マスター、このままだとメス堕ちキャンセラーが壊れちゃいますよ~ 作:メスキャン界隈
何かの洋楽が店内にずっと流れている中で、ことり、とカップを置く音がした。
「どうぞ、アイスコーヒーです」
俺が淹れたコーヒーを、ナギがコヨミの前に出している。
「どうも、今日は大人しいんだね」
「ちゃんと店員やってるだけなんですけど?」
じとっとした目で、コヨミを睨むように見つめた。ナギはいつも、コヨミを威嚇してるけどなんなんだろうな。
まあたしかに、普通に店員をしているナギも珍しいか。
にしても、コヨミが来るのも久しぶりだな。一時期は毎日来てたけど、なんか急に来なくなったんだが、忙しかったんだろうか。
ゆっくりと、コヨミがカップに口をつける。そのまま、座り込んだナギの様子を眺めた。
「にしても、この前は様子がおかしかったが、今日は普通じゃないか」
「ん?何ですか?」
こてん、とナギが小首を傾げた。
「もう忘れたのかい?君、この前会った時喋り方とか諸々、変だっただろう?」
ぴくり、とナギの眉が上がる。
ああ、催眠が解けた時の話か。あれももう元に戻ったが、もしかして今後もたまに催眠が解けるようなことがあるのかもしれない。
「細かいこと気にしますね、別にいいじゃないですか」
不満そうに頬を膨らませて、ぷいっとそっぽ向く。そのまま頬杖をついて、店の隅っこをじっとぼんやりと眺めている。
ナギは、催眠なしだと人と話してない、みたいなことを言っていた。きっと、その状態の自分をあんまり好きじゃないんだと思う。
こうしてると、こいつの催眠がどこまで続いたらいいのかってのも難しいな。まあ、俺が考える問題ではないかもしれないが。
「にしても、ここは相変わらず静かだね、マスター」
スッと、コヨミが目を細めた。まるで、何か言いたげなように。
「マスターはこのままでも、いいらしいですけどねー」
「それだと、君がよく言ってるあれになるだろう」
「ああ、あれですね。マスター、このままだと――」
まさかの掩護射撃からの、いつもの言葉が来るパターンもあるんだな。これで変なことを言われても、ある程度はスルーしながら付き合うか。
「神の朝――ゴッドモーニングが来ちゃいますよ~」
「……なにそれ?」
いや、さすがにスルーはできなかったな。
ちらり、とコヨミの様子を見る。前回で慣れたからか、もう話を聞かないようにしているらしい。
お前がツッコミ役をやってくれた方が楽なんだけどな。
「ゴッドモーニングですけど?」
「グッドモーニングみたいに言うな」
「いや、ゴッドなんで。グッドの上ですよ」
上とかじゃないだろ、それは。
コヨミも動きを止めて、こちらの話をじっと聞いてる。気にはなるんだな。
「で、そのゴッドモーニングはなんなんだ?」
「だから、神の朝ですってば」
「……その神の朝が何かわからないんだが」
「挨拶でグッドモーニングって言うじゃないですか。実際、1日の始まりがいい朝なら、その日は素晴らしい日になりそうですよね?」
ナギが指で、机をそっとなぞっている。そのまま、たまたま机に残ったままの埃を見つけて摘み、パッとゴミ箱に捨てていく。
「でも、神の朝から始めたら、さらにいい1日になりそうじゃないですか?」
「つまり、そういう挨拶ってことか?」
「違いますよ」
違うのかよ。今までの前振り的にそういう内容だと思うだろ。
「これはおまじないです。きっと、神の朝に違いない!と思うことで、よりよい朝を迎えたいってわけです」
「なるほど。じゃあ、今言っても意味なくないか?」
「ほら、ここ喫茶店じゃないですか。モーニングも、ゴッド化したらいいなあって」
うん、やはり理解を放棄した方がいいか。モーニングのゴッド化ってなんだ?スペシャルメニューってことか?
「……それでですね、その。私ってだいたい午後からバイトじゃないですか」
おずおずと、言いにくそうに話し始める。
ナギにはいつも、昼から入ってもらっている。そもそも、学校がある日は夕方からになるし、朝にわざわざ来てもらっても、そこまで人が来ないのにな、と思ってるところもあるんだが。
「その、マスターのモーニングとか、食べてみたいし。朝から来るのとかって、ありですか……?」
じっと、ナギがこちらを見ている。不安そうに、瞳が揺れた。
朝からバイトをしたいってことか。
「まあ、朝から来てもらっても問題はないけど。でも、なんでバイトなのにモーニング食べようとしてるんだよ」
「マスターをいつも手伝ってるかわいいバイトに、それぐらいしてあげてもいいじゃないですか」
「自分で言うか?まあいいけど」
「やった、ゴッドモーニングだ」
それぐらいは別にいいが、モーニングをゴッド化はしないぞ。
「いつも思うんだけど。やっぱりマスターってナギくんに甘すぎやしないか?」
「それ言われるのも、何回目だって感じだな」
「それはそうだけれどね。事実、そんな感じゃないかい?」
ナギに甘い、か。別によくないか?
こいつ、高校生だし。
まあでも。きっと、ここに来たばかりの時のナギの印象のせいで、放っておけないだけだろうけど。
あの時のナギは、どこか消えてしまいそうだったから。
「何の話ですか?」
「マスターが君に甘いって話さ」
「へえ、コヨミさんもマスターに甘やかしてほしいってことですか?ダメですよ。ゴッバイ」
「もしかして、グッバイのゴッドバージョンだったりするかい?」
「正解。やりますね、コヨミさんってば」
それ、ゴッドモーニングだけじゃなくて他でも使うのか。この世全てのグッドをゴッドにしようとしてない?
そもそも、おまじないにしては全部よくわからないが。
「ちなみに今は、ゴッドイブニングですっ」
ぱちん、とウインクをしてきた。そんなキメ顔で言うようなことでもないんだけどな。
「やれやれ。ずっとおかしなことを言ってるバイトがいて、マスターも大変だね」
「いや、意外と楽しいぞ」
「毒されてないかい??」
確かに、ナギに毒されているか。まあそれも、いいか。きっと、俺もこの日々も楽しんでいるから。
「にしても、マスター。お客さん来ませんね」
「君、いつも私のこと無視してないかい?」
「もう、細かいですね。コヨミさんしか来ないなーってことじゃないですか」
少しばかり、コヨミとナギも仲良くなってる気がする。意外と馴染んでるな。
「マスター、このままだとお店潰れちゃいますよ~」
「そうだぞ、マスター。いつ来ても私しかいないじゃないか」
だからといって、わざわざコンボを決めてこなくてもいいんだけどな。
そういえば、ここすきとか見る限りは拳がメリィさんが人気みたいで、おおという気持ちです
タイトルの形式、どっちがいい?
-
このままだと〇〇ですよ~形式
-
単語だけの形式