ぼくは、スライム?〜偽物勇者と再生の子〜   作:ワンダ・プレイア

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オリジナル初投稿です、宜しくお願いしまーす。


ぼくは、スライム①

 

 

『パラサイトスライム』

 

 

 スライムより分化した亜種。突然変異により誕生する特異種に分類される。

 変化し続ける粘液生物の一種であり、自身より強い魔物、または人間の脳へ侵入し、その肉体を宿主として利用する寄生性魔物。

 

 外見は通常のスライムより黄色く白濁しており、内臓および消化器官は他種スライムと比較して著しく小さいのが特徴。

 その為、自力での摂食はほとんどせず。代わりに宿主へ食事をさせ、宿主の体内で生成された養分を吸収して生存していると思われる。

 その後十分に成長しきったパラサイトスライムは宿主の肉体を用いて、幼体を保護する個体が確認されている。単為生殖であり、水辺で繁殖を行い数を増やすと考えらている。

 

 

 

 

・摘出方法

 

 寄生された宿主からパラサイトスライムのみを摘出する方法は、現代の医療および魔導において確立されていません。

 パラサイトスライムの寄生が確認された場合、宿主ごと処分することが推奨されます。斬撃などによる肉体破損では再生される可能性が高いので、焼却処分が望ましいでしょう。

 また本種は死体にも寄生する性質を持っており、地域によっては「ゾンビスライム」と呼称されていますが、全て同一種となっています。

 死体に付着している個体、またはその疑いがある粘液塊を発見した場合には速やかに焼却することを推奨します。

 本種は宿主の脳を好むとされています。耳孔、鼻腔、口腔などから侵入し、脳まで到達した時点で寄生が成立していくのが近年の研究で明らかとなりました。

 野外、特に木陰や湿地帯での休憩時には注意が必要となっています。近年では個体数は減少傾向にあるものの、絶滅は確認されていないので注意が必要でしょう。

 人の街に集団で現れる危険性もあり、強い腐敗臭がする者が居れば聖教会に通報をお願いします。その後は近寄らない、話しかけない、関わらないを徹底しましょう。

 

 

 たいした知恵もない。

 役に立つ素材にもならない。

 弱く、醜く、ただ害をなすだけの害悪なスライムです。

 

 見つけ次第聖教会に通報、討伐後は焼却処分のご協力をお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 草むらの中に隠れて、ぼくはたったひとりで。真っ赤になった、ぼくが住んでいた街を眺めていた。

 

 草むらの近くに人間の脚が通り過ぎて、たまに立ち止まって大きな鳴き声を放っては遠くへと消えていく。

 

 ぼくは、人間が居なくなるまで出ちゃ駄目なんだって。そうお母さんと約束したんだ。

 

 お母さんってのはね、ちっちゃなスライムのぼくより綺麗で青くて大きくて。それでいて優しい、この街のみんなを癒やせるようなすごい魔法を使えるぼくの自慢のお母さんなんだ。

 

 そのお母さんと約束したんだ、ここで待っててって。

 

 最初はお家に近所のコボルトのおじさんが入ってきて「ここに人間が攻め込んでくる」ってとても大きな声で教えてくれたの。攻め込んでくるって、なにもかもよく分からないままにお母さんはぼくを引っ張った。

 

 街は大慌てだった、ご飯も全部食べれてなくってお腹ペコペコなのに、話しかけても返事を返してもらえなくて、連れられるがままについて行った。

 

 他の魔物より身体が小さいぼくを草むらに押し込んで、ぼくを真っすぐ見つめて言うの。

 

「人間が居なくなるまで、この草むらから出てはいけない。全てが終わったら迎えに来てあげる」

 

 いつもの優しい声だけど怯えたように、ぼくの頭を優しく撫でながら、安心させるように話しかけてくれた。

 

「ぼく、ひとりは嫌だよ……お母さんと一緒がいい」

 

 ぼくは普段はちゃんといい子にしている、でも今日はとても怖くって。離れようとするお母さんの手を掴んで「行かないで」ってお願いしてしまった。お母さんは困ったような、焦ったような感じで、またぼくと新しい約束をしてくれた。

 

「全部終わったら、文字を教えてあげる。美味しいお水が飲める湖に行って、ピクニックもしましょう……それまでの我慢よ」

 

 優しく、でもどこか乱暴にぼくを抱きしめて離れていってしまった。

 

 そしてしばらくして、ぼくの街は真っ赤になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 退屈しながら待っているとやっと人が居なくなって、街が熱くなくなって、お星さまが見えてくるようになっても。ぼくのお母さんは帰ってこなかった。

 

 お母さんとの約束だったけど、ひとりぼっちが怖くって草むらを出て辺りを見渡してみる。とても嫌な臭いがする、お肉が焼けたような臭いだ。いつもなら美味しそうと思って嬉しいのに、なんだか怖くなってその辺りには近寄らないようにした。

 

 ゆっくり進んでいけば、いつもみんなが居た広間っぽい場所に出た。

 

 きっとぼくを探してる誰か居るのかもしれない。だから人に見つからないように、なるべく声を出さないように呼びかけてみた。

 

「コボルトおじさーん、サキュバスおねーちゃん、お母さーん!」

 

 それでも返ってくるのは風の音だけ。寂しく身体を撫でる夜の風が慰めてくれたけど、仲間の声や誰かの足音は運んできてくれなかった。

 

「ど、どうしよう。独りぼっちになっちゃった」

 

 これからどうしよう……お母さんには待っててって言われたけど。同族の影も、魔族の誰もいる気配がない。みんなぼくを置いてどこに行ったんだろう?ぼくに気が付かず、みんなは人間から逃げる事が出来たのかな?そうだったらいいな。

 

「お母さんも、そこに居るかもしれないよな」

 

 探さなきゃ、お母さんを。そして文字を教えてもらわなきゃ。

 

 どこに居るかも分からないのに、会える希望を捨てきれないぼくは取り敢えず宛もなく歩き出した。黒く染まった街を背に、誰かに会える希望だけを胸に抱いて。

 

 

 

 

 

 

 

 街からひとりで出てくるなんて初めてだった。いつもはお母さんと一緒だったからなぁ……でも今はそのお母さんは居ない。

 

 ゆっくりと、人間には見つからないように、息を潜めて進む。お母さんといつも一緒だったからあんまり考える事は無かったけど、こんな木や草って大きかったっけ?

 

「おかしいな、いつもはぺちゃんこなのにな。お母さんが踏んづけて、歩きやすくしてくれてたのかな?」

 

 前を歩いて、身体の小さなぼくが怪我をしないようにしていたのかな?早く会いたいな。どこに居るんだろう。

 

「みんな無事かな、お腹空いたな、怖いな」

 

 話してくれる相手がいないから独り言が増えてしまう。自分より背の高い草陰に身を潜めて、ちょっとぬかるんでいる泥の中をいつも以上に歩いた。身体に大量の石や泥がついて嫌な感じだ、冷たくてぬるぬるしていて嫌だなぁ。これでも綺麗好きだから早く抜けたいな。

 

 一生続くと思っていた草の道にようやく終わりが見えてきた。そこから先は人間の作った道なのかも知れない、だから気を付けてちょっとだけ顔を出してみた。

 

 ちらりと顔を出して辺りを見渡してみると、大きな木の根元になにかが居るのが見えた。

 

「こ、コボルトおじさんなの?それとも……オークお兄ちゃん?」

 

 身体の大きさからいつもぼくを可愛がってくれたどちらかだと思った。きっとぼくを見つけたら喜んでくれるって信じて近寄った。

 

 ようやく知り合いに会えた、だからもう安心!後はお母さんの所に案内して貰えるかもしれない。でも期待してたものとは違った。

 

「なんだ、ただの人間か」

 

 そこには立派な鉄の鎧を身に着けて、立派な剣を腰につけて。サキュバスお姉ちゃんよりは劣るけど綺麗に顔が整った、金色のたてがみが生えている人間だった。

 

 ぐったりと倒れ込んでいるような、眠ってしまっているような、ぼくがこんなに近くに居るのに気が付かない。人間てのんびり屋さんなんだ、そんな生き物がなんで魔族を襲うんだろう?

 

「そもそもこいつ、生きてるの?」

 

 試しに軽く脚に触れて、身体を揺らせば、ぼくの弱い力で身体が大きく動いて地面に倒れてしまった。

 

 鉄がぶつかる鈍い音がして慌てて草陰に戻った、痛そうだ。

 

 こっそりと様子を伺ってみるけど、その人間は動こうとしなかった……深く眠ってるんだな。こんな所に居たら寒くて身体がゼリーからアイスになっちゃうのに大丈夫なのかな。

 

 もう一度身体を乗り出して、その人間の顔の近くに寄ってみる。目や口は魔族と一緒でちゃんとあるのに、大きな牙や魔眼は持ってなさそうだ。だから剣や弓とか、戦える手段を持っているんだね。

 

 そういやお母さんが言っていたな、人間の種類によっては魔族みたいに魔法を使うのも居るって。すごいな、牙や角が無くても戦うんだ。戦いが好きな種族なのかな?

 

「それにしては中々起きないな。もうちょっとだけ触ってもいい?ごめんね、痛くしたら」

 

 腕を伸ばし、ゆっくりと頬に触れようとした時に遠くから別の人間の鳴き声が聞こえた、しかも一匹じゃない。

 

 びっくりして振り返ると、遠くから炎の灯りで浮かび上がった影が四匹もこっちに傾いて来ているのが分かった。

 

「わわっ!どうしよう、逃げなくちゃ」

 

 急いで来た道を戻ろうとしたけど、ぼくが来た道から影が伸びている。あそこに戻れば見つかって殺されちゃうかもしれない、どうしよう……ぼくは戦い方なんか知らないのに。

 

 木の上に隠れようかな?でもこの木、ツルツルしていて登れない。それに途中で登っているのがバレちゃったら大変だ。

 

 あっちに行ってもこっちに行っても駄目そう。どうしよう、怖いよ!お母さんに会う前に死にたくない。

 

 じゃあこの人間の中しか逃げ道ないじゃん!ん……人間の中?

 

 一生懸命に考えた閃きに希望が見えた気がした。そうだ、この人間はまだ起きていない。なら、こっそり中に隠れてしまえばこの場はとりあえずは大丈夫なのかもしれない!

 

 これだけ近寄ってなにもしてこないんだ、きっと魔族より鈍いんだ。人間ってどうやって中に入るの?人間の鎧の入口ってどこだろう?

 

 人間は危ない生き物だよってお母さんにそう教わってきたけど、人間に隠れる方法なんか聞いたことないな。剣とか弓とかの話や、人間が意味もなく魔族を襲うって話はずっと聞いてきたけど。うーん困ったな、どうしょう。

 

「……?……?」

 

 考えている間に人間の鳴き声がどんどん大きくなってきた気がした。わわっ!どうしよう、見つかったら大変だ!お母さんにまだ会えてないのに、それは嫌だな。だからこの危険だけでもやり過ごさないと。でもどうやって隠れよう?入口が分からないんじゃどうしよもないじゃん、困った。こういう時ってどうすればいいんだろう。

 

「えと、うーんと……もういっそ人間の口の中に入っちゃう?」

 

 くるりと振り返って、未だに目が醒めない人間の口を恐る恐る開けてみた。ぬるりとした粘液をまとった赤い洞窟のような狭い空間、ちょっと生臭さを感じて入るのを躊躇ってしまう。

 

「臭い、鉄っぽい臭いがする。それに冷たい……嫌だけど——」

 

 ここを生き残らないとお母さんに会えないのかもしれないから我慢して嫌なこともやるんだ。

 

 ぐっと身体に力を込めて、小さな人間の口の中に自分の身体を流し込んでいく。全部の身体が口の中に隠れた時、別の人間が駆け寄ってくる音が聞こえた。よかった、多分ギリギリで隠れられた。

 

 でも、ここってまだ入口だよね?もっと奥に逃げたほうがいいのかな?

 

 お腹の中に隠れちゃえば、もっとバレないのかな?

 

 ちらりと目線を動かせば、暗く細い道が続いている。ぼくが他のスライムより小さくてよかった、まだ先に進めそうだ。

 

「行かなきゃ、こんな所で死にたくないから」

 

 すこし熱のある狭い道を通って、人間の身体の中心に堕ちていく。

 

 それが、ぼくの運命を変える大きな過ちだってことに気が付かず、生きることだけを目指して。

 

 

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