夢のエージェントとなって   作:RE・RIDE

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マイス、どんどん面白くなっていきそうですね。


Case 8 果たす(fulfill)

 

「ひっ⋯!助け⋯!」

それは命乞いをする愚者を一瞬にして肉塊に変える。

 

その姿は血に濡れ、黒のアンダースーツも所々返り血で赤く染まっていた。

 

エンフォース・ロード・システム ビースト

 

「なんだ⋯なんなんだお前h⋯!」

ロードデルタは血で染まった青紫の爪で男の体を断つ。

 

そしてそのまま爪を伸ばす。比喩ではない、本当に爪が伸縮したのだ。

 

「や、やめ⋯!」

そのまま、ロードデルタによって建物は切り捨てられる。

 

 

◇◇

 

「⋯デルタ、あの子はいつもやりすぎなのよ」

軽く頭を抱えながらアルファが時計塔の上で金髪をたなびかせる。

 

「せっかくの夜だ。派手にやれせておけばいい」

と、後ろにいるシャドウも言う。

 

「私たちもそろそろ行かないとね」

 

「僕はしばらく待機していよう。ゼッツからの合図も、まだだからな」

 

「分かったわ」

アルファはそのまま姿を消す。

 

「⋯暗雲渦巻く夜の街、人知れずすべてを知る陰の実力者は王都を見下ろす⋯いいね、文脈としては最高だ」

 

シャドウは笑みをこぼす。

 

「さぁて、今日は僕も頑張らないとなぁ〜」

シャドウは伸びをする。

 

「見せてあげようじゃないか、僕の答えを。世界にね」

 

 

◇◇

 

外が騒がしい。

 

アレクシアは光が消えた目で同居人の化け物を見る。

 

「うるさくて寝てられないでしょ。でも起きてたほうがいいわ。きっと楽しいから」

 

その言葉に、化け物はじっとアレクシアの方を見つめる。

 

すると

「チクショウ、チクショウチクショウ!」

ドアが開き、白衣の男が入ってくる。

 

「おしまいだ⋯おしまいだ!皆殺しにされる!」

 

「心配しなくても、騎士団は無用な殺生はしないわよ」

 

「騎士団なんかじゃない!皆殺し⋯皆殺しだぁ⋯!」

 

白衣の男は大きな注射器を取り出す。

「し、試作品は完成した⋯これなら出来損ないでも⋯!」

 

「やめておいたほうがいいわ。なんだか嫌な予感がするの」

 

白衣の男はそれを化け物の腕に押し付ける。

 

「さぁ見せてみろ!ディアボロスの片鱗をぉ!」

化け物の体は膨張し始め、筋肉や骨が発達・成長し、体は牢よりも大きくなっていった。

 

「す、素晴らしい!素晴らしいぞ!」

次の瞬間、白衣の男は化け物の腕に潰される。

 

「⋯だから言ったのに」

化け物はアレクシアの方を見る。

 

バカの巻き添えで死ぬのなんてごめんだ。だがこの状況ではどうにもできない。

アレクシアは体をこわばらせ、化け物は腕を振り下ろす。

 

 

だが

 

 

「え⋯?」

化け物の腕はアレクシアの体ではなく、彼女を縛っていた拘束具を破壊していた。

 

「助けてくれたの⋯!?」

 

アレクシアが化け物を見上げると、化け物は咆哮し、外へと飛び出していく。

 

「っ!」

アレクシアは崩れていく牢から脱出し、咄嗟に、死んでいた騎士の剣を手にとって逃げていく。

 

 

 

◇

「⋯」

ゼッツはアジト壊滅の最中、何かを感じ取ったかのように振り返る。

「ゼッツ様?どうかされましたか?」

 

ベータがそうたずねると、ゼッツは振り返らずに言う。

 

「悪い、野暮用ができた」

 

そしてそのまま、ゼッツフォンを操作する。

 

するとどこからかコードゼロイダーが走ってきて、ゼッツの目の前で止まる。

「この場は任せる」

「承知しました」

 

ゼッツはバイクに跨ってヘルメットを被り、エンジンを吹かせる。

 

◇◇

アレクシアは剣を持って下水道を歩く。

そのまま角を曲がると

「勝手に逃げられては困るなぁ」

「!あなた⋯どうしてここに⋯!」

ゼノン・グリフィがその場に佇んでいた。

 

 

◇◇

「ば、化け物ぉ!」

「逃げろ!」

街中で突如として現れた巨大な化け物に、民衆は逃げ惑う。

 

「撃てぇ!」

騎士団たちは銃を構え、発射する。

 

だが化け物の体には傷一つつかず、振るわれる肥大化した爪によって騎士たちの体は肉塊へと変わる。

 

「魔剣騎士団、攻撃ぃ!」

生き残った剣士たちが化け物の体に斬撃を食らわせる。

 

だが

「っ⋯!?再生しただと⋯!」

 

傷はふさがり、化け物は騎士たちの方へ振り返る。

「っ!」

 

化け物が腕をふるったその時、化け物の体に一閃が刻み込まれる。

 

「なっ⋯アイリス様!?」

そこには赤髪の第1王女、アイリス・ミドガルがいた。

 

「負傷者を下がらせ、ここを離れてください!この区画も直に無人になります!そうしたら⋯っ!」

 

だがその傷も即座に修復される。

 

「バカな⋯アイリス様の一撃だぞ!」

 

「ハァ!」

アイリスは剣に魔力を込め、強力な一閃で化け物を右腕を斬り落とし、そのまま化け物を突きで吹き飛ばす。

 

「グォォォ!」

化け物は建物にめり込む。

 

だが再生は止まっていない。

 

「これでも再生しますか⋯なら、再生しなくなるまで切り刻むだけです!」

 

アイリスが剣を構えたそのとき

 

「待て」

 

一台のバイクが化け物とアイリスの間に割って入る。

 

バイクに跨っていた男はアイリスに背を向けたままヘルメットを脱ぎ、フードを被る。

 

「ここから先は俺がやる」

 

「何をバカなことを⋯!民間人はさっさと逃げろ!」

 

と後ろの騎士団が怒号を飛ばす。

 

 

「まさか、こんなところで会えるなんてな」

 

男はそう口を開く。

 

「『Rescue the girl(少女を助け出せ)』、ミッションを遂行する」

 

次の瞬間、男の姿は消え、化け物の頭上へと移動していた。

 

「来たのか、アルファ」

アイリスはそう言われて初めて、自分の近くの建物の上に黒いボディスーツに身を包んだ金髪の少女が立っているのに気付く。

 

「えぇ、騒ぎを聞きつけて来てみれば⋯まさかこんなものまで生み出していたとはね」

 

「そうだな。手伝ってくれるか?この子を救いたいんだ」

 

「あなたがそれを望むなら」

 

するとアルファと呼ばれた少女はどこからか暗い赤色の装置を取り出し、胸に巻く。

 

ロードインヴォーカー⋯!

 

そして青紫色のカプセルのようなものを取り出し、胸の装置にセットする。

 

装置から怪しげな待機音が鳴り、ポンプボタンを押す。

 

シェード!

 

オンユアマーク オンユアマーク

 

「初めましょう、擬装」

 

そしてカプセルを回す。

 

すると少女の足元に陰が現れ、そこから現れた試験管のようなエフェクトの中に青紫のエネルギーが溜まっていき、試験管が割れる。

 

するとそこには、黒のアンダースーツに、黄色と青紫のラインが走り、両肩には青と黄色のグラデーションのアーマーがつき、顔には黄色い意匠がついていた。

 

エンフォース・ロード・システム シェード

 

背中に彼女の金髪を彷彿とさせる、表は青紫色、裏側は金色の短いマントが現れた。

 

「貴様たちは⋯!」

アイリスは剣を構える。

 

「⋯アルファ」

そう名乗った少女は陰で怪物を拘束する。

 

「グォォォ!」

 

「これでいいのでしょう?」

「あぁ、そのまま頼む」

 

男は陰に拘束され、膝をついた化け物に近づき、その体に手を当てる。

 

「何を⋯!」

アイリスがそう言おうとするのをアルファが制する。

 

「⋯長い間、待たせたな」

そしていくつかのカプセルを取り出し、回転させる。

 

トランスフォーム!

 

マシーナリー!

 

リカバリー!

 

すると化け物の体は光り、苦しみ始める。

「グォォォォォォ!」

 

「もう少しだけ我慢してくれ」

 

 

 

やがて、光が止む。

するとそこにいたのは一人の小さな少女だった。

 

「⋯彼女が?」

 

「あぁ、間違いない。ミリアだ」

 

男は少女を抱き上げ、少女の左手から滑り落ちた、大事に握られていたペンダントを見て言う。

「⋯オルバ。あんたとの約束、果たしたぞ」

 

男は少女をアルファに受け渡す。

 

「彼女を頼んだ」

「ええ」

 

そして男はバイクに跨ってその場を去ろうとする。

 

「ま、待て!」

だがアイリスが止める。

 

「貴様らは⋯一体なんなんだ」

すると男が口を開く。

 

「⋯俺の名はゼッツ。そして俺達はシャドウガーデン。観客は観客らしく、ショーの行く末を見てるといいさ。ただ⋯俺達の邪魔はするなよ」

 

そう言ってエンジンを吹かせ、ゼッツと名乗った男とアルファは去っていく。

 

「シャドウ⋯ガーデン⋯」

すると遠くで雷の音がする。

 

「っ⋯!アレクシア⋯!」

 

アイリスは自身の妹が事件の中心にいることを感じ取っていた。

だから、走り出す。

 

「アレクシア⋯!お願い、無事でいて⋯!」

 

 

◇◇◇

 

ゼノンはアレクシアの問いに返す。

 

「何故って?ここは私の施設だからさ。私があの男に支援をした⋯それだけのことさ」

 

それを聞いてアレクシアは怒りに顔を歪めた後、嘲笑うかのような表情を浮かべる。

 

「っ⋯!⋯良かった。私、あなたのことずっと頭おかしいんじゃないかって思ってたの。やっぱりおかしかったのね⋯」

 

「なんだっていいさ。一緒に来てもらうよ、君の血があれば、私はラウンズ第12席に加わることができる。剣術指南などというくだらない地位からもおさらばさ」

 

「どいつもこいつも血、血、血⋯それにラウンズ?狂人の集まりかなにかかしら?」

 

「教団の中から選びぬかれた最高位の12人の騎士、ナイツ・オブ・ラウンズ。今とは比べものにならないほどの富と地位だ。あぁそうそう、君の彼氏くんも拷問の果てに野垂れ死んでるんじゃないかな」

 

「っ⋯!彼に何をしたの!?」

 

「そんなことはどうでもいい。本当はラウンズ昇格にはアイリス王女の方が手土産には良かったのだが⋯まぁ君で我慢するとしよう」

その瞬間、アレクシアが斬りかかる。

 

「おっとすまない。君は姉と比べられるのが何よりも嫌いだったね」

 

ゼノンは片手でアレクシアの剣を防ぎながら世間話でもするかのように話す。

 

「いつもよりは悪くないが⋯それでも所詮凡人の剣だ」

 

「だったら見てなさい⋯!本当に私が凡人かどうか!」

 

すると魔力を大量に放出し、ゼノンの腕を切り裂く。

 

ゼノンの腕から赤い雫が垂れる。

 

「姉君を真似た剣か⋯君がこんな物を隠し持っているとは思わなかったよ」

 

「何度でも見せてあげるわよ」

 

アレクシアが構える。

 

「ならば私も見せよう。次期ラウンズの剣を」

 

「っ⋯!はぁぁ!」

アレクシアが突きを放つ。

 

だが

「っ!?」

 

剣がアレクシアの手から消えていた。背後で剣が地面に刺さる音がする。

 

「そんな⋯!っ!」

次の瞬間、ゼノンの右フックがアレクシアを下水道の水の中へと吹き飛ばす。

 

「君は姉のようにはなれない」

 

やはり凡人の剣では天才には勝てないのか。

 

悔しさで目元が滲み、頬を雫が伝う。

 

 

そのとき

 

 

どこからか排気音が聞こえてくる。

その音はアレクシアが膝をついている場所の近くの通路で止まり、足音が聞こえる。

 

やがて足音の主の姿があらわとなり、アレクシアは目を見開く。

「や、久しぶり。アレクシア」

そこにいたのは、死んだと思っていたあの男、バク・コードリーだった。

 

「随分と待たせたね」

そう言ってバクは微笑む。

 

「バ⋯ク⋯?」

 

「バク・コードリーくんじゃないか。生きていたとはねぇ」

とゼノンが手を広げて言う。

 

「⋯これがあんたのやろうとしていたことなんですか?ゼノン・グリフィ」

 

「心外だなぁ。私は彼女を誘拐犯の魔の手から救っただけだよ」

 

「とてもそうは見えないけどね」

 

バクはちらりとアレクシアの方を見て言う。

 

ゼノンには理解できなかった。一般生徒のはずの彼が何故ここに?教団の手の者によって始末されると聞いていたが⋯

 

 

「さて⋯俺は俺のミッションを遂行する。それだけですよ」

 

バクがそう言うと、バイクから武器が飛び出してくる。

 

ブレイカムゼッツァー

 

それをキャッチしたバクは不思議そうな顔をした後、ゼノンの方を見る。

 

「⋯まぁいいか。初めましょうか。ゼノン先生」

 

 

 

 




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