D・ボードが形になったことで、ようやくシエルもライディングデュエルへ参加できる。
――はずだった。
機体側を片づけた途端、今度はデッキ側の問題が表面化した。
閃刀姫は、魔法カードの比重が高すぎる。ライディングデュエルの制約をそのまま受ければ、デッキの骨格そのものが消える。
「ライディングデュエルでは、普通の魔法がそのまま使いづらい」
シエルの閃刀姫は魔法が中核。
「じゃあ閃刀魔法をSpにする」
「そんな簡単に言うのか?」
「うん。使えない。じゃあ使えるようにする。以上」
「デュエルタクティクスとか、そんな大層な理由ないよ?」
シュテルは本当にそれだけだった。
シエルは机へカードを並べ、遊星は既存のスピードスペルを持ってくる。ブルーノは発動条件を書き出し、シュテルは横から「それ強い」「それ欲しい」と口を挟む。
カード開発というより、四人で一つのデッキを分解して、ライディングデュエル用に組み直す作業だった。
競技規則と既存Spの設計基準に合わせ、調整開始。
《Sp-閃刀起動-エンゲージ》
《Sp-閃刀機-ウィドウアンカー》
《Sp-閃刀起動-リンケージ》
《Sp-閃刀亜式-レムニスゲート》
《Sp-閃刀機-ホーネットビット》
《Sp-禁じられた一滴》
それぞれ必要なスピードカウンター条件を設定。
「弱いカードに改造する意味ないじゃん」
「開き直るな」
さらに既存Sp。
《Sp-アクセル・ドロー》
自分SC12、相手が12でない場合、2ドロー。
《Sp-シフト・ダウン》
SCを6つ減らし、2ドロー。
《Sp-オーバー・ブースト》
このターンSCを4つ増やし、エンドフェイズに1へ。
《Sp-エンジェル・バトン》
SC2以上。2ドロー後、手札1枚を墓地へ。
《Sp-カウントアップ》
SC2以上。手札を任意枚数墓地へ送り、1枚につきSC2増加。
《Sp-サモンクローズ》
SC4以上。手札1枚を墓地へ送り1ドロー。このターン相手は特殊召喚できない。
《Sp-スピード・フォース》
SC4以上。次の自分エンドフェイズまで自分フィールドのカードは相手の魔法・罠で破壊されない。
シュテルはカードを見る。
「ドローできる。採用」
「墓地に落とせる。採用」
「カウンター増える。採用」
「特殊召喚止められる。強いじゃん、採用」
「それだけ?」
「それだけ」
ところが。
実際に候補を並べていくほど、全員の表情が少しずつ変わっていった。
適当に選んでいるようにしか見えなかったスピードスペルが、閃刀姫の要求する要素と妙なほど噛み合っている。
《エンジェル・バトン》は二枚引きながら魔法を墓地へ。
《カウントアップ》は不要魔法を墓地へ送りつつSCを増やす。
墓地魔法三枚を早期に達成し、《エンゲージ》の追加ドローを加速。
《サモンクローズ》でシンクロ召喚を封じる。
遊星が頭を抱える。
「調整前より強くしてどうする!」
「俺も困惑してる。閃刀魔法をSp化したかっただけだもん」
テストデュエル。
シエルは《Sp-エンジェル・バトン》で二枚ドロー、リンケージを墓地へ。《Sp-カウントアップ》でさらに墓地を肥やしSCを加速。
《Sp-エンゲージ》でサーチ+ドロー。
《Sp-ホーネットビット》からカガリ、墓地のリンケージ回収。
《Sp-サモンクローズ》。
「このターン、相手プレイヤーはモンスターを特殊召喚できません」
遊星。
「シンクロ召喚は?」
「できない」
「ですよね」
さらにウィドウアンカー、一滴、リンケージ。
「妨害が多すぎる」
「そうですね」
シュテルは肩をすくめる。
「ルール違反なし。未来技術なし。既存Spの条件に合わせてる。じゃ、いいんじゃない?」
「軽い!」
テストを終えたシエルは、デュエルディスクからデッキを抜き、カードの角を丁寧に揃えた。
「通常版より、継戦能力もドロー能力も上がっています」
「やっぱり?」
「はい」
遊星が深く息を吐く。
弱体化して環境へ合わせるつもりが、別方向へ伸びてしまった。
こうして。
シンクロ召喚を使わず、魔法を墓地へ送り、カードを引き、相手の展開を止め、そのまま一気に攻撃へ切り替える。
非常に面倒なライディングデュエリストが誕生した。