エルフィンド連邦国史〜清廉なエルフの国は、如何にして平和なドワーフの国を焼き払うに至ったか〜 作:サクラモッチー
ドウラグエル、ドワーフが歪んだ原因を『偉大なる支配者』だと考察する。
マッティーア、エルフの間に伝わる『偉大なる支配者』の話に戦慄する。
こーゆー会議のシーンって、書くのがムジュイ。
エルフィンド連邦国の首都であるティリアンには、国の象徴たるティリアン王宮の他にシュニーヴァイスハウゼと呼ばれる官邸が存在する。
その名の通り、雪のように白い外壁が特徴であるこの建物はエルフィンドの大統領の官邸として知られており、毎日のようにエルフィンド連邦政府関係者が訪れては、国が国として機能するように努めていた。
そんなシュニーヴァイスハウゼではあったが、ここ数日はかなり張り詰めた空気が流れていた。
何故ならば、数ヶ月前にドワルシュタインによる民族浄化の末に、多くのコボルト達がエルフィンドに亡命してきたからである。
ドワルシュタインが社会主義共和国となった当初、エルフィンド側の各省の長官達や軍部の上層部達は、直感的ではあるが嫌な予感を感じていた。
その理由は至って簡単で、ドワルシュタインと言う国が新しく生まれ変わった際、その王族が革命によって犠牲になったからであった。
もちろん、エルフィンド国内でも革命の発端となった本は売られた。
しかしながら、ドワルシュタインのように革命が起こる程に不景気ではなかった上に、ほとんどのエルフはその思想を馬鹿馬鹿しい考えだと切り捨てていたため、その思想に染まることはなかったのだ。
ましてや、その本を書いたアスカニア人の男がどんな男だと知るや否や、長官達や軍部の上層部はこう思った。
何故、友人に金をせびるような男がこんな本を書いたのだ?と。
「しかし、あの本には革命しろともコボルトを迫害しろとも書いてなかった。一体何がどうなってドワーフ達はああなったのだ?」
だからなのかは分からないが、現在のシュニーヴァイスハウゼ内の会議室ではエルフィンド軍こと、エルフィンド連邦国防総省の長官を務めている白エルフ......サエルウェン・クーランディアのそんな言葉が響いていた。
そして、サエルウェンのその言葉に他の面々も共感していたのか、うんうんと頷いた上で共感していた。
彼女の言うように、ドワーフ達の間で熱烈に流行っていた例の本にはそういった記述は無く、あくまで資本主義への批判や社会主義の素晴らしさが熱弁されるように書いてあった。
それはつまり、そもそも前提として革命や迫害を促すようなことは書かれていなかったため、当たり前だがサエルウェンは首を傾げていたわけなのだ。
「それは私も同意見だ。いくら本の内容が魅力的かつドワルシュタインが不景気だったとは言え、それが迫害に繋がるとは考えにくい」
陸軍の上級大将であったディネルースもまた、サエルウェンのその言葉に同意していたのか、愛煙している銘柄の
一方、ディネルースとの言葉を聞いたサエルウェンもまた、共感するようにそうだよなぁと呟いており、その顔には納得できないと言わんばかりの顔になっていた。
コボルト族は商売等が得意な反面、それ故に敵を作りやすいということもエルフ達もまた周知していた。
けれども、今回のようにコボルトへの迫害の末に強制収容所へ送られる......というケースは前代未聞だったのか、皆一同に何故?どうしてそうなったのかを考えていた。
そのためか、会議室には重苦しい空気が漂っていたのである。
そんな空気を断ち切るように、この会議の主であるドウラグエルはこう発言した。
「....やはり、この星欧の地にまだ『偉大なる支配者』の遺産は残っていたのかもしれんな」
『偉大なる支配者』の遺産。
その言葉が飛び出た瞬間、ドウラグエルの言葉の真の意味を理解した上で騒つくエルフ達。
星歴八七五年現在のエルフィンドでは、『偉大なる支配者』がバラ撒いた善悪含めた思想のことを遺産と呼んでいた。
これは、約二〇〇年の前女王が神を気取っていた『偉大なる支配者』に対し、完全なる皮肉として発した言葉が元となっており、今のエルフィンド政府においては厄災の種を意味する言葉であった。
当然ながら、紙タバコを吸いながらそう言った彼女もまたその言葉の意味を理解していた。
理解していたからこそ、それを国を担う長官達や軍の上層部に共有するためにそう言ったのである。
「まさか....その『偉大なる支配者』の遺産がドワルシュタインに根付いていると?」
「あくまで可能性である上に、詳しく調査しないことには分からないだろう。だが」
「その遺産をどこぞの誰かが歪んだ形で受け取ったのなら、奴らが掲げる社会主義とやらも歪むわけか」
ドウラグエルがそう言った瞬間、自らの灰色の頭脳をフル回転される形でそう呟くディネルースとサエルウェン。
特にディネルースに至っては、ガラス製の灰皿に短くなった
かつて、エルフの国であるエルフィンド連邦がまだ王国だった頃、男のエルフは不必要という理由で消された歴史があった。
今思えば、それは完全なる愚行であるエルフ達は評価できるが、そこまでの意識改革を行なった前女王は彼女達にとって、非常に優れた女王であったのだ。
だがしかし、ドワーフ達はどうか?
エルフ達は前女王の苦難とも言える努力により、『偉大なる支配者』の遺産から脱却することに成功したものの、ドワーフ達はその逆。
つまり、例え『偉大なる支配者』の干渉が無くなったとしても、その影響は無くなったわけでない。
しかも、その事実を知っているのはこの世界ではエルフィンド連邦政府の一部の関係者。
それもこの会議場に居る面々だけなため、ある意味では国家機密として扱われていたのである。
「大義名分と言うのは、人間族だろうが魔種族だろうが狂わせる.....か。確かに、あの男を見れば一目瞭然だな」
「....奴か」
サエルウェンがそう言った瞬間、思わず声を漏らすディネルース。
彼女の言う奴とは、ドワルシュタインでの革命の最中のゴタゴタによって、ドサクサに紛れてドワーフの国の頂点に....総書記となった男であった。
彼は、モーリア革命を起こしたドワーフ達の組織である共産国民党の幹部であったものの、その革命の際に指導者が亡くなったことによる権力闘争に勝利し、今もなお最高権力者として力を振るっていたのである。
ただし、彼のその直属の組織である国民委員会の手腕は強引であり、非常に残酷であったがために、エルフィンド連邦政府の面々は警戒していたのだった。
そう思っている彼女達を尻目に、ドウラグエルは
「諸君。この国の要である君達も予想している通り、我々はドワルシュタインとの戦争を前提にこの会議を行なっている。故に....私はこの場を借りる形にて、今こそエルフィンド空軍の設立をここに発案したい」
と言うわけで!!タバコの匂いが香る会議室での一幕Part1でした!!
どことなくオッサン臭が漂う会議パートになっちまったぜ....!!
まぁでも、カッコいいから言いけども!!
あと、カッコいいサエルウェンを書きたかったもので....!!