エルフィンド連邦国史〜清廉なエルフの国は、如何にして平和なドワーフの国を焼き払うに至ったか〜 作:サクラモッチー
ドウラグエル、シュニーヴァイスハウゼにて他のエルフ達と会議を行う
そして、その中で一つの最悪な可能性が浮上する。
会議パートを書いてるだけなのに、そこに喫煙シーンを書きたくなるのはなぁぜなぁぜ?
空軍を設立する。
シュニーヴァイスハウゼの会議室にて、ドウラグエルからいきなりそんな言葉が飛び出たからか、サエルウェンを含めた各省の長官はもちろんのこと、ディネルースのような上級大将もまた驚いたような顔になっていた。
ドウラグエルもまた、自身が如何に突拍子のない発言をしているのかも知っていた。
知っていたからこそ、今この場でそんなことを言ったのである。
「大統領閣下、それはどういう....?」
「どうもこうも、そのまま意味だが?」
当然ながら、白・闇問わずその場に居たエルフ達がそう思っていたのか、彼女に向けてその疑問をぶつけるようにそう尋ねるサエルウェン。
海軍や陸軍を含めた全ての軍を統括する国防総省の長官であるサエルウェンの言葉は、その場においては至極真っ当な疑問であった。
星歴八七五年現在のこの時代では、まだ陸と海の戦いが主流。
つまり、この時代ではまだ空軍の存在どころか概念ですら無かったため、エルフ達が騒つくのも無理はなかった。
しかしながら、上級大将であるディネルースだけはその言葉の意味を理解していたようで
「大統領閣下。それはつまり.....今後起こるであろうドワルシュタインとの戦争において、陸海問わず空からの攻撃は有効ということでしょうか?」
口からタバコの煙を吐きながらも、自身が端的に理解したことをそう述べたため、ドウラグエルはそうだとばかりに頷いた。
それをYESだと受け止めたディネルース、それからサエルウェンは大統領の提案に対し、だからかと言う受け止め方をしていた。
ドワルシュタインは陸地ではあるが海に面しているがために、陸や海での戦いを起こることを彼女は予想していた。
しかしながら、ドワルシュタイン軍が非常にタフである上に、技術力に関する貪欲さは人間に劣らない勢いであるため、それをロザリンド会戦時に知ったドウラグエルは、何とも厄介な敵だと思っていた。
それに加え、ドウラグエル自身はもはや今は魔術の時代ではなく、人間達による技術革新の時代だとハッキリ認識していたのか、人間達の国々に遅れを取らないためにも、そう提案したのである。
一方、彼女の言葉を聞いたディネルースは、かつてのロザリンド会戦のことを脳裏に浮かべた上で、空軍の立ち上げを発案したドウラグエルに向けてこう言った。
「まさか.....大鷲族を?」
ディネルースが声を漏らすようにそう呟いたところ、再び会議室は騒がしくなっていた。
それもそのはずで.....何しろ、エルフィンドに住まう魔種族の一つである大鷲族は、一二〇年のロザリンド会戦はもちろんのこと、六〇年前に勃発したデュートネ戦争においても、エルフィンド軍の軍人として非常に活躍したとされている。
大鷲族は主に通信兵として活躍したのだが、ロザリンド会戦とデュートネ戦争がエルフィンドの勝利で終わると、彼らはエルフやコボルト達が騎乗する形で郵便配達を行う者達が増え、今もなお大鷲の配達業はエルフィンドの流通面を支えていた。
ディネルースはそのことを知っていた上に、過去の戦争であるロザリンド会戦やデュートネ戦争の際には、大鷲族や巨狼族に世話になっていた。
だからこそ、ドウラグエルの発案した空軍が何に乗って空を駆け抜けるのかを理解したのか、嘘だろという顔になっていた。
一方、それを聞いていたサエルウェンはなるほどと言わんばかりの様子になっており、会議のメンバーがタバコの煙が充満する会議室内にて、紅茶入りのティーカップの中にティースプーン一杯の砂糖とミルクを入れ、それを一口飲んだ上でこう言った。
「要は馬を大鷲族に変えただけではなく、乗り手を魔術力の高いエルフとコボルトにすることで、魔術通信であらゆる多彩な攻撃を支持できるってことですかな?」
「まぁ、そんなところだな」
サエルウェンが理解を示すかのようにそう言ったところ、その場に居た各省の長官達や軍の上層部は呆然となっていた。
何しろ、彼女の言っていることは大鷲族に乗った上で戦場を駆け抜ければ、陸だろうが海だろうが市街地だろうが攻撃できることを意味していたからである。
全ての軍を総括する国防総省の長官であるサエルウェンは、ロザリンド会戦やデュートネ戦争の際、大鷲経由でもたらされた情報やその影響力が非常に強いことを知っていた。
知っていたからこそ、彼女は理解できたのである。
しかしながら、だからこそディネルースはいくつかの懸念点を持っていたようで、
「確かにその戦術は革新的ではありますが......問題は彼らが、大鷲族が素直にエルフやコボルトを乗せるかどうかです」
ディネルースがそう言った瞬間、そっちの問題があったか!!とばかりに頭を抱えるエルフ達。
その顔には、あの大鷲族を説得するのは難しそうだろうなぁ....と思い始めていた。
彼女の言うように、大鷲族は高い知能を有している上に空を空を飛ぶ種族としての誇りとプライドもあった。
現に、ロザリンド会戦やデュートネ戦争の際の大鷲族の交渉は難航した程であったため、その記憶が残っているエルフ達は当たり前だがその問題について悩み始めていた。
ちょうどその時、何かを思いついた様子のサエルウェンが徐ろに口を開いたかと思えば、ドウラグエルに向けてこう言った。
「なら、私が大鷲族の族長に話を付けてくるのはどうだ?」
サエルウェンがそう言った瞬間、その場に居たディネルースを含めたエルフ達は一斉に彼女の方を向いていた。
一方、その視線と共にタバコの煙に包まれたサエルウェンは、タバコの煙も一緒に向けるな!!とボヤいていた。
実のところ、これはここだけの話だが....サエルウェンはタバコよりも紅茶派だったため、お気に入りの品種の紅茶を何度もお代わりをしていた。
そのこともあってか、ディネルースや他のエルフ達から紅茶狂いに言われたくはないと思われていた模様。
だが、いずれにしてもドウラグエルからしてみれば、これは非常に頼もしい発言だったようで、何かを決めた様子でサエルウェンに向けてこう言った。
「.....そうだ、そうだったな。デュートネ戦争での我々の勝利は、お前がひとえに大鷲族の族長と酒を飲み交わしたが故に成立したのだったな」
彼女がそう言った瞬間、そっちのことは任せておけという反応になるサエルウェン。
それを見たドウラグエル......そしてディネルース達もまた一安心したのは言うまでもない。
そう言うわけで、とりあえずは空軍の件は後々また会議をすることや、大鷲族については彼女に一任することが決まり、各省の長官や軍の上層部を含めた幹部達は数時間振りに会議室から出ていた。
しかし、既に彼女達の体にはタバコの煙の匂いが染み付いた状態となっていたようで、後々この会議が【シュニーヴァイス会議】と呼ばれるようになった際、【
エルフィンド軍、空軍を設立する方向性で行くってよ。
ちなみにこの世界線では巨狼どころか大鷲との関係性も良好で、エルフを乗せて郵便配達をしている大鷲、もしくは巨狼の姿がよく見られるのだとか。
あと、クーランディアさんがカフェイン中毒ならぬ紅茶中毒になってたら良いなぁ。