いつも品質よりもスピード重視してしまうんですよね⋯。
読みづらかったらごめんなさい。
やっぱり改めてどう考えてもおかしい!
何で黄泉が俺の家にいるんだよ!!
朝⋯鳥のさえずりが聞こえる時間に俺は心の中でそう叫ぶ。
また朝チュンを迎えた。
気をつけていたのに⋯。
同じ過ちを三回も繰り替えしてしまった。
俺の隣には一糸纏わぬあられもない姿を晒して寝息を立てている美女が一人。
「涙雨⋯濡れてきたな⋯。何処がだと?⋯ふふ、言わせるな⋯。」
相変わらず寝言がやかましい⋯。
俺達がこんな状況になった経緯を話すにはまず昨夜まで時間を遡る必要がある⋯。
ー
ーー
ーーー
「あの⋯ここ俺の家なんだけど⋯。」
家に帰ってきたばかりの俺は目の前にいるはずが無い女性⋯黄泉に対して困惑しながらも言葉を絞り出して話し掛ける。
「そうだったのか⋯すまない。私はどうも道を覚えるのが苦手でな。夢境ホテルの私の部屋に戻るつもりが、誤ってあなたの家に来てしまったようだ。」
「鍵かけてたよな⋯。どうやって入った?」
「すまないが、よく覚えていない。最近どうも忘れっぽくてな。ただ私が入れたということは何処か鍵の開いていた場所があったと言うことだろう。」
いや、おかしいだろ⋯。
ちゃんと戸締りしたんだが⋯。
と思いつつも少し心配になったので改めて家の戸締りをしっかり満遍なく確認する。
「うん⋯。やっぱり何処も開いてる場所なんてないぞ。」
「そうか⋯それより、夢境ホテルへの行き方を教えてくれないだろうか?」
不法侵入しておいて、厚かましい奴だな。
あまりにもマイペース過ぎる。
だが、しかし相手が自ら家から出ようとしてくれているのはありがたい。
何せ今の俺はなるべく女子とは距離を置くようにしているからな。
特にメインキャラとは⋯。
相手は黄泉だ⋯もしかしなくても銀狼や星の二の舞になる可能性は十分にある。
ここは厚かましくても何でも良いから速やかに家から出ていってもらおう。
「分かった⋯。今地図を出すから少し待ってくれ。」
俺は家の棚を漁ってピノコニーの地理が載っている地図と適当なマーカーペンを取り出して黄泉の前に出す。
「良いか?今俺達がいるのはピノコニーの高級住宅街⋯つまりここだ。」
そう言って黄泉の前で地図に俺達の現在である場所にマーカーで印を付ける。
「そして、ここの道を真っ直ぐ行って突き当たりを何度か曲がると夢境ホテルだ。」
マーカーで道筋を書き込み読みやすいように手を加える。
そして、その道筋を書き込んだ地図を黄泉に手渡す。
「この地図の通りに行けば迷わずにホテルに着くから。」
「ありがとう⋯世話になった。」
そうして、黄泉は地図を受け取り俺の家から出ていく。
「ふう⋯なんとかなった⋯。今の俺⋯神回避じゃね?」
床に崩れ落ちながら俺は自分自身の行動を自画自賛する。
自分を自分で褒めるなんて痛々しいことこの上ないが、今はただ自分を褒めたい!
ナイス!俺!ファインプレー!俺!流石!俺!
勝ったな!風呂入ってくる!
と言う訳で、俺は勝利のひとっ風呂を浴びに風呂場へと向かう。
一日の締め括りはやはり熱々の風呂に限る。
とは言ってもまだ帰っきたばかりだから風呂は沸いていないどころか掃除すら終わっていないのだが⋯。
まあ、細かい事は気にしない!
さっさと掃除終わらせて風呂沸かすぞ!
⋯と俺は意気揚々と風呂場の扉を開ける。
すると⋯。
「すまない、ここは夢境ホテルで合ってるだろうか?」
「おかしいだろ!!」
何で?どこから入ってきた?
ちゃんと戸締りはさっき確認したし、そもそも風呂だぞ?
どこからも入れる隙間も無い上に入れたとしてもその前に気づくだろ⋯。
「あなた⋯どこかで会ったか?」
「さっきこの家で会いましたよ。」
全くどんな手品だ。
黄泉と言うキャラクターが方向音痴である事は知っていたが、これは⋯最早方向音痴どころの話じゃないぞ。
「そうか、すまない。あなたはさっき地図をくれた親切な人だな。申し訳ないが、途中で地図をなくしてしまってな。それでまた道に迷ってしまった。」
「もう、道に迷うとかの問題じゃないっす⋯。不法侵入ですよ。」
「⋯それは本当にすまない事をした。実は過去のある出来事を切っ掛けに私は私自身の記憶能力を上手く制御出来なくなってしまったんだ。覚えようと思っても覚えられない。より鮮明で痛烈な記憶ならば多少は記憶の片隅に残す事は出来るが、徐々に虚無へと誘われていく私の記憶を引き止める事はついぞ叶わかった⋯。」
制御出来ない⋯か。
その話は少し他人事には思えないな⋯。
俺も昨日や一昨日、そして今の状況を上手くコントロール出来てない訳だし⋯。
「そうか⋯。なんか悲しい事を思い出せちまったかな?」
「ふふっ大丈夫だ。過去の感情を思い出せたと言うことは私もまだ虚無に染まり切っていないと言うこと⋯。例え悲しみの感情であっても、過去を思い出して芽生えた感情であれば、それは喜ばしい事だ。」
「⋯なあ、良かったら聞かせてくれないか?あんたの過去。初対面の俺にそんなプライベートな事とか言いにくいと思うけど、何となくあんたの事を他人事とは思えなくて⋯心配なんだ。」
「ふふっ⋯やはりあなたは親切な人だ。場所を移そう。もう少し安らげる場所で話したい。」
「ああ⋯。」
あの後俺達は風呂場から俺の部屋に移動し、黄泉の昔話しを彼女が覚えている限り事まで聞かせてもらった。
昔の話しをする黄泉はかなり辛そうで悲しそうだったけど、俺にその話をしている間は⋯まだ昔の事を覚えていられて誰かに話せていると言う事実に少し喜びを感じていた様に見えた。
そして⋯そして⋯。
ー
ーー
ーーー
場面は現在に戻り⋯。
気付いたらヤッちゃってました⋯。
「⋯どうして⋯どうしてこうなっちゃうかな⋯。」
いやね⋯。
あの後、黄泉が昔の話しをし終わった後に、気付いたらそう言う雰囲気になってたんだよね。
そして、お互いに何か言葉を交わすでもなく、まるで謎の引力に引き寄せられるかのように俺と黄泉の唇が重なっちゃったんだよね⋯。
そして、このザマよ。
⋯どうして⋯いつもこう⋯肝心な時に止まれないかな⋯。
もう、俺がスタレ女子との乱交をやめることは不可能なのか?
「んっ!⋯おはよう⋯。昨日は熱い夜だったな。」
黄泉が起きてそうそうお決まりな台詞を言い放つ。
もう、このパターンにも慣れてきた。
だからと言って受け入れる気は無いし、黄泉も特別扱いはせずにこのまま家から追い出すけど。
「⋯ああ、おはよう。それよりも話があるんだが⋯。」
「大丈夫だ皆まで言わなくて良い。昨夜の事は若気の至りだ。私がこの家を出ていけば、もう私達の間には何も無い。」
「⋯。」
俺から切り出そうとした言葉を先に言われてしまった。
しかし、改めて聞くと最低な話だな⋯。
実質ヤリ捨てじゃん。
でも、仕方ない。何度も言うが黄泉だけ特別扱いは出来ない。
「⋯ごめん。」
「謝る必要はない。ただ最後に少しだけ我儘を言っても構わないだろうか?」
「⋯なんだ?」
「この記憶をずっと覚えていたい⋯。それとあなたの名前を知りたい⋯知って⋯一生忘れずに私の心の宝箱にしまいたい。」
「わかった⋯。俺の名前は⋯宙だ。」
「宙⋯いい名前だ。ついでに私も名乗っておこう。私は⋯雷電・忘川守・芽衣。」
こうして、お互いに名を名乗った後、俺は黄泉を見送った。
そして、急いで今日も大学へ行くために準備をして家を出るのだった。