「はあはあはあ⋯。」
襲ってこようとしてきた星から逃げるために、俺は宇宙ステーションの中をひたすらに走り続けていた。
しかし、普段から運動不足な上に身体が女性になった事も相まって思うように走れず、直ぐにバテてしまう。
「はあ⋯はあ⋯クソ⋯この身体⋯なんか凄く鈍い⋯。思うように動けねえ⋯。」
「宙〜!どこにいるの!出てきて!」
「ヤベっ!もう近くにいんのかよ⋯!」
もう既に近くにまで追い付いてきた星から逃げるために、俺は再び走り出す。
しかし⋯。
「あっ⋯。」
その瞬間、不幸な事に足の筋肉がつってしまい、その場に倒れ込んでしまう。
「いってえ⋯。」
ヤバいどうしよう⋯。
こんな状態では星から逃げられない⋯。
このままじゃせっかくチン◯無くす覚悟までして女になったのに、星に犯される⋯。
それでは結局意味無いじゃないか!
「何とかして逃げ延びなければ⋯。」
俺は上半身を使って地面を這うように逃げる。
進むスピードはナメクジの様に遅いが、その場で立ち止まっているよりはマシだろう。
だが、その瞬間俺の背後に女性の影が忍び寄る。
「ねえ、あなたそこで何してるの?」
「っ!?」
突然、声を掛けられたことで心臓が飛び出るほどびっくりした俺はガバっと勢い良く後を振り向く。
すると、そこには肩くらいまで伸びた赤茶色の髪の一部をサイドにまとめた可愛らしい女の子がいた。
「お前は?」
「私はこの宇宙ステーションヘルタの所長を務めているアスターよ。それよりあなたはどうして地面を這いつくばっているの?」
「頭のおかしな開拓のお嬢さんから逃げる為です。」
「⋯もしかして、あなたが宙?さっきから星があなたの名前を大声で叫んで宇宙ステーション中を走り回っているわよ。」
ヤバいだろアイツ⋯。
宇宙ステーションはお前の庭じゃねえんだよ。
マジで性的な命令以外なら何でも聞くから大人しくしてくれねえかな。
「星と何かあったの?」
「まあ、色々と⋯。」
「何か力になれることはある?」
「だったら、安全な場所に連れてってくれないか?今は兎に角星から身を隠さないと⋯。」
「わかったわ。なら、一旦私の部屋に案内するわね。」
そう言って、アスターは俺を部屋に案内してくれる。
今までは女の子の部屋に入るなんて論外だったけど、今は違う。
今は俺も女だ。
女同士でそんな雰囲気になることなんて万が一にもあり得ない⋯と思う多分⋯。
「着いたわ。ここが私の部屋。お茶飲む?紅茶しかないけど。」
「⋯あっうん。いただきます。」
辿り着いた部屋は可愛らしい縫いぐるみやらが置いている女の子らしい部屋。
ただ所々ドローンやら、仕事用のタブレットやらも置いてあって、仕事部屋兼自室みたいな感じだ。
「あなた、列車の新しい乗員って事でいいのよね?」
アスターは紅茶か注がれたティーカップを俺に渡しながら、そう質問を投げかけてきた。
「⋯ああ、まあ一応。ピノコニーで星と出会って、紆余曲折あって列車に乗ることになったんだ。」
「そう、ピノコニーで⋯。私も一度行った事があるわ。珍しい物が沢山あったから、つい買いすぎちゃって、アーラン⋯うちの防衛課責任者にこっぴどく叱られたわ。」
ああ⋯平和だ⋯。
何も起きない⋯。
何も危険がない⋯。
こうして、大好きなスタレキャラと談笑して、微笑ましいエピソードを聞けて俺は凄く幸せだ。
どうかこのまま何も起こらずに⋯。
ピシッ!
その瞬間、突然俺の首元から何かにヒビが入るような音がした。
「っ!」
なんだ?今の音⋯。
首輪か⋯?
首輪に何かあったのか?
いやいやいやいやそんな訳ない⋯。
ヘルタが言っていたもん⋯この首輪は一度着けたらもう二度外せないって⋯だから大丈夫⋯。
「宙、どうかしたの?少し様子が変よ。」
「だっ大丈夫⋯。それよりもこの紅茶美味い!」
急いで誤魔化す為にティーカップを掴んで、無理矢理紅茶を口の中に流し込む。
しかし、その刹那⋯。
パオーン!
「ゴフッ!ゲホゲホ!」
突然股間に生じた違和感に俺は思わず紅茶を咽てしまう。この感覚⋯間違いない⋯ある⋯。
俺の像さんが⋯懐バナナが⋯ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が⋯。
「ちょっと大丈夫!急いで飲むからよ。拭いて上げるからじっとしてて。」
アスターは高級そうなハンカチを取り出して、咽た紅茶で濡れた俺の服を拭いてくれる。
しかし、そこでまたもや新たな問題に直面する。
さっき咽た紅茶⋯実は俺の股間にも溢れてしまっていたのだ⋯。
普通ならこの状況で態々股間を拭いたりはしないだろう。
だが、今の俺は女だ。
アスターも俺の事を同性だと思っている。
故に、アスターは触れてしまう⋯パンドラの箱に⋯禁断のエクスカリバーに⋯。
「あれ?なに?このもっこりした物。棒?いや、玉かな?硬いような⋯柔らかいような⋯。」
いやぁあああ!
触らんといてー!そこはデリケートなんや!
天然て恐ろしい⋯。
結局女になっても運命は変わらないのか⋯。
ガチャリ⋯。
そんな時、ノックも無しに扉を開けて部屋に入ってくる新たな影が一人。
誰だ?星か?もしかして、アーラン?
どっちにしても終わりだ!
「あーここにいたんだ。探したよ宙。ほら、早く約束通りあなたの身体を調べさせて。」
視線を向けると、そこにいたのは魔女帽子を被り、少し露出の多いドレスを着た大人版ヘルタのような容姿をした女性だった。
「ミスヘルタ、ノックも無しに入らないで⋯。」
「別にいいでしょ。宇宙ステーションは私の所有物なんだから、あなたの部屋も私の物だよ。」
この女性が⋯ヘルタ?
もしかして、ヘルタ本体か!
何で態々本体が出向いてきたんだ?
「それよりも、アスター少しだけ宙を借りてくね。ちょっと彼と重要なお話があるから。」
「なんですか?急に⋯。理由も聞かされずに「はい、どうぞ」って頷く訳ないでしょ!」
「理由は後で話すから、今は本当に刻一刻を争うの。」
「なら、私も着いていきます。」
「なんでよ。」
ヤバい⋯かなり話が捩れてきた。
それよりも、俺の股間の問題もヤバいんだけど⋯。
心なしかさっきから首輪がミシミシ言ってるし⋯。
「ヘルタ、用があるなら早く済ませよう。さっきから俺の身体が変なんだ⋯。首輪にもヒビが入ってる⋯。」
「っ⋯わかった。そういう事だから、アスター大人しく待ってて。」
「ちょっと!話はまだ終わってない!」
急いで事を済ませたい俺とヘルタに対して、アスターは尚も食い下がる。
⋯頼む⋯!理由とか訳は後で話すから今はヘルタに従って⋯。
俺の身体今ヤバいんだ⋯。
なんか⋯早くどうにかしないと暴発しそうな⋯いやな予感がする⋯。
ドンドン俺の中で焦りが募って行く中⋯。
更なる刺客がこの場に現れる。
ガチャリ⋯。
「あ!ここにいたんだ!宙!もう逃さないよ!」
このタイミングで一番来て欲しくないタイミングで一番来て欲しくない奴⋯星が現れた。
「ほら、宙!私の命令を聞いて!私にあんたを犯させろ!」
「ちょっと、お子ちゃま!邪魔しないで!今すぐに宙の身体を調べないと大変なことになるの!」
「ヘルタも星もどいて!宙が嫌がってるでしょ!」
あ⋯ああ⋯不味い⋯出る⋯。
俺の中の何かが⋯!
バチンッ!
その瞬間、俺が着けていた首輪型の奇物が突然千切れる。
そして、俺の身体が女から男に戻ると同時に俺の身体から紫色のオーラのような煙のような物が大量に発生し、部屋中に充満する。
「何⋯これ⋯!何が起きて⋯。」
「くっ⋯これは⋯繁殖の⋯ちか⋯ら⋯。」
「宙⋯男に戻って⋯残⋯念⋯。」
謎の煙を吸った瞬間、三人は泥酔したかのように目がトロンとし、床に跪く。
そして、俺も自分の身体から発生した煙によって意識が朦朧とする。
そして⋯。
ー
ーー
ーーー
「つまり、あの奇物であなたを女にしたことで、あなたの中の繁殖の力を無理矢理抑え込んでしまった。それが原因で力が暴発したって事。」
「はあ⋯?成る程?」
「安っぽい例えになるけど、足で踏んで水の流れを止めた時のホースみたいなイメージだよ。無理矢理堰き止めていた濁流の如くあなたの繁殖の力は勢いを増して暴走してしまった。その結果、あなたは男に戻り、そして私達とまぐわってしまった。」
成る程なぁ、勉強になる⋯訳ねえだろ!
今回も失敗かぁ⋯。
女になれば大丈夫って思ったんだけどな⋯。
⋯今何が起きているかはもう態々説明の必要はないだろう。
繁殖の力が暴発して星とヘルタ本体とアスターとヤッてしまった。
今現在、星とアスターは疲れ果てて寝ており、俺とヘルタだけ起きながら、俺の繁殖の力について一緒に考察している。
「もう、いっその事チン◯切るか⋯。」
「多分あなたならニョキニョキトカゲの尻尾みたいに生えてくるよ。」
「マジか⋯。なら⋯死ぬとか?」
「ゾンビになっても女の子襲いそう。」
うん、完全に手詰まりだ。
今まで色々対策を取ったが悉く無理でした。
もう、いっそ諦めて今までヤッてきた女の子全員の責任を取るべきか⋯。
「将来一夫多妻制の
「式はどこで挙げるつもり?」
「ピノコニー。」
なんやかんやで始まりの地だしな。
取り敢えず、皆に殴られる準備はしておいた方が良さそうだな。