かめはめ波をブチかませ!   作:mukugawa

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アビドス高等学校1年生、鳩川アキラ

 

 入学式とは、もっと華々しいものだと思っていた。

 用意された席は二つしかなく、迎える先輩は一人だけ。広い体育館に3人だけの、閑散とした入学式だった。

 アビドス高等学校とは、そういう学校だった。

 頻発する砂嵐対策のせいで学校は多額の負債を抱えている。まともな判断を下せる生徒は、とうにこの学校を去っていた。

 じゃあ、残っている先輩は気が狂っているのかと言われれば……

 

「二人ともアビドスに来てくれてありがとう! これからは先輩としてどんどん頼ってね! 不安なことがあったら気軽に相談も受け付けます! 私、生徒会長ですからー!」

 

 ……ただの明るいバカか。

 腰まで伸びた緑色の長髪の先輩は、乾いた二人分の拍手に涙ぐみながら自分の席へと戻る。

 さて、どうしてこの学校に入学したのかと聞かれれば、俺はこう答えるだろう。

 

「家が近かったから」

 

 それだけの理由である。

 新高校生としては不純極まるかもしれないが、大手の学校をわざわざ選ぶ理由もなかった。

 ただ入学できて、卒業ができるならなんでもよかったのである。

 

「二人とも、ちょっと待って~!」

 

 入学式のプログラムが終わり、教室へと戻ろうしたところを引き留められた。

 先ほどの明るいバ……先輩か。何の用があるのだろう。

 

「単刀直入に言うよ! ジョインザ、セイトカイ?」

 

「「……」」

 

 何を言わんとしているかはわかるが、とりあえず生徒会は英語でSeitokaiとは言わない。

 発音も内容もダメダメな英語を生徒会長の口から聞くことになるとは思わなかった。本当にただのバカなのか……?

 

「それを言うなら、Do you want to join the student council?……では?」

 

 ピンク色の短髪にオッドアイの同級生が俺の言いたいことを言ってくれる。

 

「ドゥ、ドゥユー?」

 

「……もういいです。オリエンテーションがあるので、後にしてください」

 

 そう吐き捨てた同級生はスタスタと立ち去って行った。先輩に話す暇を与えない見事な去り際であった。

 

「ひ、ひぃん……」

 

 そんな捨てられた子犬みたいな目でこっちを見られても困るんですけど。

 

「放課後、バイトがあるんで遠慮します」

 

「この流れでスルー!?」

 

 意外と元気だなこの先輩。ちょっとおもしろい。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 気づいたら同級生、「小鳥遊ホシノ」が生徒会に入っていた件について。

 それを知ったのは「梔子ユメ」先輩がいつも以上に鬱陶しい……もとい、ポジティブパワー全開で話しかけてきたタイミングだった。

 

「ホシノちゃんは副会長だよ! どう? どう? アキラくんも入ってみたいんじゃ───」

 

「気が向いたら」

 

「ひぃん……」

 

 にべもなく断った。先輩の態度がうざかったのもあるが、入る理由がない。

 小鳥遊とは挨拶をするだけの関係で、別に仲がいいわけではない。生徒会に入ったといわれても、「ああ、そうですか」としか返す言葉などないのだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「くぉらァァーー!! 出てこいやこの野郎ォォーー!!」

 

 ……朝っぱらからなんの騒ぎだ。

 登校したら見知らぬ連中が学校の周りを包囲している。ていうか、いつまでもメガホンで騒ぐんじゃねえよクソ、頭に響く……朝は貧血気味なんだから勘弁してほしい。

 連中の格好はいかにも不良ですって感じの服装だ。スケバンと言っただろうか、あの格好。長いスカートにセーラー服、おまけにバツ印がついたマスクとは。 

 今時、こんなクラシックなスタイルの不良もいたもんだと驚くが、今はどうでもいいことだ。問題は、こいつらが誰を呼び出そうとしているかということだが……

 

「小鳥遊ホシノォ!!」

 

「いやお前かよ!!」

 

 思わず声が出てしまった。まずい。

 

「ああ……なんだお前? なに見てんだよ!」

 

「見てねえよ。自意識過剰かてめえはよ」

 

 つーかメガホンでいちいち喋るんじゃねえ。

 その喉をサボらずに酷使しろ。そして潰してしまえ。

 

「……お前、この学校の生徒か?」

 

「だったらなんだってんだ」

 

「おもしれえ、聞こえるか小鳥遊ホシノ! てめえが邪魔してくれた分は大事なお仲間から徴収してやんぜ!」

 

 リーダー格と思われるスケバンがそういったかと思えば、スケバン共が俺を取り囲んだ。

 嫌な予感しかしないが、一応確認してみようか。

 

「何をする気か聞いてもいいか?」

 

「ああん!! あたしたちの用事と言えば決まってんだろ」

 

 指で金のマークを作りながら、下品な笑い声を上げるスケバン共。

 なるほど、これがカツアゲってやつか。漫画の中でしか見たことがない貴重な体験ってやつだが、嬉しくもなんともない。

 

「おい、スケバンその1」

 

「……誰のことだ?」

 

「今、指で金のマークをしたそこのお前」

 

「あたしか?」

 

「俺は男だがフェミニストじゃない。あとで卑怯とかぬかすなよ」

 

 最初に言っておかないとわからんバカは多い。

 やれ男性らしくないだの、女性を殴るななどと嘯く馬鹿どもは嫌いだ。

 

「おもしれえ! やってみろよ!」

 

 スケバンは合計5人。武器はアサルトライフル。

 

「では、遠慮なく」

 

 俺はその1の懐に飛び込み、右の拳で顎をかち上げた。

 

「ぐぇ!?」

 

「て、てめぇ! 本気で殴るなんて……」

 

「だから最初に言っただろうが」

 

 無防備な俺を真っ先に撃とうとしているスケバンその2の射線を気を失ったその1の体を盾にして塞ぐ。

 

「お前! そいつはもう戦えないんだぞ!」

 

「お前らがカツアゲ目的じゃなかったらもう少し手段を選んでやったよ」

 

 喚くその2の頭を拳銃で撃ち抜く。

 

「あがぁ!?」

 

「ひ、怯むな! 相手は一人だぞ!」

 

 その3の号令で落ち着きを取り戻すスケバン共。

 手榴弾を取り出したその3に駆け寄り、手榴弾を握る左手を蹴り飛ばす。ピンの抜かれる前の手榴弾は地面を転がった。

 

「な!?」

 

「学校の周りでそんなものを使うんじゃない」

 

 呆気に取られるその3のアサルトライフルを奪い取り、その銃身を鳩尾に突き立てる。

 

「がはぁ!?」

 

「こ、この野郎───」

 

「近い」

 

 アサルトライフルなどの長物は近接戦闘には不向きだ……まあ、キヴォトスで近接戦闘をする人間は珍しいのだが。

 発砲しようとするその4の手を狙って一発。銃をとり落とした瞬間を見計らって肉薄し、その体を一本背負いで地面に叩きつける。

 

「だはぁ!?」

 

「あ、あ……うわああああ!?」

 

 その5は銃を乱射しながら突っ込んできた。

 すぐさまその4の体を投げつける。地面に転がったその頭に拳銃を突きつけた。

 

「帰んな」

 

「わ、わかりました……」

 

 動かなくなった4人を車に乗せると、その5はその場を走り去っていった。

 

「……片付けでもするか」

 

 なるべく射線が校舎に向かないように戦いはした。校舎に穴が開いている心配はない。

 あとは連中の残していった薬莢を拾って片付けるだけでいいだろう。

 背負っていたリュックからプラスチックの袋を取り出し、その中に拾った薬莢を放り込んでいく。

 

「手伝います」

 

「ん?」

 

 気づけば小鳥遊が校門の前まで来ていた。

 

「あいつらは私の不始末でした……ありがとうございます」

 

「気にするな」

 

 視線を向けることなく答える。

 

「連中のことだ。どうぜなにか悪さでもして、生徒会の小鳥遊にやられたんだろ」

 

「……その通りです」

 

「だったら、なおさら気にする必要はない。アイツらが悪者で、こっちが正義だ」

 

 治安維持を担う生徒会に参加していない俺が言うことではないが。

 

「鳩川くん、そこにも落ちています」

 

「ああ」

 

 指差された場所は既にチェック済みの場所だった。見落としがあったようだ。

 

「あの、鳩川くん……」

 

「なんだ?」

 

 薬莢を拾い上げていると小鳥遊が急に話しかけてきた。

 

「明日、生徒会の定例会議があるので」

 

「……はあ、それが?」

 

「……出てくださいと言っているんです」

 

「なんで?」

 

 生徒会役員ではない俺に参加する理由はないはずだが。

 

「あなたが生徒会役員だからです」

 

「……はい?」

 

「まさか知らないんですか? あなたは書記として、既に生徒会に登録されていますよ?」

 

「はあ!? 知らないぞ俺は!」

 

 寝耳に水どころか熱湯を流し込まれた気分だ。

 いったいどこのどいつが───いや、小鳥遊がそうでないなら答えは一つか。

 

「あのポンコツぽやぽや先輩の仕業か……!」

 

「ぽやぽや……ユメ先輩を表す擬音としては最適ですね」

 

「そんなことはどうでもいいんだ、小鳥遊。俺は今すぐあの先輩をしばきまわさないといけない」

 

「とりあえず、明日の定例会議には出てください」

 

「断る。バイトが───」

 

「入っていませんよね」

 

 食い気味に発言を遮られた。

 

「……え?」

 

「紫関ラーメンであなたがシフトに入る日は月、火、木、金です。明日は水曜日ですよ」

 

 思わず後退る。なんで俺のバイトの予定を把握してるんだこの同級生。

 

「な、なんで知ってるんだよ……」

 

「一週間通いつめれば気づきますよ。私が来店していたことに気づきませんでしたか?」

 

 いた。そういえば思い返してみると俺のシフト中にいたわコイツ……

 

「では、決まりですね」

 

「……俺が出たところで───」

 

「先ほどの戦闘は見させてもらいました」

 

 薬莢を拾う手が止まる。

 

「校舎に被害が及ばないように戦ってくれましたよね」

 

「当たり前だろ……生徒なんだ。通う学校に傷をつけたいわけない」

 

「理由はなんでもいいんです……アビドスを。この学校のことを大切にしてくれる人を私たちは仲間に引き入れたいんです。アビドスは人手不足ですから」

 

 そう話す小鳥遊の目には熱があった。この学校を、アビドスを心の底から想う熱いまなざし……

 

「……時間は、いつだ?」

 

 俺はそれに負けた。勝手にこの学校を諦めていた自分が恥ずかしくなったから。

 ここで目を逸らすような真似はできなかった。

 

「放課後、生徒会室で待っています」

 

「わかった」

 

 こうして俺は、初の定例会議の参加を決意することになった

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「いたたたた!? 出会い頭にアイアンクローは止めてーー!!」

 

「やかましいわ」

 

 それはそれとして、梔子先輩はしめた。

 

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