あと、希結理の緑谷以外の男子に対する呼び方を苗字呼びに変更しました。
「──『大地』が道を護りますように」
希結理はビルの屋上から龍霊を召喚し、上昇して辺りを見渡す。万が一にもヴィランに捕捉されないよう上昇は最低限だ。広場では駆けつけてきたであろうオールマイトと脳がむき出しの異様な大男が交戦しており、相澤と13号は入口の方で倒れ伏している。遠目で見るだけでも大けがを負っているのが見て取れる。
「……!」
そして、すぐ近くにあった山岳ゾーンに視線を向けると……クラスメイトの上鳴が人質に取られ、耳郎と八百万は動けないでいた。
「どうだ、愛乃」
「広場でオールマイトとヴィランが交戦中よ。相澤先生と13号先生は負傷してるわ。それと、隣の山岳ゾーンで上鳴君が人質に取られてる」
「なっ、マジかよ!早く助けに…!」
「俺ァ行かねえぞ。なんでわざわざモブ共を助けに行かなきゃなんねえ」
希結理の報告を受けても、爆豪はどこ吹く風だ。実際彼にとってクラスメイトの救助は優先順位が低いのだろう。
「オイ爆豪!いくらなんでも…」
「かまわないわ、他のみんなはあたし一人で助けに行く。切島君は爆豪君についていって」
「……えっ?」
しかし爆豪の返答も織り込み済みなのか、希結理は一人で救助に向かうと言い出した。
「単独行動は危険だぜ!ここは爆豪を説得して…」
「あたしは知ってるわ。爆豪君みたいな自分を貫き通す人は何を言っても聞かないでしょう。だったら最初から意見の違うあたしが別行動をとったほうが合理的、そうでしょう?」
「け、けどよ……!」
「大丈夫、あたしの個性はこういう場面に向いてる。まだクラスメイトとして日が浅いけれど…あたしを信じて」
希結理はそう言って真っ直ぐ切島を見つめる。切島はその目から確かな覚悟を感じ取った。
「…!分かったぜ、愛乃。オメーの覚悟、確かに受け取った!」
「決まったかよ。ならさっさと行くぞコラ」
希結理のことを気にも留めていない爆豪はすぐに行動を開始し、切島もそれに続いていく。
「さて、あたしも行きましょうか。──『詭術』がただの戯れでありますように」
ーSide 耳郎ー
「手を上げろ。個性は禁止だ。使えばこいつを殺す」
「やられた…!」
完全に油断してた。まさかヴィランがまだ地中に潜んでたなんて。人質の上鳴は今キャパオーバーで使い物にならない。相手は上鳴と同じ電気系の個性。恐らく通信を妨害してるやつだ。
迂闊に動くこともできずウチらはひとまず指示に従っていた。
(この状況、プロなら…愛乃ならどうする!?今、ウチに出来ること……!)
「上鳴もだけどさ。電気系って、生まれながらの勝ち組じゃん?だって、ヒーローでなくてもいろんな仕事あるし、引く手あまたじゃん。何でヴィランなんかやってんのかなーって」
会話で少しでも気を引いてる間に私のイヤホンジャックを足のスピーカーに繋ぐ。繋ぎさえすれば、ウチはノーモーションで攻撃できる。上鳴を、助けられる!
そしてプラグがスピーカーに刺さろうとして…ヴィランがその手に迸らせている電気を上鳴により近づけた。
「やめろ。気づかないとでも思ったか」
「くっ…!」
「子供の浅知恵なんてバカな大人にしか通じないさ。お前たちが抵抗しなければ、このアホは見逃してやるぜ」
まさに絶体絶命と、そう言わざるを得ない状況だった。
(ごめん愛乃。やっぱりウチじゃ…!)
「他人の命か、自らの命か。どうs──ぐあっ!?」
その瞬間、ヴィランが何かに吹っ飛ばされた。速すぎて、よく見えなかった。誰かが助けに来てくれたのだろうか?そう思いながら目の前を見つめ、煙が晴れるとそこには…。
「あたしのクラスメイトを人質にとるなんて…いくらあたしでも、少し怒っちゃうわよ?」
「愛乃…!」
ウチらは愛乃と解放された上鳴の元に駆け寄る。愛乃はいつもの調子でああ言ってたけど、付き合いも浅いから分かんないけど多分、怒ってる、と思う。
「上鳴さん!大丈夫ですの!?」
「うぇ、うぇ~い…」
「て、てめぇ!覚悟しやがれ!」
今の一撃で完全に逆上したヴィランが愛乃に向かって放電した。対する愛乃はコインを高く投げ、また同じように高速移動する。その速すぎる軌道は放電でも捉えられておらず、愛乃はヴィランに何度も蹴りを食らわせる。
その動きは戦闘訓練の時なんかよりもずっと速かった。残像のせいで愛乃が複数人いるようにさえ見えてくる。
でも決定打が足りてない。多分だけど、切り替えるタイミングを探してるんだ。人質が解放されたなら、ウチらだっていくらでもやりようはある!
「八百万!」
「ええ、分かってますわ!」
八百万は、ウチのコスチュームについてるのよりも少し大きめのスピーカーを創造した。広場の方ですごい音が聞こえるけど、今はそれどころじゃない。プラグを接続して、ありったけのボリュームを流し込む。
「くそ!は、速すぎる!捉えられねぇっ!」
「速さは力。神速にはまだ程遠いけれど、あなたの相手なら、十分!」
「ぐはっ……」
ヴィランは愛乃の蹴りを鳩尾に食らって悶絶している。食らわせるなら、今!
「愛乃!」
「!」
愛乃はすぐにウチの攻撃範囲外に高速移動で逃れる。やっぱりあいつは凄いよ。一瞬見ただけですぐに意図を理解してくれる。だからこそ、少しでもあいつの力になりたい!
「音波振動!」
「!?み、耳が!」
「──『紛争』が戴冠して王になりますように。さすがは響香ちゃんと百ちゃんね」
戦闘訓練の時のように、愛乃の右腕に赤黒いオーラが集まっていく。
「紛争集約、30%──『赤炎獅子』!」
そしてウチの音をかき消すように、獅子が吠えたような轟音が響く。それはヴィランに命中し、後方の丘まで勢いよく吹き飛ばし、打ち付けた。どうやらその衝撃でヴィランは気を失ったみたいだ。
◇
金糸で周囲の安全を確認し、耳郎たちを連れて出入り口まで「百界門」で戻ってきた希結理。戻ってみればオールマイトと脳無の激しい戦闘が行われており、激しい風圧が希結理達の元まで届いている。
希結理は麗日たちから状況を聞いて整理した後、すぐさま相澤と13号の治療を開始。13号は背中から上腕にかけての裂傷程度だったが、問題は相澤だ。両腕や顔面は見るからに骨折しており、右肘は皮膚が割れたような状態で筋肉があらわになっている。重症なのは言うまでもない。
「──『天空』が晨昏を癒しますように。完全な治療は無理かもしれないけれど、少しでも力になれるはず」
『天空』の神権は治療だ。リカバリーガールの「治癒」とは違い自然再生力ではなく、純粋に対象の怪我や傷を治す高度な治療を行うことが出来る。しかし重症なほど治療に体力を持っていかれる。今回希結理はヴィランとの交戦や移動によって身体的にも精神的にも、かなり体力が削られている。希結理一人で二人の傷を治し切るには限界があった。
「ちょ、愛乃。無茶しない方がいいよ!さっきから息荒いし、少し休みなって」
「そうだよ希結理ちゃん!治療は今希結理ちゃんにしかできひんけど、希結理ちゃんにも倒れてほしくないよ」
「先生たちが体を張って守ってくれたんだもの。ここで治療を止めて、もし何かが手遅れになりでもしたら……あたしはそんな後悔はしたくないわ」
広場では今も尚オールマイトと脳無が殴り合いを続けている。同じく広場にいる緑谷達がその場で立つのがやっとなように、希結理たちがあの戦いに参戦する余地など微塵もない。故に、できることをやるだけだ。
やがてオールマイトが脳無を殴り飛ばし、ドームを突き破って空の彼方まで吹き飛んでいった。相澤たちの治療もできるところまでは終了した。生徒たちはオールマイトの活躍に安堵の感情をあらわにする。
しかし、オールマイトは脳無に対して力を使いすぎた。マッスルフォームを保っているのがやっとであり、一歩も動けない状況。オールマイトはヴィランに虚勢を張って時間を稼ぐ。だが狙いとは裏腹に死柄木はオールマイトに向かって走っていく。
緑谷はすかさずOFAを使ってオールマイトを助けようとするが、それを読んでいた黒霧によってワープホールが展開され、逆に死柄木の魔の手が緑谷に向かう。その手が緑谷に触れる……その直前だった。
──ガシッ!
「…はっ?」
「!」
「そうはさせないわよ?」
金色の龍が、その腕に噛みついた。万が一に備えて神権を『大地』に切り替えていた希結理の龍霊が死柄木の狙いを逸らす。龍霊は死柄木の腕に噛みついたままズガガガガッ!と地面を引きずり回す。
「何だこいつ!邪魔すんな!」
死柄木は余った方の五指で龍霊に触れ、龍霊は形を留めることが出来ず崩れていく。だがこの間に稼いだほんの数秒が、この戦いの勝敗を分けた。雄英の教師陣を呼んできた飯田が戻ってきたのだ。
「ごめんよ皆。遅くなったね。すぐ動けるものをかき集めてきた」
「1-Aクラス委員長飯田天哉!ただいま戻りました!!」
教師であるスナイプの銃弾が死柄木の急所を的確に撃ち抜くが、残りの射撃は黒霧の靄によって弾道を逸らされる。13号が咄嗟にブラックホールで黒霧を吸い込むが、死柄木と黒霧には逃げられてしまった。
「今回は失敗だったけど――今度は殺すぞ、平和の象徴…オールマイト!」
そこからの雄英教師陣によるヴィランの制圧は早く、まだ他のエリアに取り残されていた生徒たちも無事救出。1-Aの生徒も、先生も、誰一人欠けることなくUSJ襲撃事件は幕を閉じたのだった。
この段階で梅干しに希結理の存在が勘づかれるとめっちゃ狙われそうなので今回は死柄木や脳無とはほぼ戦闘しません。代わりに山岳ゾーンへ介入し一足先に上鳴たちを救出。その後も衛生兵したりちょっとだけ広場に介入したり…やっぱりおかしいよ黄金裔
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