授業終了を告げる鐘がなる。
今日はいつもより早めに終わっている。生徒会選挙の演説があるからだ。
「どうせ偉い家のやつが選ばれんだから選挙なんてしなくていいだろ、さっさと帰らせてくれよ」
ヒョロが隣でそう愚痴る。
「たしか3年の先輩方は課外授業ですよね」
「いいよなぁ、外なら色々できるっていうのに。出会いもあるかもなぁ」
すると
ドアが開き、金髪の美しい女子が入ってくる。
「あれがローズ・オリアナか⋯」
バクは小声でつぶやく。
ローズ・オリアナ
芸術の国オリアナからの留学生の王女様だ。この学園の生徒会長であり、先の剣術大会でも絶対的な王者として君臨しており、その実力は申し分ない。
(にしても、この学園にはネームドキャラが多いなぁ)
「お時間をいただきありがとうございます。生徒会の補欠選挙について説明に参りました」
「では選挙概要です先日の⋯」
説明が始まるが、バクは聞き流す。
◇
『ワーニングワーニング!ワーニングワーニング!』
校舎に設置してあるゼッツセンサーが震える。
しかし
「にゃ!」
何者かがそれを叩き割った。
「ごめんねぇ⋯でもこれ、必要なことだから」
黒いコートを着て、フードで顔を覆っている人物は言う。その声は、まだあどけなさが残る少女のものだった。
「後は⋯フフッ!楽しみだにゃぁ、バクの活躍が見れるの!」
そう言って嬉しそうに笑う彼女の指には、銀色の指輪があった。
◇
「⋯ん?」
俺は異変に気づき、魔力を体に走らせようとする。
が
「⋯どうなってんだ?」
魔力はすぐに消え、俺は隠れてゼッツフォンを操作する。
数分ほど前に、ゼッツセンサーから通信が届いている。
「⋯侵入者だと?」
「どうしたの?」
シドがゼッツフォンを覗き込んだそのとき
「「!」」
俺たちは近づいてくる集団の気配に気づく。
((来る!))
その瞬間、ドアが蹴破られ、そこから黒ずくめの男たちが入ってくる。
「全員動くな、我々はシャドウガーデン。この学園を占拠する!」
そう言いながら全員の剣を破壊し、出口をふさぐ。
皆、突然のことに動けないようだ。だが、そんなことはどうでもいい。魔力が阻害され、他のクラスでも同じ事が起きていると把握した俺には、奴らがマジモンのテロリストだと理解できる。
まぁシャドウガーデンを騙るのは許せんが。
やりやがった。こいつらすべての男子が必ず一度は妄想する、学校がテロリストに占拠されるあのシチュエーションをやりやがったぁ!
俺だって何パターンこの妄想をしたのか数え切れない。
「そのまま席を立つな。全員手を上げろ」
ディアボロス教団め⋯なんてベタなんだ。
正直興奮収まらんぞこれは。
すると
「ここがどういう場所か理解できていないようですね」
と、ローズ会長が剣を抜く。
「魔剣士学園を占拠するなど⋯正気とは思えません」
「⋯武器を捨てろ」
黒ずくめの男がローズ会長に言う。
「お断りします」
「フン⋯見せしめにはちょうどいい!」
黒ずくめの男は構え、魔力を放つ。
対するローズ会長も剣を構え、魔力を出そうとする。
しかし
「会長!?」
「そんな⋯魔力が⋯!」
「今更気付いたか!」
おっと、こいつはヤバいのでは?
しょうがないから何かあったときに動けるよう構えておく。
「死ねぇ!」
ローズ会長は剣を砕かれ、唇を噛む。
「まずい⋯」
とシドが言う。
「あぁ、あのお嬢さんだけで敵う相手じゃないな」
「そうじゃない?」
「は?」
俺が聞き返すと同時にシドが走り出す。
「魔力がなければ魔剣士だろうと赤子と変わらない。せいぜい噛み締めて死ね」
黒ずくめの男がローズ会長に斬りかかる。
が
「やめろぉぉぉ!」
シドがローズ会長を押し出し、代わりに斬られる。
斜め一文字に斬られ、どさりと倒れ込む。
「⋯はぁ」
俺はため息をつき、カプセムを取り出す。
⋯って、うん?
「バカ!どうして庇ったりしたの⋯!」
「ガ⋯クッ」
すっげぇ雑な遺言だな。
ってかちょっと待て。なんで抱きしめられてんのあいつ。泣いてる⋯のはしょうがないとして、色んな意味で可哀想だな。
「大講堂に移動する。そいつのようになりたくなかったら、大人しく着いてこい」
その後、クラスにいた全員が連れて行かれた。
◇
「ふぃ〜、やっぱプロジェクションって便利だな」
バクは机の上で坐禅を組んで言う。
シドがやられた瞬間、バクはプロジェクションカプセムを回して自身の分身を投影したのだ。
途中で分身は消えるが、最後尾につかせているので、一人ぐらいいなくてもバレんやろの精神だ。
「おい、いつまで寝てんだ。さっさと起きろ」
バクはペシペシとシドの頬を叩く。
すると
「ん?」
シドが右腕を掲げ、自身の胸を叩き出した。
やがて
「うぅぅあぁぁぁ!ゲホッゲホッ!」
「やーっと起きたか、このねぼすけ。夢の中にいるのは俺の特権だぞ」
「ふぅ⋯ふぅ⋯成功したぞ、モブ式奥義・十分間の
ヒロインを庇って死んだと思っていたのに、実は生きていた奴ってのはモブではないと思うぞ?というツッコミを噛み殺し、ゼッツフォンを操作する。
(⋯妙だな。侵入者検知のためにゼッツセンサーを配置しているんだが⋯いくつかの反応が侵入者を検知した数分後に途切れてる。普通のやつならそもそも見つけられないように隠してるし、見つけたところで壊す必要性もないと判断される可能性が高い⋯)
バクは顎に手を当てて考え込む。
「魔力は細く加工すれば問題なく使えるね。せっかくの仕掛けだから、完全に無視するのはやめとこうか」
と言ってシドは胸の傷を塞ぐ。
「せっかくのシチュエーション、バクが動かないでくれて良かったよ」
「当たり前だ。こんな1000年に一回の奇跡を無下にするわけないだろ。⋯まぁ、正直少し正体見せたくなったが」
シドは苦笑する。
「これからどうする?」
「⋯少し別行動させてくれ。調べたいことがある」
「じゃ、僕は見つからない程度で適当に徘徊しとくよ」
バクたちは外へと歩き出す。
◇
廊下を黒ずくめの男たちが歩いている。
その後ろで、何者かの手が机に置かれていたナイフを手に取り、手で回す。
「?」
一人が立ち止まって振り向く。
だが後ろには誰もいなかった。
「早くしろ」
「あ、あぁ」
他の仲間に急かされ、その男が歩こうとする。
次の瞬間
「ぇ―――」
その男の姿が消えるが、他の黒ずくめは気づかない。
「ぅ――」
「ぁ――」
一人、また一人と減っていき、ついに三人となったが、まだ気づかない。
そのとき
「⋯誰だ」
彼らの眼前に、一人の生徒が立っていた。
「やぁ、偽物諸君」
「学生はすべて大講堂に集めたと聞いていたが⋯まぁいい。魔力もなしにこの人数相手に勝てるとでも――」
刹那、
両隣にいた二人の首が飛ぶ。
ゴト、という音を立てて頭が落ち、遅れて体が倒れる。
思考が停止している黒ずくめに、少年はさらに畳みかける。
「あぁそうそう、お仲間はもう皆あの世だよ」
と言って、手に持っていた黒ずくめの衣を投げる。
そこには血がべっとりとついていた。
黒ずくめの男は腰を抜かし、後ずさる。
「ヒ⋯!なんだ⋯!なんなんだおm――」
次の瞬間、その男の頭が会った場所から血がしぶき、胴が力なく横たわる。
少年は血に濡れたナイフを捨てて、死体を適当な教室に押し込んで目の前を見据える。
「⋯ミッションスタート」
バクはその場にあったものを即興で活用する実力者のエージェントムーブを楽しみ、適当に歩いていると、何やら争う音が聞こえてきた。
「⋯2対1かな。でも片方は騎士団か?」
音で推測しながら、扉の前にたどり着く。
どうやら魔力が使えず劣勢のようだ。
「⋯まぁ、助けられるやつは助けてもいいよね」
獅子髭のグレン、そしてマルコは、赤いバンダナを巻いた男と対峙していた。
「くっ、貴様⋯なかなかやるようだな⋯!」
自身も傷だらけの身体で、疲弊しきった若いマルコを庇いながらグレンは言う。
「おっさんも、魔力も使えないくせに粘ったほうじゃねぇか。この叛逆遊戯のレックス様を相手にしてなぁ」
そう言って自身の得物を舐め、レックスは息をつく。
「⋯死ね」
「っ!」
一瞬で間合いを詰められ、咄嗟に防御の体制を取ったそのとき
「「「!?」」」
レックスの攻撃を、緑の壁が阻む。
「⋯ネームドチルドレン、まさかこんなところに出張ってきてたなんてな」
そう言いながら、グレンの背後から赤い大きな目の化け物のような人物が歩いてくる。
「テメェはぁ⋯!」
「貴様⋯まさかアレクシア様が言っていた⋯!」
「⋯後は任せろ。傷を癒しておけ」
そう言ってマルコ共々、首に強烈な手刀を打ち込まれ、二人は気を失う。
レックスは得物を構える。
「⋯テメェ、たしかゼッツとか言いやがったかぁ?ハッ、見掛け倒しで勝てると思うなよ⋯!俺はディアボロス教団のネームドチルドレン!叛逆遊戯のレックス様だぁ!」
レックスが斬り掛かった瞬間、ゼッツは正拳突きでレックスの肋骨を砕く。
「カハッ⋯!」
レックスは後退し、胸を抑える。
「てめぇ⋯!?話が違う⋯!魔力は使えねぇはずだろうが⋯!」
「何を勘違いしてるんだ」
「はぁ⋯?」
次の瞬間、レックスは首根っこを掴まれ、廊下へと引きずり出される。
「くっ⋯!」
後ろからゼッツが歩いてくる。
「これは魔力じゃない。血反吐を吐いて手に入れた俺の力だ」
そう言ってゼッツは胸のカプセムを外す。
変身が解かれ、現れたのは
「学生だと⋯!?」
「安心しろ、お前もすぐ逝ける」
「っ!調子に乗るなぁ!」
レックスは短剣の柄同士をぶつける。
「アミダぁ!」
レックスの周りに魔力の網が張り巡らされる。
「騙されねぇぞ!どれだけ性能の良いアーティファクトを使っていようが、このアミダが近づいたお前を捉える!それほどの性能、もう長くは保たねぇだろ!血の匂いがこびりついてやがるz――」
次の瞬間、レックスは蹴り飛ばされ、近くの教室の中へと吹き飛ぶ。
「何を――ッ!?」
辺りには、頭部がない黒ずくめの死体が山のように積み重なっていた。いずれも頭部以外に外傷はなく、一撃で仕留められたことを物語っている。
「何が⋯!何が起きてんだ⋯!」
少年が教室へと入り、こちらに歩いてくる。
「てめぇ⋯テメェは一体なんなんだぁ⋯!」
恐怖で振るえる声で、レックスは問う。
「⋯君、最高のやられ役だね」
それが、レックスが今際の際に聞いた言葉だった。
◆
シドは屋上から学園を見下ろす。
「人質は大講堂、騎士団が来てはいるが、魔力が使えない以上、強行突破もできない。さらに、隠れている生徒がいないか探し回るテロリストたち⋯定石、テンプレ、すべてを詰め込んだ欲張りセット⋯実に感動的な光景じゃないか⋯!」
そう言って感慨深そうに目を細める。
「そして極めつけは僕、屋上から意味深に学園を見下ろす陰の実力者⋯素晴らしい⋯なんて素晴らしいんだ⋯!やりたいことリストがまた一つ埋まったぞ」
笑みをこらえきれずに天を仰ぐ。
「しかし⋯あいつらテンプレを守るだけじゃなく、それなりにオリジナリティが際立つ創意工夫もしているのに⋯美的センスに欠ける!」
渾身の大声から、二の句を続ける。
「TPOを無視して真っ昼間からあんな黒ずくめとか目立ってしょうがないじゃないか!あれじゃ勘違いのクソダサファッションだ!黒いロングコートを着るなら断然夜だ!少し考えたら分かるだろう!?」
シドはハァァ⋯と深く息を吐き、心を落ち着かせる。
「しょうがない、夜まで時間を潰すとしよう」
そう言ってシドはシャドウインヴォーカーを取り出し、胸に巻く。
「やっぱTPOって大事だよねぇ」
そう言って、通常状態に戻したイレイスカプセムをセットする。
「擬装」
シドがカプセムを回すと、その姿は消え、空間にシャドウインヴォーカーだけが浮かぶ。
やがて空間にオレンジの線が走り、銀色の体が現れる。
シドはノクスナイトへと変わり、ブレイカムバスターを取り出す。
「カモフラージュには最適かな、この姿」
そう言ってブレイカムバスターを構え、放つ。
「ギャ⋯!」
「グァ⋯!」
黒ずくめの男たちはどんどん倒れていく。
「スナイパーごっこも楽しいもんだね⋯うん?」
ノクスナイトは何かを見つけ、ブレイカムバスターを下ろす。
「隙だらけの桃色髪⋯ってあれシェリーじゃん!」
とりあえず、シェリーに気づきかけてた一人の黒ずくめを撃ち殺しておく。
(なんかほっとしてるけど、それバレてるからね?)
「ネームドキャラが拘束を免れた⋯僕の魂が告げている。これはメインシナリオの進行に不可欠な要素だ」
シドは擬装を解く。
「クライマックスが近づいたところで、さっそうと現れる陰の実力者⋯いいね、最高だ」
シドは屋上から飛び降りる。
(屋上から華麗に飛び降りる陰の実力者⋯)
「やりたいことリスト、もう一つ達成だ!」
◆
「はぁ⋯ある程度は始末したか?」
バクはちょうど校舎の影になる校庭に来ていた。
「えーっと⋯あった」
バクはあるものを見つけ、そちらに近づく。
「⋯やっぱり、完全に破壊されてる」
そこには、ゼッツセンサーの残骸があった。
「一体誰が⋯っ!」
バクはワルサーP38を取り出し、背後に向ける。
それと同時に、黒いコートを着て、フードで顔を隠している人物がバクの頭にハンドガンを突きつける。
「あちゃぁ⋯見つかっちゃった」
緊張感のない一言に、警戒を緩めそうになるが、バクは声を絞り出す。
「君は⋯誰だ?」
「アハハ、そんな警戒しないでよ〜!ちょっとからかってみたかっただ〜け」
そう言って彼女は手を上げて、戦意がないことを示す。
「それ、私がやったの。ごめんねぇ」
彼女はゼッツセンサーの残骸を指して言う。
「⋯何が目的なんだ?君は⋯ディアボロス教団なのか?」
「そういうの、後にしない?せっかく会えたんだし」
「いや、そういうのって⋯」
すると彼女は歩き出す。
「心配しなくても、いずれまた会う時が来るよ。近い内にね」
彼女はバクの隣を横切り、奥へと歩いていく。
「それってどういう⋯」
バクがたずねようとすると、いつの間にか彼女の姿は消えていた。
「バイバ〜イ、バ〜ク」
そんな声が聞こえた気がした。
「あの子⋯何か懐かしいような⋯気のせいか」
◇◇
シェリーは必死に歩く。
自身を逃がしてくれた二人の騎士のためにも、この事態の収束へと繋げるために。
「魔力が使えないってことは、きっとアレが使われているんだ⋯!だからこれを⋯!っ!」
シェリーは振り向く。しかしそこには誰もいない。道中何度か人の気配がしたが、そのたびに気の所為だった。
急いで階段を登っていたその時。
「ひゃ!?」
足を踏み外し、体が後ろへと倒れる。
「ひゃ〜!」
そのとき、シェリーの体を受け止め、持っていたアーティファクトを掴んだ手があった。
「シドくん、バクくん⋯!?」
それは最近できた友達、シド・カゲノーと、バク・コードリーだった。シェリーはふと彼の服を見る。そこには血が大量についていた。
「その怪我⋯大丈夫なの!?」
「あぁだいじょぶだいじょぶ、奇跡的に一命を取り留めただけだから」
「それ大丈夫じゃないような気が⋯」
シドはシェリーの言葉を遮る。
「それより、色々言いたいことはいっぱいある。独り言をやめましょうとか、考えながら階段を登らないようにしましょうとか⋯まずはそのペタペタうるさいスリッパを脱ごっか」
「あ⋯」
◇
シドたちは副学園長室に来ていた。
「副学園長いないみたいだね」
「はい⋯無事だと良いのですが⋯」
シドとバクはソファに腰掛けて、シェリーが物を探すのを見守る。バクが手伝わないのは、無駄に手を出して彼女の手を煩わせないようにだ。シドは⋯単純に疲れたから。
(⋯今回のメインキャラはやっぱりシェリーだよなぁ⋯。でもこの様子じゃ一人でシナリオ攻略なんて絶対に無理だ。普通は頼りになる相棒キャラとかいるもんなんだけど⋯とんだ欠陥シナリオだ)
「ありました!」
シェリーは本を広げる。
「これは⋯」
「なにこれ」
そこには丸い目玉キャンディーみたいなものが描かれていた。
「〝強欲の瞳〟というアーティファクトです。恐らく、これが魔力を阻害しているんです。強欲の瞳は、効果範囲にある魔剣士や魔力体から魔力を吸収し、一時的に溜め込むことができ、その結果、周辺で魔力の使用が困難になります」
「黒ずくめの連中は普通に魔力を使ってたよ?」
「使用者の魔力を吸収させないために、吸収させたくない魔力の波長は事前に記憶させることができるんです」
(なんたるご都合アイテム。一異世界にひとつは必要だな)
バクがそう考えていると、シェリーが続ける。
「他にも、感知しきれない微細な魔力や、許容量を超える魔力は吸収できませんが、今の人間には到底そんな魔力は扱えません。しかも⋯」
「しかも?」
「強欲の瞳は、魔力を溜め込むだけ溜め込んだ後、一気に解放してしまうみたいなんです」
「一気に⋯」
「えぇ。学園の生徒は大講堂に集められているんですよね?」
「あぁ」
「魔力吸収の効率を考えるなら、必然的に在学中の多くの魔剣士が集められている大講堂に強欲の瞳があるはずです。もしも溜め込まれた魔力が強欲の瞳の許容量を超えて、一気に解放されれば⋯」
「学園は木っ端微塵だね」
「はい⋯その危険性を考えて、お義父様は学会に公表せず、国に保管を頼んでくださったはずなのですが⋯」
「同じものがもう一つあったか、あるいは盗まれたのか⋯」
(もしくは、保管なんてハナから頼んでいなかったのか⋯)
バクは考え込む。
「それで?対処法は?」
「はい、これです」
シェリーが見せたのは、先ほどバクがキャッチしたペンダントだった。
「このアーティファクトは、強欲の瞳の制御装置なんです。解読作業をしていたのですが、ようやく分かりました。強欲の瞳はこの制御装置を使い、魔力を長期にわたって保存するためのアーティファクトだったんです」
「長期保存⋯つまり魔力の解放を止められるのか?」
「はい!すごいですよね、この仕組みを解明できれば、蒸気機関に変わる新たなブレイクスルーに⋯!」
バクがシェリーの言葉を遮る。
「それで、これからどうすればいいんだ?」
「このアーティファクトの解読がすべて終わったら、地下から大講堂に向かいます」
「地下から?」
バクが聞き返す。
「はい、学園の施設は、緊急時の脱出するための隠し通路でつながっているんです」
(隠し通路⋯いいねぇ、エージェントっぽい)
「起動したアーティファクトを強欲の瞳に近づける事ができれば、強欲の瞳の昨日は停止するはずです」
(ふむ、わりかし理にかなっている。最後が少し不安だが⋯まぁ俺達でなんとかするとしよう)
すると
「ただ⋯調整に必要な道具を研究室においてきてしまって⋯」
「なら俺が行くよ」
バクは立ち上がる。
「そんな!危険です!」
「大丈夫大丈夫。俺、生存力は高いから」
バクはシドを引き寄せる。
「何かあったらお前が守ってやれ」
「まぁメインキャラを死なせるわけにはいかないからね」
バクは扉を開ける。
「バクくん⋯気をつけてください!」
「あぁ、任せとけ」
⋯と言っても、本当に取りに行くだけである。
自分は七陰列伝は見れていないので、今後多少齟齬が出てくることがあるかもしれません。
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