マスター?いいえデビルサマナーです 作:こちらメギドラオンでございます
転生にも数あれど、俺をこの世界に転生させた神は間違いなく悪魔に違いないと思った。もしくは邪神。
それくらい、俺が転生した世界は過酷を極めていた。
『真・女神転生』。
神や悪魔が実在し人々を脅かす世界で、主人公は悪魔召喚師──デビルサマナーと呼ばれる悪魔を使役する人間となり、迫りくる滅びの未来に立ち向かっていく。
簡単に説明するとこんな内容のゲームで、その環境はまさに過酷を超えた過酷。
天使が世界中に発射したミサイルで東京以外全てが滅んだり、頭のおかしい教団が東京受胎と呼ばれる新たな世界を創生する儀式を行ったことで極一部の人間を残して全ての人間が死滅した世界など、作品によって差異はあれど、全ての世界が滅んだり滅びの危機を抱えている。
それが『真・女神転生』というゲームの特徴であり、俺が転生した世界でもある。
この事実に気づいた時、俺がどれだけ絶望したか分かって貰えただろうか?
確かに俺は『真・女神転生』の大ファンだ。
愛してると言っても良い。
なんたって前世の死亡理由は『真・女神転生』の新作ゲームを買いに行った帰りでの交通事故が原因だからな。
我ながら度が付くほどのオタクだが、だからといってこれは無い。絶対に無い。
一体、誰が好き好んでこんな厄ネタのバーゲンセールみたいな世界に転生したいと思うだろうか?
いや、ちょっとは嬉しいと思ったりしたけど。
ゲーム悪魔に会いたいかと言われたら……正直、会いたい。
だからといって流石にこれはねーよ。
普通に死ぬからね?
しかし、俺がどれだけ嘆いた所で何も変わらないのがこの『真・女神転生』……………通称メガテン世界の特徴だ。
寧ろ下手に神様に祈ったりすると、悪神や邪神と言った邪悪な存在に目を付けられる可能性が普通にある。
よっぽどの善神でも無い限り、下手な祈りは災いしか呼び寄せないんだよなぁ………………。
俺は挫けそうな心に喝を入れ、このメガテン世界を生き抜いていく覚悟を決めた。
幸いにも、俺の手元にはその為の力が存在している。
俺がこの世界が『真・女神転生』のものだと気付いたきっかけでもある、あの力が。
俺はズボンのポケットから携帯電話を取り出すと、電源を入れて起動する。
そこに表示された画面にはこう書かれていた。
【悪魔召喚プログラム】と。
【悪魔召喚プログラム】。
それは文字通り悪魔を召喚する為のプログラムであり、本来は特別な才能と知識を持った者しか召喚出来ない悪魔を誰でも簡単に召喚出来るようにしたもの。
詠唱文や生贄といった細かい作業は全てプログラムが代行してくれる為、ボタン一つ押すだけで誰もが悪魔を召喚出来てしまうまさに悪魔的プログラムなのである。
『真・女神転生』を代表するプログラムであり、作中でも殆どのデビルサマナーがこれを所持しており、かくいう俺もその一人だ。
6年前、小学校の帰り道に偶々道端に落ちていたこの携帯電話を拾った俺は、中に悪魔召喚プログラムがインストールされているのを見てこの世界が『真・女神転生』の世界だと気付き、それ以来、このプログラムを用いて訪れるかもしれない終末や野良悪魔の襲撃に備えて日々修行をしているというわけだ。
え、普通に盗難?
バレなきゃ犯罪じゃないんだぜ(ジョジョ)。
冗談はともかく、一応俺もこの悪魔召喚プログラム入りの携帯電話の持ち主を探したのだが、何時まで経っても見つからないので有り難く俺の物にさせてもらうことにした。
6年経った今でも持ち主は現れないから、流石にもう時効だろ。
お陰で悪魔も使役出来たし。
とにかく、こうして悪魔召喚プログラムを手に入れた俺はこの6年間、16歳の誕生日を間近に迎えた今日この日まで日々鍛錬に勤しんだ結果、今ではかなり高位の悪魔も使役出来るようになった。
ゲーム的に見ると多分、中堅どころの実力はあるんじゃないか?
6年もあってその程度?と思うかもしれないが、メガテンはそれだけ魔境なんですよ。
人修羅センパイや某サムライ救世主など、インフレの極致と比べたら、俺なんか屁みたいなもんだぞ。
それだけトップクラスの実力者は力量も使役する悪魔の格も桁違いにヤバい。
そんな実力者達ですら一筋縄ではいかないのがメガテンにおける終末なので、俺も生き残れるだけの実力を最低限身に付けなければ。
ただなぁ……………最近、ある疑問があるんだよなぁ……。
それというのもこの世界、本当に『真・女神転生』の世界なんだろうか?
プログラムを見つけた事といい、実際にゲームの悪魔達を召喚出来た事からここがメガテン世界なのは間違いないと思うんだが、どうにも違和感がある。
それというのも、俺はある街の一般家庭の子供としてこの世界に転生したのだが、そのある街の名前が『冬木』と言う前世でもゲームでも聞全く聞いたことの無い地名なのだ。
もちろん、単なる俺の記憶違いだったり、普通に忘れてる可能性も全然あるのだが、どうも妙に引っかかるのだ。
俺以外のデビルサマナーに会ったことも無いし、仲魔……契約悪魔も冬木なんて地名は聞いたことも無いと言ってたし……。
まさかこの世界…………本当は『真・女神転生』でもなんでもない、全く別物の世界では無いのだろうか……………?
俺は勘違いをしてただけ…………?
それなら俺のこの6年間は一体……………。
俺はなんとも言えない気持ちを胸に抱えながら、深夜になったので取り敢えず日課の悪魔狩りに出掛ける事にした。
両親は共働きでいつも家にいないので、止められる心配は無い。
まあ、止められてもこっそりと行くんだが。
それはともかく、路地裏など人の負の感情が溜まりやすい場所は悪魔も馴染むのか実体化しやすく、そういった場所で『COMP』……悪魔召喚プログラムをインストールした携帯を用いて、サマナーと契約してない野良悪魔を呼び出して狩る。
それがこの6年間、ほぼ毎日続けてきた悪魔狩りという名のレベリングであり、レベルもかなり上がっている。
ゲームと同じ仕様で、仲魔だけでなくサマナーである俺もレベル上げの対象なのが有難かった。
お陰で俺のステータスは現在、『体』と『速』を中心にバランス良く上がっている。
やっぱメガテンは守備と速さよ。
守備が上がれば事故も減るし、速さが上がれば悪魔の攻撃もかなり避けやすくなる。
相手の攻撃を躱せれば即こちらのターンだからなクックック……まあ、現実だと普通に追撃してくるけど。
そこで鍛え上げた『体』の出番という訳である。
相手が自信満々に放ってきた攻撃を完封する程気持ちの良いもんはないぞ!
まあ、即死スキルに対する耐性は全然無いから、余裕で死ねるんだけど。
ゲームだと仲魔のスキルや耐性を人間側に移植出来る機能があったんだが、俺のCOMPにはその機能が何故か実装されてなかったりする。
メガテンには初見殺しな技を持つ悪魔も多いので、格下が相手でも油断は出来ず、どんな攻撃も必死に避ける必要があるんだよな。
ウィスパーイベントか写せ身機能の実装はよ(切実)。
「ん?なんだこの反応……」
人気の無い路地裏を選び、そこで日課である悪魔狩りを終えるとCOMPから鈍い警告音が鳴り響く。
COMPにはゲームにもあった悪魔の反応を感知するレーダー機能が実装されており、それによるとここから離れた場所で悪魔の反応が検知されたらしい。
それも複数。
「珍しいな、悪魔の反応なんて」
というか初めてじゃないか?
この街にいる悪魔は俺の仲魔か、悪魔狩りで召喚したレベリング用の野良悪魔くらいで、俺が関係してない悪魔の反応を示したのはおそらくこれが初めてだ。
それも複数とは…………もしかしてデビルサマナーの仕業か?
俺以外のデビルサマナーか……………興味があるな。
場所も近いし、少し行ってみるか。
俺はCOMPが示す場所へと近づいてみることにした。
普通なら面識の無いデビルサマナーに近寄るとか危険極まりないんだが、俺以外のサマナーなんて生まれてこの方会った事が無い。
なので一目見て、この世界が本当に『真・女神転生』なのかという確証が欲しい。
もしもの時は逃げれば良いし、格上相手でも全力で逃げに徹すればなんとかなるだろ。
いざとなれば『
COMPが示したのは埠頭にあるコンテナ街で、この時間帯ならまず人はいない筈だ。
人気の無い場所で複数の悪魔反応……これは間違いなくデビルサマナーが関わっているな。
俺は慎重に身を隠しながらゆっくりと、目的地に近付いていく。
そこで俺は見た。
悪魔狩りで強化された視界にはっきりと映し出される、激突する二体の
「フッ!」
「ハァッ!!」
戦っていた悪魔は二組の男女で、火花が飛び散るほどの勢いでお互いの武器を激しくぶつけ合っている。
一人は緑のタイツに全身を包んだ男で、顔にある泣きボクロが特徴のかなりのイケメンだ。
武器には一本の朱槍を使っているが、それ以上に顔に惹きつけられる。
というか『
メガテンにもあった魅了デバフで、試しにCOMPで解析してみたら、本当に放っていた。
常時魅了デバフ悪魔かよおい。
顔に反してやることえげつなっ。
そして、それに対するは青の鎧を身に纏う、見たこともないような美貌を誇る金髪の小柄な少女。
頭には一本のくせっ毛が生えており、その手には不可視の武器のような何かが握られており、身の丈も武器のリーチも上回る槍男に果敢に挑んでいく。
よく見ると少女の後方には銀髪の美女が控えており、状況的にあの女性が少女を使役するサマナーだろう。
やっぱりこの世界にもデビルサマナーはいたのか……。
初めて見たが、かなりの美女だ。
使役する悪魔といい、主従揃って美人とかこれがゲームのキャラだとめちゃくちゃ人気が出そうだ。
しかし、どちらも初めて見る悪魔だな。
人間そのものな見た目をした悪魔は『真・女神転生』にも大勢いたが、目の前の二人は記憶のどれにも該当しない。
俺はバレないようこっそりと、槍男と少女に向けてCOMPの機能である『アナライズ』を起動して二人の情報を解析してみた。
[ディルムッド・オディナ]
[種族:【英霊】]
[アルトリア・ペンドラゴン]
[種族:【英霊】]
数秒後、COMPの画面にはそう書かれていた。
ふむふむ、男のほうがディルムッド・オディナ……知らない人ですね。
というかマジで知らない。
何処の出典の悪魔だ?
そして少女のほうがアルトリア・ペンドラゴン………ペンドラゴン!?
アーサー王の名前じゃねぇか!!
え、アーサー王って女の子だったの?
いやまあ、信長・女説とかあるように、確かに可能性がゼロとは言わないけど…………。
それにしたって無理があるくね?
息子のモードレッドとかどうやって産んだんだよ……確か、姉であるモルガンとの不倫で出来た子供だろ?
これが事実なら凄まじい闇を感じるんですけど……………。
よし、取り敢えずこの話は置いておこう。
ある意味、この世界が初めてメガテンだと知った時以上の衝撃を受けたが、俺は努めて平静を保ち、COMPから送られたもう一つのデータである【英霊】という種族名に目を向ける。
種族【英霊】か……………。
『真・女神転生』に登場する悪魔には全てに種族名が設けられており、その数は実に多いのだが……【英霊】という種族名など聞いたことも無い。
それに加えて、ディルムッドやアーサー王という見知らぬ悪魔……間違いない、この世界は─────
────俺が前世で死亡する直前に購入したメガテンの新作ゲーム。
その世界に俺は転生したのだ!!
道理で、冬木という街名に心当たりが無い筈だ。
未プレイの新作に登場する街なんだから、知らなくて当然である。
槍男や少女も、最新作に初登場する新悪魔なのだろう。
まさかアーサー王を少女にして出すとは流石メガテン、恐れいったぜ!
きっと、この戦いもゲームで起きるイベントか何かなのだろう。
そう考えていると、いつの間にか槍男の取り出した黄色い短槍に少女の左腕が突かれ、そしたら今度は空から
いや、カオス極まってるなおい!
ここ本当にメガテンの世界なの……………?