白翼のシエル×5D's   作:シュテル・ルシフェル

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第4話 ところで、今どこまで進んでる?

 

 

 デュエルが終わったあとも、遊星の疑問は消えていなかった。

 

 むしろ増えている。

 

 リンク召喚そのものを知らない世界で、目の前の男だけが召喚条件もカード効果も攻撃順も把握している。偶然や勘で片づけるには、知識が具体的すぎた。

 

 遊星は男へ問い直した。

 

「あんたはどうして、シエルのカードを知っている?」

 

「ああ。知ってるよ」

 

「認めるんですか?」

 

「そこ隠しても仕方ないだろ」

 

 男は《レイ》《ロゼ》《エンゲージ》《リンケージ》《ゼロ》《レムニスゲート》《絢嵐たる見神》まで知っていると素直に認めた。

 

「俺がいたところじゃ普通に知られてるから」

 

「遊星のカードも?」

 

「知ってる。ジャンク・シンクロンもスターダストも」

 

 そして少しだけ迷い。

 

「俺がいたところでは、この世界のことを《遊戯王5D's》って呼んでた」

 

「ファイブディーズ……?」

 

「まあ、物語の名前みたいなもんだと思ってくれ。俺の側から見れば、な」

 

 遊星の表情が変わる。

 

 男は遊星、ジャック、クロウ、アキ、龍亞、龍可、牛尾まで知っていた。

 

 そこまで話したところで、男の表情から急に軽さが消えた。

 

 何かを思い出した、というより。

 

 今になって、自分が確認していなかった致命的な前提へ気づいた顔だった。

 

「…………待てよ」

 

「?」

 

 男が遊星をまっすぐ見る。

 

「遊星。ちょっと聞いていい?」

 

「ああ」

 

「……今って、どの事件まで起きてる?」

 

「事件?」

 

 言いかけて、男は口を閉じる。

 

「これ、下手に固有名詞出したら未来のネタバレになるな」

 

 独り言にしては、あまりにも物騒だった。

 

 遊星の目が細くなる。

 

 シエルもまた、男の言葉を冗談として処理しなかった。これまでの異常な知識量を考えれば、少なくとも本人の中では整合している可能性が高い。

 

「未来?」

 

 未来に起きる出来事も知っているのか、と遊星が問う。

 

「全部じゃない。一部は知ってる」

 

「なら教えてくれ」

 

「駄目」

 

「何故だ」

 

「未来を知って行動変えたら、俺の知ってる流れそのものが壊れるかもしれない。俺は未来予知してるわけじゃない。俺が知ってるのは、あくまで俺の知ってる5D'sだ」

 

 シエルも頷く。

 

「情報を与えることで、既知の未来そのものが観測不能になる」

 

「そういうこと」

 

「ですが、必要な危険情報まで黙るのが合理的とは限りません」

 

「そこなんだよなぁ」

 

 現在位置を確認する。

 

「サテライトとシティはもう繋がってる?」

 

「ああ」

 

「フォーチュンカップは?」

 

「終わった」

 

「ダークシグナーは?」

 

 遊星の目が変わる。

 

「戦いは終わった」

 

「ゴドウィンも?」

 

「知っているのか」

 

「知ってる」

 

 男は息を吐く。

 

「じゃあ、そこまでは終わってんのか」

 

 さらに。

 

「WRGPって単語、聞いたことある?」

 

「WRGP?」

 

「はいストップ。その反応で分かった。まだそこまで進んでない」

 

「今の言葉は何だ」

 

「忘れろ」

 

「無理だ」

 

「だよなぁ」

 

 シエルが呆れる。

 

「自分から言っておいて何をしているんですか」

 

「事故」

 

「あなたの注意不足です」

 

 男は現在を「ダークシグナー事件後、次の大きな流れの前」と推測する。

 

「一番面倒な時期に落ちてきた可能性あるな」

 

「何が起きる?」

 

「言わない」

 

 そこへシエル。

 

「既に私という、本来存在しない要素が入っています。私が一番大きなイレギュラーです」

 

「存在してる時点でしてる」

 

「あなたも同じでは?」

 

「…………そうだな」

 

 遊星は二人を見て。

 

「しばらく俺のところに来ないか」

 

「いいのですか?」

 

「ああ。ここで放っておく方が危ない」

 

「主にどっちが?」

 

「両方だ」

 

 遊星の申し出に、シエルは一度だけ周囲を見回した。

 

 帰還方法は分からない。土地勘もない。治安組織には既に目を付けられている。

 

 選択肢としては、十分すぎるほどありがたい。

 

「お世話になります」

 

 短く頭を下げる。

 

 こうして二人は、遊星の生活圏へ入り込むことになった。

 

 この時点ではまだ、ガレージの設計図を書き換え、食生活を改善し、コーヒーの商品まで作ることになるとは、シエル自身も想像していなかった。

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