それも良かったら楽しんで下さい。
多分…いや、確実に昨夜の俺は浮かれていた。
ああ…、間違いなく昨夜の俺は誰がどう見ても浮かれていたし、調子に乗っていた。
それはもう、お酒を飲んでいなくとも酔っているように見える程に…。
だから、だろう…。
俺が昨日酒を飲んだのは…きっと浮かれていて自分の欲求を制御出来なかったせいだ。
そして、制御出来なかった欲求は飲酒欲だけにとどまらず、どうやら下半身の欲求さえも抑えが効かなかったらしい。
「んっん〜…。」
俺の隣に横たわっている
親の仕送りでこの宴の星ピノコニーで贅沢な一人暮らしを送っている俺の家の俺の寝室の俺のベッドの上で俺は今、酒のせいで昨夜の記憶が全くない状態で必死に今の状況を把握しようと頭を働かせる。
今、俺の目の前に広がっている光景はこうだ…。
俺のベッドの上で
そう、一緒のベッドで裸の男女が寝ているのだ。
「何が…あった…?」
本当に何があったのだ?
わからん…。
全く思い出せない…。
しかし、だからと言って思考を停止する訳にも行くまい。
取り敢えず昨夜までに一体何があったのか、可能な限り記憶を遡って整理してしみよう…。
ー
ーー
ーーー
整理するついでにヌルっとカミングアウトするが、俺は転生者だ。
そして、今俺がいるこの世界は前世で俺が死ぬ程愛してプレイしていたゲーム【崩壊スターレイル】の世界だ。
前世の俺は突然原因不明の死を遂げた。
いつも通り、ゲームをして眠くなったら寝る…そんないつも通りの生活を送っていただけなのに、死ぬ直前の記憶もないまま、気付けば俺はこの世界に転生していた。
目を覚ませば知らない言語と知らない建物の中で何故か赤ん坊になっていた自分…と言う訳の分からない状況に一瞬だけ混乱したが、曲がりなりにも前世がオタクだった事で「あっこれ転生って奴だ」と直ぐに状況を理解して、落ち着きを取り戻した。
それから、新しい両親の元で育てられながら、この世界について知っていく内に俺は気付いてしまった。
「あっこれスタレの世界だ。」と。
最初はびっくりしたし、かなり怖かった。
何せあのスタレの世界だ。
メインストーリーはヤリーロからピノコニーまでは主人公が狂人だったり、キャラがかなり個性的で、あまりシリアスさと言うか、スタレ世界の過酷さと言う物を感じにくいが、実際はかなりのハードモード世界だ。
例えメインキャラであっても何かしら重い過去や十字架を背負っていたり、無惨な死を遂げる事だってある。
ましてや、名前もモデリングも適当なモブなんて簡単に死ぬ。
だからこそ、俺は怖かった。
いつ死ぬのか…。
いつ今世の故郷が星核か、カンパニー市場開拓部か、絶滅大君に滅ぼされてしまうのか…。
いつ両親が殺されてしまうのか…。
ずっと怖かったのだが…幸運な事に何事も無く俺は無事に大学入学式の日を昨日迎える事が出来た。
しかも、首席で。
今世の俺はどうやら結構優秀らしい。
おまけに両親はかなりのお金持ち。
崩壊スターレイルと言う過酷な世界で俺は何故か最高に恵まれた環境と才能で実に順風満帆な日々を送る事が出来た。
そして、昨日ずっと憧れていた折り紙大学でのキャンパスライフを手に入れた俺は自分への合格祝いを兼ねて少し奮発して高いバーに飲みに行ったのだ。
だが、そこからの記憶が全くない。
ー
ーー
ーーー
「ん〜ゴミキング…私を抱いて…。」
「…。」
改めて一糸纏わぬ芦毛の美少女の姿を目に映す。
…こいつ…主人公だよな?
…うん、間違い無い。崩壊スターレイルの主人公【星】だ。
読み仮名は分からない【セイ】派と【ホシ】派に分かれているし、どっち読みなのか公式からも明言されて無いからな。
どっちなんだろう…。
いや、そんな事はといりあえず置いといて、今はこの状況をどうにかしないと…。
一体昨日俺は何をしたんだ?
何があったんだ?
もしかして、シてしまったのか?あの主人公と…。
とりあえず目の前の芦毛美少女事主人公を起こしてみよう。
「あ、あの〜主人…開拓者さん起きて。」
「んっん〜。なの…そこのゴミは捨てないで…パムへの誕生日プレゼントにするの。」
「どんな夢見てんだ…。」
呼び掛けたが、起きない。
相当眠りが深い様だ。
仕方ないので、体を揺さぶって見る。
勿論裸な為肌に直接触れる事になるが仕方ない。
俺は恐る恐る彼女の肩に触れてそれなりに大きくその体を揺さぶる。
その瞬間、俺の手に吸い付くような柔らかい感触とモチモチでそれでいてスベスベな肌の感触が直接伝わって来た。
なんだ⋯これ…!?
気持ち良い⋯!
ゲームをプレイしていた頃では絶対味わう事の出来なかった未知なる感覚。
彼女の透き通るような柔肌はモチモチでスベスベで滑らかでずっと触っていたいような不思議で魅力的な感触だった。
肩でこれ程の感触⋯ならば、顔はどうなんだ?
肩という比較的硬い部位でこれ程のモチモチならば、顔は⋯たった今俺の枕を独占して頬を押し付けている見るからにモチモチそうなその顔は一体どんな感触なのか⋯。
気になる⋯。
「ゴクリ⋯。一回だけ⋯。」
俺は恐る恐る彼女の顔に向かって手を伸ばす。
優しく包み込むように、割れ物を扱うようにそっと手をその頬に添える。
その瞬間、ゆで卵の様なスベスベ感と雪見大福のようなモチモチ感が同時に俺の両手の感覚を支配した。
「これは⋯。凄い!美少女の頬はこんなにもモチモチなのか!」
想像を絶する気持ち良さに手が止まらない。
「⋯何してるの?」
俺が彼女の頬を手でこねくり回しているのに夢中になっている間にいつの間にか起きた彼女がジト目で俺を見つめて声を掛けてきた。
「これは⋯未知なる感触を体験していて⋯そうだな⋯君達風に言うならば開拓だ。」
「ふーん⋯。昨日私をあんなに開拓したのにまだ足りないの?」
やっぱりシてたの?
これってつまり事後確定って事?
「なっなあ、俺実は昨日泥酔してて記憶が無いんだ⋯。気が付いたら裸であんたと一緒のベッドで寝てて⋯その⋯変な事を聞くが昨夜俺達は何をしたんだ?」
「そんな、あんなに私を滅茶苦茶にしておいて、そんな事を言うなんて⋯」
目の前の主人公はわざとらしくシクシクと大袈裟に悲しむフリをしながら、その様な言葉を口にする。
⋯マジなの?
冗談じゃなくて?
主人公のいつもの悪巫山戯じゃなくて?
「本当に俺達ヤッてしまったのか⋯?」
「そりゃ、見ればわかるでしょ。昨夜は熱い夜だった。」
うそーん⋯。
前略前世と今世の両親。
俺は前世の人生含めて通算40年以上の人生を歩み、遂に貞操を手放しました。
しかも相手が何とこの世界の主人公⋯。
どうしよう⋯。
今のこの世界の時系列は知らないが、主人公がピノコニーにいるという事はつまり、少なくともピノコニーの開拓クエストが終了した直後である事はほぼ確定だ。
と言うことはそれなりに主人公の知名度も上がってきている時期。
星穹列車の開拓者と言うだけでもかなりのネームバリューなのに、今の主人公は確かスターオブザフェスティバルと言う称号も持っている。
そんな超有名人とただのモブの俺が肉体関係を持ってしまったと言う事実が知れ渡ればスキャダルとなるだろう。
そうなったら、彼女の名声も俺の人生も終わりだ。
最悪の場合、俺に被害が行くのは良い。
こう言っちゃ何だが、実家が太いから何とかなる。
だが、主人公は⋯なるべくその名に傷が付くのは防いだ方が良いだろう。
してしまった事は仕方無い。
問題は彼女と俺の立場。
明らかに釣り合わない。
絶対に世間に知れ渡れば炎上不可避だ。
だからこそ、悩んでいる⋯一体どうすれば⋯。
「はあ⋯。」
ぐぅうう!
俺がこれからの事を憂いてため息を付いた時、横から大きな腹の虫の音が聞こえてきた。
音の発生源に視線を向ければ、お腹を抑えてこちらに助けを求めるような顔をしている主人公の姿が視界に映った。
「⋯お腹空いた⋯。」
「っ!⋯はあ⋯ちょっと待ってろ。」
こんな状況なのに⋯。
困り顔で朝飯をねだる主人公が可愛らしいと思ってしまった⋯。
そんな自分自身に呆れて、深いため息をつきながら、俺は服を着てキッチンに向かい、軽く二人分の朝食を用意する。
用意するのは⋯適当に目玉焼きとパンとサラダで良いか。
いや、スープも欲しいな。
などと適当に献立を考えながら、ささっと朝食を作る。
「出来たぞ。」
「おー!あんた料理出来たんだ⋯。意外。」
意外で悪かったな⋯。
バイトもせずに親の仕送りに頼っている以上、毎日外食やお惣菜で済ませる訳にはいかないのだ。
大体ピノコニーは物価が高えんだよ⋯。
おまけに夢の中の癖に腹が減るし⋯。
そんな事を心中で愚痴りながら、俺は朝食を口にする。
そんな時、俺はふとある事に気付いた。
⋯そう言えば、ここって夢の世界なんだよな。
今更だが、今の俺はピノコニーで一人暮らしをしている。
進学先が折り紙大学だから、入学と同時に上京して来たのだ。
つまり、今俺達がいるのは夢境。
そう夢の中だ。
てことはつまり、俺と主人公が肉体関係を持ったのは夢中での話な訳で⋯これって実質ノーカンじゃね?
「なっなあ、開拓者さん。」
俺は朝食を食べている主人公に話かける。
「何?」
「俺達って昨日ヤッたんだよな?」
「そうだけど?」
「ここはピノコニーだよな?」
「?⋯うん」
「夢の中でヤッた事ってカウントするのか?」
「⋯。ケースバイケース⋯。」
まあ、かなり微妙な所だよな⋯。
だが、ここははっきりさせて置いた方が良いだろうお互いの為にな。
「良いか?開拓者。昨夜の事は夢だ。夢境で起きた事の殆どは現実の体に影響しない。死んでも死なないし、沢山食べても太らない。」
「⋯何が言いたいの?」
朝食を食べていた手を止めて、主人公は眉を潜める。
「⋯無かった事にしよう。」
「ヤリ逃げする気?」
うっ!⋯。
確かにそうとも言えるな⋯。
と言うかそうとしか言えない⋯。
「いや、違くて⋯いや違う事も無いけど、お互いの立場的に⋯と言うかあんたの立場的に余計なスキャンダルは避けた方が良いだろ?」
「それはそうだけど、責任から逃げるのは男としてどうかと思うけど。」
「うぐっ!⋯なっなら、何か困った時に力になるよ。最低限の責任として、あんたが何か助けが必要な時は手を貸す。」
なんて適当に言ったは良いが、ただのモブである俺に一体何が出来ると言うのか⋯。
「ふーん⋯分かった。なら、困った時に連絡する。はいこれ私のラ◯ン。」
「お、おう。」
何とか主人公に了承してもらい、俺達はお互いに連絡先を交換する。
「これからよろしくね。えっと⋯名前⋯。」
「
本当は知ってはいるが、まだこの世界では名前を聞いていないし、後、読み仮名が分からない。
その為、この機会に名前を尋ねる。
「
こうしてお互いに自己紹介を終えた俺達は朝食を食べ終わり、そのまま星を送って別れた。
「ふう⋯。」
朝から波乱万丈だった。
まさか主人公に会うとは誰も予想しないだろ。
「そう言えば今何時だ?」
俺はスマホを開いて時計を見る。
そこには後数分で大学の授業が始まる時刻が刻まれていた。
「遅刻確定か⋯。もういっその事サボるか⋯。」
朝からとんでもないことが起きすぎてもう既にクタクタだ。
今日はゆっくり家でゲームでもして過ごすとしよう。
ピロンッ!
「ん?」
そんな時、俺のスマホから誰かからの連絡を受信した通知が鳴り響いた。
「星か?」
適当に思い浮かぶ人物に当たりをつけてスマホを開くと、連絡をよこしてきた人物は星ではなく、昔からの長い付き合いのネッ友からだった。
「シルバーウルフか⋯。」
そのメッセージには『今暇?ゲームしない?⋯あっ大学あるんだっけ?』と言う内容だった。
「『今日はサボるから問題無い』と。」
返信を返しながら、ゲーム部屋に行き、早速ゲームを起動する。
さて、ゲームを楽しんでストレス解消と行きますか⋯。
ネッ友とチャットを繋いで、俺は初日から大学をサボると言う背徳感に少し興奮しながらも楽しくゲームをプレイするのだった。