人類最後のマスターを務める少女の藤丸立香は、相棒サーヴァントのマシュと共に、新たな戦力を迎え入れるべく、召喚ルームにやって来た。立香は、袋から三十個の聖晶石を取り出し、技術顧問のダヴィンチちゃんに渡す。
「ダヴィンチちゃん、十回分お願い」
「はいはーい、頑張ってね藤丸くん」
ダヴィンチが、コンピューターを操作する中、立香は召喚台に向き、気合を入れる為に頬を叩いた。
「よし…逝くよ、マシュ」
「頑張ってください先ぱ…って、字が不穏ですよ!?」
「それじゃ、行くよ。十連召喚、スタート!」
召喚台が作動し、雷が迸る。マシュの盾を模したエフェクトが出現し、魔力のエネルギーがグルグルと回転し始めた。
一回目、麻婆豆腐
二回目、麻婆豆腐
三回目、まるごしシンジくん
四回目、桜の特製弁当
五回目、桜の特製弁当
六回目、麻婆豆腐
七回目、ブーディカ
八回目、桜の特製弁当
九回目、鉱石科の君主
九回目までの結果に、立香は両手両膝を床に付ける。すなわち、orz姿勢だった。
「もう麻婆は嫌だ、麻婆は嫌だ。麻婆、まるごしシンジくんは嫌だ。この麻婆の山は、クーフーリンか弓の王様に食べさせる。この鉱石科の君主カードは、ラスプーチンにでもあげようかな」
「先輩!?気を確かに!クー・フーリンさんとアーチャーギルガメッシュ王がとばっちりです!」
「マシュぅ!ブーディカママァ!三つあるから、一緒にこのお弁当を食べようよぉ!」
「は、はい!不肖ながらマシュ、先輩のお昼ご飯にお供します!」
「よしよし、一緒にご飯食べようねぇ。お姉さんの胸で甘えていいからねぇ」
ブーディカの豊満な胸に飛び込む立香。涙を流し、甘えるようにぐりぐりと顔を左右に動かす。ついでに乳を揉むなど、マスター兼女子としての特権を味わう。ブーディカは、自分に甘えてくる立香を娘のように甘やかす。
カルデアで一二を争うほどの母性愛があるサーヴァントだからこそ、立香のスキンシップを快く受け入れた。
「うぅ、ブーディカの圧倒的母性、ママァ」
「はいはい、甘えん坊さんだね」
「先輩!次で最後みたいですよ!」
運命の十回目、ブーディカの乳の中で既に不貞腐れている立香。マシュの盾を模した召喚台から、三本線の光輪が出現する。その輪は、サーヴァントの出現を示していた。虹色に光り、羽が舞っている。
「やった!虹回転!?うそ、嘘!?幻じゃないよね!?」
「残り物には福があるだね。よかったねマスター」
召喚されたのは、十文字槍を携えた美丈夫だった。槍をもっているから、槍兵のサーヴァントなのだろうか。と、立香は考える。燃え盛る炎のように赤い髪、きりっとした目付きは、誰かにそっくりだった。筆先のように整えられた顎髭が、ダンディーな顔立ちを強調する。
男は、藤丸の姿と彼女の掌にある令呪を視認した瞬間、名乗りを上げた。
「召喚に応じ、参上仕った!お初にお目にかかるぜ、マスター。ランサーの森可成だ。元々、美濃国尾張織田家に仕えていた武士でな、まぁ、気楽にいこうぜ。俺の十文字槍でどんな敵も突き刺してやるからよ」
「私、マスターの藤丸立香!よろしくね、可成さん!そうだ、私がカルデアを案内するよ!」
「よろしくな、マスター!そいつぁ、ありがてえ!」
「マシュも一緒に付いてきて!ブーディカはダヴィンチちゃんといてもらいたいな!」
「分かりました先輩!可成さん、私も先輩と一緒にカルデアをご案内しますので、宜しくお願いします」
「こちらこそよろしくな、マシュの嬢ちゃん」
「了解したよマスター」
立香は、可成にカルデアの施設を紹介する。古今東西の英雄が食事を共にする食堂、シミュレーション室、モリアーティ教授が営むバー、可成用の部屋を案内した。そして、『ぐだぐだ部屋』と立香が呼んでいる部屋を最後となる。立夏は、備え付けのインターホンを鳴らす。
「ノッブー!立香だよ!部屋に入っていいかな?」
『おぉ、マスターか、入って良いぞ。長可と蘭丸もおるぞ』
「ノッブー!長可くん!蘭丸ちゃん!新しい人が来たから紹介するねー!」
沖田とノッブが頻繁に使用している畳部屋では、信長・長可・蘭丸の三名が、大乱闘系ゲームをテレビに繋いで、遊んでいた。マスターの入室に気付いたノッブは、長可と蘭丸に声を掛け、画面を一時停止状態にする。
「マスターは元気じゃのう。さて、新入りにちょっくら挨拶してやるかって、森のおやじ殿!?」
「親父!?」
「父上!?」
「うぇ!?長可君と蘭丸君のお父さん!?あと、ノッブの知り合いだったの!?あ、さっき、尾張織田家に仕えていたとか言っていたっけ~?」
「確かに、尾張織田家は信長さんが当主を務め、蘭丸さんと長可さんが仕えていましたね」
感動の再会を目撃した立香は、マシュから尾張織田家について教えてもらっていた。前世に仕えていた主君を見つけた可成は、声を震わせる。そして、成長した蘭丸と長可の姿を目撃し、目が潤む。
「の、信長様!?それに、お前ら、もしかして、長可と可利か!?だっはっは!二人とも背伸びたな!こんくらい小さかったお前らがな!信長様も久しぶりっす!ちび共が迷惑を掛けませんでしたか?」
「ちょ、親父!頭撫でんな!?マスターや大殿が見てんだろうがぁ!」
「父上の頭なでなで、懐かしいです」
長可は、可成からのじゃれ合いに顔を真っ赤にして吠えていた。蘭丸は、眼を細めて、頭なでなでを受け入れている。生前における彼の最期を知っているノッブは、涙を堪え隠す為、軍帽を被り直し、腕を組みながら、可成に挨拶をする。
「くははっ、宇佐山城以来じゃなぁ可成。蘭丸はワシの小姓としてよくやってくれているぞ。まぁ、長可は、少し暴れん坊なところがあるがのぅ。二人とも、愛い奴らじゃ」
「そいつは、何よりです。信長様もお元気そうで」
ノッブは、可成の肩に腕を組み、マスターに前世での関係性を伝え始めた。
「マスター。こやつは、儂が尾張一国を平定する前から仕えていた男でな、勝家やサルよりも前から忠義を尽くしてくれたんじゃ」
「昔の話ですよ。まさか、地獄に居た俺が英霊として復活するなんて、昔じゃ考えられなかったすわ。座からの知識で得ましたが、長可と可利の名が後世に残っているんすね。親として嬉しいっすわ。まぁ、俺の知名度は低いですがね」
息子たちの武勇と名が残っている事に、父親として喜ばしい反面、自分がマイナーな武将であることに、可成の声音が段々と低くなり、落ち込み始めた。それを見た長可と蘭丸は、慌てふためく。
「お、親父、そう落ち込むなよ。オレが茶でも淹れようか?皆で茶会しようぜ?」
「ち、父上、一緒にげぇむでもしませんか?現代の娯楽は楽しいですよ?」
「へえ、やんちゃだった長可が茶道やるなんてなぁ、意外な趣味持ってんじゃねえの?蘭丸は、俺が死んだあと、長可に苦労してなかったか?」
「は、はい。下馬を求めた関所の役人を斬り殺したり、止めようとした町人の家に放火もしていたみたいです。あ、女子供関係なくぶっ殺すとか、よく戦前に言っていましたね」
「ちょ、蘭丸!てめえ、何を…ひっ!?」
「長可…てめぇ、この馬鹿息子!」
ゴツンッと、長可の頭に鈍い音が鳴った。長可は、痛む頭頂部を押さえて蹲る。可成の握り拳から、拳骨の摩擦による煙が上がっていた。蘭丸は、兄が痛みで蹲る程の拳骨を見て、ひぇっと蒼褪める。
「い、痛てぇ!お、親父に初めて拳骨されたんだが!?」
「お前が幼い頃に死んだから、あまり教育できなかった俺も悪いな。お前が凶暴性なのは、知っていたが、まさか、ここまでとは…はぁ、えいも苦労しただろうな。長可、お前あとで俺と槍の手合わせな?その性根を叩き直してやる」
頭をガシガシと掻きながら、可成は信長と立香の前に向き直る。そして、騒がしくしたことに頭を下げた。
「お見苦しいところ見させてしまって申し訳ありません。マスター、信長様。こいつには、後でみっちり躾しますんで」
「はっはっは!よいよい、可成。生前のこやつの行いは、当時のワシが許した。許してあげよ」
「そうだ!可成さんは何かお願いとかある?出来る事なら、私も協力するから!」
「そうっすか?じゃあ、マスターが一番強いと思う槍使いと戦わせてください」
その言葉に、立香はこう思った。
(あ、この人は長可くんのお父さんだな。血筋を感じる)
その時、マスターたちがいる部屋の外では、全身紫タイツの美女が、ニヤリと凶暴な笑みを浮かべていた。
一発目のキャラは、森蘭丸ちゃんと森長可君のお父さん。
いつか、公式に出て欲しいな。