マスター?いいえデビルサマナーです 作:こちらメギドラオンでございます
俺が召喚した悪魔はクー・フーリン。
ケルト神話はアルスター伝説において、最強と謳われる英雄だ。
太陽神ルーグと人間の母から生まれた半神であり、身に纏う純白の鎧は夜の闇の中でも強く輝き、手に持つ魔槍ゲイ・ボルグはあらゆる敵を屠る必殺の槍である。
メガテンシリーズではお馴染みの悪魔であり、その強さは他の悪魔達と比べてもかなり上位に入る。
俺の前世の頃からのお気に入り悪魔の一体であり、その近接戦闘力は仲魔達の中でもトップクラスだ。
いつもお世話になってます。
「ほう……異界の英雄か」
ギルガメッシュが興味深そうに呟く。
よく見ると周りも俺の召喚したクー・フーリンを見て、信じられないような顔で驚愕していた。
「馬鹿な……クー・フーリンだと!?」
その中でも槍男、ディルムッドの反応は別格だった。
その顔は困惑だけでなく、まるで憧れの人物を目の当たりにしたかのようにも見える。
あれ、ひょっとしてオタクら同郷だったりする?
「A────urrrrrrrッッッ!!」
「っ!!」
漆黒の騎士が全身から黒いモヤを噴き出し、獣のような雄叫びを上げる。
今は余計な事を考えてる場合じゃないな。
あちらさんもやる気満々の様子だ。
俺はCOMPを構え、仲魔であるクー・フーリンの隣に並び立つ。
思えば、これがこの世界で初のデビルサマナーとその悪魔との戦いだ。
油断はしない、最初から全力で戦う。
「それじゃあ、いっちょ頼むぞクー・フーリン!」
「承った、我が主よ」
クー・フーリンが大地を蹴る。
その初速はまるで風のように
「あ、あのサーヴァントなんて速さだ!」
ウェイバー少年の喉から、悲鳴のような叫び声が挙がる。
クー・フーリンは瞬く間に距離を詰めると、手に持つ純白の魔槍ゲイ・ボルクを漆黒の騎士の体目掛けて勢いよく突き出す。
まるで砲弾のような勢いで放たれたその刺突に対し、漆黒の騎士は傍にあった街灯を支柱ごとへし折ると、まるで槍のように構えて迎え撃った。
「A───rrrrrrrrrッッッ!!」
結果はなんと──互角。
容易く折れる筈だった街灯は驚いた事に、ゲイ・ボルグの一撃を平然と受け止めていたのだ。
よく見ると、漆黒の騎士から溢れ出す黒いモヤが街灯全体を覆っており、まるで血管のようにドス黒く脈動している。
あれは街灯そのものを強化してるのか?
理屈は不明だが、ただの街灯が今やゲイ・ボルグとも互角に打ち合える武器と化していることに、俺は驚きを隠せなかった。
クー・フーリンも同じ事を考えたのか、目の前の騎士に静かに問いかける。
「面妖な術を使う。それが貴殿の能力か?」
「A───urrrrッッ!!」
答えの代わりに振るわれたのは、黒いモヤを纏う街灯による鉄塊の如き───殴打。
それをクー・フーリンは槍で受け止めようとし、打ち合いの瞬間、ズン、と重苦しい衝撃が辺りに響き渡る。
「ぬっ…………!!」
一体、どれだけの威力がその街灯に込められていたのか。
踏みしめたアスファルトが蜘蛛の巣状にひび割れ、純白の甲冑を揺らすほどの腕力が、クー・フーリンの槍をどんどん押し込んでいく。
そして押し切られる直前、クー・フーリンは自ら大地を蹴って後方へ跳んだ。
衝撃を殺しながら華麗に着地するも、ゲイ・ボルグを握るその両腕には、かすかに痺れが残っているように見えた。
マジかよ……受身を取らせたのか。
あのクー・フーリン相手に。
あの悪魔ヤバいな……どれだけ『力』の数値が高いんだ?
まともに打ち合えば、クー・フーリンでも少し厳しいかもな……。
「A───urrrrrrrrrrrrrッッッ!!!!!」
ますます威圧感を強める漆黒の狂騎士を前に、俺の背筋に冷たい汗が伝う。
だが───当のクー・フーリンの唇は戦慄ではなく、激戦の予感に薄く吊り上がっていた。
「受けよ我が魔法…………『ザンダイン』!!」
槍の穂先から解き放たれるのは、台風を圧縮したかの如き極大の暴風。
出た。メガテンお馴染みの魔法スキルだ。
衝撃の嵐が漆黒の騎士を呑み込まんと襲い掛かる。
当たれば高位悪魔とてタダでは済まない、クー・フーリンの十八番だ。
しかし、そんな俺の予想はまたもや呆気なく砕かれた。
「Aurrrrrrrrrrrrrrrrッッッ!!」
咆哮一閃。
漆黒の騎士は避けるどころか、黒いモヤを噴出する街灯を力任せに振り下ろし、迫り来る暴風を正面から粉砕したのだ。
衝撃波が周囲の車を揺らし、街灯が耐えかねて粉々に弾け飛ぶ。
「なんと…………」
理外の一撃に、これにはさしものクー・フーリンも息を呑む。
力技で極大魔法を突破する怪物。だが、その瞳に宿る戦意の炎は消えるどころか、一層強く燃え上がっていた。
「……ハッ、愉快。異界の騎士とは、これほど骨のある猛者ばかりか!」
破砕した街灯を捨て、落ちていた鉄パイプを拾い上げる漆黒の騎士。
すると再び黒いモヤが溢れ出し、鉄パイプ全体を先程の街灯のように覆い尽くしていく。
武器無制限のチート性能かよ羨ましい。
俺にもくれ。
じり、と間合いが詰まる。
このまま手探りで殴り合ってもらちが明かない。
俺はCOMPを構え直し、頼れる仲魔の背中に声をかけた。
「クー!
「ふっ……言われるまでもない。好きにかけよ
OK、俺はCOMPの画面を親指で素早くタップした。
その動きを受け、内部にインストールされている悪魔召喚プログラムが瞬時に最適化。
クー・フーリンのステータス領域へと干渉を始める。
「攻撃力を極大強化。頼むぞ『
COMPの液晶から解き放たれた真紅の粒子が、眩い光を放ってクー・フーリンの全身を力強く包み込む。
その瞬間、純白の甲冑から跳ね上がるような威圧感が噴き出した。
筋肉の収縮、集中力の高まり、そして槍に宿る魔力の密度が、次元を一つ引き上げたかのように膨れ上がっていく。
「Aurrrrrrrrッッッ!!」
異変を察知した漆黒の騎士が、黒いモヤを纏わせた鉄パイプを上段に構え、超人的な踏み込みで迫る。
だが、もう遅い。
バフを得たクー・フーリンの領域には遠く及ばない。
クー・フーリンが踏み込んだ足元から、アスファルトが粉砕して爆発を起こす。
そして、クー・フーリンは漆黒の騎士の眼前で───
「Aurrrrッッッ!?」
残像すら残さぬ初速。
黒い騎士が振り下ろした鉄パイプは、虚空を穿つだけに終わる。
「捉えたぞ、異界の猛者!」
「ッ!!」
頭上からの声に気付き、上を見上げるももう遅い。
空中に跳躍したクー・フーリンが、ゲイ・ボルグに凄まじい魔力を込め、漆黒の騎士へと凄まじい勢いで解き放つ。
「受けよ我が一撃を! 『デスバウンド』!!」
一瞬の静寂。
次の瞬間、戦場に撒き散らされたのは、視界を焼き尽くすほどの真っ白な閃光の群れだった。
一刺しが十に、十が百の刺突と斬撃へ。
衝撃波を伴う連撃の嵐が、まるで幾重もの巨大な十字を描くように漆黒の騎士ごと撃ち抜いていく。
「A───、Ghaaaaaaaッッ!?」
かろうじて防御が間に合うも、手にしていた鉄パイプは一瞬で木っ端微塵に砕け散り、逃げ場のない乱舞が漆黒の甲冑を容赦なく切り刻んでいく。
相当な硬度を誇ったであろう鎧も無数の亀裂が入り、黒いモヤが悲鳴のような音を立てて霧散していった。
「見事……ッ!」
遠巻きに見守っていたディルムッドが、その神技に震えるような声を漏らした。
そして───最後の一閃。
真白な光の軌跡を描きながら放たれた渾身の払い打ちが、漆黒の騎士の体躯、その中心を捉えた。
「Aurrrrrrrrrrrrrrrrrr!?」
爆音と共に、漆黒の騎士が弾丸のような勢いで吹き飛ぶ。
背後のコンテナを次々と突き破っていき、数十メートル先の大型トレーラーのコンテナへと激突。
そのままぐったりと倒れ込み、動かなくなる。
煙が立ち込める戦場に、静寂が訪れた。
「フゥ……」
静かに着地したクー・フーリンが残心を解く。
「どうだ
「ああ、文句無しの百点満点だ。花丸をやろう──よくやってくれた」
俺はCOMPを収め、ようやく安堵の息を漏らした。
これがメガテンの悪魔、そしてデビルサマナーの戦い方だ。
参ったか!ハーッハッハッハ!
……………え、俺は何もしてない?
い、いや、ちゃんとバフかけたし……………。
それに、サマナー本人が前線に立つのは危険だから……。
あ、今俺の事弱いと思っただろ。
弱くねーし!ちゃんと戦えるし!
その気になったらあのくらいの悪魔、一人でも倒せたし!本当だし!
……………ふぅ、深呼吸。
冷静さを取り戻した俺は、改めて周囲の様子を見回した。
特に漆黒の騎士が吹っ飛んでいった場所は念入りに観察したが。倒れ込んでいた筈のその姿は何処にも見当たらない。
COMPからもその反応は完全に消えていた。
「退いたな」
クー・フーリンの推察通り、漆黒の騎士のサマナーが形勢不利を悟り、COMPで帰還させたのだろう。
倒した場合は騎士の保有する【MAG】が俺のCOMPに自動で回収されてる筈だからな。
それが無いということは、つまりそういう事だろう。
とにかく、騎士との戦闘はこれで完全に終了したと見ていいだろう。
初めての対デビルサマナー戦だったが、なんとか上手くやれたな。
俺はクー・フーリンと短めのハイタッチを交わした。
また頼むわ。
さて、次は周りの連中がどう出るかだな…………。
俺は改めて気を引き締め直した。
まだ戦いは終わっていない。
※今作の補助魔法について少し捕捉。
ゲームでは攻撃力が上昇するタルカジャですが、この小説では筋力が上昇=攻撃力が上昇するという設定となっています。
なので攻撃力だけでなく、速度も上昇してます。
が、速度専門の上昇魔法であるスクカジャと比べたら微々たるものです。
スクカジャはタルカジャと異なり、反射神経の強化による体の俊敏化による回避率UPと速度上昇がメインと言った感じ。
ラクカジャは普通に防御上昇です。