エルフィンド連邦国史〜清廉なエルフの国は、如何にして平和なドワーフの国を焼き払うに至ったか〜 作:サクラモッチー
マッティーア、両親と友人を失いつつも妹と共にエルフィンドへと向かう。
そして、自身の発言を猛烈に恥じる。
ドウラグエル、マッティーアと話し合いをするってよ。
本作のドウラグエルは我らが王に相当する程の知識人なので、それもあってオルクセンとの関係性も良好らしい。
ドワルシュタインにて、コボルトに対する迫害がドワーフ達によって行われている。
その事実をコボルトの証言を報告という形で告げた軍人、それからコボルト族の青年であるマッティーアの話を聞いたからか、ドウラグエルは思わず天井を見上げていた。
私の友人が、グスタフが恐れていたことが起こってしまった。
隣国の王であり、異種族の友人であるオーク王....グスタフ・ファルケンハインのことを浮かべつつ、目の前の事実に対して内心そう呟くドウラグエル。
ドワルシュタインがかつての同盟国であり、エルフィンドの隣国とは言え、この行為は看過できない。
それに加え、ここ数年のドワルシュタインの外交があまりにも強硬的なこともあってか、ドウラグエルはそう思い始めていた。
そして、その想いを胸に彼女はこう言った。
「恐らく....ドワーフが君達に対して行なっているのは、民族浄化に相当するものだろうな」
病院の談話室を借りる形にて、恐ろしくも悍ましい言葉を言い放つドウラグエル。
その言葉を聞いたディネルースもまた眉間に皺を寄せており、魔種族の括りに入っているとは言え、何もそこまでするのか....!?という反応を見せていた。
いくら近代化が進んでいるとは言え、まだまだ誇りと葛藤の精神が根付いている星欧大陸において、ドワルシュタインが社会主義国家になったことはともかく、そこでコボルトに対する迫害が進んでいることはエルフィンドでも相当な衝撃となっていた。
何しろ、エルフィンドにはドワルシュタインのようにコボルト族が暮らしていたものの、連邦の国民としての権利等がエルフ同様に保障されているため、それを知った軍の上層部の面々は顔が真っ青どころか真っ白になっていた。
エルフィンド軍に属するコボルト族の兵士達に至っては、隣国で行われていた残虐な行為に対し、言葉を失う者や怒りに震える者が多数見られたため、ディネルースはそのことを含めた上で戦慄していたのである。
一方、その言葉を聞いたマッティーアは言い当て妙な言葉だと思ったようで、こんなことを呟いていた。
「....何故、我々は迫害の対象となったのですか?」
それを聞いたドウラグエルはピクッと反応すると、自身が好んで吸っている銘柄の
彼女の護衛として、部屋の中に居たディネルースもまた似たような反応になっていたのか、ドウラグエルがどんな反応を見せるのかを見守っていた。
何故、同じ魔種族であるはずのコボルト族がドワーフ族から迫害されているのか?
何故、魔種族であるドワーフ族の間で同族至上主義が蔓延しているのか?
何故......魔種族のドワーフの国は突如として社会主義に目覚めた末に、社会主義共和国として生まれ変わったのか?
今の現状ではドウラグエルの疑問の答えになりそうなヒントすらなく、ただ謎が深まるばかりであった。
しかしながら、彼女にはこれらの出来事に繋がりそうな事実は知っていたのだが、その事実はディネルースも知らない情報だった上に、この世界を揺るがしかねない程の衝撃であるため、どうしようかと悩んでいた。
そして、彼女はマッティーアやディネルースが受け入れられる範囲でこう告げたのだった。
「それは分からない。だが.......」
「だが?」
「恐らくは、前女王が警戒していたかつての『偉大なる支配者』とやらの干渉が原因....の一つかもしれんな」
そう言った後、口から煙を吐くのと同時に再び
ドウラグエルがそう言った瞬間、マッティーアは聞き慣れないその言葉が引っ掛かったようで、どういう意味なのだろうか?という顔になっていた。
しかしながら、ディネルースはその言葉や『偉大なる支配者』の真意は分からなかったものの、その意味だけは分かったようで........思わずドウラグエル!?と叫んでいた。
ただ、彼女はそれを理解した上でそのことを話したらしく、ディネルースを制止していた。
その光景を見たマッティーアは、何かしらのとんでもない秘密なのでは?と察知したようで、冷や汗を垂らす寸前になっていたのは言うまでもない。
「閣下!!それは......!!」
「構わんよ。どうせいつかはバレることだ」
そう発言したドウラグエルはコボルト族のマッティーアに対し、『偉大なる支配者』の真の正体を明かさない程度に話した。
『偉大なる支配者』とは、エルフの間に伝わる伝説の存在であること。
多くの偉業や教えを残した反面、その教えが争いの種になることを危惧した前女王により、結果として独立する形でその支配から脱却したこと。
それから、『偉大なる支配者』は他の種族にも干渉していた可能性が高いことを告げると、マッティーアはすぐさま顔色を変えていた。
何故ならば、彼女の話が自分の想像を超えていたからである。
「......では、コボルトの体質も」
「あぁ、その可能性は高いな」
ドウラグエルの話を聞いたらか、その複雑な感情を持ったがために両手をギュッと握るマッティーア。
『偉大なる支配者』が何なのかは彼には分からなかったものの、神にも近い存在が残したモノがあまりにも残酷で、あまりにも惨すぎるモノであったためかマッティーアは怒りや悲しみだけではなく、呆然とした感情が混ざった表情を浮かべていた。
それと共に、コボルトが玉葱やネギが食べられないのも『偉大なる支配者』の影響だと知ったようで、マッティーアのその顔を見たドウラグエルは気分を変えようと思ったのか、ディネルースを通じて食事を一緒に食べないか?と彼に提案した。
その言葉を聞いた彼は、その言葉に同意したのだが
「おぉ....」
その料理と言うのは、鹿肉と野菜の他に大麦を入れて煮込んだスープはもちろんのこと、ヘーゼルナッツのペーストにライ麦のパンに温かな砂糖入りのミルク。
それから、デザートの代わりとして林檎もあったため、その料理の数々を見たマッティーアはこう思った。
これは、貴族が食べる物ではないのか?と。
しかしながら、ディネルースから彼自身の体調の回復のためのメニューだと伝えられると、そこまで配慮してくれるのか....?という顔つきになっていた。
それに、ドウラグエルやディネルースもまた同じ物を食べるということもあってか、彼が固まっていたのは言うまでもない。
「マッティーア、食べることは体を作ること....つまりは生きることだ。良いな?」
「....はい!!」
こうして、ドウラグエル達と食事を共にしたマッティーアだったが、彼は知らなかった。
後々、彼女達が構想している軍の部隊に配属されることを。
と言うわけで!!マッティーアとドウラグエル、時々ディネルースな第四話でした!!
オルクセン王国史の本編でも思ってたけども、『偉大なる支配者』の残した遺産って本当に地雷なんだなって思った件。
と言うか、『偉大なる支配者』のことだからドワーフにも干渉していたのかもしれないなぁ。