黄泉と別れて、大学に行き、そして何事も無くその日の講義を全て受け終えた俺は大学から家までのいつも通りの帰路を辿る。
そんな一見なんて事のない普通の一日を過ごしているように見える俺だが、心の中は外側とのギャップで風邪を引いてしまうくらいに荒れている。
原因は勿論、連日必ず迎えてしまう朝チュンの事についてだ。
俺は俺なりに対策を立てているのに何故か気付いたら俺の家で肌色祭りが開催されてしまうのだ。
一体どうしたものか⋯。
家までの帰り道を歩く傍ら、どうにかして乱交の運命から逃れる方法は無いかと頭を捻る。
すると⋯俺の頭にある一つの天啓が降りた。
「そうだ!家だ。」
考えてみれば、星、銀狼、黄泉いずれも肉体関係を持ったのは俺の家だった。
つまり、俺の家が良くなかったのだ。
そうと分かれば、話は早い。
俺はもう家には帰らない!
そう決意を固めて、俺は懐から家の鍵を取り出す。
今こそ俺のメジャーリーガーを目指せる肩を見せる時!
「自由の翼をはためかせ、夢の果てに消えろ!マイハウスオブザキー!」
そう叫んで、俺は家の鍵を遥か遠くへと投げ捨てる。
⋯これで良い。
これで俺は家に帰れなくなったが、そのかわり自由を得た。
乱交の運命に縛られないと言う自由を⋯。
⋯と思っていたのも束の間。
俺が投げた鍵は思いの外あまり遠くへは飛ばず、そのまま弧を描いて、自由落下に従って地面に向かって落ちていった。
しかも、運が悪い事に⋯その鍵の落下地点には一つの人影が⋯。
「いたっ⋯。」
ヤベっ⋯。
人に当たっちゃったよ⋯。
俺が投げた鍵はたまたま落下地点にいた人の頭にクリーンヒットしてしまった。
「ごめんなさい!大丈夫ですか?」
俺は急いで鍵をぶつけてしまった人に駆け寄り謝罪を口にする。
「ええ⋯大丈夫よ。そんな事より何で鍵を⋯。」
「いや⋯色々紆余曲折あってもう家に帰りたくなくなったから、鍵を捨てようかと⋯。」
「⋯そう、何か辛い事があったのね⋯。あなたも大変ね。」
大変?⋯ああ、まあ確かに大変だったな。
この3日間、休むことなく連日にわたって三人の女性を抱いてきた。
俺の初めても彼女達の大切な初めても、無責任に捨て去ってきた。
いくら、このエロゲ展開の様な運命から逃れようと奮闘しても、気付けば目の前に広がるのは痴情にもつれた美少女達の痴態ばかり⋯これが大変と言わずになんというのか⋯。
「はい、おっしゃる通りとても大変でした⋯。俺はここ3日間で取り返しのつかないことを沢山してきました。多くのものを失い、そして失わせてしました⋯。それだけに留まらず、失わせた事への責任からも逃げてしまいました。」
「⋯誰にでも辛い事はあるわよね⋯。⋯ねえ、あなたの鍵が
「⋯。」
初対面でいきなりサシ飲みのお誘い⋯。
これは明らかにそう言う展開に発展する前イベントと言う他ないだろう。
家に帰らなくてもこうなるのか⋯。
最早エロに愛されていると言っても過言ではないな。
俺はエロの申し子⋯いや、性の申し子だ。
んまあ、そんな事はどうでも良い。
正直この人の誘いは断りたいが、俺に拒否権は恐らくないだろう。
だが、念のためこの人の姿を今一度注視しておこう。
間違ってメインキャラと一杯交わしたら星みたいな事になりかねないからな。
モブキャラなら、なんとかワンチャン無事に帰れるかもしれないし⋯。
服装は⋯まず頭に探偵の様なベレー帽を深く被っている。
だが、この人は天環族なのか、ベレー帽の頭頂部らへんにヘイローの形をした凹凸が見えて、耳の下からは綺麗な翼が生えている。
そして、目元はかなり暗いサングラスを着用して念入りに隠していて、口元も黒い色のマスクをしている。
最後に胴体は丈の長いトレンチコートを着て体全身を覆っている。
何と言うか⋯少し古臭い探偵⋯いや、ただの変質者にも見えなくもない奇妙な格好だ。
その服装からでは性別は断定しにくいが、体の線が細く綺麗な括れが服越しに僅かに見える上、一人称が
とても個性的で目立つ服装だが、こんな見た目のメインキャラはスタレにはいない。
恐らくこの人はモブだ。
ひとまずは安心して良いだろう。
「分かりました⋯。気が済むまで付き合いますよ。」
そうして、俺は少し怪しい格好をした女性とバーで飲むことになった。
「それで、どこの店に行きますか?」
「実はもう既に決めてあるの。少し遠くてちょっぴり危険な所にあるのだけど、
「へぇ、それは気になります。」
「ふふっ着いてきて。」
言われた通りに俺はその女性の後を着いていき、件のお店に向かう。
だが、俺はそこで少し違和感に気付いく。
⋯この道⋯前に通った事がある。
この女性が今向かっている店までの道⋯それは以前、俺が入学式後に飲みに行ったお店までの道と思い切り丸被りしてしまっているのだ。
⋯いや、まさかな⋯。
少し嫌な予感がしながらも俺はその女性に大人しく着いていく。
やがて⋯。
「着いたわ、ここよ。」
辿り着いたお店は⋯。
「いらっしゃい!銀河打者特製モクテルはいかが!」
一度ヤッた女⋯星がいるお店だった⋯。
ここで少し前の話をしよう。
俺が初めて女性を抱いた日⋯つまり、星とヤッた日の事だ。
あの日俺は入学祝いにバーに飲みに行った。
そこで星と出会い、そして肉体関係にまで発展するイベントが起きてしまった。
だが、少しこの話に違和感を抱かなかっただろうか?星は⋯恐らくだが、公式情報では未成年って言う設定だった筈だ。
⋯うん、間違い無い。
オンパロス後のピノコニーの修正版のストーリーで主人公が銀狼に未成年いじりをした時、主人公も未成年だろ的な返しをされていたから確実だと思う。
つまり、星はまだ酒を飲める年じゃない。
俺はそんな女の子に手を出してしまった訳だが、一旦その話は置いておこう。
なら、俺は一体どのようにしてバーで星と出会ったのか⋯。
酒も飲めない彼女がバーにいるなんて不自然だ。
だが、答えは至ってシンプルだ。
星がバーテンダーをしていたのだ。
このお店はピノコニーの夢境の裏側⋯ナイトメア劇団が闊歩してる少し危険な場所にあるシヴォーンの店だ。
この店は危険な場所にある上に意外と値が張る⋯。
ゲーム内ではお金は取っていないように見えたが、あれはお友達価格と言う奴だったのだろう⋯俺の場合は結構持ってかれた。
そんなお店で主人公はシヴォーンのお手伝いとしてバーテンダーをしていた。
そこに俺が飲みに行って泥酔して、そして気づいたら星と寝ていたというのが全ての始まりの経緯だ。
何で酒を飲んでいない筈の星が泥酔してた俺と行為に及んだのかは謎だ全く覚えてない。
「あれ?宙じゃん。また来たの?」
「ああ、本来は来る予定無かったけどな。」
「あら?二人とも知り合いかしら?」
慣れ親しんだような会話を交わす俺と星に一緒に来た女性が疑問を零す。
「そう言うあなたも星と知り合いなんですか?」
「ええ、勿論。なんたって⋯。」
そこでその女性は徐に全身を強固に武装していた装備を取り外す。
ベレー帽もサングラスもマスクも⋯そしてトレンチコートも全て脱ぎ去る。
するとそこには⋯。
「なっ⋯!あなたは⋯。」
そこには青白い長髪におっとりとした目元が特徴的な美しい女性⋯音符の形をした装飾が施されたドレスを身に纏った歌姫の姿があった。
「ふぅ⋯。星の友人ならもう正体を隠す必要はないわね。申し遅れたけど、
どうやら俺が投げた鍵は⋯野生のゴリラ歌姫を捕まえてしまった様だ⋯。