マスター?いいえデビルサマナーです 作:こちらメギドラオンでございます
新しく乱入した赤毛のオッサンをCOMPで解析してみると、名を[イスカンダル]というらしく、正体はやはり悪魔だった。
確かイスカンダルはアレキサンダー大王の別名だった筈。
『真・女神転生』において、悪魔は人々からの知名度が高い程レベルも格も強くなる傾向があり、マケドニアの征服王を名乗るこの悪魔もかなりの力を誇るに違いない。
アーサー王の名を持つ少女悪魔といい、俺は目の前の悪魔達に対する警戒レベルを更に引き上げた。
「余は征服王イスカンダル! 此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスで現界した!! 聖杯に招かれし英傑たちよ! 己が願いを叶える前に一つ! 余の言葉を聴いてはいかんか!!」
……どうやらイスカンダルという悪魔は勧誘する為に来たらしい。
槍男改めディルムッドとアーサー王の戦いっぷりにいたく感動したらしく、自分の配下にならないかと熱心に誘っている。
というか聖杯戦争ってナンダ?
新手のメガテン用語か?
ちなみに勧誘の結果だが、ものの見事に断られていた。
と言っても、本人も断られる事は想定してたらしく、残念そうにしてるものの、あまり落ち込んでる様子は無い。
が、戦車の御者台に座っていたイスカンダルのサマナーらしき小年(今気付いた)はいたくご不満の様子で、自身の従魔であるイスカンダルを激しく叱りつけていた。
あっうざがられてデコピンされた。
めっちゃ痛そう。
『────一体、何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思ってみれば──よりにもよって、君自身が聖杯戦争に参加する腹だったとはねぇ。ウェイバー・ベルベット君』
「─!そ、その声は……ケイネス先生!」
陰からひたすら目の前の状況を観察していると、何処からともなく声が響いてくる。
声の質からして男だろうか。
声の主はイスカンダルのサマナー、名をウェイバーというらしいが、彼に対して酷くご立腹の様子だ。
その言葉には静かな怒りが滲んでいた。
盗みは駄目だよね盗みは。
そりゃケイネス先生とやらも怒るわ。
まあ、俺もほぼ借りパク同然で悪魔召喚プログラムを手に入れたから、人の事は言えないんだが。
『致し方ないなぁウェイバー君。君には私が特別に課外授業をしてやろうじゃないか。魔術師同士が殺し合うことの意味──その恐怖と苦痛、余すこと無く教えてやろう。光栄に思いたまえ』
その後もケイネス先生とやらのネチネチした説教は続き、ウェイバー少年もすっかり怯えた頃、仲魔であるイスカンダルが彼の震える肩に優しく手を置いた。
「おう魔術師よ!察するに、貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターとなる腹づもりだったようだが、片腹痛いわ!余のマスターたるべき男は、余と共に戦場を馳せる勇者でなければならぬ。姿をさらす度胸もない臆病者なぞ、役者不足も甚だしいぞ!わっはっは!」
『なっ……!?』
そのイスカンダルのあまりにも堂々とした言葉に呆気にとられたのか、ケイネス先生とやらの動揺する気配がこちらにもはっきり伝わって来た。
ウェイバー少年もそんな声に励まされたのか、少しだけ自信を取り戻したようで目に力が戻る。
おお……めちゃくちゃかっこいいなあのオッサン悪魔。
ネチネチ説教のケイネス先生とは大違いである。
学校にこういう先生って必ず一人はいるよね。
「おいこら! 他にもおるだろうが!! 闇に紛れて覗き見しておる連中はッ!! 聖杯に招かれし英霊共ッ! 今、此処に集うがいい!! それでも尚も顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れいッ!!」
その声はコンテナ街全体へと大きく響き渡り、俺のように身を潜めているであろう者達全員に届いた事だろう。
俺もその声を聞き、少し考えてみた。
果たして、このまま姿を隠しておくべきだろうかと。
元々、俺がここに来たのは俺以外のデビルサマナーの姿を確認しておきたかったからで、戦う為に来た訳では無い。
今やその目的は達成出来たと言えるし、このまま拠点に帰っても問題は無いだろう。
それに下手に介入して目を付けられるよりは、息を潜めておくほうが無難かもしれない………………。
よし、決めた。
俺はこの争いには関わらない。
デビルサマナー同士の戦いなんて、厄介な匂いしかしないしな。
事が終わるまで家に引き籠っておこう。
「───よもや、この
背を向けた瞬間、COMPから鳴り響く特大の警告音に反応した俺は、即座に後ろへ振り返る。
そこには黄金色の鎧に身を包んだ一人の悪魔がいた。
[【英霊】ギルガメッシュが現れた!]
なんだあの魔力量…………!
今日この場で見た悪魔のどれよりも高くて強い。
驚いてるのは俺だけじゃないようで、現にウェイバー少年やケイネス先生とやらはもちろん、槍男やアーサー王と言った悪魔達ですら眼の前のギルガメッシュという存在に圧倒されている。
ただ一人、イスカンダルだけは圧倒されつつも、平然とした態度で質問を投げ返していた。
「ふぅむ。難癖つけられてもなぁ……。イスカンダルたる余は、世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが?」
「たわけ。真の英雄は、天上天下に
初対面の相手を雑種呼び!?
メガテンにもそんな酷い呼び方をする悪魔はいなかったぞ!…………………多分!!
どうやら相当プライドの高い性格らしく、これには流石のイスカンダルも面食らっていた。
うん、びっくりするよね。
色んな性格の悪魔と会話してきた俺でも驚いてるもん。
耐性の無い人間には相当厳しい事だろう。
その後もギルガメッシュとやらの王様ムーヴは続き、イスカンダルが名前を聞いても「自分の顔を直接見ても分からないなら死ね」と死刑宣告までする始末。
あいつを仲魔にしてるサマナーは大変だろうなぁ……と思っていると、まさかの俺にも飛び火してきた。
「貴様もだ異邦人。一体、何処からやってきた魂かは知らぬが、何時まで我の事を探っている?この我が気付いてないとでも思ったか?」
アイエェェェェェェェェェ!?
なんで!?居場所バレてるなんで!?
かなり自信のある隠密だったのに!!
「三秒与えてやる。今すぐそこの物陰から出てこい。さもなければその首、即刻刎ねる」
やっぱりバレてるぅぅぅぅ!!
『トラフーリ』で逃げようと思ったが、強烈な殺気が飛んできたので仕方なく俺はゆっくりと物陰から姿を現した。
ビ、ビビったわけじゃねーし!
敵状視察の一環だし!!
「あれはマスターか……?何故サーヴァントも連れず一人で…というより、何処に隠れていた……?」
突然現れた俺に周囲からは驚きの声が上がり、周りの視線が一斉に俺の体へと突き刺さってくる。
俺が見られて興奮する変態だったらご褒美だったろうが、俺は変態じゃない普通のオタクなのであまりジロジロ見ないで欲しい。
オタクはシャイなんだよ…………………。
とにかく落ち着け。まだ焦る段階じゃない。
まずは挨拶からだ。それから俺を呼んだ理由を聞く。
一体、俺がどれだけの【悪魔会話】を熟してきたと思ってる。俺は前世と今世で鍛え上げた【悪魔会話】のトーク力で、努めて平静に話しかけた。
「いやー始めまして!今日は良い天気d」
「黙れ。我の許可なく
オウ……………失敗…………(´・ω・`)。
俺は悪戯が発覚した子犬のように縮こまった。
ギルガメッシュは何やら見定めるような目で俺を観察すると、ゆっくりと口を開いた。
「よもや我の庭にこのような異物が紛れ込んでいるとはな。本来なら貴様のような異物、即刻首を刎ねるのだが……ふむ、これも一興か。良いだろう。一言だけ、王である俺に物申す事を許してやる。何か申し開きがあるなら述べてみよ」
はわわ……………!正直、言ってる事の殆どが意味不明だけど、このままでは絶対に殺されるという事だけは理解出来た!
だが、真のメガテンオタクがこの程度で心折れると思うなよ!
この程度の逆境、悪魔との交渉で日常茶飯時!
俺は懐からある物を取り出すと、目の前のギルガメッシュへと献上した。
「……王よ。こちらつまらないものですが、お近づきの印にどうぞ」
「ほう……ご機嫌取りのつもりか?自ら貢物を差し出すその姿勢には感心してやってもいいが、場合によってはそれは我に対する侮辱となると知れ。本当につまらぬものなら今すぐ殺すぞ?」
「まーまー、そう言わずにどうかお一つ!これなるは異界から取り寄せた『酒』でございます!」
酒、という言葉にギルガメッシュはピクリと反応した。
ほんの一瞬だったが、俺の目は逃さない。
俺は悪魔狩りで手に入れたドロップアイテム、ゲームでもお馴染みの『アムリタソーダ』を取り出すと、王へと献上した。
「……この気配、神々の作った酒か」
「左様。インドに伝わる不死の霊薬アムリタ。それを飲みやすいよう────ソーダで割ったものです」
俺がそう説明すると周囲からは動揺の声が広がり、ギルガメッシュは一瞬呆然とした後、次の瞬間、大声で笑い始めた。
「フ、フハハハハハ!神共の秘蔵の霊薬を便利な道具として扱っているだと!?ククク、神々にとってこれ程屈辱的な事があろうか!」
「は、はぁ、どうも………………」
それ、メガテンだとそこら辺のショップで手に入る初期アイテムなんですけど……………。
本当に不死の霊薬が混じってるかは知らない。シッテテモイワナイ。
まあ、メガテンにはもっとヤバいアイテムが普通に存在してるので、本当に入っててもびっくりしないけど。
死者蘇生の薬とかもあるしな。
それはともかく、ギルガメッシュには気に入られたようである。
何がツボに入ったのかは知らないけど、まぁヨシ!
「気に入ったぞ!我の『蔵』に入れるには少し格不足だが、神共の苦渋に歪む顔を思えば、これもまた愉悦!その首を跳ねるのは少しだけ待ってやる。褒美として、この我に名を名乗る許可をやろう。光栄に思うが良い!」
しゃあっ!
やっぱり【悪魔会話】は貢ぎ物だぜ!!
どんな悪魔も貢ぎ物さえ与えれば、ご機嫌になるからな!
たまに貢ぎ物だけパクって来るムカつく悪魔もいるけれど、今回は上手く行った!
思わず小躍りしそうなくらい、俺の心は喜びで溢れている!
「フハハハ!そんなに嬉しいか!気持ちの悪い顔をしおって!」
「ははぁーっ有り難き幸せ!喜んで名乗らせて頂きます!」
あと、人の顔を気持ち悪いって言うんじゃねーよ!
全く、これだからイケメンは(偏見)。
「あのような気性の激しそうなサーヴァントと、平然と会話しているだと……!?」
「奴は一体………………もしや、あのサーヴァントのマスターか…………?」
「あ、アムリタって……流石に嘘だよなライダー……?」
「さてなぁ。だが、面白そうな奴ではないか!」
俺が冷や汗を流しながらギルガメッシュと会話してると、周囲からそんな声が聞こえてくる。
)お、おい止めろ…………目の前の悪魔に聞こえる……。
「フンッ……………喧しい雑種共だ」
あ、ヤバい。
周りの声のせいで、さっきまで楽しそうにしてたギルガメッシュの機嫌が急降下している。
折角、戦闘を避けられそうだと思ったのに、このままでは…………………!
「周りなんて放っときましょうよ王様!俺の名前なんですが……………!」
「A──urrrrrrッ!!」
俺は名乗りを挙げてギルガメッシュの気をこちらに惹こうとしたがその瞬間、割り込むように巨大な獣の雄叫びが周囲に響き渡る。
「興が冷めるとはこの事だぞ、狂犬………!!」
あ、終わった。
突然現れた漆黒の騎士風の姿をした悪魔に、ギルガメッシュは完全にブチギレていた。
おいおい死んだわあいつ。
「A─────urrrrrrrrrッッッ!!!!」
[【英霊】■ンス■ットが現れた!]
COMPに表示されたデータはいつもと違い、所々文字化けを起こしており、正確な名前を知る事が出来なかった。
これは認識疎外か?
全身から立ちのぼる黒いモヤ。あれが怪しいな……。
あの悪魔も相当強そうだが、流石にギルガメッシュのほうが格上だ。
本人も激怒してるし、このまますり潰されて終わりだろう。
出オチとは可哀想に、南無。
俺は目の前の悪魔に、心の中で手を合わせた。
「………………ふむ、面白い事を思い付いた」
「え?」
激怒していた筈のギルガメッシュはいつの間にか俺の顔を見つめており、ニヤリと悪い笑みを浮かべていた。
あれ、嫌な予感────。
「異邦人。貴様があれの相手をしろ」
「ええ!?」
え、俺が戦うの!?
どう見てもあんたが戦う流れだったんじゃない!?
「この我の為に戦えるのだ。光栄に思うが良い!」
ギルガメッシュの声は有無を言わせない威圧に満ちていた。
はいはい、やればいいんでしょこんちくしょう!
今日は厄日か何かかよ!
この悪魔苦手だわ!!
俺は渋々歩みを進め、黒騎士の悪魔と対峙する。
その姿を見た周囲からは驚愕の声が挙がるが、俺は構うこと無くCOMPを構えた。
まぁ、俺の実力がここの悪魔達にどれだけ通じるか知りたかったし、これも良い機会か。
俺はCOMPのボタンを操作し、内部にインストールされている【悪魔召喚プログラム】を起動した。
[summon systems OK?]
「来い──クー・フーリン」
[【幻魔】クー・フーリンを召喚した!]
深夜の埠頭に、悪魔が降臨した。
※今更ですけど、作者の偏見と独自解釈に満ちてる作品です。
それでも楽しんで頂けたら幸いです。