100カノにTS転生幼馴染(運命の人ではない)を加えてみた話 作:クリーンクローン
コンタクトを探し出したのち、俺と恋太郎はオレンジ色の夕日が差す廊下を歩いていた。
まさかコンタクトを探し出すのに3時間も掛かるとは...。これを最初は恋太郎と先生の二人でやろうとしてたというのだから恐ろしい。俺が手伝わなかったら日が暮れていたのではなかろうか。
まあ、先生は「内申点1億点やるからなー」と言ってくれたので良しとしよう。
と、入学初日にして高校生活勝ち組となったことに想いを馳せていると、恋太郎が驚いた顔をして窓の外を見ていた。
どうしたのだろう、と恋太郎が見ている方向に視線をやると、2人の女子生徒が「四葉、四葉」とブツブツ言いながら地面を探し回っていた。
よく見ると、俺と同じクラスにいたとんでも美人たちの内の2人、金髪の子とタレ目の子だった。
彼女たちは随分と必死に探している様子で、まだ冬の涼しさの残るこの時期にも関わらず汗を搔いている様子から、もう何時間も探していることが伺える。
おそらく彼女たちはこの学校に伝わる『裏庭に生えているピンクの四葉のクローバーを渡すと100%必ず付き合える』というオカルトじみた噂を信じて、ピンクの四葉のクローバーを探しているのだろう。
つまり、彼女たちは恋する乙女ということなのだろう。
「あれ、あの人たち同じクラスの子だよね?恋太郎、もう知り合ってたの?」
「ああ、入学式が終わって廊下を歩いてた時にぶつかっちゃって...」
「ふーん?あの人たち、随分必死に探してるね。誰に渡すつもりなんだろう」
「それは、その、多分俺に、じゃないかな...」
「えっ」
普通の人だったら自意識過剰すぎだろ、としか思わないが、恋太郎に限ってそんなことはないだろう。
もしかして、あの子たちがあの神の言っていた恋太郎の’運命の人’なのだろうか。
100人もいるのだ、初日にすでに出会っていてもおかしくはないだろう。
そのことについて確認するため恋太郎に話しかけようとすると、恋太郎は心配を浮かべた表情で言う。
「ごめん、友は先に帰っててくれ」
「え?」
「俺はあの子たちのところに行ってくる」
「え、ちょっと」
そう言うと、恋太郎は走り去ってしまった。
その後姿を見ながら俺は嘆息する。どうせ、彼女たちの必死な顔を見て何かしてあげたくなったとかだろう。
まあいつものことだ。恋太郎が困った人を見ると動かずにはいられないのは。
そして、毎回俺を置いて行くのは。
少しして、俺も恋太郎の後を追うのだった。
恋太郎の後を追って廊下を歩いていると、四葉を探していた子たちの内の一人、タレ目の子がハンカチを持ってトイレから出てくるところにバッタリ会ってしまった。
「あ」
「あなたは...」
こうして改めて見ると、本当に容姿の良い女性である。タレ目で優し気な瞳、美しい赤みがかった髪にぷっくらとした唇。体つきもおよそ高校1年生とは思えない。この体を持つ女性と1年間過ごさなければならない同クラスの思春期男子たちが可哀そうになってくる。
そんな彼女は俺と目が合うと驚いた顔をした後、何か言いたそうに視線を向けてきた。
「えっと、確か同じクラスの子だよね?私、幼馴友っていうんだ。1年間よろしくね。」
俺がそう声を掛けると、彼女はハッとして返事を返す。
「わ、私は
「ああ、
そう言うと、花園さんは顔を赤らめて恥ずかしそうにした。
「あ、あれを見られてたとは...。恥ずかしいです。えっと、私に何かご用でしたか?」
「ああいや、私は用事ないんだけどね。恋太郎があなたたちの所に行っちゃったから私も付いて行こうと思って」
「愛城くんが?」
俺が恋太郎の名前を出すと花園さんは驚いた顔をした後、何かに納得したような顔をした。
「うん。そういえば、恋太郎があなたとぶつかったって言ってたね。ごめんね、私からも謝まらせて」
俺がそう言って謝罪すると、花園さんは傷ついたような、悲しむような顔をした。
しかし、その表情はすぐに消え去り、覚悟を決めたような表情に変わった。
「あの」
「ん?」
彼女は手に持ったハンカチを強く握り、歯を食いしばって俺に聞いた。
「幼馴さんは、愛城君と付き合ってるんですか!?」
それを聞いた彼女の手は震え、目が潤んでいた。彼女はかなりの覚悟を持ってこの質問をしたのは明白だった。
俺の中の予測が確信に変わった瞬間だった。
彼女が恋太郎の’運命の人’だ。
正確には運命の人の1人、だが。
「どうしてそう思ったの?」
「えっと、教室で愛城君とあなたが仲良くしてるのを見て、友人にしては距離が近すぎるような気がして...」
「なるほど...」
俺は恋太郎の運命の人にとんでもない勘違いをさせてしまったようだ。花園さんが聞いてこなければ恋太郎の運命の人との仲を引き裂くことになっていたかもしれない。危ないところだった。
にしても、彼女は健気な女性だ。好きな人に彼女らしき人がいるのを見て諦めるどころか直接聞いて来るとは。よほど恋太郎のことが好きで諦められない、ということなのだろう。
こんな子を運命の人にできた恋太郎は幸せな男だ。羨ましい限りである。
とりあえず、緊張しながら待っている彼女に返答をしなくては。
「えっと」
花園さんはびくっと震え、キュッとハンカチを握る力を強めた。
「まず、安心して。私は恋太郎の彼女じゃないよ」
「そ、そうなんですね...!」
そう言うと、安心したように体の力を抜き、ホッと一息吐いた。
「なら、幼馴さんは愛城君とはどういう関係なんですか?」
「私と恋太郎は幼馴染なんだ。赤子の頃から一緒に育ってきた仲だから、距離が近く感じたのはそのせいじゃないかな」
「そうだったんですね...。申し訳ありません、変な質問をしてしまって」
そう言うと、花園さんは申し訳なさそうにした。
この容姿を持ちながら性格まで良いとは...素晴らしい女性だ。
俺はそんな彼女のことを後押ししてあげたくなった。
「花園さんは恋太郎のことが好き、ってことでいいんだよね?」
「え、...は、はい。そうです」
「ふむ」
この子の後押しをすることが恋太郎の助けになるだろう。彼女の告白なら恋太郎も告白を断ることはまずないだろうし。
この子と恋太郎の恋の駆け引き的なものを見たい気持ちがないかと言われれば嘘になるが、さっさと告白してもらうことにしよう。
「そんな花園さんに、恋太郎の幼馴染である私からアドバイスをしてあげよう」
「拝聴いたします」
花園さんはそう言って畏まり、姿勢を正し、こちらの言葉を一言一句聞き逃さまいと耳を傾けた。
「う、うん。そんなに畏まらなくても...。まあいいや。アドバイスなんだけど、1つだけ、告白は早めにしたほうが良い」
「それは何故でしょうか?」
「なぜなら、恋太郎は...モテるからだ」
大嘘である。恋太郎は彼女など一人もできたことはないし、フラれまくっている。
しかし、今日が恋太郎との初対面であった花園さんは信じるしかない。
「ッ...やっぱり、そうですよね。あんな優しくてカッコいい恋太郎君がモテないはずないですもんね」
恋太郎は出会って数時間で随分と彼女の好感度を稼いだようだ。
「そう、恋太郎は優しくて、明るくて、面白くて、困った人を見かけたらつい助けてあげたくなってしまう芯までカッコいい人なんだ」
これは本当だ。恋太郎に今まで彼女がいなかった事がおかしいぐらい、元男の俺が見ても恋太郎は最高の男だ。
「恋太郎君とは付き合ってないんですよね?」
「?そう言ったじゃん」
「で、ですよね。すいません話を遮ってしまって」
花園さんが変な質問をしてきたのを流して後押しを続ける。
「だからこそ、恋太郎を狙ってる子は他にもいる。うかうかしてたらほかの子に恋太郎を取られちゃうよ」
これは嘘。恋太郎を彼氏にしたいと思っている女性を見るのは彼女が初めてである。
「それは、はい、知ってます」
「え?」
「知ってます」?彼女は自分以外に恋太郎のことを異性として好きな女性を知っているというのか。
これは幼馴染として聞き出さなければなるまい。
「えっと、花園さんも恋太郎のことを好きな人を知ってるの?」
「はい。
「あ、ああ、あの子ね!うんうん、あの子は強力なライバルだね」
あの金髪の子、院田唐音っていうのか。というか、あの子も恋太郎のこと好きなんだな。
院田さんにアドバイスせず、花園さんにだけアドバイスしたのは少し申し訳なく感じる。
院田さんとも後で話してみようか。
「そういう訳で、恋太郎への告白は早めにね。今すぐとは言わないからさ」
「アドバイスありがとうございました。そうしてみますね」
アドバイスが終わると彼女は嬉しそうに感謝を述べた。
「喜んでくれたなら良かった。そろそろ裏庭いこっか。恋太郎も多分待ってるよ」
「あ、はい、そうですね。行きましょう」
そう言って、俺と花園さんは裏庭に向けて歩き出した。