はい、前回のあらすじ。
スコート負けた。
コンテナ開けて検査開始。
以上。
「それでは早速コンテナの中身を確かめさせてもらいますね。」
「ちっ!勝手にしろ⋯。」
スコートの同意を得て、霊砂はカンパニーのコンテナを開けて中身の検査を開始する。
⋯うわあ⋯始まるのか⋯。
ゲーム知識がある俺はこの後何が起きるのか分かっている。
故に、怖い⋯俺戦えないもん。
戦闘経験皆無だもん。
死ぬやん⋯。
「これが貨物ですか?」
コンテナを開けた先には全長4、5メートルがあるんじゃないかと思う程の巨大な歩離人を模した形状のロボットが鎮座していた。
見てくれはロボットだが、スキャン検査によれば生物組織が検知されている代物。
つまり、半分は生き物だ。
その為、霊砂はそのロボットを目にするや否や臆することなく近付き、危険性が無いか検査する。
しかし⋯。
ービリッ!⋯⋯チュドーン!
その瞬間、歩離人を模したロボットの全身に謎のスパークが迸り、先程まで大人しかったロボットが突然動き出した。
「いぃやあぁぁぁ!戦闘パート始まった!俺死ぬぅ!」
「宙うるさい!下がってて!」
星からそう注意を受けるも俺の心は落ち着かず、取り乱し、パニックを起こし続ける。
しかも更に不幸な事にさっき起動した歩離人型ロボットは一番近くにいた霊砂ではなく、この場の誰よりも怯えて、誰よりも情けない悲鳴を上げていた俺に標的を絞って襲い掛かってきた。
「ええええ!?なんで俺!?」
「叫ぶからでしょ!落ち着いて。多分音に反応するんだよ。ライオンとか狼とか野生の動物だってそうでしょ!」
言われてみれば⋯ってそんな特性がこのロボットにあるなんて設定ゲームに無かったぞ!
「ガアアア!!」
「うわあ⋯今のは鳴き声?それともシステム音?」
「どっちでも良いから逃げて!」
星に言われた通りに逃げるが⋯コイツ必要以上に俺を狙って来やがる⋯。
なんでそんなに俺を狙うんだよ。
なんだ?もしかして普段の行いのせいか?
⋯クソ⋯こんなとこで死にとうない⋯。
「ガアアァァ!」
「おい!わんこう!さっきから俺だけ狙って追いやがって!お前鬼ごっこしたことないのか?一人だけずっと追いかけるのはルール違反だぞ!それともなんだ?俺が美味そうな骨とかドッグフードを持ってそうに見えたか?生憎どちらも持ってない。俺は猫派なんだ。追いかけ損だよバーカ!」
「グルゥラアァァ!!!」
「⋯やっば。」
「余計に挑発してどうする!」
「あんたバカなの!」
俺が挑発すると歩離人型ロボットはまるで俺の言ってる事が分かっているみたいに大層ご立派な咆哮を上げて、怒りを露わにする。
そんな状況の中、丹恒先生となのかから鋭いツッコミよろしく痛快な怒号が投げ掛けられる。
こんな状況でもツッコミを忘れないなんて君達開拓者の鑑だよ。
⋯⋯言ってる場合じゃない⋯。
ヤバい⋯もう足が動かない⋯。
さっきからずっと走りっぱなしだった俺の足はもうとっくに限界を迎えていて、もう走れる状態に無い。
それに対して歩離人型ロボットは怒りのボルテージが上がったことによって、さっきよりも速くなっている。
⋯あ⋯これ、終わったわ。
もし生きて帰れたらスコートに損害賠償請求してやる。
そんな心中の呟きを最後に⋯俺は歩離人型ロボットの攻撃を無抵抗で諸に受け、まるでバレーボールのように地面をバウンドして吹っ飛んで行った。
「「「「宙/お兄さん!!」」」」
⋯うん、凄く痛い。
「大丈夫ですか?」
歩離人型ロボットにぶっ飛ばされて地面に横たわる俺の元に霊砂が駆け寄って来てくれた。
「大丈夫ばない⋯膝枕してくれ⋯。」
「⋯存外、大丈夫そうですね。」
大丈夫じゃないのは本当なんだけど⋯。
ちょっとふざけすぎたかな⋯。
「取り敢えず、安静になさって下さい。あの怪物は他の方達が対処なさってくれていますので。」
その言葉に俺は歩離人型ロボットの方に視線を向ける。
そこでは霊砂の言う通り、星達があのロボットと対峙していた。
だがしかし、結構苦戦している様だ。
ゲームではただ体力ゲージを削れば倒せる相手だったが、これは現実だ。
現実では体力ゲージはないし、あの金属質の肉体が厄介でまともにダメージが入らない⋯。
「硬っ!ウチの弓が全然効いてない!」
特になのかの弓⋯。
丹恒、星、彦卿は近接武器を使っている上にかなりの手練れであるが故に槍や剣、バットでダメージを何とか与えられている。
でも、なのかの場合は圧倒的にロボットと相性が悪い⋯。
鋼鉄のあの巨体に細い矢では戦力として心伴いにも程がある。
「⋯かなりジリ貧のようですね。」
「だな。だが、手が無いこともない。」
「え?」
「霊砂さん何でも良い。何か薬品を携帯してないか?丹鼎司なら不測の事態に備えて一つや二つ薬品を持ち歩いている筈だろ?」
「え、ええ⋯一応医療用消毒液なら⋯。」
「オッケーそれで良い。少し貸してくれ。」
俺は霊砂から医療用消毒液を受け取る。
医療用消毒液⋯次亜塩素酸ナトリウムか⋯中々良いものを持っている。
「これで何をするつもりですか?」
「毒を作る。あのロボットから生物組織が検知されたのなら、見てくれは機械でも中身は半分生物って事だ。つまり毒が有効だ。」
「ですが、これはただの医療用消毒液ですよ。」
「次亜塩素酸ナトリウムは酸性の物と混ぜると毒ガスを出すんだよ。」
問題はその酸性の物をどうするかだが⋯。
「それなら、俺これ持ってるぞ。ソーダ豆汁。」
そんな時、雲騎兵の一人が態々こっちまで来てソーダ豆汁を渡してきた。
ソーダ⋯豆汁⋯まあ、確かに酸性か⋯。
本当は酢酸が好ましいんだが、まあ無いよりはマシだな。
取り敢えず一か八かヤッてみよう。
俺はもらった医療用消毒液が入ってる容器にソーダ豆汁を入れて、蓋をし良く混ぜる。
その瞬間、容器内で化学反応が起き、毒ガスが発生して、容器がパンパンに膨らむ。
「この容器の大きさじゃ直ぐに破裂するな⋯。」
「ここからどうするんですか?」
「奴の口の中にコイツをぶち込む。上手く行けばこれでイチコロだ。」
そう言って俺は毒ガスが入っている容器を持って、あのロボットの元に駆け出す。
「えっちょっと!安静してないと!」
霊砂の制止の声を振り切って、全身に迸る痛みに耐えながら、ロボットとの距離を詰める。
あのロボットは今星達が上手く気を逸らしてくれている。
今のうちに⋯。
俺はロボットの背後に周り、背中に飛び乗って後ろから毒ガス入りの容器を奴の口に放り込む。
そして、そのグッドなタイミングで容器は破裂し、ロボットの体内に毒ガスが充満する。
「ガッガッ!?アアアア!!」
苦しみ悶えながら、ロボットは最後の悪足掻きをし、やがて、電源が切れたみたいに動かなくなった。
「やった⋯。」
何だよ⋯戦えなくても案外出来んじゃん⋯。
「凄い!今のどうやったの!」
「毒か⋯確かに生物組織があるのなら有効だろう。良く気付いたな。」
「へへっそんなに褒めんなよ⋯。まあ、それほどでもあるけどな。」
俺は俺が誇らしいよ!
⋯ってあれ⋯なんか⋯視界が⋯。
その時、俺の意識が鈍器でガツンと殴られたように大きく揺らぐ。
アドレナリンが切れてさっきまで騙し騙し誤魔化してたダメージが一気に来たのか⋯。
ヤベ⋯倒れる⋯。
俺の意識はそのまま暗闇へと暗転し、重力に従って地面に倒れた。
「ちょっと!宙!大丈夫?」
「直ぐに治療が必要です。丹鼎司に向かいましょう。」
僅かにその様な俺を心配する会話を聞き届けて、俺の意識は完全に機能を停止した。
ー
ーー
ーーー
「んお?」
そして、目が覚める。
知らない部屋で⋯。
「はっ!?」
そこで俺ははっとして飛び起き、自分の身体と周りの状況を確認する。
先ず、どうやら俺は病院⋯いや、丹鼎司のベッドで寝かされているようだ。
俺以外に人はいなく、俺はしっかり服を着ている。
⋯そう、服を着ている。
ここ重要ね。
いつも気付いたら朝チュンを迎えていたからな。
どうやら、今回は何も起きなかったらしい⋯良かった⋯。
そんな時⋯。
ーガチャリ。
「おや、目が覚めましたか。良かったです。」
俺が寝ていた部屋に霊砂が入って来て、起きてる俺を見て安堵する。
「お身体の調子はどうですか?」
「⋯うん、問題ない。痛みももう無いし、普通に動けそうだ。丹鼎司の医療技術は凄いな。」
「ふふふっ褒めていただき光栄です。一応傷は完治しましたが大事を取って今日はここに⋯。」
ードガーッン!!キン!キン!キン!
「ん?何の音だ?」
霊砂が何か言いかけた瞬間、突然外から爆発音と金属と金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。
「⋯ああ⋯これは⋯実はあなたを丹鼎司まで運んで治療した後、色々あってウチの雲離と彦卿様が一触即発の状態になってしまって⋯それで今決闘を⋯。」
あ〜成る程⋯。
そんなシーン確かにあったな。
司辰宮での初対面から犬猿の仲だった二人だが、スコートとさっきの歩離人型ロボットとの一件解決の後、丹鼎司で直ぐに再会する事になる。
そして、そのタイミングで彦卿が飛剣を取り返すべく決闘をするのだが、その戦いがかなり激化しちゃうんだよな⋯。
⋯でも、かなり見応えある戦いでもある。
あの戦いを現実で見られるなら、例え戦いの余波に巻き込まれて死んでも本望だ。
「少し、外に出て二人の様子を見に行ってみる。」
「え!?ちょっと危ないですよ!安静にしてないと!」
俺の自由行動は霊砂曰く、ドクターストップらしい。
だが、やはり好奇心には勝てない。
どうしても見たいのだ!あの二人の天才剣士の戦いを!
俺は丹鼎司を飛び出して、外に出る。
すると、そこには巨大な剣を軽々と振り回して豪快に戦う雲離と持ち前のスピードと無数の飛剣による手数で攻める彦卿のダイナミックな戦いが繰り広げられていた。
「うほぉ!すげえ!」
二人の剣士は正に剛と柔。
正反対な戦闘スタイルを持つ二人の熱き戦い。
その迫力は前世安っぽい液晶モニター越しに見た光景とは比べ物にならない。
最高だな!この光景を写真に収めたい!
しかし、今スマホ持ってないんだよな⋯。
そう思うのも束の間、俺の視界に見知った顔が映る。
それは星、丹恒、なのか、お馴染みの列車組だ。
そうだったそうだった、アイツらも丹鼎司に来てたんだよな。
忘れてた。
なら、話が早い。
なのかがいつも肌身離さず持っている物⋯そう、カメラ。
俺は今この決闘を写真に収めたい。
ならば、列車の写真担当なのカメラの出番だろう。
「おーい!なのか!なのか!なのカメラ!あの二人の写真撮って!」
「え?え!?⋯あんた、もう動いて大丈夫なの?」
「俺の事はどうでも良い!早く早くあの二人の戦いの瞬間を写真に収めてくれ!列車専属戦場カメラウーマンなのカメラ!」
「何その肩書き!?」
「いいからいいから。」
「良くない!」
そんなこんなで混乱するなのかと早く写真を撮ってほしい俺の喧嘩に発展こそしないが、何とも不毛で意味のないやり取りがずっと続き、結局写真を撮るタイミングを得られず、雲離と彦卿の戦いは終わりを迎えてしまう⋯。
⋯疾風の如く現れた狐耳の白髪長髪の美女によって。
「二人とも良い戦いぶりね。」
あー!クソ!シャッターチャンス逃した!
来るのが早いよ!
指で軽々と彦卿と雲離の剣を止めて微笑むあの強者感溢れる女性を見て、俺は内心悪態をつく。
「あたなは?」
「私はただここに治療を受けに来ただけの客よ。ただまさか人を治療する為の丹鼎司でこんな素晴らしい戦いが見られるなんて思わなかったけど。」
素晴らしいと思うなら、もう少しゆっくり観戦しても良いじゃん。
シャッターチャンス逃した恨みは絶対に忘れないぞ。
「まあ、飛霄様、どうしてここに?龍女様の治療はもう終わったのですか?」
「飛霄⋯て、おじいちゃんから聞いたことがある。」
「もしかして、仙舟曜青の天撃将軍?」
「ふふっ私って羅浮でも結構有名なのね。」
飛霄将軍⋯さっきは彦卿と雲離の決闘を写真に収められず、恨み言を言ったが、改めて現実でそのご尊顔を拝見すると、まるで恋に堕ちたみたい胸がトキメク。
面良し、スタイル良し、声良しの三良将軍とは正に彼女の事だ。
「ご冗談を。大勝将軍の名を知らない者はいませんよ。」
「大勝将軍?その称号は流石に自惚れ過ぎじゃない?ダメダメ。羅浮には無眼将軍がいるって聞いたから私も自分に称号を付けたの。憂い無し、悔い無し、敵無しの三無将軍てね。」
「謙虚でありながら、威厳を失わない良い称号だと思います。」
俺は三無よりも三良て呼ぶよ?
そっちの方が飛霄の魅力をしっかり現してると思う。
因みに俺は俺、星、ロビンで一夜をの戦いを繰り広げた3ぴ⋯ああダメダメ流石にダメだ⋯。
「ほら、お二人とも将軍の御前ですよ。決闘が終わったのなら、和解の握手をして下さい。」
飛霄との話が一段落し、最後に霊砂が彦卿と雲離の仲裁に入る。
そして、二人は大人しく矛を収め雲離は彦卿に飛剣を返す。
「この剣⋯返す。また奪われないように大事にしてあげて。後今回は決着が着かなかったけど、今度は徹底的に負かすから。」
そう捨て台詞をはいて、雲離は何処かへと消えていった。
「まったく⋯。それでは天撃将軍、僕達もこれで失礼します。神策府に行って将軍に報告しないと。」
そう言って、神策府を向かう彦卿に着いて行って俺達は丹鼎司を後にするのだった。