The Amazing Spider-Man 5: Legacy of Oscorp 作:たきび/まもる
ニューヨークの昼。よく晴れた空の下、マンハッタンはいつもと変わらない騒がしさに包まれていた。
道路には車が途切れることなく連なり、どこかで鳴ったクラクションへ、少し離れた場所から別のクラクションが返ってくる。歩道では観光客とビジネスマンが入り乱れ、通りの一角にある工事現場からは機械の駆動音や金属を打つ音が絶えず響いていた。高層ビルのガラスは真昼の太陽を眩しく反射し、街のあちこちへ白い光を跳ね返している。
そのビル群の間を、赤と青の影が横切った。
スパイダーマンは右手のウェブを離すと、それまでの勢いを残したまま空中へ投げ出された。身体が大きな弧を描いて上昇し、速度が落ち始めるより早く、少し先のビルへ次のウェブを撃ち込む。糸が張った瞬間に身体が再び前方へ引かれ、眼下の交差点を一気に通過した。
歩道を歩いていた子供が、その影に気づいて空を見上げた。
「あ! スパイダーマン!」
母親の手を引っ張りながら夢中で指を差す子供に気づき、スパイダーマンは次のウェブへぶら下がったまま片手を軽く振った。子供も嬉しそうに手を振り返し、その姿はすぐに後方へ流れていく。
「今日は平和だなぁ……」
珍しく何事も起きない昼を楽しめるかもしれない。そんなことを呟いた直後、数ブロック先からタイヤが路面を擦る甲高い音が響き、それを追うように乾いた銃声が何発か聞こえてきた。
スパイダーマンはウェブを離した瞬間、空中で身体を反転させた。
「……言ったそばから。」
近くのビルへウェブを撃ち、張った糸を強く引く。それまで進んでいた方向から大きく軌道を変えると、銃声の聞こえた方角へ一気に加速していった。
数ブロック先では、一台の輸送車が道路を斜めに塞ぐように停まっていた。
後部ドアは開け放たれ、その横では警備員が一人、路上に倒れている。数人の男たちは輸送車から大きなケースを引きずり出し、少し離れた場所に停めたワゴン車へ次々と運び込んでいた。そのうちの一人は拳銃を手にして周囲を威嚇し、逃げ遅れた通行人へ銃口を向けている。
「近づくな!」
男が怒鳴ると、それまで遠巻きに様子を見ていた人々も悲鳴を上げて散っていった。
その頭上にある街灯へ、赤と青の人影が音もなく降り立った。
「ハロー、悪者さん。」
声に気づいた男たちが一斉に振り返る。
街灯の上にしゃがみ込んだスパイダーマンを見て、全員の動きが一瞬だけ止まった。
「スパイダーマンだ!」
「撃て!」
スパイダーマンは小さく肩を落とした。
「やっぱりそうなるよね。」
拳銃が火を吹くより早く街灯を蹴り、空中へ飛び出す。飛んでくる弾丸の間を身体を捻りながら抜けると、着地する前に先頭の男の手首へウェブを撃った。
糸を強く引く。
拳銃だけが男の手から抜け、宙を舞う。
「返せ!」
「危ないから没収。」
拳銃を遠くへ飛ばしたあと、スパイダーマンはそのまま男自身をウェブで引き寄せた。勢いよくこちらへ飛んできた身体を避けるように空中で半回転し、背後から迫っていた別の男へぶつける。二人はまとめて道路へ転がり、残っていた仲間たちが慌てて散開した。
その中で、一人だけ違う動きをしている男がいた。
男は輸送ケースを両腕で抱え、そのままワゴン車へ向かって走っている。
スパイダーマンはその行動を目で追った。
普通なら、ここで荷物を捨てる。スパイダーマンが現れた時点で仕事の失敗を悟り、自分まで捕まる前に逃げようとする犯罪者の方が圧倒的に多い。
だが、その男は違った。
仲間が次々と倒されても構わず、輸送ケースだけは手放そうとしない。
スパイダーマンはケースへウェブを撃った。
強く引くと、ケースが男の腕から抜けてこちらへ滑ってくる。
「ちょっと預かるよ。」
男はそのまま逃げるどころか、足を止めて振り返った。
「返せ!」
「逃げないんだ。」
男は迷わずスパイダーマンへ突進し、拳を振るった。
一発目は首を少し傾けてかわし、続く二発目は上体を逸らして避ける。三発目が来たところで腕を掴み、その勢いを利用して足を払った。
男の身体が道路へ転がる。
起き上がる前にウェブを撃ち、両腕と胴体を地面へ固定した。
「そこまで大事な物なの、これ?」
スパイダーマンが輸送ケースを指しても、男は何も答えなかった。ただ必死に身体を捻り、固まり始めたウェブをどうにか剥がそうとしている。
その時、後頭部に独特の感覚が走った。
スパイダーマンは振り返らなかった。
背後から振り下ろされた鉄パイプを、右手だけで受け止める。
予想していなかった感触に、鉄パイプを握っていた男の顔が固まった。
スパイダーマンはゆっくり振り返る。
「危ないよ。」
相手の手から鉄パイプを取り上げると、両手で端を持ち、軽く力を込めた。硬い金属が中央から大きく歪み、ほとんどU字型になる。
男は目を見開いたまま言葉を失った。
「そういう顔するなら、最初からやめようよ。」
次の瞬間、ウェブが男の身体を包み、そのままワゴン車の側面へ貼りつけた。
数分後には、男たち全員が道路や車体へウェブで拘束されていた。
遠くから複数のサイレンが近づいてくる。
スパイダーマンは奪い返した輸送ケースを路上へ置き、その前へしゃがみ込んだ。外側に貼られたラベルを確認するが、書かれているのは医療機器用の電子部品という内容だけで、ケース自体にも高額品や危険物を示すような特別な表示はない。
「……これのために?」
指先で軽くケースを叩いてみる。
当然、何も答えない。
「まあ、警察に聞けばいいか。」
立ち上がったスパイダーマンは、最初に倒れていた警備員のもとへ向かった。
意識は戻っているようだったが、まだ起き上がろうとはしていない。スパイダーマンはその横へしゃがみ込み、顔色を確認する。
「大丈夫?」
警備員は少し時間をかけて頷いた。
「あ、ああ……。」
「救急車、もう来るから。無理に起きないで。」
「ありがとう……。」
「どういたしまして。」
サイレンはすぐ近くまで迫っていた。
やがて数台のパトカーが現場へ入り、警官たちが拘束された男たちや輸送車の状態を確認し始める。少し遅れて救急車も到着し、倒れていた警備員のもとへ救急隊員が駆け寄った。
スパイダーマンは現場を邪魔しないよう、近くの建物の壁面へ移動していた。
道路から数メートル上に張りつき、警官たちが男たちを一人ずつ引き剥がしている様子を眺めていると、下から聞き慣れた声が飛んでくる。
「相変わらず高いところが好きだな。」
スパイダーマンが視線を落とす。
ヒル警部が壁際からこちらを見上げていた。
「こんにちは。」
「降りてこい。」
「ここでも聞こえるけど。」
「俺の首が痛い。」
「はいはい。」
スパイダーマンは壁から両手を離し、そのまま垂直に落下した。地面へ届く寸前で身体を回転させ、ヒルの前へ軽く着地する。
ヒルはそんなスパイダーマンを一度見てから、道路の中央に置かれた輸送ケースへ目を向けた。
「またか。」
スパイダーマンも同じ方向を見る。
「また?」
「最近こういうのが増えてる。」
「医療機器泥棒?」
「そこじゃない。」
ヒルは、警官に囲まれている男たちを顎で示した。
「逃げない連中だ。」
スパイダーマンは少し黙った。
自分が感じていた違和感と同じものを、ヒルも感じているらしい。
「……やっぱり気になってた?」
「お前もか。」
「僕が出てきても荷物を捨てなかった。」
「最近はそういう奴が多い。」
ヒルが現場の中を歩き始めたため、スパイダーマンもその横へ並んだ。
「以前なら、仕事が失敗したと判断したらさっさと逃げた。キングピンの頃は特にな。」
「そりゃ普通そうだよ。」
ヒルは小さく息を吐いた。
「フィスクは犯罪を商売としてやってた。」
「儲からないなら撤退する。」
「そうだ。」
二人のすぐ前を、警官に連行される男が通り過ぎた。男は手錠をかけられても周囲を見ようとはせず、少し離れた場所に置かれた輸送ケースへ何度も視線を送っている。
ヒルはその背中を見送った。
「だが最近の連中は違う。」
スパイダーマンも男の背中を見る。
「目的を達成する方が、自分が捕まらないことより大事。」
「そんな感じだな。」
「同じ組織?」
「まだ分からん。」
ヒルは現場検証をしている部下へ一度視線を向けてから答えた。
「キングピンが消えた後、ニューヨークの裏社会はかなり荒れた。細かい連中が山ほど出てきた。」
「空いた席の取り合い。」
「最初はそう思ってた。」
ヒルはそこで少し声を落とした。
「だが、その中に妙に統率された連中が混ざってる。」
スパイダーマンが横を見る。
「どんな?」
「仮面をつけてる。」
「仮面。」
「鬼みたいな奴だ。」
スパイダーマンは自分の顔を指差した。
「僕に仮面の悪口言う?」
ヒルはマスクをしばらく見た。
「お前のはまだマシだ。」
「それ褒めてる?」
「違う。」
「残念。」
ヒルは構わず話を続けた。
「警官の間じゃ、デーモンって呼ばれてる。」
「デーモン?」
「正式名称じゃない。誰かがそう呼び始めただけだ。」
スパイダーマンは少し考えたが、心当たりはなかった。
「まだ会ったことないな。」
「そのままでいろ。」
スパイダーマンは小さく笑った。
「そういうこと言うと、大体すぐ会っちゃうんだけど。」
「じゃあ忘れろ。」
二人はそのまま規制線の内側を歩いた。
拘束された男たちを連行する警官。警備員を担架へ移す救急隊員。規制線の外からスマートフォンを向ける野次馬。事件の内容こそ違っても、見慣れてしまったニューヨークの光景だった。
スパイダーマンはその様子を眺めながら、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば。」
ヒルが横目を向ける。
「あの件、何かわかった?」
「どの件だ。」
「オットーのメッセージ。」
その言葉に、ヒルの表情が僅かに変わった。
「ああ。」
数日前。
廃棄されたルーズベルト駅。その地下に隠された研究室では、パソコンのモニターだけが青白く浮かび上がっていた。
ピーターは椅子へ座り、科学者向けコミュニティサイトを開いていた。
画面の隅に、一件の新着通知が表示される。
送信者の名前を見たところで、ピーターの手が止まった。
OTTO
オットーが拘束されてから、このアカウントが動いたことは一度もない。
ピーターはしばらく画面を見つめたあと、慎重にメッセージを開いた。
短い文章の下に、複数の添付ファイルが並んでいる。研究データ、資産管理記録、設備移管記録、そしてオズコープ内部で使われていたと思われる文書の断片。
ピーターは最初に本文を読んだ。
私が見つけたものは、私の研究だけの問題ではなかった。
オズコープには、まだ隠されているものがある。
私にはもう確かめられないかもしれない。
だから君に残しておく。
添付した資料も確認してほしい。
重要なのは、そこに書かれているものだけではない。
記録から消えているものだ。
ただし、一つだけ約束してくれ。
見つけても、一人で背負おうとするな。
最後の一文を読んだところで、ピーターの指が止まった。
少しの間、画面から目を離すことができなかった。
以前のオットーなら、自分一人で答えを出そうとしたかもしれない。そしてピーター自身にも、その傾向があることをオットーは知っている。
だからこそ、この一文を残したのだろう。
ピーターは息を吐き、添付資料の一つを開いた。
最初に出てきたのは、オットー自身の研究記録だった。
ページを追っていくと、一部の項目に移管済と記されている。
だが、移管先がない。
別のファイルを開く。
今度は試作設備の管理台帳だった。確かに存在していたはずの設備が、ある時点を境に記録から消えている。廃棄した形跡もなければ、外部へ売却した記録もない。
さらに別の研究も同じだった。
途中までは通常の管理記録が残っている。それなのに、ある日を境に突然追えなくなる。
ピーターはモニターへ顔を近づけた。
「……どこに行ったんだ?」
現在。
ヒルはスパイダーマンの質問に頷いた。
「添付されてた資料も含めて調べてる。」
「何か出た?」
「まだ決定打はない。」
スパイダーマンは少し首を傾げる。
「でも?」
ヒルはすぐには答えず、言葉を選ぶように数秒考えた。
「オットーが指摘していた不自然さ自体は本物だ。」
スパイダーマンの様子が僅かに変わる。
「研究が消えてる?」
「正確には、途中から追えなくなる。」
ヒルは指を折りながら挙げていった。
「研究設備、試作品、研究データ、それに一部の資産。廃棄された記録はない。外部へ売却した記録もない。それなのに、オズコープの通常の管理台帳から突然いなくなってる。」
「じゃあ、どこかに移した。」
「可能性はある。」
「オットーの言ってた通り?」
ヒルは簡単には頷かなかった。
「“何かがある”可能性は高くなった。」
「それだけ?」
「捜査ってのはそういうもんだ。」
スパイダーマンは小さく肩を落とした。
ヒルは続ける。
「問題は、その“どこか”が分からない。」
「オズコープの中じゃないの?」
「それを証明できるものがない。」
「でも――」
「勝手に入るなよ。」
スパイダーマンは口を閉じた。
「……まだ何も言ってないけど。」
「顔に書いてある。」
「マスクしてるんだけど。」
「雰囲気で分かる。」
少し間を置いて、スパイダーマンが尋ねる。
「スパイダーセンス?」
ヒルは真顔だった。
「なんだそりゃ。」
「いや、こっちの話。」
スパイダーマンは小さく息を吐いた。
「分かってるよ。僕も今すぐ忍び込む気はない。」
「本当だな?」
「本当。」
ヒルはしばらくスパイダーマンを見ていたが、やがて諦めたように視線を外した。
「……まあいい。」
「信用ないなぁ。」
「実績だ。」
それを言われると反論できない。
ヒルは僅かに表情を緩めた。
「何か分かったら連絡する。」
「頼む。」
「お前も何か見つけたら、先にこっちへ持ってこい。」
「分かってる。」
スパイダーマンは近くのビルを見上げ、片腕を上げてウェブを撃った。
身体を引き上げようとしたところで、背後からヒルに呼び止められる。
「スパイダーマン。」
振り返る。
ヒルは少し間を置いてから言った。
「オットーが最後に書いてたこと、忘れるなよ。」
ほんの一瞬、メッセージの最後の一文が頭に蘇った。
見つけても、一人で背負おうとするな。
今度は軽口を返さなかった。
「……分かってる。」
ウェブを引く。
身体が一気に宙へ浮かび、そのまま昼のニューヨークへ飛び出していった。
午後。
F.E.A.S.T.の施設内では、スタッフとボランティアが忙しく行き交っていた。
寄付された食料品や衣類、生活用品の入った段ボール箱が壁際に積み上げられ、仕分けを終えたものから倉庫や配布スペースへ運ばれていく。入口から新しい荷物が入ってくるたびに誰かが声を上げ、別の誰かがそれを受け取っていた。
「ピーター、それ向こう!」
少し離れた場所からメイの声が飛んでくる。
ピーターは大きな段ボール箱を二つ抱えたまま、その場で立ち止まった。
「どっち?」
「向こうよ!」
ピーターは左右を見る。
「向こうが二方向あるんだけど!」
「右!」
「最初から右って言ってよ!」
「口より手を動かす!」
「はいはい。」
苦笑しながら右へ曲がると、通りかかった年配の男性がそのやり取りを聞いて笑っていた。
「大変だな。」
ピーターも笑い返す。
「昔からです。」
指定された場所へ箱を置き、ようやく空いた両手で腰を伸ばす。
「よし。」
「助かるよ、ピーター。」
背後から声をかけられ、振り返る。
マーティン・リーが同じように荷物を抱えて立っていた。
「リー。」
「最近、少し人手が足りなくてね。」
ピーターは部屋の反対側で別のスタッフへ指示を出しているメイを見る。
「メイが三人分くらい働いてるから大丈夫じゃない?」
少し離れたところから即座に声が返ってきた。
「聞こえてるわよ!」
ピーターが肩をすくめると、リーは小さく笑った。
「君も十分働かされているようだ。」
「完全にタダ働きだよ。」
「食事くらいは出す。」
「じゃあ時給は昼飯で。」
「交渉成立だな。」
そこへ、仕事を一段落させたメイがやってきた。
「リーさん、この前の件、本当にありがとうございました。」
「いえ。」
リーは穏やかに首を振る。
「こちらこそ、いつもメイさんには助けられています。」
「私なんて大したことしてないわ。」
「そんなことはありません。」
リーは施設内を見回した。
食料を仕分けしているスタッフ。相談窓口で話をする利用者。新しい衣類を棚へ並べるボランティア。人の出入りは絶えず、どこを見ても誰かが動いている。
「メイさんがいるから、ここへ来られる人も大勢いる。」
メイは少し照れたように笑った。
「そういうことをさらっと言うから、みんなリーさんのこと信用しちゃうのよ。」
「それは困りましたね。」
「私はもう完全に信用してるけど。」
ピーターが二人を見る。
「僕より?」
メイは迷うことなく答えた。
「当然。」
「早いなぁ。」
リーが笑い、ピーターもつられて笑った。
その時、リーのポケットでスマートフォンが振動した。
画面を確認したリーは、二人へ軽く頭を下げる。
「失礼。」
少し離れた場所へ移動し、通話に出た。
「はい。」
相手の話をしばらく聞く。
「分かりました。」
さらに少し間を置いてから、普段と変わらない穏やかな声で続けた。
「そのまま進めてください。必要な費用はこちらで用意します。」
通話を終えると、何事もなかったようにスマートフォンをしまい、二人のところへ戻ってくる。
その頃には、ピーターはすでにメイから次の箱を渡されていた。
「おかえり。」
「ああ。」
ピーターは箱を抱え直す。
「仕事?」
リーは軽く笑った。
「そんなところだ。」
メイがピーターの背中を軽く叩く。
「ほら、次。」
ピーターは壁際に積み上がった箱の山を見る。
「……まだあるの?」
「山ほど。」
「スパイダーマンでも呼んでこようかな。」
メイが怪訝そうな顔をする。
「何?」
ピーターは慌てて箱へ視線を戻した。
「いや。なんでもない。」
苦笑しながら、次の荷物を抱えて歩き出す。
リーはそんな二人のやり取りを、少し離れた場所から静かに眺めていた。
窓の外では、昼下がりのニューヨークがいつも通り動いている。
道路には車が流れ、歩道では人々が行き交い、ビルの隙間から差し込む午後の光が街を照らしていた。
スパイダーマンが追っている、記録から消えたオズコープの研究。ヒルが警戒している、鬼のような仮面をつけた新しい犯罪者たち。そして、リーのもとへかかってきた一本の電話。
その時点では、どれも互いに関係のない出来事にしか見えなかった。
まだ誰も知らなかった。
それらがすでに、同じ場所へ向かって動き始めていることを。