今回の話は原作にはない話です
暗闇で一人、黒いコートを羽織った人物が映像を見ていた。
それは先日のアレクシア王女誘拐事件のさなかに記録された映像、その中で仮面の戦士がバイクを駆る姿が写っていた。
「フフッ」
その人物は笑みをこぼす。
「やっと見つけたよ〜。⋯バ〜ク♡」
そう言って映像を愛しげに見つめる人物の指には、銀色の指輪が光っていた。
◇◇◇
「ハックショッン!」
バクはゼッツルームで豪快にくしゃみをする。
「ちょっと風邪?うつさないでよ」
そう言って小説を読むシドがこちらを見ることもせず言う。
「はいはい、分かってますよ」
バクはゼッツルームにあったパソコンを操作する。
「それで?あれ、どうだった?」
シドがそう話しかけると、バクはパソコンの上から顔を出し、機械に繋がれていたシャドウカプセムを取る。
「調べてみたところ、こいつにはシャドウナイトメアが閉じ込められているみたいだな。まぁそこまでは想定内だったが⋯問題は」
バクは回収していたガントレットの破片を見る。
「お前がぶっ壊したせいでこっちの詳細が分からないことだけどな」
「ごめんて」
「そういや、クレアはなんて?会ったんだろ、あの後」
「まぁいつも通りかな」
クレアはバクが騎士団に逮捕されたとき、アイリス王女の元へ殴り込まんとばかりに怒り狂っていたらしく、しょうがないからシドがなだめに行ったのだった。
「バクのことも心配なんだろうね。義理とはいえ、もう何年も一緒に暮らしてきたんだから、姉さんにとってはバクも立派な弟なんだよ」
「⋯あぁ、分かってる」
バクは微笑をこぼす。
「お前も、あんまりクレアを心配させんなよ?」
「ま〜大丈夫でしょ、姉さんだって子供じゃないんだから、そろそろ弟離れするさ」
してない結果が今である。
「⋯兄妹、か」
噛みしめるように呟くバクに、シドは小説を置いて体を向ける。
「⋯どうしたの?」
「いや、俺にもいたな。って思い出して⋯随分前に、父親ともども死んじまったけど」
「⋯ミナミ・コードリー、だったよね」
「ああ。生きてりゃ13歳⋯のはずなんだけどな」
バクは紅茶を手にとって口に流し込む。
「⋯一体、俺はどうすりゃ良かったんだろうな」
◆◆◆
あの日
「あぁ⋯!あぁ⋯!」
家が炎に飲まれ、目の前には倒れているミナミがいた。
「ミナミ!起きろ!」
幼いバクは、妹の体を揺らすも、妹は既に瀕死だった。
「お兄ちゃん⋯逃げて⋯」
「何言ってるんだ!早く行くz⋯っ!」
次の瞬間、焼けた棚がバクめがけて倒れてくる。判断する隙も与えず、それは無慈悲にバクを炎に飲み込もうと迫ってくる。
だが
「お兄ちゃん!」
「っ!ミナミっ!」
ミナミがバクの体を押して、奥へと突き飛ばす。
「ミナミ!ミナミ!」
ミナミの姿は炎の中に消え、もう何も聞こえなくなる。
「っ〜!クソっ⋯!クソぉっ!」
バクは走り出し、書斎にいるはずのゼロを探す。
「父さん!父さん!」
書斎も既に火の手が回っており、煙を吸わないように口をふさぎながらバクは父の姿を探す。
だが
「っ!」
焼け焦げている死体を見つけ、バクは膝をつく。
「そんな⋯!」
バクはゼロが言っていたことを思い返す。
『⋯バク、お前には辛い道を歩かせることになってしまう。だが⋯頼む。世界を救ってくれ。直に私は奴らに消されるだろう』
「一体⋯何が起こって⋯!」
そのとき
「!」
コードゼロイダーが炎の中から現れ、ライトを点灯させる。
「⋯っ!」
バクはコードゼロイダーにまたがり、エンジンを吹かせる。
なんとか燃える屋敷から抜け出し、バクは荒い息づかいを繰り返す。
「俺は⋯何もできなかった⋯!」
バクはコードゼロイダーから降りて、地面にうずくまる。
「なんのために⋯なんのために俺は⋯!無敵のエージェントに⋯!」
『私、お姫様の召使いになる!』
そう笑顔で夢を話した妹の顔を思い出す。
バクは涙で顔を濡らしながら、顔を上げる。
「⋯忘れない、俺は絶対に⋯!俺は⋯もっと強くなる⋯!強くなきゃ⋯誰の夢も守れない⋯!」
すると
「っ!」
バクを黒ずくめの男たちが取り囲んでいた。
「ほう⋯生き残りがいたか⋯。想定外のことも多かったが、手土産にはちょうどいい。やれ」
そう言ってリーダー格の男が指示を出すと、黒ずくめの男たちがバクに襲いかかる。
だが
「⋯消えろ」
バクがそう言うと、彼の前に黒いオーラを纏った赤い目の謎の怪物が現れ、その存在が手から衝撃波を放つと、周りの男達は体が崩壊し、死に絶える。
「な、なんだ⋯!?何が起こった⋯!」
リーダー格の男が目を見開く。
刹那、
「はい、お疲れ」
そう言って怪物が男の肩に手を置くと、男の体は砂のように崩れ落ちる。
「ハッハッハ!こいつはとんだ悪夢だなぁ!」
怪物は愉快そうに笑いながら、バクの元に歩いてくる。
「眠っていた俺様を叩き起こすほどの憎悪と魔力、そして俺が顕現しても変化が現れない肉体⋯どいつを取っても一級品だ!」
怪物はうずくまるバクの顔を覗き込む。
「お前気に入ったよ。〝あいつ〟ぶりの俺の夢主が、まさかこんな規格外だとはなぁ。なぁ、俺と契約しようぜ?」
怪物はそう言うが、バクは無視して立ち上がる。
「おい、どこへ行く」
怪物がバクを引き止めるが、バクは止まらず歩く。
「強く⋯なる、俺は⋯強くなる、お前なんて必要ない⋯」
虚ろな目でそう言うバクに、怪物は笑い出す。
「フッ⋯ハハハハハハ!面白い!俺の力にお前が耐えきれるようになるまで、お前の中で眠っておくとしよう。お前の悪夢⋯楽しませてもらうぜ?」
そう言い残し、怪物はバクの中へ消える。
数日後、修業にふけっていたバクをオトン・カゲノーが発見し、保護した。
◆
「⋯あいつ、一体何だったんだ」
記憶が曖昧で怪物の姿はよく覚えていないが、暗闇で光る吊り上がった赤い目だけは鮮明に記憶に残っている。
「⋯まぁいいか」
バクはドライバーの開発に戻る。
◇
「ねぇ、これ。ナイトメアってやつが閉じ込められてるんだよね。モン◯ターボールみたいに」
「言うな、それは言っちゃダメなやつだ。で?それがどうした」
シドは立ち上がってカプセムを取る。
「シャドウの名を持つ者は二人もいらない⋯そうは思わない?」
「⋯何する気だ?」
シドはシャドウカプセムを開き、魔力を送り込む。
するとシャドウナイトメアが顕現し、その場に姿を表す。
「⋯マジか」
ガントレットなしでナイトメア召喚とは⋯
「何故⋯俺はここに⋯!」
シャドウナイトメアは自分の手を見て戸惑う。
「やぁ」
シドが言うと、シャドウナイトメアはビクッと反応し、咄嗟に飛び退く。
「貴様⋯!なんのつもりだ⋯!」
「君さ、僕と一緒に来ない?」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「「は?」」
バクとシャドウナイトメアが同時に言う。
「陰の名を冠する君を、僕は気に入ったのさ。まぁ強さは⋯そんなにだけど、僕の中にいれば、それなりに強くなれると思うんだけど」
「お前何いってんだ」
バクは困惑してそうもらす。
「同じ陰の名を持つ者同士、せめて少しくらい強くあってほしいからね。あぁ大丈夫、君の力を利用しようなんて思わないし、使うこともしないよ。僕のポリシーに反するからね」
「貴様⋯俺をバカにしているのかぁ!」
シャドウナイトメアは激昂し、シドに襲いかかる。
「あちゃー、やっぱダメか」
シドは攻撃をかわしながら言う。
「じゃあ、こうするしかないか」
シドはシャドウナイトメアの影の攻撃をかわし、背後に回り込むと、シャドウナイトメアにかぶりつく。
「なっ⋯!」
「ぐっ⋯ぎやぁぁぁ!」
シャドウナイトメアは悲鳴を上げ、やがてシドに喰らわれる。
「⋯ぷっ。あんま食えたもんじゃないね、これ」
つばを吐きながら言い、シドは口周りをふく。
「おい⋯お前大丈夫なのか?」
バクが恐る恐るたずねると、シドはケロッとした様子で答える。
「ん?何が?」
ジークがパニッシュゴアナイトメアと融合していた事例があるのは知っていたが、ナイトメアを喰らうなど前代未聞だ。場合によっては悪夢の力に耐えられず、死に至ってもおかしくはない。
「お前⋯体に変化はないのか?」
「ん?特にないね、ちょっと毛が伸びたかなって感じ?」
そういえば昔、ゼロの書斎の本を読んだときに書いてあったような気がする。
ナイトメアを喰らった場合、そいつは力に耐えきれず死に至る。だが、肉体を極限まで鍛え抜いたものなら、人間のまま、体にナイトメアの力を宿す可能性があると⋯だがそれは今まで確認されていないため、その確率さえ定かではない。
「⋯まさか、ナイトメアを喰らって、自分の中に宿したのか?」
「え?なにそれ」
「でもだとしたら、そいつはもはやただのナイトメアじゃない。⋯宿主の体内で宿主から力を譲り受けた全く別の存在に変わり、その力はすべて宿主のものと全く同じになる」
(つまりこいつは⋯今まで鍛えてきた力のおかげで、人類を超えた存在になった⋯ってことなのか?)
「⋯いや、もうとっくに人類を超えてたな」
そう思い返し、シドの元へ歩く。
「なんだかよくわかんないけど、これは僕の力って認識でいいの?」
「ああ、お前の努力と鍛錬の賜物だ。誇っていい。これは心身と技を鍛え抜いた、世界でお前にしか使えない、お前だけの力だ」
「⋯ならいいけど」
そう言ってシドは頭の後ろをかく。
「全く、お前はいつも俺の予想を超えてくよ」
「お褒めに預かり光栄⋯かな?」
シドの規格外を、改めて実感した一日だった。
ゼッツ好きの皆さんなら、バクが見た怪物の正体、今回のタイトルも含めて分かりますよね?
私事ですが、ギルスと木野さんが大好きなので未だに超能力戦争の衝撃と悲しみが消えてません。
映画見た時はアギト見てる途中だったのでダメージ少なかったけど後からジワジワ効いてきて今死んでます。
感想や評価、お待ちしてます。
ヒロインは誰がいい?(上位三人をヒロイン入り)
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アルファ
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ベータ
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ガンマ
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デルタ
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イプシロン
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ゼータ
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イータ
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シェリー
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ローズ
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上記以外のヒロイン