こちらアルスラーン戦記   作:亀頭十三

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第11話

「……魔道士どもの様子をうかがっていると、神殿の壁に隠し扉があるのがわかりました。それは地下道につながっておりましたので、それを上っていくと、エクバターナ市内の一軒家の地下室に続いていたのです」

 リョーツーンの報告を受けて、大将軍キシュワードは色めきだった。

「……なんと、まさか王都の地下にザッハークの神殿があったとは! 国王陛下の留守を預かる者として、すててはおけぬ!」

「キシュワード卿。こうなってくると、ザッハークの一党どもの根城がそれだけとも思えませぬ」

「その通りだ、ザラーヴァント。エクバターナ市中を一斉捜査するのだ。今すぐとりかからねば!」

 

 日中にもかかわらず、エクバターナの門は即座に全て閉められ、パルス兵がエクバターナ中の家屋に立ち入り検査してまわった。

 暗黒神殿の出入口も封鎖されたが、リョーツーンとしては、その効果については半信半疑である。

「出入口があの二つだけとも限らんし、いざとなればザッハークの魔道士には地行術があるからな……」

 手紙集積所総本部にもどったリョーツーンがぼやいていると、丸顔の部下が話しかけてきた。

「家探しが、とんだ騒動になっちゃったね、リョーさん」

「まったくだ。これじゃ手紙配達の業務もすすめようがない。商売あがったりだ」

「地方から別の地方へ送る手紙も、いったんエクバターナに送ってから宛先の地方に送るようになってるからね……」

「一見すると、まわり道をしてるだけだが、手紙運搬の流れが単純明快になるって利点が捨てがたかったんだよなあ。……ん? ワシに手紙が来てるな」

「また、お下劣絵画かい? 好きだなあ」

「バカを言え。芸術作品はジムサ卿の邸に届くように変更済みだ」

「ジムサ将軍にバレたら叩きだされちゃうよ……」

「追い出されてもいいように家探ししてんじゃねえか」

「その家探しが、とんだ騒動に……話がどうどう巡りになってきたな」

「おーっ! よろこべ、テライス、いい知らせだ!」

「お下劣絵画の新作ができたのかい?」

「いいかげん、そこから離れろよ。こいつはな、アルスラーン陛下が凱旋してくるって報せだ」

「凱旋ってことは、勝ったんだよね」

「ああ、大勝利だ。やっぱりトゥラーン、チュルクとまわり道してシンドゥラに入ったのが効いているな。……まわり道もやり方次第で近道になるんだが、こいつがなかなか難しくてなあ。今度、副宰相どのにコツをきいてみるか」

 リョーツーンは自分の角刈りをかき回して嘆息するのだった。

 

 カーヴェリー河を渡ったパルス軍の後背に自軍を布陣させようとしていたチュルク国王カルハナは、パルス軍がトゥラーンを通っての迂回をはじめたのを知ると、あわてて、その迎撃にチュルク軍を向かわせた。

 しかし、地の利を得られずにチュルク軍は総崩れとなり、国都ヘラートにもどることもできずにシンドゥラへと敗走した。

 一足先にシンドゥラで猖獗を極めていたトゥラーン人傭兵団の指揮をとっていた将軍イパムはトゥラーン人ではなくチュルク人であった。イパムは自分の方が立場が上だと思うと際限なく傲慢になる男であった。まるで「拾った野良犬どもに立場をおしえてやる」と言わんばかりの態度であった。しかし、トゥラーン人傭兵団は野良犬の集まりなどではなかった。そもそも、シンドゥラという異国で五千人のトゥラーン人に囲まれて、なぜ自分の立場が上だと思い込めたのか。この部隊にいるチュルク人は、五十人しかいないというのに。

 自分の思い上がりを反省する機会を、イパムは得ることができなかった。自分が罵詈雑言を浴びせかけたトゥラーン人の、激発の斬撃で頭と胴を分断されてしまったのである。

 イパムを斬殺したのはドルグという初老の男であったが、他のトゥラーン人たちはドルグを捕らえようとも裁こうともしなかった。むしろドルグに同調したのである。

 トゥラーン傭兵団にいたチュルク人はひとり残らず惨殺された。

 そこへチュルク軍が逃げ込んできたのである。むろん、両軍が合流できるわけがない。

 それどころか、トゥラーン傭兵団はジムサ率いるパルスのトゥラーン騎兵団に説得され、その傘下に加わってしまった。これには、トゥラーン傭兵団の家族からの手紙をジムサが携えていたことも成功に大きく寄与していた。

「かつてリョーツーンにしてやられた策だが、効果は絶大だな」

 ジムサは苦笑いを浮かべた。

 チュルク軍はコートカプラ城を必死に攻め落とし、そのまま立て籠もったが、もともとなんらかの戦略があっての行動ではない。とにかく拠点が欲しい、その一心でしたことである。

「いきあたりばったりな相手ほど行動の読みやすい相手もいませんな」

 などとナルサスはうそぶいたが、糧食を餌にチュルク軍の動きを誘導して、コートカプラ城をまたたく間に制圧してしまったので、ナルサスを大言壮語の輩とそしる者などはでてこなかった。

「まさか、こうも早く決着がつくとは思わなかった。シンドゥラ美人を口説くひまもないではないか」

「そうか。では、おぬしだけシンドゥラに残って真実の愛とやらを探すのだな。パルスが静かになってけっこうなことじゃ」

 不埒なぼやきをファランギースに聞きとがめられたギーヴが大慌てになり、アルスラーンの笑顔を誘うのであった……。




 ノープランで書き始めた本作品ですが、こちら銀河英雄伝説と同じく「この両津さまの目が黒いうちは、バッドエンドがまかり通ると思うなよ」路線を突っ走ることになりそうです。芸がない? ごもっとも。
 カクヨムで執筆したファンタジーは、「こいつってシャア? いや、これはシャアじゃないな。やっぱりシャアかも。いやいや、シャアはこんなこと言わない。なにやってんだよキャスバル兄さん!」みたいな作品にしあがってしまいました。うーん、パロディ要素ってば、とってもデンジャラス。次は自転車ロードレースを題材にした学園スポコンに挑戦する予定です。興味がありましたら、是非ご一読ください。こちらも亀頭十三名義で書いてます。登録したあとで気付いたんですが、卑猥な意味で受け止められかねないペンネームですね、これ。
 さて。どうやってリョーツーンをマルヤムにぶち込んだものか、悩みまくってます。あのキャラの生存ルートを解放しようとしたら、リョーツーンをマルヤムに赴かせるしかなさそうなんですが、そのくだりをうまく加減しないと、クシャーフルまでマルヤムに殴りこんできて収拾がつかなくなっちゃいそうで……。ほんとに、どうしたもんだかなあ……。
 一日一更新のペースも守れなくなってきてしまいましたが、見捨てず気長に待っていただけると、うれしいです。
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