幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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空が赤黒く、明らかな異変どう乗り越えるのか。


第8話 紅魔館へ

 幻想郷を覆った紅い霧は、朝になっても晴れることはなかった。

 空は赤黒く染まり、太陽の姿はどこにもない。

 森の中も薄暗く、木々の隙間から差し込むはずの光は消えていた。

「……本当に昼なのか?」

 悠は空を見上げる。

「昼だよ」

 隣を歩くチルノが答えた。

「でも、太陽がない」

「それが変なんだよな」

「紅魔館の仕業なんでしょ?」

「ああ。たぶんな」

 霧の向こうに、巨大な建物が浮かび上がってくる。

 赤い屋根。

 無数の窓。

 そして、その正面には大きな門が構えられていた。

「……あれが紅魔館か」

「そうだよ」

 悠は腰に手を伸ばす。

 そこには、ニトリに作ってもらったハンドガンがあった。

 装填されているマガジンは一つ。

 予備が二つ。

 合わせて三十発。

 これが、今の悠が持っているすべてだった。

「行くぞ」

「うん!」

 二人は紅い霧の中を進んでいった。

 ただし――。

 二人が館へ辿り着くよりも早く、その正面では別の戦いが始まっていた。

 

「まったく……」

 博麗霊夢は、紅魔館の門を見上げた。

「随分と大掛かりなことをしてくれたものね」

「面白そうじゃないか」

 隣で霧雨魔理沙が笑う。

「これだけ派手なら、きっと中にも面白いものがあるぜ」

「遊びに来たんじゃないのよ」

「分かってるって」

 二人が門へ近づく。

 すると、その前に一人の少女が立ちはだかった。

「そこから先は通せませんよ」

 紅美鈴。

 紅魔館の門番だった。

「やっぱりいるわね」

 霊夢が札を取り出す。

「悪いけど、通してもらうわよ」

「それは困りますね」

 美鈴が構える。

「こちらも仕事なので」

 魔理沙が笑った。

「なら、力ずくで行くしかないな」

「そうね」

 霊夢が一歩前へ出る。

「行くわよ」

「おう!」

 次の瞬間。

 美鈴の姿が消えた。

「――っ!」

 霊夢が咄嗟に横へ飛ぶ。

 直後、拳が地面を砕いた。

「速いわね」

「そちらも!」

 美鈴が身体を捻る。

 続けざまに拳を振るう。

 霊夢は札を放ちながら後退する。

 しかし、札の隙間を美鈴がすり抜ける。

「そこ!」

 拳が迫る。

 霊夢は身体を反らしてかわした。

「危ないわね」

「まだまだですよ!」

 美鈴が笑う。

 その背後から、魔理沙の弾幕が飛んできた。

「隙ありだぜ!」

 無数の光弾が美鈴へ迫る。

「おっと!」

 美鈴が飛び退く。

 光弾が地面へ次々と突き刺さった。

「二人がかりですか?」

「異変解決に卑怯も何もないわ」

「それに、私たちを止めたいならもっと頑張らないとな!」

 魔理沙が箒を構える。

 美鈴は笑った。

「それなら、こちらも本気で行きます!」

 再び、三人が動く。

 札。

 弾幕。

 拳。

 三つの攻撃が入り乱れる。

 霊夢が空中へ飛び上がる。

「魔理沙!」

「分かってる!」

 魔理沙が上空へ飛ぶ。

 美鈴が二人を見上げた。

「しまっ――」

 その瞬間。

「そこ!」

 霊夢の札が美鈴の周囲を取り囲んだ。

 逃げ道が塞がれる。

「くっ……!」

「今よ!」

「任せろ!」

 魔理沙が箒を構える。

 大量の光が集まり始める。

「まとめて吹き飛ばすぜ!」

 光が一気に放たれた。

 轟音。

 紅魔館の門前が白く染まる。

 やがて光が消えた時。

 美鈴は地面に片膝をついていた。

「……参りました」

 霊夢が息を整える。

「悪いわね」

「いえ……門番としては、十分楽しませてもらいました」

 魔理沙が門へ向かう。

「じゃあ、通らせてもらうぜ」

「どうぞ……」

 二人が門を抜ける。

 その先に待っていたのは――。

 大量の妖精メイドだった。

「……」

 霊夢が黙る。

「……」

 魔理沙も黙る。

「多くない?」

「多いな」

 妖精メイドたちが一斉に弾幕を構えた。

「侵入者を発見!」

「お嬢様に報告を!」

「行かせるな!」

 次の瞬間。

 無数の弾幕が飛んできた。

「来るわよ!」

「望むところだ!」

 霊夢が札を放つ。

 弾幕と弾幕がぶつかり、紅魔館の庭が一瞬で光に包まれる。

 魔理沙はその隙を突いて前へ出た。

「邪魔だぜ!」

 光弾が炸裂する。

 一人、また一人と妖精メイドが倒れていく。

 だが、それでも数が減らない。

「まだ出てくるの!?」

「この館、何人雇ってるんだよ!」

 霊夢と魔理沙は背中合わせになる。

 前後左右。

 あらゆる方向から弾幕が迫ってくる。

「魔理沙、右!」

「任せろ!」

 魔理沙が弾幕を撃ち落とす。

「霊夢、左!」

「分かってる!」

 札が飛び交う。

 妖精メイドたちが次々と倒れていく。

 それでも二人は止まらない。

 廊下を進み。

 階段を駆け上がり。

 弾幕を避けながら館の奥へ進んでいく。

 やがて、最後の妖精メイドが倒れた。

「……終わった?」

 魔理沙が周囲を見る。

「みたいね」

 霊夢が息を吐く。

「思ったより時間を使ったわ」

「でも、ここからが本番だろ?」

「そうね」

 霊夢は館の奥を見る。

「この霧を止めるには、原因を探さないと」

「なら、二手に分かれるか」

「そうしましょう」

 霊夢が右の廊下を見る。

「私はこっち」

「じゃあ、私は反対側だな」

「何か分かったら知らせる」

「そっちもな」

 二人はそれぞれ別の道へ進んでいった。

 この先で何が待っているのか。

 まだ、二人は知らない。

 

 

 その頃。

 紅魔館の裏手。

「……あれが入口か」

 悠が小さな扉を見る。

「こっちから入るの?」

「正面は無理だろ」

「いっぱい敵がいたもんね」

 遠くから戦闘の音が聞こえていた。

「だから、裏から行く」

 悠は扉へ近づく。

 慎重に取っ手を握る。

 ガチャ。

「……開いた」

「入ろう!」

「静かにな」

「分かってるよ」

 二人は館の中へ入った。

 中は驚くほど静かだった。

「……誰もいない?」

「正面で戦ってるんじゃない?」

「たぶんな」

 悠は銃を確認する。

 まだ撃っていない。

 残弾は三十発。

 これだけあれば、何とかなる。

 ――そう思っていた。

「悠」

「ん?」

「こっち」

 チルノが廊下の奥を指差す。

「何かある」

「何かって?」

「分かんない」

「じゃあ、行ってみるか」

「うん」

 二人は歩き出した。

 霊夢たちとは違う道。

 誰にも見つからないように。

 紅魔館のさらに奥へ。

 そして悠は、まだ知らない。

 この館の地下に、自分と同じように閉じ込められている少女がいることを。

 その少女との出会いが、この異変の行方を大きく変えることを。

 ただ今は。

 赤い霧に包まれた館の中を、チルノと二人で進んでいく。

 それだけだった。




読んで頂きありがとうございます!
ここからは3分岐します
霊夢編、魔理沙編、悠編です!
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