エルフィンド連邦国史〜清廉なエルフの国は、如何にして平和なドワーフの国を焼き払うに至ったか〜   作:サクラモッチー

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【前回のあらすじ】
別の道を辿ったエルフィンドにて、コボルトが発見される。
なお、本作ではドウラグエル(転生者)とディネルースは仲が良いってよ。

ちなみに、この世界線でのドワルシュタインではとある出来事が起こったようで....?


ドワルシュタイン社会主義共和国

ドワルシュタインが王国ではなく、()()()()()()()として生まれ変わったのは今から五〇年前....星歴八七〇年代に入ってすぐのことであった。

この国は、エルフィンドやオルクセンなどの他の魔種族の国々と異なり、国や社会そのものが土地や工場などの生産手段を管理し、平等な社会にするという社会主義と呼ばれる思想を基に、共和国として生まれ変わったのである。

 

....少なくとも、ドワルシュタイン国民の流血や王族の血統の根絶を伴う形で。

 

そもそも、このドワルシュタイン社会主義共和国が生まれるきっかけになったのは、星歴八六六年にアスカニアのとある人間族の思想家が出版した本がキッカケとされている。

厳密に言えば、デュートネ戦争が行われていた時からドワルシュタインの経済が停滞し始め、芳しくない状況が続いたがためにその思想が受け入れられたものの、それによって国内の情勢は大きく変わることになった。

 

そう、後の世ではモーリア革命と呼ばれる社会運動が勃発したのである。

このモーリア革命はグロワール革命、並びにロヴェルナ革命と同じく歴史的な出来事としてその名を轟かせることとなり、エルフィンドやオルクセンを含めた当時の諸外国を震撼させることになった。

 

そして、その革命はドワルシュタインの国王一家が処刑される形で幕を閉じ、星欧大陸で初めて社会主義共和国が生まれ落ちたのである。

それにより、ドワルシュタインでは一つの不穏な動きが....コボルト族の排他運動が起こり始めていた。

 

「急げ!!もうすぐ国境だぞ!!」

 

シルヴァン川の浅瀬を渡りつつ、励ますように仲間のコボルト達に声を掛ける一人のコボルト。

彼らの他にも、シルヴァン川を渡るコボルト達は大勢おり、そのほとんどは多くのコボルト達が暮らす国.....エルフィンドへと向かっていったのか、皆必死になって新天地へと足を運んでいた。

 

彼らのほとんどは、人間達の迫害の末にドワルシュタインに逃げ込んだ者に加え、ドワルシュタインで生まれ育った者が多く、追っ手であるドワルシュタイン軍に怯えつつ、その浅瀬を渡っていた。

 

約三〇〇年前にアスカニアを中心に起きた魔種族排他運動により、多くのコボルト族はエルフィンドに逃げ延びた。

そして、一部のコボルト族はドワルシュタインに逃げ込んでいたようで、それなりの数のコボルト達が暮らしていた。

 

彼らは主に計算や商売などが得意であったため、次第にドワルシュタイン国内で商いを始めたのだが、それが却ってドワーフ達の間で少しずつではあるが危機感を煽っていたのである。

 

もしかしたら、コボルト達が国を乗っ取るのかもしれない。

あのコボルト達のことだ、悪どい商売で私服を肥やしていたに違いない。

そんな種族など、滅ぼしてしまえ。

 

平等な社会という理念と思想を掲げ、生まれ変わったドワルシュタインのドワーフ達にとって、商売を営むコボルト達は旧政権や資本主義の権化だと思われたようで、それが結果として迫害へと繋がってしまう。

 

まず初めに、コボルト達をゲットーと呼ばれる隔離地区へと強制的に移動させ、ドワーフ達はコボルト達の物理的な動きを制限することに成功。

その政策を機に、国絡みでのコボルト達への財産没収や暴力などが相次いだ後、ドワーフ達は歴史上最悪な決断に踏み切ることになった。

 

検挙したコボルト達を強制収容所に送るという地獄を、彼らは平等な社会を築き上げるという名目で行ったのである。

それにより、ドワルシュタインで暮らしていたコボルト達は恐怖で支配されるようになり、その多くがどこかの拠点を中心に隠れ住むか、あるいは密告者として安寧を得るかの選択を迫られていたのだった。

 

「しっかりしろ!!もうすぐドワルシュタインから脱出できるぞ!!」

「ハァ、ハァ.......」

 

しかし、中には国を越えて逃げようとする者も居たようで.....シルヴァン川を渡っていたコボルト達もまた、その一団の一つだった。

逃亡し始めたコボルト達の多くは、隣国であるエルフィンドやオルクセンへと向かっており、ドワーフ達による民族浄化から逃れようとしていた。

 

ただ、その道中で怪我や病で命を落とすコボルト達が居たのだが、それでもドワーフ達に捕まるよりかはマシだと思ったのか、それでも進むことを止めることはしなかった。

何故なら、ドワーフ達に捕まると強制収容所....あるいはドワーフの手によってあの世へと送られるからである。

 

そのこともあってか、彼ら彼女らは足を止めることすら忘れて北上していたのだが

 

「急げ!!早急に保護しろ!!」

「救護班!!救護班はすぐに負傷者を!!」

 

そのシルヴァン川の近くに白・闇エルフ達の集団が居たのだが、彼女達のほとんどは亡命してきたコボルト達を保護するため、ドウラグエルを筆頭にしたエルフィンド政府が派遣した軍人であった。

そして、彼女達に保護されたコボルト達は温かなスープで涙を流し、救護班の治療を受けたがために一安心したりと、心の底から生きていることを実感していた。

 

その光景を見ていた一人のコボルトの青年は、同族が助けたエルフ達に感謝するかのように敬礼をした後、そのまま意識の糸が途切れたかのようにフラッと地面に倒れそうになっていた。

しかし、その瞬間に一人の白エルフが.....ドウラグエルが彼を介抱したため、地面に叩きつけることはなかった。

 

だが、彼女はそれでも彼のことを本気で心配していたのか

 

「オイ!!お前はまだ死ぬべきコボルトではないだろう!!」

 

そう叫びながら声を掛けたため、そのコボルトは閉じようとしていた瞼を再び開ける形にて、自身に声を掛けたであろう白エルフの顔を見ていた。

 

あぁ、何て美しいのだろう。

ドウラグエルを見た彼は、そんなことを思った末に視線を彼女の方に固定すると、友人の形見であったペンダントを片手で握りつつ、目の前に居る白エルフに....ドウラグエルに向けてこう言った。

 

「同族を助けていただき.....感謝する。この恩義は....いつか.......」

 

そう呟いた後、そのまま瞼を閉じる形で気を失うコボルトの青年。

それを見たドウラグエルは軍帽を深く被ると、ここまでコボルト達を守り抜いた彼に敬意を示すかのように、敬礼のポーズを行っていた。

そして、大統領であるドウラグエルに続くようにエルフ達もまた敬礼したため、その場に居たコボルト達は思わず圧倒されたのは言うまでもない。

 

こうして、白エルフの大統領であるドウラグエルは後に伴侶となるコボルト族の青年に....マッティーアに出会ったのだった。




はい、と言うわけで....今回はコボルト達の逃亡、それからドウラグエルさんのパートナーになるオリキャラこと、マッティーアくんとの出会いの話でした。

ちなみに、対コボルト用政策の元ネタはホロコーストです。
元々はホロドモールのことを考えていたけども....コボルトの種族柄を考えた結果、没ネタにしました。

あ、ちなみに原作と同じくドウラグエルさんとマッティーアくんはおねショタみたいな関係性です。
もう一度言います、ドウラグエルさんとマッティーアくんはおねショタみたいな関係性です。
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