ぼくは、スライム?〜偽物勇者と再生の子〜 作:ワンダ・プレイア
ある程度歩いて人間の凄さというか、なんていうのかな?こだわりが至る所に感じる。
床から壁、場所によっては空まで石を積み上げて綺麗にしていたり。食べ物なんてそのまま売るなら分かるけど、料理したものを売っていたり……あとよく分からないけど売り物がないけどお店をやっている人も見かけた。
ルベラに案内された道中で、さっきの本のおじさんみたいな人が大量に僕の元へやってきた。
武器や道具が多かったけど、いい匂いの水や料理のスパイス……あと石鹸?っていう濡らせば泡になるのとかもあった。
でも全部ルベラに追い払われていた、嫌ならああやって追い払えばいいって教わった。断るのは悪いことじゃないんだって、あんなにルベラを頼もしいと思うことはなかった、ルベラカッコいい!
「じゃっじゃーん!ここです、『マヒマヒ』。お魚料理がとっても美味しいお店なんです」
入り組んだ道を進んで曲がってを何回か繰り返してようやくたどり着けた。『マヒマヒ』と魚の形になっている鉄の板が扉の前に掛かっていて、中を覗けば人が結構入って食事を摂りながら会話しているのが見える。
ほんのり香ばしい……なんだろう?ちょっと癖になるけど嗅いだことある美味しそうな匂いは。
「なんの匂いかな?」
「ニンニクですね……うーん、葉包みの匂いもする。ここはお肉料理も絶品だからなぁ、今日はどっちにしようかな?」
ニンニク?……この匂いはニンニクっていうのか、人間って本当に食べるのに一生懸命なんだな。お店の前に来ただけなのに、ルベラが涎を垂らしているし。
「入る?」
「は!……い、行きましょう!メニューは中に入ってからも決めれますからね」
僕が声を掛ければ急いで口を綺麗にして中に入ってしまった……僕も入らなきゃ。扉に手を掛けて、早速お店の中に突入していった。
それからルベラが色々気を使ってくれているのか、店の奥側にしてくれた……窓で色々と外を眺めていたかったけどルベラが選んだから文句は言わないでいた。
「そうですね、わたくしはこれとこれ……カリエス様はお肉のとお魚、どっちがいいです?」
「うーん……お魚」
「じゃあ同じものですね」
ルベラが立ったままの人に声を掛けて、メニューを読み上げていた。そしたら立っている人が何回か頷いて店の奥に行っちゃった……後はどうするんだろ?
「僕になにかできることがあるの?」
「え?……うふふ、ここはお金を払って料理して貰って、それをただ食べるお店なんですよ。強いて言えば……ゆっくり待つこと、ですかね」
「そうなんだ、そのやってもらうことにお金を払うんだね。そういうのもあるんだ」
「カリエス様は色々忘れてしまってるらしいですからね……これからも一緒に思い出して行きましょうね」
柔らかく笑いかけてくれるルベラを見ていると、サニタスが色々教えてくれた時にルベラを呼びに行ったことを思い出す。
難しい言葉で説明を続けるサニタスに対して、柔らかい言葉でゆっくりと教えてくれたんだよな。
人間は嫌いなままだけど、ルベラはなにがあっても嫌いにならないんだろうな。いつかルベラには話したい……ぼくがパラサイトスライムだって。きっとカリエスみたいに受け入れてくれるよね?だってルベラだもん。
「それで……なにか聞いておきたいこととかあります?騎士学校時代とか、勇者になるまでの話とか」
テーブルに両肘をついて頬を持ち上げて、ご機嫌なルベラが早速話を切り出してくれた。
そうだった、今はぼくのことはいいんだ……カリエスのことの方が大事なんだから。その前にバレたら全ておしまいだ、いけないいけない。
「そ、そうだな……まずは騎士学校がなにかを知りたいな。僕は、なんでそこに行っていたの?」
「騎士学校……懐かしいですね、卒業してから七年、いや八年前位ですかね。騎士学校といっても要は戦闘職の職業訓練の学校なんですよ」
訓練学校?学校っていうのはこうやって人に教えて貰う場所があるってこと?
そこまでして強くなるのに、誰も魔王を倒せないのには別の理由もあるのかな?……辿り着くまで、なにかあるとか?なにかってなんだろう。
「ソロヴォル聖教会が運営し、卒業生の進路は国の騎士団や領主の私兵や護衛、それに猟師、そして勇者に立候補する者も通う。その名も『国立ペティスト騎士学校』、カマアマからちょっと離れた北部にある世界で一番大きな学校なんですよ!」
「す、すごそう……」
「すごいです!まともな騎士学校はここだけな位すごいです!……他の場所だと魔物の対応や、経営の難しさでカマアマしかまともに機能しないってだけだけど……」
そうか、つまり戦いをするのに剣の使い方を勉強しなきゃいけないってことか。買っただけじゃ強くなれないからね。
騎士ってのはよく分からないけど、勇者と似ていることならば想像がしやすい。
魔族に対抗する人間側の勢力なのかもしれない……街に攻めてくるって、魔族側はなんでそんなことするんだろう?カリエスの住んでいた街を襲ったのとも関係があるのかな?
「わたくしは魔法の勉強のため、故郷に学校を作るために入ったんですよ!特待生で!えっへん」
「でもルベラは勇者の旅をするのを選んだんだよね?なんで?」
僕が嫌なことを言っちゃったからか、あんなに楽しそうなルベラの顔が一瞬で引きつってしまった。慌てて謝ったけど、小さく「大丈夫です」と言って少し暗い顔をしていた。
「あの、資金が……やっぱりお金が必要なんですよ。わたくしの故郷、ホソリ島はティソ大陸では一番大きな島なのですが……あ!ティソ大陸は大きさが色々ある南国の諸島、つまりいっぱい島が固まっている地域なのです!精霊族、特にパパみたいなサラマンダー種の誕生の土地。火山のある温かな地域なんです」
ルベラの学校を作る夢があったなんて……そんなすごい目標があったんだ。でもそれよりも、僕は気になることを見つけた。
ルベラが『故郷』、『ティソ大陸』、『精霊族』という言葉を出しただけなのに。周りにいた他の人達が、ルベラに冷たい目を一瞬だけ向けていたのを見つけてしまった。
でもなにか言ってくることも無いまま、何事も無かったように目の前のお皿に視線を戻していた。
関所って所の検査といい、この視線といい、精霊族ってのも知っておかないといけないんだな。
魔物の血ってのは、人間にとってそんな酷いものなの?スライムのぼくと違う、精霊族っていう人間側の種族じゃないの?変なの。
「勇者のパーティとして活躍すれば、故郷に資金が入ります……わたくしはそういった取り決めで、カリエス様達と戦うことにしています」
「魔王までの道中、困っている街を助けて回るの?」
「そうです!状況によっては足止めになっちゃいますが、勇者のお勤めのひとつなんですよ。だからそれが可能かどうかの試験みたいなのが、今回の討伐任務で……ああ、学校の話からだいぶ逸れちゃってますね、ごめんなさい」
楽しい話が続いてきたのにルベラが急に謝ってきた、僕は昔の話なら学校じゃなくても聞きたいから気にしないのに……続けてって言ったらまた嬉しそうに目が開いて色々教えてくれた。
海という大きな水がこの大陸を囲っているとか、馬車だけじゃなく船っていう乗り物や、空を飛ぶ乗り物も開発中だとか。
列車!列車っていう一瞬でびゅーんって大陸を移動できるすっごい乗り物とかの話もしてくれた。
学校についても教えてくれてね、カリエスは剣の勉強のため、立派な騎士になるために学校に行ってたんだって。騎士学校を卒業すれば、強さが認められて魔物の討伐資格が貰えてっていうのがあるらしいとかも聞いた。
「資格……仕事でできることが変わるんだね」
「勿論です!一応魔法もそういった資格や検定もあって、人々の安全第一で資格がないと違法になっちゃうんです。魔法の指輪も……この資格証明がないと上質なものは売って下さらないのですよ」
といって見せてくれたのは、手袋から出てきた小さな腕輪だった。それを取って見せてもらうと、見た目はただの腕輪だけど……裏面になにか彫られているのを見つけた。
「ソロヴォル聖教会が定めた暗号、わたくし達が使わない文字で書かれています。それを見て、お店側が資格所持を見極める……らしいです、正直詳しくないけど。一般人の間で魔力の暴走が頻繁に起こらないようにーだとか?」
「魔法使いって大変なんだね。全員が魔法を使えるわけじゃないのに、更に資格もいる……うーん、ルベラは偉い」
「えっへん!そうです!もっと褒めちゃってくださいな」
嬉しそうに胸を張ったルベラとの話を聞いていれば、僕達の前に料理が運ばれてきた。
お皿の上に葉っぱで包まれたなにかが、湯気を上げている。お皿の横にナイフとフォークが置かれて、お姉さんはペコリと頭を下げて行ってしまった。
「これが……葉っぱごと食べるの?」
「そういう人もいますが、えぐみが強いんでおすすめしません。ナイフで切って……こう、開けて頂くのです」
気持ちが昂ぶっているルベラが両手にナイフとフォークを握っていた。ルベラに合わせるように持ったけど、「逆ですよー」と笑われて慌てて戻した。
お手本になってくれているルベラに合わせて、葉っぱにナイフをスッと入れると良い香りと共にふっくらと焼き上がった魚とお芋が出てきた。
思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう位だった、ヴェクタの料理とはまた違う……なんというか。とりあえず美味しそう!
「骨には気をつけて下さいね……いただきます」
いつもみたいに「いただきます」をして、ルベラは魚の身を綺麗に切り取ってさっそく一口食べ、幸せそうな顔でうっとりしていた……ルベラって表情がいっぱい変わるんだな、可愛いな。
僕も真似をして、ちょっとだけボロボロになった身を一口パクリと頬張ってみた。
おぉ!お店の前で嗅いだ、ニンニクの香りと葉っぱの香りがする。魚なのにヌメッとしてなくて身が白い、それに魚の脂なのかな?お肉のと違う美味しさだ……このお芋もホクホクで美味しい。
「ヴェクタの料理とおんなじ位美味しい!」
「まぁ、ヴェクさんが聞いたら喜ばれますね」
「美味しい……おいしい……」
「ゆっくり食べましょう。デザートも頼んでいるんで、それも楽しみにしていて下さいね」
ヴェクタのスープとはまた違う、初めましてな味を堪能して。あんなに話し込んでいた僕とルベラは夢中でお皿の上の料理を平らげていった。