「いぃやあああ!!」
「うぇ!?なに!!」
「どうかしたの?宙さん。」
俺の絶叫に星とロビンは飛び上がるように起きる。
「何で俺達、俺の家にいるんだ?昨日バー酒飲んでたよな?」
「それは…だって…ねえ。」
「昨日はとても熱い夜だったわ。あんなに白熱したのは初ライブ以来かも…。」
俺の疑問に星は目を泳がせ、ロビンは頬を紅潮させて、嬉しそうにそう囁く。
…マジか…やっぱ遂にヤッちゃったかんじ?
あの歌姫と…そして星も一緒に三人で…。
「うわあー…どうしよう⋯。これヤバいよ⋯不祥事も不祥事⋯大スキャンダルだよ。」
「だっ大丈夫だよ!私達誰にも話さないから。」
「お互いの為にも昨日の事は他言無用にしましょう。
⋯うん、まあそれが安牌だよな⋯。
しかし、またか⋯またヤリ逃げする羽目になるとは⋯これで4人目だぞ!もう、本当にいい加減しろよ!
大体何で俺達俺の家にいるんだ?鍵投げ捨てたのに⋯。
やっぱりそういう呪いなのか?運命なのか?
俺はそういう
⋯。
⋯⋯ん?
「そうだ!
「ん?」
「へ?」
「
考えてみたら、今まで女性経験なんてろくになかった俺がこんな美少女達を抱けるようになったのはピノコニーに上京してきたからだった。
つまり、ピノコニーから出れば俺は必ず朝チュンを迎える呪いから解放される⋯。
「星、ロビン俺はピノコニーを出る。」
「何で?」
「どんな経緯でそんな話になったのかしら?」
おっと勝手に一人で盛り上がりすぎたな⋯。
二人にはちゃんとしっかり経緯を説明しないと。
「えっとだな⋯。実は俺が抱いた女は星とロビンだけじゃ無いんだ。」
「「は?」」
俺の言葉にロビンと星の表情は大きく歪む。
その表情からは困惑と少しの苛立ち、そして失望が伺えた。
「え?私達以外の女とヤッたの?」
「ああ…。」
「誰と?」
「…銀狼と黄泉。」
「ピンポイントで知り合いなんだけど。何?その度にヤリ捨てして来たの?」
「はい⋯。」
「最低だね。」
うぐっ!ぐうの音も出ない⋯。
星の鋭い罵声に俺の良心は抉れる。
「最低なのは俺も分かってる。これでも俺なりに同じ過ちを繰り返さないように色々試行錯誤したんだよ。でも、幾ら対策しても、必ず朝チュンを迎えるんだ。時には銀狼に無理矢理気絶させられ、時には女子と極力距離を置いたのに何故か道に迷った黄泉が家に不法侵入してきて、そして時には家の鍵を捨てようとしたら、ロビンと遭遇して変なモクテルを飲まされて⋯。まるで運命の強制力でも働いているかのように、朝チュンを回避出来なかったんだ。」
「それは…。」
「御愁傷様ね。宙さんの話を聞いた限りだと、確かにただの偶然にしては不自然な気がするわ。それに宙さんと肉体関係を持った女性がいずれも
「わかってくれるか、ロビン⋯。」
「ええ、つまりこの呪いの様な現象の原因はピノコニーにあるんじゃ無いかと。そう考えているのよね?」
流石⋯話が早くて助かる。
「ああ、今までの俺は女性経験なんてろくに無かった。だが、ピノコニーに上京してから何故か立て続けに数々の女性と肉体関係を持ってしまうようになってしまったんだ。」
「だから、ピノコニーから出るって事?そう言う問題じゃない気がするけど⋯。」
「うるさい!出るって言ったら出るんだよ!俺はもう、暫くはピノコニーに戻らない!」
勿論、折り紙大学の学費を親に出してもらっている以上、ずっとピノコニーに戻らないわけにはいかない。
だが、今のピノコニーはカンパニーに仮面の愚者、メモキーパーとメインキャラがわんさかいる。
少なくともオンパロス⋯いや、二相楽園のストーリーが始まるまでは他の星に避難したい。
それまでは、取り敢えず休学して、親からの仕送りも暫くは遠慮しようと思う。
「でも、宙さんは行く当てはあるの?」
「無い。ノープランだ。」
お金はなんとかなるとして、問題は何処に行くか何だよな⋯。
あまり遠い所だと燃料代も馬鹿にならないし、ピノコニーからそんなに遠くない所⋯もしくは、ほぼ無料で星間航行出来る宇宙船でもあれば良いんだが⋯。
「なら、星穹列車に来る?」
「え?」
突然の星の発言に俺は折り紙の小鳥が豆鉄砲を食らったような間抜けな声を出す。
「⋯良いのか?俺みたいな他人を列車に入れて。」
「うん、星穹列車は誰でも歓迎するし、宙は⋯もう私と2回もヤッた仲だから他人じゃないもん。」
そう言われるとなんか複雑だが、星の申し出は大変ありがたい。
ここはお言葉に甘えてその申し出を受けよう。
「なら、よろしく頼む。」
「うん、でもすぐには無理だよ。一旦列車に戻って姫子達に許可を貰わないといけないから。」
「わかった。じゃあ取り敢えず今日の所は解散しよう。話が付いたら連絡してくれ。」
そう言う訳で、俺のピノコニー脱出計画の目処が立った。
そして、俺が星穹列車に乗る許可を得る為に、星は早速界域アンカーで列車に戻り、ロビンもそれに続いて、俺の家から出ていった。
勿論、一般人にバレないように念入りに変装して。
そんなこんなで家で一人っきりになった俺は少し時間を置いてから、学校に行くために支度をする。
とは言っても今日は授業を受けるために学校に行くのではない。
今日学校に行く目的は休学手続きだ。
そして、軽く支度を済ませた俺は玄関の扉を開けて学校へと向かうのだった。
ー
ーー
ーーー
「ふう⋯少し書く書類が多くて面倒だったが、なんとか終わったな⋯。」
昼。
俺は無事に休学手続きを済ませた事に安堵し、ゆったりとした足取りで家路を辿っている。
後は星から連絡が来るまで家でゆっくりとするか⋯。
などと呑気な事を考えていると⋯。
「見つけました。」
突然俺の背後にただならぬ気配を放つ人影が近づき、とんでも無い力で俺の肩を掴んで来た。
「あなたですね?私の妹に手を出したのは⋯。」
その背後の人影の声は、低く、とても美しく通る声だった。
「妹?一体何事⋯「惚け無いで下さい!」
その瞬間、怒号と共に、俺の肩を掴んでいる人影の手に更に力が加わる。
「妹⋯ロビンの純潔をよくも⋯!」
「ロビン⋯?」
まさか!コイツ、サンデーか!
俺は慌てて肩を掴んでいる手を振りほどき、後ろに振り返って、その人影の姿を視界に入れる。
そこには、ロビンと同じ翼と髪色に、後頭部にヘイローをつけた美青年はいた。
「あんたは⋯サンデー⋯。」
「⋯私の事をご存知だったのですね。ですが、そんな事はどうでも良い。私の妹に手を出しておいて、ろくに責任を取らずに捨てた罪を償ってもらいます。」
その瞬間、サンデーの背後に無数の茨と【往日の夢のこだま】と呼ばれるヒラヒラ人型の妖精のような物が現れ、俺を襲う。
「うああああ!」
サンデーの攻撃は俺に迫り絶体絶命⋯と思った瞬間、突然俺の目の前にまで迫って来た攻撃が霧散する。
「はえ?」
「キャッハハ!うわああ!だって!今のリアクション最高!ねえねえ!もう一回!もう一回今のリアクションやって!」
何だ?急にサンデーの様子が急変した⋯。
まるでさっきまでとは別人の様だ。
「えっと⋯サンデー⋯さん?」
「キャッハハ!花火は手羽男ちゃんじゃないよ。花火は⋯花火だよ〜!」
その瞬間、サンデーの姿が変わり、小柄で露出の多い中華風の服を着た黒髪ツインテールの美少女の姿が現れた。
「なっ!」
「アハハハ!驚いでる!どう?花火が考えたドッキリは?びっくりした?ねえ?びっくりしたでしょ!」
俺に近づいて来たサンデーはどうやら偽物でその正体はピノコニー屈指のクソメスガキの花火だった。
⋯何で花火が俺に近付いて来たんだ?
俺はモブだぞ。
近付いても花火に何のメリットもないだろ⋯。
「あんた⋯俺に何の用だ?何が目的だ?」
「もくてき?そんなの決まってるじゃん?君と良い事するためだよヤリチンくん♡」
「っ!」
上目遣いで艶めかしい声でそう答える花火を俺は不意にドキッとしてしまい、大いに狼狽える。
俺と良い事?ふざけるな!
これからピノコニーを出てこの呪いから解放されるって時に⋯。
こんな所でこんなメスガキに惑わされてたまるか!
「ふっふん!くだらねえ!何が良いことだ!俺は娼婦じゃねえんだよ他を当たれ。」
「隠さなくても良いんだよ。花火には全てお見通しだから。君は沢山の女の子を抱いたことも、君がピノコニーを出ようとしている事もぜぇーんぶ知ってる。言っておくけど、君がピノコニーを出てもその呪いは消えないよ。」
「何だと?お前一体何を知っている!」
「さあ?知りたかったら〜花火とチューしてよ♡」
クソ!おちょくりやがって!何だこのメスガキ!分からせてやりたい!!
もういっそ本当に分からせてやるか?
うん、そうしよう⋯。
俺は遂に覚悟を決めてキス待ち顔の花火に近付く。
「ふふっ!!なーんてね!冗談だよ!花火は別にヤリチンくんキスなんか…むぐっ!?」
何を言いかけた花火を無視して俺は花火の唇に無理矢理俺の唇を重ねる。
「んっ!?んー!んっー!!」
自分から煽った癖に、花火は物凄く抵抗して手足をバタつかせる。
しかし、その力もどんどん弱まり、次第には俺にされるがまま。
そのままあんな事やこんな事まで…おっと、ここからはR18だな、割愛しよう。
ー
ーー
ーーー
「ふう⋯。」
はいはい、いつもの光景いつものパターンね。
翌朝、俺の家で俺の隣で丸裸の花火が寝てる。
オッケー消化試合終了。
そして当然の如く花火をヤリ捨てします。
俺は寝ている花火をお姫様抱っこしてベランダに向かう。
「あれ…?ヤリチンくんどうしたの?」
花火が目を覚ましてしまった⋯。
本当は目を覚ます前に済ませたかったが、仕方ない。
俺はベランダの窓を開けて、そこから花火を投げ捨てた。
「え?ヤリチンくん!?うわぁ~!」
花火は裸のまま絶叫を上げてベランダから落ちていった。
オッケーこれにて一件落着!
いや〜なんかね〜、今までの女の子達は朝チュンを迎える度に罪悪感が凄かったんだけど、花火は全ッ然罪悪感感じ無いんだよな。
まあ、そんな事はもう、どうでも良い。
本当は昨日の内に列車に乗る支度をしようと思っていたのに花火のせいで丸一日潰れたからな。
星から連絡が来るまでに早く支度しよう。
そんな訳で俺は物置から大きなキャリーケースを取り出して歯ブラシ、着替え、ゲーム機など、必要な物をどんどん詰めていく。
やがて、必要な荷物が詰め終わった頃、タイミング良く星からのメッセージがスマホに届いた。
スマホには『許可貰えたよ。今から迎えに行くから家で待ってて』との内容だった。
遂に俺もあの星穹列車に乗れるのか⋯。
なんかワクワクするな〜。
これから俺を待ってる開拓の日々に胸を躍らせながら俺は星の訪問を待つ。
そして⋯。
「お待たせ。準備は良い?」
「おう!開拓が俺達を待ってる!」
「女の子ばっか開拓しちゃ駄目だよ?」
「わかってるって。」
ここから遂に始まる!俺の開拓の旅が!
ピノコニー編完!
しかし⋯。
この時の俺は知らなかった。
ピノコニーにはまだ数多の魔の手が潜んでいる事に⋯。
運命はまだ俺を逃がしてはくれない事に⋯。
ー
ーー
ーーー
ピノコニー某所。
カンパニー戦略投資部が集うとあるワークスペースにて。
「うわーマネーウォーズの調整終わらない!」
ムチムチの太ももと赤いメッシュが入ったショートボブヘアが特徴的な女性が何やら大きな奇声を上げて愚痴を零す。
「ごめん、カブ吸わせて〜。」
「ブヒブヒィ゙!!」
「っはぁ⋯!ありがとうカブスッキリした。」
自身のペットに顔を埋めてリフレッシュしたその女性は再び仕事に取り掛かる。
しかし、連日の業務により蓄積したストレスはそう簡単には瘉えるものではない。
「(あ~どうしよう⋯。全然足りない!カブを一吸いした程度じゃ収まらないよ⋯。誰か私を満たしてくれる人いないかな?)」
「あら?エレーナちゃん。どうしたの?浮かない顔して。」
そんな時、女性の前に現れたのははだけた服装に薄紫色の長髪と大きな帽子をした妖艶な美女だった。
「ジェイドさん!いや、最近中々リフレッシュ出来てなくて⋯。」
「根を詰めすぎるのは良くないわよ。一流の経営者は自己管理も怠ってはならないわ。」
「⋯そうですね。あの、良かったらジェイドさんのリフレッシュの仕方を教えてくれませんか?」
「ふふっ秘密は女のアクセサリー。いくらエレーナちゃんでもそれは教えられないわ。」
その妖艶な美女はそう言ってその場を後にした。
ー
ーー
ーーー
アスデナ星系内某所。
星核ハンターのアジトにて。
「宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙宙」
銀髪小柄なその少女はゲームモニターの前でコントローラーも握らずにただ呆然と画面を見つめながら、愛おしい人の名前を呼び続ける。
「銀狼⋯。」
その壊れた人形の様になってしまった銀狼の姿を銀狼と同じく美しい銀髪の長髪を持つ儚げな美少女が心配そうな目で静かに見つめる。
彼女はホタル。
本来、ロストエントロピー症候群により、医療用カプセルの中で寝たきりの筈なのだが、親友である銀狼がこの有様である為、心配のあまり無理矢理カプセルから抜け出してきたのだ。
「ホタル、そろそろカプセルに戻りなさい。今の君の体はそこまで自由が許されている状況じゃないわ。」
そんなホタルに声を掛けたのは赤紫色の髪を後ろに纏めて、蜘蛛の装飾が施されたコートを着込んだ妖艶な美女だった。
「カフカ⋯。」
「戻りなさい、ホタル。これ以上容態が悪化する前に。」
「⋯嫌だ。」
「⋯何ですって?」
「ねえ、カフカもう一回脚本に逆らっちゃ駄目かな?」
「何をするつもり?」
「銀狼をこんなにしたあのクソ野郎を絶対に許さない!」
ー
ーー
ーーー
「ほら、これが私達が乗っている星穹列車。」
「ほう⋯。これが⋯。」
俺の目の前には黒と金を基調とした大きな機関車の様な列車が聳え立っていた。
これが本物の星穹列車⋯。
今日から暫くここで世話になるのか⋯。
これから幾つかの旅をして、俺は主人公達と苦楽を共にする。
長い旅になるかもしれないし、もしかしたら案外短いかもしれない。
いつか戻ってくる日まで、さよならピノコニー。