エルフィンド連邦国史〜清廉なエルフの国は、如何にして平和なドワーフの国を焼き払うに至ったか〜 作:サクラモッチー
ドウラグエル、大鷲を使った攻撃方法を提案する。
各省の長官・ディネルース・サエルウェン、その提案を実装する動きを見せる。
シリアスが続いたのでハートフル回を....ね?
星歴八七六年の春。
エルフィンド連邦の首都であるティリアンから遠く離れた場所に、クレラントという田舎町があった。
その町は古くから白エルフや闇エルフだけではなく、多くのコボルト族が共存して暮らしており、エルフやコボルト問わず数々の店が出ていた。
そんなクラレントにドワルシュタインからの逃げてきたコボルトがやって来たのは、昨年の秋のことであった。
と言うのも、ドワルシュタインからやって来たであろうコボルト達に対し、エルフィンド連邦の大統領であるドウラグエル・ダリンウェンが
「ドワルシュタイン出身とは言えども、一度この地に踏み入れているのならば、我がエルフィンドの国民である」
と発言したことにより、エルフィンド各所でコボルトの難民達の受け入れ体制が整いつつあった。
それにより、エルフィンド国内に暮らしていたコボルト達に加え、白エルフや闇エルフもまた支援の輪を広げたことによって、多くのコボルト達は新たな居場所を見つけつつあった。
それは、両親と友人を失った末にこの国に辿り着いたマッティーアと妹であるエスターも同じだったようで、二人はキャバリア種の未亡人の家に居候する形にて、晴れてクレラントの地に暮らすようになった。
「お兄ちゃん!!ハーゼルお姉ちゃん!!こっちこっち!!」
まだ幼いエスターはすぐにクレラントでの生活に慣れたようで、今の彼女は兄のマッティーアとその友人のハーゼルと共に、クラレントの街に出掛けていた。
ハーゼルは見目麗しいエルフが多いこの国では珍しく、黒髪とそばかすとギザ歯が特徴の白エルフであった。
彼女はマッティーアが
そのためか、同じ部隊だからかマッティーアとハーゼルは自然と仲良くなり、彼の妹に付き添う形です出かけていたのである。
「全く....エスターは目を離すとすぐに居なくなりそうなんだよな」
「それもまた元気な証拠じゃね?」
ケタケタと笑いながらそう言うハーゼルに対し、やれやれと言う様子になるマッティーア。
二人が務める部隊の駐屯地は、このクラレントの近くにあった。
そのためか、二人は軍服を身に纏った上で街を歩いていたのだが.....その軍服が陸軍の軍服でなければ、かと言って海軍の軍服でもなかったため、マッティーアは周囲から浮いてないか?と不安になっていた。
そんな彼を知ってか知らずか、エスターはマッティーアの手を引く形でとある店に訪れていた。
「こんにちは〜!!」
「いらっしゃい!!」
「あら、こんにちは」
エスターが声を掛けた相手は、小売店を営むロヴェルナ・ハウンド種のコボルト.....ファーレンス夫妻であった。
二人は数十年前からクラレントで暮らしつつ、小さいながらも商売を営みながらも暮らしており、その夫婦円満具合は他のコボルトから羨ましがられ、エルフ達からも温かい目で見守られる程であった。
マッティーアとエスターはそんな二人の店の常連となっており、ファーレンス夫妻もまたフェルゼン兄妹のことを気にしていた。
なので、こうしてエスターが話しかけることがしばしばあったのだ。
「エスターちゃん、今日も元気ね〜」
「うん!!今日はお兄ちゃんの友達のハーゼルお姉ちゃんも一緒だよ!!」
そう言いつつ、彼女に追い付くようにやって来たマッティーアやハーゼルを指差しつつそう言うエスター。
それを見たファーレンス夫妻は、我が子のように可愛がっているマッティーアに友人が出来たことに対し、余程嬉しかったのか....顔色を一気に明るくしていた。
一方のマッティーアは、そんな妹の頭を撫でていたのだが......ふと、ファーレンス夫妻の店先にある飲み物を、くびれが特徴的な容器に入った鮮やかな赤の飲料水が目に入ったようで、それをジッと見つめていた。
そのことに気がついたファーレンス氏、それからファーレンス夫人はマッティーアに向け、微笑みながらこう言った。
「あぁ、それかい?それは炭酸入りベリージュースだよ」
「ベリージュースに?炭酸?」
「えぇ、とっても美味しいのよ」
そう言いつつ、炭酸入りベリージュースをマッティーアに手渡すファーレンス夫人。
それを受け取ったマッティーアは、とりあえず妹やハーゼルの分も買おうと思ったのか、合計三本の炭酸入りベリージュースを買っていた。
そして、そのまま三人は炭酸入りのベリージュースを飲み始めたのだが.........ベリーの爽やかな酸味の甘みに加え、炭酸独自の泡が弾けるような感覚もあってか、マッティーアは美味しそうにグビグビと飲んでいた。
エスターはエスターで、可愛らしい笑顔でその炭酸入りベリージュースを飲んでいたこともあってか、ファーレンス夫妻もまたニコニコと笑っていた。
ハーゼルに至ってはこれは美味いとばかりに飲み干した後、おかわりの分を買ったがためにマッティーアから呆れられていた。
「オイオイ、また買うのか?」
「どうせネニングに行って飲めなくなるのなら、私はここで二本目のジュースを飲むね」
「それ、自慢げに言うことじゃないだろ」
そんな言葉を交わしつつ、店先でワイワイと盛り上がる二人。
ハーゼルはこのエルフィンドで出来た白エルフの友人とは言え、ドワルシュタインから逃げる際に友人を亡くした彼にとって、心の救いとも言える人物だったからか、その顔付きは呆れつつも優しい表情になっていた。
ただ、それを聞いたファーレンス夫人は何かを感じたのか、マッティーアとハーゼルに向けてこう言った。
「二人とも、ネニングに用事があるの?」
それを聞いたマッティーア、それからハーゼルはお互いに顔を見合わせた後、そのまま苦笑いを浮かべていた。
ファーレンス夫人にとって、その質問はただの疑問だったのだが....二人にとって、彼女からの質問は軍人として答えにくいものだったのか、マッティーアとハーゼルはどう説明しようかと悩んでいた。
そして、彼は質問をしたファーレンス夫人に向け、言葉を選びながらこう言った。
「あ、はい。ちょっとした用事がありまして.......」
「そーそー、大事な用事ってやつであります!!」
ファーレンス夫人に対し、ぼかすようにそう言うマッティーアとハーゼル。
それを聞いた彼女とファーレンス氏は、何となく軍人と言うものは大変なのだと思ったのか、その言葉に自然と納得していた。
ただし、彼はファーレンス夫人は彼の妹であるエスターのことを気にかけていることを知っていたからか、続け様にこんなことを言った。
「なので....ネニングでの用事が終わったら、一緒にティリアンに行こうとエスターと約束をしているんです」
マッティーアがそう言った瞬間、良いお兄ちゃんだなと呟くファーレンス氏。
ファーレンス夫人もその話を聞いたからか、まるで母親のような笑顔を浮かべており
「ティリアン!!良いわね〜!!」
「えへへ〜!!」
エスターに向けて優しくそう声を掛けていた。
だがしかし、ファーレンス夫妻は知らなかった。
その用事というのがいわゆる軍事演習で、しかも世界的にも類を見ない空軍の演習だと言うことを....
マッティーア、ファーレンス夫妻に可愛がられるってよ。
ついでに言えば、同じ部隊のそばかすギザ歯ちゃんとも仲良くなるってよ。
ちなみに、そばかすギザ歯の白エルフちゃんの名前はハーゼル・クノールです。