわ」

「ここから一人で?」

「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの?」

「……博麗の巫女」

「分かってるじゃない」

 霊夢が少しだけ笑う。

 悠は改めて、ここまで連れてきてもらったことを思い出した。

「ありがとう」

「何が?」

「神社からここまで連れてきてくれただろ」

「別に。放っておくわけにもいかなかっただけよ」

 そう言いながらも、霊夢の表情はどこか柔らかかった。

「それじゃあ、気を付けて」

「ああ」

 霊夢が歩き出す。

 数歩進んだところで、ふと足を止めた。

「悠」

「ん?」

「その札、なくさないでよ」

 霊夢が指差したのは、先ほど渡された護身用の札だった。

「何かあったときには、ちゃんと使いなさい」

「分かった」

「それじゃあね」

 今度こそ、霊夢は森の向こうへ消えていった。

「……行っちゃったね」

 隣から声がする。

「そうだな」

 悠が振り返る。

 そこにはチルノがいた。

「で、どうするの?」

「どうするって?」

「あんた、人里に行くんでしょ?」

「ああ」

「じゃあ、あたいも行く!」

「……なんで?」

「人里に行ったことあるから!」

「そういう理由か」

「それに――」

 チルノが指を立てる。

「あんた、幻想郷のこと全然知らないでしょ?」

「まあ……そうだな」

「だったら、あたいが案内してあげる!」

 自信満々に言い切る。

 悠は少しだけ考えた。

 正直、この世界について何も知らない自分にとって、案内役がいるのはありがたい。

「……じゃあ、頼むよ」

「任せて!」

 チルノが笑う。

 こうして悠は、氷の妖精と共に人里へ向かうことになった。

 幻想郷に来てから、まだそれほど時間は経っていない。

 何が起こるのかも分からない。

 帰れるのかどうかすら分からない。

 それでも――。

 少なくとも今は、一人ではなかった。




読んで頂きありがとうございます!
少し番外編です!


悠とチルノを見送った霊夢が神社へ戻ると、縁側には魔理沙が座っていた。
「おーい、霊夢ー! どこ行ってたんだよー!」
「……あんた、なんでいるのよ」
「遊びに来たんだぜ」
「勝手にお茶飲まないで」
「細かいことは気にするなって」
 いつものやり取りを交わしながら、霊夢も縁側へ腰を下ろす。
「それで、どこ行ってたんだ?」
「人里。外来人を連れて行ってたのよ」
「外来人?」
 魔理沙が興味を示す。
「どんな奴なんだ?」
「普通の人間よ。ただ、弾幕が撃てないの」
「……そりゃ珍しいな」
「だから護身用の札を渡してきたわ」
「へえ。霊夢がそこまでするなんて珍しいな」
「別に、死なれたら面倒なだけよ」
「はいはい」
 魔理沙が笑う。
 しばらくして、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、紅魔館が最近妙な動きをしてるらしいぜ」
「紅魔館が?」
「ああ。何をしてるのかまでは分からないけどな」
「……そう」
 霊夢は少しだけ空を見上げる。
「まあ、何かあればその時考えればいいわ」
「相変わらずだな」
 魔理沙は笑いながら箒を手に取った。
「じゃあ、またな」
「はいはい」
 魔理沙が飛び去った後、霊夢は一人、静かになった境内を眺めていた。
「……紅魔館、ね」
 その頃。
 湖の畔に建つ紅い館では――。
 何かが、静かに動き始めていた。
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