裸の状態で眠る星とアスターそして、唯一起きながら未だに俺の繁殖の力について一人で考察しているヘルタ(本体)を放置して俺は服を着る。
「ふう⋯。」
三人の美少女を相手にした事で今の俺の身体は絞り出す物を限界まで絞り出された状態だ。
つまり、滅茶苦茶疲れている。
そんな状態のまま俺は大きな鏡の前で服を着ている。
一度は女になったこの身体だが、繁殖の力によって強制的に男に戻されてしまった。
だが、ただ元に戻っただけではない。
少しだけ身体が変わっているのだ。
勿論、性別は完全に男だ。
しかし、顔や体格が以前よりも逞しくなっている。
恐らくは力が暴発した影響だろう。
フェイスアップと言うaiを利用する加工アプリをご存知だろうか?
そのアプリは取った写真をaiを使って加工出来る。
勿論男を女に加工する事も出来る。
その際に男から女に加工した写真を男に加工し直すと元の写真とは違う顔が生まれる。
今俺の身体に起きているのは正にそれに近い現象だ。
前の俺はお世辞にも顔が良いとは言えなかった。
正にモブオブモブ。
ゲームならモデリングが用意されていない完全なるモブキャラだった。
しかし、今は違う。
前の顔の面影を残しながら、女だった頃の美形も引き継いでいる。
髪は青紫のメッシュが入った短髪で、身長は以前よりも数センチ伸びている。
瞳は黒と青紫のグラデーションになっていて見るものを惑わす不思議な力がある。
身体全体の筋肉量も向上していて、かなりいい身体をしている。
自分で言うのもなんだが、他の男キャラ⋯丹恒やヴェルト達にも引けを取らないほどのイケメンになっている。
「なあ、ヘルタ。俺のこの見た目って繁殖の力の影響かな?お前から貰った奇物の影響も多少はあるか?」
「多少はね。でも、殆どはあなたの身体に宿る繁殖の力の影響だよ。生物が機能性よりも見た目重視の進化を遂げる例はそう珍しくはない。鹿みたいに立派な角をメスに見せびらかして求婚する動物もいるくらいだし、あなたはきっとそれに似た進化を遂げたんだよ。」
「⋯つまり、より多くの女の子を誑かすのに適した肉体に進化したって事?」
「そういうこと。現にあなた自覚ないかもだけど、身体から特殊なフェロモン分泌してるし。」
⋯何それ怖い⋯。
フェロモン?
俺そんなの出してるの?
「そのフェロモンってどのくらいの強さ?」
「初対面の女の子でも一瞬であなたにメロメロになる強さ。」
「⋯ヤバいじゃん。」
「それだけじゃないけどね。」
「どういう事だ?」
なんだその含みのある言い方は⋯。
勿体ぶらずに言ってくれよ。
気になるだろ⋯。
「あなたの目も進化してるの。目を合わせただけで相手を魅了しちゃう。」
「⋯もう、人前歩けねえ⋯。」
ヤバいて⋯俺もう生きて行けないよ⋯。
特殊なフェロモン出して?目は魅了効果持ち?
繁殖は俺をどうしたいの?
「ヘルタ、俺はどうすればいい?助けてヘルえもん!」
俺は未だに丸裸の状態でベッドに座っているヘルタの肩を掴んで揺らす。
「ちょっ!やめて!触らないで!近づかないで!さっきの説明でわからなかったの?今のあなたは危険なの!見つめるだけ、触るだけでもあなたは異性を虜にしちゃう力を持ってるの。乱りに触らないで!」
「ごっごめん⋯。取り乱した。でも、俺このままじゃ外歩けねえよ。」
「はあ⋯。一応応急処置程度だけど、手はあるよ。」
「ほっ本当か!」
ヘルタはそう言って、この場に一体のヘルタ人形を呼び出し、ある物を持ってこさせる。
「はい。これがあれば暫くは大丈夫だと思う。」
「これは⋯。」
ヘルタに渡されたのは緑色の液体が入ったスプレー式の瓶と真っ黒なサングラス。
「これ、またなんかの奇物か?」
「ただの香水とサングラスだよ。香水でフェロモンを中和して、サングラスで目を隠すの。香水は朝昼晩に一回三プッシュはする事。そうじゃないとフェロモンの効果が勝っちゃうから。」
面倒くせえ⋯。
俺こう言う香水とか化粧品関係に触れたことないんだよなぁ⋯。
朝昼晩一回三プッシュ?
ちょー面倒いやん。
「今面倒臭いって思ったでしょ?」
「うん。」
「香水をつけないのはあなたの勝手だけど、行く先々で大乱交が起きても私は知らないから。」
「⋯。」
プッシュ!プッシュ!プッシュ!
俺は無言で香水を三プッシュし、サングラスをかける。
仕方無い背に腹は代えられない⋯。
幸いにもこの香水無香料で全然臭くない。
そこまでヘルタは配慮してくれたのか⋯ありがたい⋯。
「取り敢えず、これ以上ここにいても仕方ないし、一旦俺は仙舟に戻るよ。」
「わかった。定期的にあなたの力の状況を把握しておきたいから、1週間に一回はここに顔を見せに来てね。」
「わかった。またな。」
そう言って、俺は界域アンカーを使って一瞬で仙舟に戻る。
⋯あっそう言えば星を置いてきちゃったけど、まあ良いか⋯。
それよりもこれから、丹恒やなのか、雲離と会うのが難関な気がする。
何せ少しは面影を残しているとはいえ、見た目が変わり過ぎているからな⋯今の俺。
おまけにサングラスまで掛けているから流石に気付かないだろう。
などと考え事をしながら、俺は皆が泊まっている旅館の中へと入る。
すると⋯。
「あれ、宙!今までどこに言ってたの?星もいないし、探したんだよ!」
旅館に入るや否やロビーで寛いでいたなのかに早速見つかってしまった。
⋯いや、見つかるのは別に良いんだ⋯。
ただ、なんでこいつ俺が俺だってわかった?
「やあ、三月なのかさん。おはよう。」
「宙⋯あんたなんか雰囲気変わった?そのスコートみたいなダサいサングラスとか⋯あと髪型とか顔とか。」
「まあ、色々とあってな⋯。それよりも良く俺だって気付いたな?」
「結構前に丹恒ショックを受けてからウチ、人のイメチェンには敏感になったんだ。宙はまだ知らないよね?丹恒の飲月の姿。凄くカッコいいんだよ!」
⋯うん、成る程合点がいった。
身近にトランスフォーマーがいたから俺に気づいたんだな⋯。
「もしかして、あんたも丹恒みたいに新しい力に目覚めたの?」
「まあ、そうだな⋯うん、新しい力に目覚めたよ⋯一応。」
嘘は言ってない。
確かに色々新しい力に目覚めていはいる。
「なら、その新しい姿に名前つけようよ!丹恒の飲月みたいに。」
新しい名前か⋯。
丹恒の新しい姿が飲月でオンパロスに行くと確か⋯騰荒だったか?
そして、オンパロスではなのかも長夜月って新しい姿になるんだよな⋯。
なら、飲月と長夜月に因んで俺も名前に月を入れよう。
「
「なんかカッコいい!」
カッコいいと思っていただけて何よりだ。
名前の由来は長夜月の長夜を初夜にもじった下ネタネームなんだけどな⋯。
「良いな〜ウチもそう言う新形態みたいなの欲しい。」
「あるじゃないか。弓から剣に切り替えるのも実質新形態だろ。」
「でも、剣だけだよ。服とか一切変わらないし。」
「ん?」
なんだ?今の会話の違和感⋯。
剣だけ?服が変わらない?
そんな筈ないだろう。
巡狩なのかは衣装までしっかり変わっていた筈だ。
ストーリー内で彦卿から双剣を貰い、雲離から新衣装を⋯。
あー雲離さん今は俺の師匠やん。
そっかー雲離がなのかの師匠じゃないから、新衣装も貰ってないのか⋯。
「なあ、なのか。いつもの服で剣は振りづらくないか?」
「え?うん⋯確かに⋯剣を振っているとスカートがめくれちゃいそうになる時があるんだよね。凄くやり辛い⋯。」
「なら、俺が剣を振るのに適した服を買ってやろうか?」
「え?良いの?」
ファンとしては、あの巡狩なのかの姿をリアルで拝みたいからな。
お金の心配はいらない!
俺、実家太いし、これは実質推し活みたいな物だからな。
財布の紐も緩むというもの⋯。
「なのかが良ければだが。」
「うん!嬉しい!じゃあ早速買い物に行こ!」
可愛らしくはしゃぐなのかに手を引かれて俺はなのかの巡狩衣装を手に入れるべく最も物流が盛んな長楽天へと向かうのだった。