白翼のシエル×5D's   作:シュテル・ルシフェル

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第14話 シエルカウンター、使用します



 

 シエルカウンター。

 

 もちろん、正式なルールでもカード効果でもない。

 

 ただ、シュテルが未来について口を滑らせたり、明らかに何か知っているのに誤魔化したりするたび、シエルが静かに積み上げてきた「貸し」である。

 

 シュテル本人は、途中から数えるのをやめていた。

 

 シエルはやめていなかった。

 

 ある日。

 

「そろそろ使いましょうか」

 

「何を?」

 

「貸しです」

 

「…………忘れてなかった?」

 

「忘れる理由がありません」

 

 シエルは指を立てる。

 

「5D'sという名称を不用意に口にした件。未来知識を何度も口走った件。私のデッキを知っている理由を誤魔化した件。『作品』という言葉を不用意に使用した件。その他諸々」

 

「最後雑!」

 

「合計、シエルカウンター5です」

 

「いつ名称決まったの!?」

 

 龍亞が食いつく。

 

「どうやって増えるの?」

 

「シュテルが余計なことを言うと増えます」

 

「分かりやすい!」

 

「分かりやすくない!」

 

 そこでシエルは、机の上にあった一枚のカードへ手を伸ばした。

 

《Sp-カウントアップ》。

 

 表情はいつも通り。

 

 なのに、カードを持つ指先だけが妙に迷いなく、シュテルは嫌な予感を覚えた。

 

「貸しを一つ消費」

 

「うん?」

 

「代わりにシエルカウンターを二つ増やします」

 

 一瞬。

 

 ガレージが静まり返った。

 

「効果改竄するな!」

 

「現在6です」

 

「増えた!?」

 

 酒を買いに逃げようとすれば。

 

「シエルカウンター、プラス1」

 

「なんで!?」

 

「改善したと思っていました」

 

《Sp-サモンクローズ》を取り出し。

 

「このターン、シュテルはガレージ外へ特殊移動できません」

 

「ただの外出禁止じゃん!」

 

「通常移動も駄目です」

 

「効果より強くなってる!」

 

 貸しの使用内容。

 

 一週間、飲酒量半減。

 

 D・ボードの実走テスト。

 

 ライディングデュエルの対戦相手。

 

「何で俺が」

 

「シエルカウンター消費です」

 

 

 翌日の試走。

 

 シュテルが借り物のD・ホイールへ跨がる一方、シエルは自分のD・ボードへ乗る。

 

 テスト開始直前。

 

 シエルが、わざわざ一枚のカードを見せた。

 

《Sp-オーバー・ブースト》。

 

 効果を使うわけではない。

 

 ただ名前を悪用しただけだった。

 

 後部ブースターが点火し、シエルの身体が一気に前へ飛び出す。

 

「これテストだよね!?」

 

「追走データを取得しています」

 

「絶対楽しんでるだろ!」

 

「違います」

 

「嘘だ!」

 

「シエルカウンター、プラス1」

 

 ライディングデュエルでもシュテルのモンスターを《ウィドウアンカー》で奪い。

 

「それ返して?」

 

「嫌です」

 

「即答!?」

 

 通信越しの声はいつも通り淡々としている。

 

 けれど、横へ並んだ一瞬。

 

 シュテルには見えた。

 

 シエルの口元が、ほんの少しだけ上がっている。

 

 普段なら見逃す程度の変化だった。

 

 だからこそ、間違いなく楽しんでいる。

 

 最後はリンケージ、ゼロ、レイ、ロゼ、ハヤテまで繋いで勝利。

 

 ベンチで疲れるシュテル。

 

「今日、楽しかった?」

 

「……少し」

 

「認めた!」

 

「少しです」

 

「いつも真面目なんだから、たまには悪ノリしても。俺が被害受ける範囲なら」

 

「ではシエルカウンター、今後も維持します」

 

「そこは廃止して!」

 

「嫌です。便利なので」

 

 その日から、シュテルはシエルの前で余計なことを言わないことが非公式ルールになった。

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