幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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主人公あまり見せ場がないですなぁ
今回は見せ場を作りまっせ!



第4話 河童の移動販売

 博麗神社を出てから、しばらく。

 悠とチルノは、人里へ続く道を歩いていた。

「ねえ、悠」

「何?」

「人里って、どんなところ?」

「俺に聞くなよ」

「だって、人里に行くんでしょ?」

「行くけど、俺だって初めてなんだよ」

「そっか」

 チルノは納得したように頷く。

「でも、人がいっぱい住んでるよ」

「それは聞いた」

「あと、美味しいものもある!」

「それは重要だな」

「でしょ?」

 チルノが得意げに笑う。

 そんな話をしながら歩いていると、森の先に何かが見えてきた。

「あれ、何だ?」

 道の脇に、見慣れない乗り物が停まっている。

 大きな荷台に屋根が取り付けられ、その周囲には木箱や瓶、見たことのない道具が並べられていた。

 その前に、一人の少女が立っている。

 緑色の髪。

 頭に帽子を被り、背中には甲羅。

「……河童?」

 悠が呟く。

「そうだよ」

 少女がこちらを振り向いた。

「河城にとり。よろしくね」

「神谷悠」

「あたいはチルノ!」

「チルノは知ってるよ」

「やっぱりあたいは有名なんだ!」

「そういう意味じゃないんだけどなぁ……」

 にとりは苦笑しながら、移動販売車の方へ戻る。

「今日は人里で商売する予定なんだ。便利な道具とか、ちょっとした食べ物とかね」

「これ、全部売り物なのか?」

「そうだよ」

 悠は並べられた商品を眺める。

 小さな歯車。

 金属製の部品。

 用途の分からない機械。

 外の世界では見たことのないものばかりだった。

「面白いな……」

「外の世界にも、こういうのある?」

「似たようなものはあるけど、こんなのは見たことないな」

「へえ」

 にとりが興味深そうに悠を見る。

「じゃあ、外来人なんだ」

「ああ」

「だったら後で色々聞かせてよ。外の世界の道具、気になるんだよね」

「俺で分かることなら」

「約束ね」

 その時だった。

 森の奥から、木々を踏み荒らすような音が聞こえてきた。

「……何?」

 チルノが振り返る。

 にとりの表情も変わった。

「嫌な音だなぁ」

 次の瞬間、木々の間から数体の妖怪が姿を現した。

 妖怪たちは、にとりの移動販売車へ向かっている。

「商品が目的か?」

「たぶんね」

 にとりがため息を吐く。

「こういうの、困るんだよなぁ……」

「戦えないの?」

「戦えるよ」

 にとりは即答した。

「でも、あの中で弾幕を撃ちまくったら、商品まで壊れちゃうでしょ」

「なるほど」

 にとりが手を構える。

 周囲に光が集まり、いくつもの弾幕が生まれた。

 妖怪へ向かって飛んでいく。

 しかし、にとりはすぐに弾道を変えた。

「ほら、あそこにも商品があるから!」

「大変だな……」

 悠が呟く。

「チルノ」

「分かってる!」

 チルノが前へ飛び出す。

「悠はどうする?」

「俺はあいつらを引きつける」

「分かった!」

 悠も走り出した。

「こっちだ!」

 妖怪が悠を追ってくる。

 悠はそのまま移動販売車から離れていく。

 爪を避ける。

 身体を捻る。

 さらに走る。

 妖怪との距離を一定に保ちながら、森の中を駆け回る。

「こっちだって!」

 その間に、チルノが上空から氷の弾幕を放つ。

 妖怪の動きが止まった。

「今!」

 にとりの弾幕が飛ぶ。

 一体が吹き飛ばされた。

 しかし、まだ残っている。

 悠の前へ別の妖怪が回り込んだ。

「……っ!」

 悠は足を止める。

 妖怪が爪を振り上げた。

 避ける。

 だが、反撃する手段がない。

「くそ……!」

 その瞬間。

「悠!」

 にとりが叫んだ。

 何かが飛んでくる。

 悠は反射的に受け取った。

「……ナイフ?」

 それはナイフのような形をしていた。

 ただし、刃がない。

「それ、試作品!」

「試作品?」

「いいから、柄のスイッチを入れて!」

 悠は言われた通りにスイッチを押す。

 ――ブゥン。

 手の中で、小さな振動が生まれた。

「何だこれ?」

「そのまま使って!」

「どうやって!?」

「普通に振ればいい!」

「普通のナイフには刃があるだろ!」

「細かいことは後!」

 悠は迫ってきた妖怪へ向かって走った。

 妖怪が爪を振り下ろす。

 悠は身体を沈め、その懐へ入り込む。

 そして、振動するナイフを振り抜いた。

 ――ドンッ!

「――!?」

 妖怪の身体が大きく吹き飛んだ。

「効いた……!」

「そのまま!」

 チルノの氷が妖怪の足元を凍らせる。

 動きが止まったところへ、悠が再び踏み込む。

 ナイフを振る。

 衝撃が走った。

 妖怪が地面へ倒れる。

「あと一体!」

 にとりの弾幕が飛ぶ。

 チルノの氷弾が続く。

 最後の妖怪も大きく吹き飛び、そのまま森の奥へ逃げていった。

「……終わったか?」

 悠がナイフを見る。

 刃はない。

 それなのに、確かに妖怪へ攻撃が通った。

「にとり」

「何?」

「これ、何なんだ?」

「それ?」

 にとりが悠の手元を見る。

「ちょっと特殊な鉱物を使った試作品なんだ」

「鉱物?」

「うん。普通の金属じゃないよ」

 にとりはナイフの先端を指差した。

「この部分に使ってる鉱物は、特殊な性質を持ってるんだ」

「特殊な性質?」

「一定以上の振動を与えると、弾幕と似た性質の力を発生させるの」

「弾幕と?」

「正確には弾幕そのものじゃないけどね」

 にとりは説明を続ける。

「妖怪みたいな存在に対して、弾幕と同じように干渉できる。だから刃がなくても、攻撃として通るんだよ」

「なるほど……」

 悠はナイフを見つめる。

 弾幕を撃てない自分でも、これなら戦える。

 そう思った。

「じゃあ、これは返すよ」

 悠がナイフを差し出す。

「え?」

「借り物だろ?」

「ああ、それね」

 にとりは少し考える。

「……じゃあ、それ使ってていいよ」

「いいのか?」

「うん。試作品だから、実際に使ってもらった方が改良する時の参考になるし」

「ありがとう」

 悠はナイフを受け取った。

 それから三人は、改めて人里へ向かって歩き始めた。

 人里へ到着すると、にとりは移動販売を始めた。

「悠、そこの箱お願い!」

「これか?」

「そう、それ!」

「チルノはそっち!」

「分かった!」

「勝手に開けないでよ!」

「開けてない!」

「今開けようとしたでしょ!」

「ちょっと見ただけ!」

 そんなやり取りをしながら、三人で店を手伝う。

 客が来れば商品を渡し、なくなったものを補充する。

 気が付けば、空はすっかり夕焼けに染まっていた。

「今日はこれくらいかな」

 にとりが商品を片付け始める。

「二人とも、手伝ってくれてありがとね」

「こっちこそ、助かった」

 悠が答える。

「それで、悠はこの後どうするの?」

「俺?」

「うん。人里に知り合いでもいるの?」

「いない」

「泊まるところは?」

「……ない」

 にとりが少し考え込む。

「じゃあさ」

「ん?」

「行くところがないなら、うち来る?」

「いいのか?」

「今日助けてもらったお礼もしたいし。それに、そのナイフについても色々試してみたいから」

 にとりが笑う。

「どう?」

 悠は少し考えた。

 断る理由はない。

「……お願いする」

「決まり!」

 チルノが嬉しそうに飛び跳ねる。

「あたいも行く!」

「もちろん」

 こうして悠とチルノは、にとりの家へ向かうことになった。

 悠の腰には、一本のナイフがある。

 刃のない、奇妙なナイフ。

 それが、幻想郷で悠が初めて手にした武器だった。




読んで頂きありがとうございます!
ニトリちゃんのおかげで何とか生きていけそうですねw
結構書き貯めしてるからバンバン投稿していこうかと思います!
次回もお楽しみに
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