「え?何でそんな事言うの⋯?え?⋯て言うか名前⋯。」
「何でって言われてもな⋯。この2日間で得た経験を元に傾向と対策を俺なりに考えた結果この世全ての女子と距離を置くべきだと思ったんだ。だから、暫くお前とも距離を取る。と言う訳で⋯速やかに俺の家から出てってくれ。」
困惑する銀狼の質問に答えて、俺は手早く彼女に服を着せて速やかに俺の家から追い出す。
「ちょっと待って!どうしたの?!急に!」
「お前には本当に申し訳ないと思っているが⋯許せ⋯今の俺は俺自身でも制御出来んのだ。」
俺の行動は傍から見たら最低そのものだろう。
と言うか、言い訳の余地無しに最低だ。
しかし、2日連続で女の子とチョメチョメしてしまうなんて明らかに異常だ。
俺はエロゲヤリチン主人公になる為にこの世界に転生してピノコニーに上京したわけでは無い。
自粛せねば⋯。
これ以上俺の犠牲者を増やさない為に⋯!
「ねえ⋯待ってってば⋯。もしかして昨日無理矢理ヤッた事を怒ってるの?」
「いや、怒ってないし、恨んでも無い。しかし、後悔はしてる。ろくに責任も持てないのに⋯一時の気の迷いでそう言う行為をしてしまった事をな。」
家の玄関の前で俺の足に涙目で縋り付く銀狼を見下ろしながら、俺はそう言い放つ。
この光景⋯クズ彼氏が依存気質の彼女を振ってるみたいでかなり痛々しいな⋯。
銀狼の涙目も相まって、俺の良心が抉られる。
だが、ここは心を鬼にせねば⋯。
彼女にも星核ハンターとしての立場がある。
銀狼も星と同じように銀河では有名人だ。
まあ、有名人と言っても星とはまた違うベクトルだし、多少のスキャンダルは痛くもなさそうな立場ではあるが、星の時はろくに責任も果たせずに家から追い出したのに、銀狼は受け入れるなんて特別扱いは出来ない。
流石にここは平等に銀狼を帰そう。
「じゃあな、銀狼。」
「待って!嫌!宙!」
「待たない。昨夜の事は悪い夢として忘れてくれ。」
そう言って俺は縋り付く銀狼を引き剥がし扉を閉める。
「ふう⋯。」
銀狼を締め出して鍵とチェーンを掛けた後、俺は扉に寄っかかりながら、深くため息を付く。
すまない銀狼⋯こんな無責任な奴で⋯。
そう心中で呟きながら、俺はリビングに入る。
「今日は⋯流石に学校に行ったほうが良いよな⋯。昨日はサボっちまったわけだし⋯。時間は⋯あまり余裕は無いか⋯。朝飯抜いて直ぐに支度だな⋯。」
リビングで時計を確認して俺は支度の為に自室に戻る。
元々今日はあまり朝食を食べる気にはなれなかった為、朝食を抜いて直ぐに学校に行く準備を整えて玄関に向かう。
「銀狼⋯まだ⋯いるかな?」
恐る恐るドアスコープ越しに玄関前を確認すると、そこに銀狼の姿は見当たらなかった。
「帰ったか⋯。」
恐らく転移ビーコンとか移動系の道具を使って帰ったんだろう。
銀狼が大人しく帰ったん事実に「良かった」と安堵する気持ち半分、申し訳なさと寂しさで心が抉られる気持ちが半分って感じだ。
やっぱりもう少し円満な解決法があったのでは無いかと思わないでもないが、過ぎた事を気にしてもしょうがない。
気持ちを切り替えて大学に向かおう。
ー
ーー
ーーー
家を出た後無事に大学に着いた俺は午前から午後に掛けてきたびっしり必修授業を取って講義を受けていた。
最初こそ、入学初日にサボった事で教授にドヤされたり、他の生徒達に少し距離を置かれたりなどちょっとしたいざこざはあったが、何とか問題無く講義を受けれている。
「それでは今日の講義はここまで、課題は来週の月曜日までに提出するように。私の講義では定期テストよりも平常点を重視するからな期日までにしっかり提出するように。特にそこの君、昨日のサボりの件で既にイエローカードだ。」
授業の最後に俺を指指してそう言い残し教授は教室を後にした。
⋯完全に目をつけられたな。
まあ、良いかこの程度の課題なら余裕で高得点を狙える。
直ぐに挽回するさ。
取り敢えず今日の講義は全て終わった。
今日も昨日も色々あって疲れたし、早く帰ろう。
俺は直ぐに帰りの支度をして教室の出入り口に向かう。
しかし、その途中でたまたま教室を出るタイミングが被ってしまった小柄な女の子と盛大にぶつかってしまった。
「きゃっ!」
「おっと。」
おいおいマジかよ⋯。
今朝この世全ての女子と距離を送って誓ったばっかなのに⋯。
「すまない⋯こちらが不注意だった。」
俺は俺とぶつかった事で思い切り床に体を打ち付けてしまった女の子に手を差し伸べる。
この女の子どうやらピピシ人の様だ。
まるで小人のように体が小さい上に勢いよくぶつかった際、俺は一切衝撃を受けなかったが、この女の子は少し大袈裟なんじゃないかと思う程に思い切り体勢を崩していた。
「あっありがとう⋯ございます⋯。」
女の子は俺の手をそっと取ってゆっくりと立ち上がる。
「怪我は無いか?」
「はっはい⋯。」
「そうか⋯済まなかったな。じゃあ気をつけて帰れよ。」
それだけ言い残して俺はその場を後にしようとする。
なるべく深くは関わらない。
3度目の正直と言う奴だ。
もうこれ以上同じ過ちは繰り返さない。
俺は万一にもこのピピシ人の女の子と朝チュンする未来を迎える事が無いように気持ち早歩きで帰路を辿る。
しかし⋯。
「あの!ちょっと待って⋯。」
短い足てテチテチと俺を必死に追い掛けながら、女の子が俺を呼び止めてきた。
「⋯なんだ?」
「あの⋯あなた昨日休んでた人ですよね?良かったらお詫びに昨日の授業のノートとか課題を教えてあげましょか?⋯なんて⋯。」
⋯ヤバい⋯凄く有り難くて断れない⋯。
しかし⋯ダメだ。
いくら課題の為でも⋯一度決めた契りを破るなんて⋯。
単位の事はこれからの課題と平常点で挽回すれば良い。
ここは不用意に女子に近付かない事のほうが重要⋯。
「ダメですか?」
ピピシ人の女の子は上目遣いでこちらの顔色を伺うように聞き返してくる。
「うっ!」
クソ⋯そんな弱々しい目を向けるな⋯。
分かってる⋯この子はわざとじゃない。
ピピシ人の彼女と俺では体格差的に彼女歯俺を見上げざるを得ない。
だから、この上目遣いはわざとではない。
だが、こんなにもか弱くて小さな生き物に下手に出られてしまったら、断るなんて出来ないだろう⋯。
こちらに助けを求める捨て猫を見捨てられるか?
答えは否だ!
と言う訳で俺は結局このピピシ人の女の子の誘いを断る事が出来無かったのだった。
ー
ーー
ーーー
「はあ⋯。」
もうすっかり暗くなってしまった下校路を辿りながら、俺はため息を付く。
そのため息は後悔や自責から来るものではなく、単純な安堵から来るものだ。
結論か言うと何も無かった。
あのピピシ人の女の子とは本当にただ昨日の講義のノートを写させてもらって、課題を教えてもらっただけで何も起こらなかった。
スタレのメインキャラにピピシ人の女の子はいなかったと思うので、あの子はきっと俺と同じモブキャラだ。
そんな彼女とは銀狼や星の時とは違って肉体関係に発展するようなイベントは起きなかった。
つまり、どうやら俺はスタレのメインキャラとだけそう言う行為に発展する運命的な物に縛られている⋯のかもしれない⋯。
あくまで憶測の域を出ないし、ただたまたま偶然が重なって銀狼と星とだけそう言う関係になっただけかもしれないが。
まあ、兎に角今日は何事も無くて良かった⋯。
少しだけ晴れやかな気持ちになった俺は僅かに軽い足取りで家に帰る。
自然な動作でいつも通り鍵を開けて玄関をくぐって家の中に入いれば、一人暮らしの俺だけの楽園がそこに⋯。
「すまない⋯道を迷ってしまってな。ここは夢境ホテルで合ってるだろうか?」
「⋯。」
目の前に紫色の長髪に片目を隠した少し露出が多めの服を着たダウナー系の美女がいた⋯。
おかしいな⋯。
俺は確かにさっき自分の家の鍵で扉を開けて、この家に入った。
つまり、ここは間違い無く俺の家だ。
俺だけが侵入を許された憩いの空間だ。
なのに⋯なのに何で!
「すまない、あなた⋯何処かで会った事があったか?」
ー
ーー
ーーー
「⋯どうして⋯。」
俺は今何度目か分からない後悔と絶望を味わっている⋯。
しっかりと気を付けていた筈だ⋯。
ちゃんとしっかりと、これ以上過ちを犯さないために⋯俺は気を張っていた筈なのに⋯!
何で黄泉が俺の家にいるんだよ!!!
「大丈夫だ⋯そこには⋯きっと⋯一抹の穴がある。」
寝言やかまし過ぎだろ⋯。
二度ある事は三度ある⋯。
結局俺は同じ事を繰り返すのか⋯。
運命からは逃げられないのか!