『あっ尻尾欲しいから切って。』
「了解。」
シャキンッ!
⋯とゲーム画面に映るモンスターの尻尾を大剣で一刀両断する。
「あと何の素材が必要だ?」
「逆鱗があと一つ。それで全部揃う。」
俺は今ネッ友のシルバーウルフとモンハン的なゲームをやっている。
一応モンハンではないが、ゲーム性は殆どモンハンと同じだ。
シルバーウルフがどうしても作りたい武器があるとか言い出したので、その素材集めを手伝っている最中なのだ。
後、シルバーウルフと言うプレイヤーネームから既にお気付きだと思うが、このネッ友は十中八九間違い無く星核ハンターの銀狼だ。
俺はギャルゲーとか恋愛漫画によくいる都合よく鈍感な主人公じゃない。
シルバーウルフなんてあからさまなプレイヤーネームを目にし、ボイスチャットで声を聞いた時から既に確信していた。
彼女は銀狼だと。
まあ、だからと言って何だと言う話だ。
彼女が銀狼だからと言って、べつにカンパニーに通報する気なんて無い。
彼女とやるゲームは物凄く楽しい。
たまに対戦ゲームでチート使ってくる時は流石にムカつくが、幾億光年も離れている何処かの星にいる彼女とこうしてオンラインで一緒にゲームをするのは俺の密か生き甲斐となっている。
とても居心地が良いのだ。
『それにしても、珍しいよね。』
「ん?何が?」
『あなたが学校をサボった事。私達それなりに長い付き合いだけど、あなたが学校をサボって私とゲームするなんて今日が初めて。何かあった?』
「妙に鋭いな⋯。」
銀狼の言う通り、俺達はそれなりに長い付き合いだ。
確か俺が中学二年生くらいの頃から一緒に色んなゲームをしていた。
だからこそ、今まで一度も学校をサボった事の無い俺が今こんな事をしているのに疑問を抱くのも無理は無い。
言ってしまっていいものか⋯。
一応、星は銀狼に取って無関係の赤の他人と言う訳でも無い。
いや、しかし⋯自分の身内が自分のネッ友と肉体関係を持ったなんて言えるわけ無いし⋯。
だが、だからと言って黙ってるのも忍び無い。
ならば、ここは星の事は伏せて、起きた事だけを話すか⋯。
「実はな⋯今日の朝気が付いたら初対面の女性と裸で一緒のベッドにいたんだ⋯。」
『⋯はあ?』
スピーカー越しに銀狼の困惑とほんの少しの苛立ちを含んだような声が聞こえてくる。
『⋯何それ⋯相手は誰?』
「一応、相手の為に名前は明かせない⋯。ただかなりの有名人とだけ言っておく。恐らくお前も知ってる人物だ。」
恐らくと言うか、何ならお前の身内何だが⋯。
『有名人?あなた確か今ピノコニーにいるよね。って事はロビン?』
「いや、違う。それは流石にビッグ過ぎる。」
『⋯ふーん⋯まあ良いや。ピノコニー全体の監視カメラハッキングすればわかるでしょ。』
さらっととんでも無い一言が飛んできたんだが⋯。
スタレユーザーなら皆知っている事だが、銀狼はゲーマーであると同時に天才ハッカーでもある。
彼女の腕前ならピノコニーの監視カメラを全てハッキングなど朝飯前だろう。
しかし、困ったな。
それをさせると俺と星がシてしまった事がバレてしまう。
星の名前は銀河中で結構知れ渡っている。
ピノコニーではスターオブザフェスティバルと言う称号を持っているし、仙州羅浮では怪異退治隊としての活動がかなり有名かつ人気だ。
そんなの彼女の不祥事が知れ渡るのはどうしても避けたい。
身内ならギリ大丈夫だと思うかもしれない。
しかし、そうも行かんのだ。
星核ハンターも星穹列車もかなり団結力と仲間意識が強い集団だ。
大事な仲間である星が何処の馬の骨とも知れない男に初めてを奪われたなんて事がバレたら俺の命の保障は無い⋯。
「いっ一旦この話は置いておいて、ゲームの続きやろ!」
『⋯ゲーム飽きた⋯。』
「は?」
今なんて?ゲーム飽きただと?
あのゲーム中毒者末期の銀狼がゲーム飽きたなんて⋯一体何の心境の変化だ?明日は矢でも振るのか?それとも俺の家に黄泉が迷い込んだりでもするのか?
「急にどうした?お前がゲーム飽きたなんて⋯。珍しいにも程がある。」
『それはお互い様でしょ。それよりも飽きた物は飽きたの。他の事しよう。』
「他の事?オンラインじゃゲーム以外にする事ないだろ。」
『なら、オフラインで一緒に何かしよう。オフ会だよ。』
「え?」
オフ会だと⋯。
考えて見れば生まれてこの方やった事なかったかもしれない。
銀狼は星核ハンターだから、色んな場所を転々としている関係上今ままでオフ会なんてやる機会がなかったのだ。
「俺今ピノコニーにいるが、来れるのか?」
『勿論、今ちょうど仕事の都合でピノコニーに来てるの。』
そう言えば、ピノコニーの開拓クエストに銀狼いたな⋯。
ピノコニーに登場した星核ハンターメンバーで言えばホタルが印象的だが、実は銀狼もピノコニーに来ていたのだ。
『じゃ、そう言う事だから今から30分後くらいに黄金の刻f1に集合ね。』
こちらの了承も得ずに一方的に約束を取り付けて銀狼はボイスチャットを切った。
「勝手に決めやがって⋯。待ち合わせ時間と場所は良いとして、あいつ俺の顔知らないだろ⋯。」
さっきも言ったが、オフ会は今まで一度もした事が無い。
それに、お互い本名を隠していたし、俺はピノコニーの折り紙大学に進学すると言う情報以外は素性を殆ど明かしていない。
それは銀狼も同じで、あいつは自分が星核ハンターである事を俺に言っていない。
つまり、お互い様に詳しい素性も顔も分からない他人と言うわけだ。
この状態でどうやって待ち合わせしろと言うのだろうか?
まあ、俺はゲームで銀狼の顔を散々見たから、大丈夫だが、あいつはどうやって俺を見つけるつもりだ?
まあ、良いか一旦約束の場所に行ってから考えよう。
俺は急いで支度して黄金の刻f1へと向かう。
そして、数分としない内に約束の場所へと着いてしまった。
「早く来すぎたか⋯。」
「残念、その逆。実は2分だけ私の方が早かった。」
⋯顔を見なくても分かる⋯明らかに勝ち誇った少女の得意げな声が背後から聞こえてきた。
声が聞こえてきた方に振り向くとそこには小柄で少し幼い少女の容貌をした銀髪縦ドリルポニーテールの美少女が立っていた。
「はじめましてかな?私はリアルの姿のシルバーウルフだよ。」
「おう⋯。俺はリアルの宙だ。よく俺だって分かったな?」
「当たり前でしょ。あなたの顔も個人情報もとっくに私には筒抜けなの。生年月日からホクロの数とアソコのサイズまで全て知ってる。」
「それはいらない情報だろ。」
全くどこの情報ハッキングしてんだよ⋯。
などと毒づきながら、俺は目の少女の姿を今一度注視する
⋯間違い無い、ゲームで見た銀狼そのものだ。
やっぱり、シルバーウルフは銀狼だったか⋯。
元から知っていた事だが、こうして実物を目の前にすると何と言うか、現実味が無いな。
何せ俺にとってはかつて遊んだゲームのキャラクターだ。
どれだけ手を伸ばしてもどれだけ願っても決して触れることも直接会う事も許されなかった別次元の存在⋯それが目の前にいる。
星の時はタイミングが悪かったから、感慨に浸る余裕は無かった。
だが、今回は違う!
いきなりのオフ会には動揺したが、こうして銀狼と直接会えたのはスタレファンとしては大変嬉しいイベントだ。
「どうしたの?そんなに私を見つめちゃって。そんなに私に会えたのが嬉しいの?」
「当たり前だろ。お前に会えて良かった。」
「そっそう⋯ふーん⋯。」
俺の言葉に銀狼は目に見えて動揺して顔を赤くする。
この表情⋯この動揺の仕方⋯。
こいつ⋯。
「照れているな?」
「なっ!?」
「へへっやっぱ照れてる!なんだ?お前もしかして褒められ慣れてないのか?」
「そっそんなわけないでしょ!」
銀狼は必死に誤魔化しているが、その必死さが余計に自らの墓穴を掘っているということに気が付いてない。
⋯こいつ面白い上に可愛いな⋯もっといじったろ。
「やーいシルバーウルフ可愛い!」
「ちょつやめっ!」
「シルバーウルフ天才。俺はお前に会えて嬉しい。話せて嬉しい。お前が友達で嬉しい!」
「本当に⋯やめて⋯。」
やば⋯めっちゃ顔真っ赤かじゃん。
このままだと、銀狼褒め殺しにしちまう。
そろそろやめ⋯いや、もっとやったろ!
「俺はお前が好きだぜ!好き好き大好きアイラブユー!」
「やめてぇぇぇ!」
その時、その瞬間、黄金の刻に一人の銀髪美少女の悲鳴が木霊するのだった。
ー
ーー
ーーー
いや〜実にからかい甲斐のある奴だ。
ついついからかい過ぎてしまった⋯。
本来ならもっと早く辞めるべきだったのだろうが、楽しすぎて辞められなかった⋯。
自制が全く効かず、俺は大いに調子に乗って、あの後ずっと銀狼を褒め殺し続けた。
そう、調子に乗っていた⋯。
まるで昨夜、星とヤッた日の焼き直しのように⋯。
俺は銀狼に止めてと言われても彼女を褒め続けた。
それがいけなかった⋯。
もっと早く止めておけば⋯。
「んっん〜。宙⋯。」
「⋯。」
こんな事に成らずに済んだのに⋯。
今俺の目の前には妙に既視感のある光景が広がっている。
一糸纏わぬ姿の銀狼が俺の家で俺のベッドで同じく一糸纏わぬ姿の俺と寝ていた。
「またヤっちまった⋯。」
取りま二話はここで終了。
二人の間に何があったのかは次話やります。