「やって来たぜ!鎌倉幕府!」
「神策符だよ。」
彦卿と雲離の決闘の後、俺達は神策符にやって来た。
早速中に入いると景元と懐炎が何やら難しい顔で大事そうな話をしていた。
「将軍、言われた通りカンパニーとの揉め事を解決してきたよ。⋯て今取り込み中だったかな?」
「彦卿、おかえりなさい。今丁度話が一段落したところだ。早速報告を聞きたい所だが、実は今回の演舞典礼に向けて懐炎殿から贈り物があるようなんだ。」
「贈り物?」
「これじゃ。」
懐炎は花のような装飾が施された高級感溢れる大きな箱を取り出して、俺達の前に見せてきた。
「この箱何?」
「これは演舞典礼に向けて作った剣箱だ。今は空だが、数日もすれば宝剣が届き中に納められる。自慢じゃないが、その剣は朱明の工芸技術の至極でな。数々の偉業を打ち立てた逸話を持っておる。この宝剣の納まり所がどこか儂なりに考えてみた結果、今回の演舞典礼の賞品にするのが良いと考えたのじゃ。」
成る程、つまり演舞典礼の試合で優勝したら、その宝剣が貰えるって訳か。
「おじいちゃん、私に剣を贈りたいなら。何でそんな回りくどい方法にしたの?」
今日は本当に良く会うな⋯。
さっき決闘の後何処かに消え去った雲離がまたもやどこからともなく懐炎の背後に現れて、遠回しに優勝宣言して来た。
「ははは、小娘、自信満々じゃな。だが、今回の演舞典礼の守り人は彦卿くんだ。そう簡単に勝てる相手では無いぞ。」
「ふーん、丁度良いかも。さっきの決闘では決着着かなかったから、演舞典礼で今度こそ徹底的に負かして上げる。」
「なら、君が仙舟朱明を代表して舞台に出場するって事でいいのかい?言っておくけど、僕も守り人として無様に負けるつもりは無いよ。」
「望むところだよ!宝剣を手にするのはあなたじゃない!」
一触即発だな⋯。
さっき散々暴れたばかりだろ⋯。
若いって良いね⋯10代のフレッシュさが伝わって俺も少しだけ若返りそうだよ。
「いい加減にせんか!宝剣を贈るのは演舞典礼に興を添える為であって、お前達の争いの火種にする為ではない!」
そこで懐炎の雷が雲離と彦卿の元に落ちる。
懐炎が怒るのも最もだけど、俺としてはこのまま演舞典礼で戦う雲離と彦卿の姿を見てみたい気持ちもある。
「勝負とは決して剣と剣を交える事だけにあらず!既に決闘して決着が着かなかったのなら、別の戦で勝負を競ってはどうじゃ?」
「別の⋯。」
「戦?」
「雲離と彦卿くんそれぞれが弟子を取り、演舞典礼に出場させる。そして、演舞典礼にてより良い成績を納められた方が勝ち⋯と言うのはどうじゃ?」
あ〜なのかが巡狩になるイベントの話か。
でも、なんか少し話の内容が違う気がする。
本来なら雲離と彦卿が二人でなのかを育てる話になる筈なんだが⋯懐炎はさっき二人がそれぞれ弟子を取りって言ってた。
つまり、雲離と彦卿で別々に弟子を取って修行するという事だ。
「でも、おじいちゃん。今から弟子を探すと演舞典礼に間に合わないんじゃ⋯。」
「心配いらん。候補は既に見つけておる。」
そう言って懐炎は一呼吸置き、なのかと⋯何故か俺を見つめて再び口を開く。
「そこの三月なのかさんと宙くんこの二人と雲離と彦卿くんが二人一組の師弟になって修行する。そしてどちらの弟子がより腕の立つ剣士になるかを競う。これが君達に儂から新たに課す勝負の内容だ。」
「何で俺まで⋯。」
本当になんで?
俺戦いの経験皆無だし、剣を握った事もしゃぶった事も無いピチピチのチェリーボーイだよ。
これまでの人生でヤッてきた事と言ったら俺の下半身の懐刀を幾度も種類の違う鞘に納めたことくらいだ。
「丹恒殿と星さんは既に近接武器に精通しておる。だが、三月なのかさんは違う。剣をはじめとした近接武器の扱いは不慣れだ。故に今の三月なのかさんは真っ白なキャンバスも同然。師事する者によって何色にも染まる。それは宙くん君にも言えることだ。君達二人に秘められた大いなる可能性を見出した儂の独断と偏見じゃな。」
なのかは兎も角として俺は明らかに人選ミスだろ。
原作通りなのかを雲離と彦卿で育てた方が良いんじゃね?
「成る程、確かにお兄さんは僕の剣に迷いがあった事を初見で見抜いていた。彼には本当に素質があるかも⋯。」
「その意見だけには同意。私も彼にはただならぬ才能がある気がする。」
あれ?彦卿と雲離が俺をベタ褒めなんだけど⋯。
俺ってそんな才能を見出されるような事したかな?
まったく身に覚えがない。
「そういう事なら、私は宙を弟子にしたい。」
「ちょっと待ってよ!僕だってお兄さんを弟子にしたい!勝手に決めないでよ!」
「早いもの勝ちでしょ?」
「そんなの不公平だ!」
俺モテモテじゃん⋯。
二人とも俺の為に争わないでー。
二人で俺を取り合うと取り残されたなのかが不憫だから⋯。
「あの⋯ウチは?二人ともウチとは修行したくないの?」
「こら、二人ともなのかが可哀想だろ。俺を取り合うのは程々にしろ。どうしてもお互いに譲りたくないのなら、ここは公平にジャンケンで決めよう。」
「「ジャンケン?」」
「二人でジャンケンして勝ったほうが好きな奴を選ぶ。これでどうだ?」
「「乗った!」」
お前ら息ぴったりだな⋯。
その気になれば仲良くできそうなものを。
まあ、このくらいの歳の子供は割と頑固だがらな⋯俺なら反りが合わない相手でもベッドの上で懐柔⋯いや、辞めておこう。
「雲離、僕はグーを出すよ。」
「その手には引っ掛からない。あなたの裏の裏を突いて私が勝つ!」
「「ジャンケン⋯。」」
そうこうしている内に雲離と彦卿は真剣な眼差しでジャンケンの手を構える。
ジャンケンってそんなに真剣にやるものじゃ無いと思うんだけど⋯。
「「ポン!」」
気になる結果は雲離がグーで彦卿がチョキ。
見事に彦卿の裏の裏を掻いて雲離が勝利した。
「やったー!これで今日から宙は私の弟子ね!」
「ああ、よろしく。」
「クソ!彼処で更に裏を突いてパーを出しておけば⋯。」
「⋯ウチと修行するのがそんなに悔しいの?」
と言うわけで、俺は雲離の元で、なのかは彦卿の元で修行する事となり、今日の所は一旦お開きとなった。
「よーし、取り敢えず今日一日のイベント全消化!もうクタクタだから早く旅館に戻って寝たい⋯。」
今日だけで、色んなメインキャラと出会って、なんか変なロボットと戦って⋯本当に色々あったからもう疲れた⋯。
今日の所は大人しく旅館に戻って⋯。
「やっと追いつきました。宙さん、探しましたよ。」
「ん?」
これから旅館に戻ろうかと言うタイミングで聞き覚えのある女性の声が背後から聞こえてきた。
声の方に振り向くと、そこには⋯。
「霊砂さん⋯!どうしたん?」
先程丹鼎司で別れた霊砂がいた。
「どうしたもこうしたも!あなたは今、絶対安静にしてないといけないんですよ!傷は完治していてもあの歩離人型の機構から受けたダメージはかなり大きいんです!後遺症が残らないように病室で一晩安静にしてないと!」
「えっと⋯つまり、丹鼎司に引き戻す為に態々ここに来たのか?」
「そうです!早く戻りますよ!」
「嫌だ!」
「どうしてですか!」
どうしてか⋯そんなの俺が知りたい!
だけど、なんか⋯言葉に言い表せない妙な不安があるんだよ⋯。
なんか胸騒ぎがする⋯。
このまま大人しく丹鼎司に戻ったら碌な事が起きないと言う確信に近い胸騒ぎが⋯。
「どうしても断固として戻らない気ですか?」
「⋯ああ。」
「でしたら仕方ないですね。」
その時、霊砂は虚空から大きな丸い提灯のような物がついた杖のような武器を取り出し、そこから特殊な御香の煙を放って来た。
「っ!?なんだ!この香り⋯。」
「この御香は言う事を聞かない患者を鎮静化させる為の物です。催眠、幻覚、目眩などの症状を引き起こし、大の大人でも瞬時に大人しくなります。わかりやすく言えば、強制的に相手を泥酔状態にする毒ガスと言った所でしょうか?」
「毒!?」
「安心して下さい。人体に害は無いので。」
安心出来るか!
ただでさえ胸騒ぎがするのに、こんな怪しい御香まで出されたら余計に行きたくないわ!
踏ん張れ!俺!何としてでも旅館に戻って一人で熟睡するんだあ!
そんな俺の心の叫びも虚しく、俺の意識はドンドン暗闇へと誘われていく。
「けほっ!いけません⋯私にまで御香の影響が⋯。」
などと自分で発生させた御香の煙に咽て焦る霊砂の姿を最後に俺の意識は完全に暗転するのだった。
ー
ーー
ーーー
そして、朝。
「⋯。」
「んっ!ん~~。」
久しぶりだな⋯この光景⋯。
懐かしの故郷に帰ったような安心感さえ覚えてくる。
そう言えば両親は元気だろうか?
俺は⋯。
「ん~~宙さん⋯。」
大人の夜を満喫出来るくらいには元気です。
主に下半身が⋯。
「宙さん⋯あなたの起死回生の術⋯感服致しました。」
俺の視界には、やかましい寝言を言って一糸纏わぬ姿で俺の隣に寝ている霊砂の姿があった。
⋯こうなっちゃうか⋯。
案の定?まあ、予想はしてたよ。
これでも回避しようと頑張ってたのに⋯。
どうやら俺の乱交の運命はピノコニー以外でも健在のようだ。
「あああ!!」