魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 作:ノーザ
自分なりのEXCEEDS、リリカルマジカル始まります。
遡ること数十年前──世界は一度、終わりを迎えかけた。
突如として出現した未知の生命体、『侵略種』。
人類の常識では説明のつかない異形の生物は、あらゆる兵器をものともせず都市を蹂躙し、文明を焼き払い、大地を血と炎で染め上げた。
人類は敗北した。
辛うじて生存圏を確保したものの、空は黒煙に覆われ、大地は汚染され、人々は今日という一日を生き延びるだけで精一杯だった。
いつ滅んでもおかしくない。
そんな終末だけが、平等に誰の頭上にも存在していた。
そんな絶望の最中、人類はとある物を見つけた。
ある遺跡から発見された、一つの”竜”。
正確には竜そのものではない。
竜の魂とも呼べる超高密度魔力生命体。
観測史上最大級の魔力反応を持ち、それは無尽蔵とも思えるエネルギーを秘めていた。
そして誰かが口にした。
「これを制御できれば、人類は侵略種に対抗できる」
その一言が全ての始まりだった。
ある研究機関は、その存在を魔導師支援用デバイスとして再構築した。
幾度もの失敗。
幾度もの改修。
そして完成した。
だが、起動出来なかった。
デバイスは存在する。だが扱える人間が、この世界には存在しなかった。
絶望が広がる中、一人の研究責任者が静かに呟いた。
『いないのならば……作ればいい』
それは倫理の終焉だった。
魔術を用いたクローン技術。遺伝子操作によって行われる人工生命創造。それら全てを融合させ、人造魔導師──ホムンクルス計画が始動する。
『適合率100%』
それだけを目的に。
人格も。
人生も。
命すらも。
全ては”デバイスを起動する鍵”として消費された。
無数に並ぶガラスカプセル。その中のホルマリンに沈む子供達。
中には男になった者。
中には女になった者。
中には年齢を書き換えられた者。
中には・・・完成する前に壊れた者。
誰一人として名前は無い。
あるのは管理番号のみ。
そして今日もまた、一人が消えていく。
そんな光景を、一人の少年はぼんやり眺めていた。
設定された年齢は10歳。
感情は最低限。殆どない。
余計な思考など不要。
そう作られた存在。
だから悲しくもない。
怖くもない。
ただ、自分も近いうちに壊れる。
なんとなくそんな気がした。
ある日、一人の研究員がコンソールを操作してガラスの液体が排出され、カプセルが開く。
『自分の番か』
病衣を着せられ、実験室に連れて行かれる。たどり着いた場所は辺り一面が不気味な程白く、中央には天井に吊るされたケーブルが接続された巨大な紫の結晶体。
そしてその前に手のひらの形をした窪みがある透明な板が。
右手を板に嵌めるように置いて接続が始まる。
暖かな光が全身を包み込む。
血液のように身体中を巡る魔力。
痛みはない。
むしろ何処か心地いい。
「ここまでは良い」
「問題はこの先だ」
傍にいた研究員達の会話が耳に入ってくる。
この先で皆、死んだのだろう。
なら自分も同じだ。
どうせ死ぬ。
成功する未来なんて浮かんでなかった。
そう思った。
その瞬間だった。
『──お前の願いは何だ?』
知らない声。
突如、頭の奥底から直接響く低い声。
「え・・・・・・?」
抜けた声を出したその直後だった。
けたたましい警報アラートが研究施設を震わせた。
『侵略種侵入!』
『全研究員は直ちに避難せよ!繰り返す!全研究員は・・・』
館内放送が繰り返される前に、鋼鉄の扉が吹き飛び、炎が室内へ雪崩れ込んだ。
研究員達は悲鳴すら上げられず爆炎に消えた。
燃え盛る研究室。
黒い煙。
侵入していた数体の侵略種がゆっくりと結晶体へと近付いていく。結晶体から放たれる魔力に惹かれたのだ。
結晶体付近で少年は頭から血を流し倒れていた。
視界が暗くなる。
ここで終わるのか。意外にも呆気ないものだったな。
これで人類は侵略種に対抗する術を失い、世界は再び終焉を迎えるのだろう。
その時だった。
『もう一度聞こう』
『お前の願いは何だ?』
まただ。またあの声が聞こえる。
その問いに・・・。
初めて・・・。
心が震えた。
「・・・・・死にたく、ない」
その一言で世界が白く染まった。
光が晴れるとそこは先程の研究室では無かった。
炎の世界。荒廃した建物。無数の人の頭骨。まさに地獄。もしくは世界の終末。
そんな場所に彼は佇んでいた。
「ここは・・・・・・」
呆気に囚われていると背後に気配を感じた。恐る恐る振り返るとその目の前には・・・・・・。
どう表現したら良いのだろうか。
それは不透明で、まるでガラスのように透けて周りの炎で反射して炎が揺らめいていた。
それはある生き物を形作っていた。
ドラゴン。
空想上の生き物。巨大な翼を持つ、架空の物語に登場する存在。雄々しく全てを支配するような全ての頂点に立つ生き物・・・・・・。
水晶のような瞳が少年を見下ろしていた。
『・・・面白い』
と、竜は笑った。
『これまで幾度もなく、何百、何千と問い掛けた』
『だが、お前のような者は初めてだ』
彼は何も言えない。
『改めて聞こう』
『お前は何を望む?』
少年は静かに目を閉じた。浮かんだのは地獄ような光景ではなく、灰色の空でもない。
どこまでも青く澄み渡る空。
柔らかな風。
暖かな陽射し。
「・・・・・・青空の下を歩きたい」
一瞬、竜は沈黙した。
そして豪快に笑う。
『ハハハハハ!!』
『実に良い!』
『その願い、我が叶えてやろう!』
巨大な身体が光へ変わる。黄金の球体となって少年の胸へ吸い込まれていく。
『だが覚えておけ』
『力は願いを叶える道具に過ぎん』
『使いこなせるかは、お前自身だ』
光は大きくなり、彼の視界を白が埋め尽くした。
眩ゆい光が収束して、目をくらませていた侵略種が隠していた腕をどかした。
その瞬間、背後にいた個体の首が斬り裂かれ胴体と泣き別れた。一体だけでは止まらず近くにいた二体目、三体目も理解する間もなく異形は吹き飛んでいく。
煙の中。
一人の少年が立っていた。
薄い茶髪は赤黒く染まり、上は黒で下は白い胴着を模したバリアジャケットを纏い、右腕を覆う甲冑はまるで龍のような装甲。肩に担ぐ緑の魔力刃を持つ薙刀。
その瞳には、もう虚無は無かった。
「・・・・・・・」
侵略種が咆哮を上げて彼に飛び込む。それに対して少年は無言で踏み込んだ。
薙刀を一閃。首が飛ぶ。返す刃で背後の侵略種の胴を裂く。薙刀を投擲すれば一体を貫き、そのまま爆炎が巻き起こる。
丸腰になった彼に背後を取った侵略種が飛び掛かるが、右腕を突き出すと装甲が変形した。それは正しく竜の頭部。名を『ドラゴンハング』。顎が開き、グンッとワイヤーのように伸びた龍頭が侵略種の腹を貫き、突き刺したまま何体もまとめて薙ぎ払う。さらに口腔から灼熱の炎を放ち、怪物達を焼き尽くした。
最後に現れた大型個体。
その巨体が飛び掛かる。
彼は静かに薙刀を構える。
右腕のドラゴンハングを展開すると槍に竜が纏い、咆哮した。緑色だった魔力刃が淡い橙色の魔力が刃へ収束する。
「
突き出されたその一撃と共に、巨大な龍の顎を象った魔力奔流が解き放たれた。
龍は侵略種を丸ごと飲み込み、そのまま研究施設すら呑み込むほどの爆発を起こした。
燃え落ちる瓦礫。
少年は開放された天井を・・・濁った空を見上げた。暫く見つめていると前を向き、静かに歩み始めた。
『どこへ行く?』
竜の声が頭に響く。
少年はそれに対して少しだけ笑ってみせた。
「ここじゃない、どこか」
『ほう?』
「こんな灰色の空じゃない・・・・・・青空のある世界へ」
『フッ』
竜がまた笑う。
『やはり、お前を選んで正解だった』
竜は静かに言う。
『この際だ、ここまで我を面白くさせたお前に名を与えよう』
「名前?」
『そう、その代わりお前も我に名前を付けろ』
少年は巨大な竜の姿を思い返す。透明ながらも雄々しく何処か威厳のある幻想的な生き物を──
「出来たよ、名前」
『そうか、なら先に聞こう』
「ドライグってのはどうかな?」
『ドライグ、か』
竜は静かにその名を噛み締めた。
「ごめん、駄目だった?」
『逆だ。初めて貰えた名前にしては良い名前だ』
今度は竜が──ドライグが告げる。
『お前の名は──リュウヤ・イレイス』
「リュウヤ……イレイス」
『過去を消し去り、未来を切り開く竜』
『それがお前の名だ』
ドライグは待機形態へと変化し、黒銀の竜を模したキーホルダーとなって少年の手の中へ収まる。
リュウヤはそれを握り締め、小さく頷いた。
「行こう、ドライグ」
『ああ』
『お前が望む空へ』
灰色の煙が覆う終末世界。
その中を、一人の少年と一体の竜が歩き始める。
それは世界を救う英雄の物語ではない。
法にも、権力にも、誰にも縛られず、自らの願いだけを信じて歩む、少年の旅路。
やがてその名は、人類にも侵略種にも畏れられる存在となる。
──これは、澄み渡る青空を求め続ける少年と竜の契約から始まる物語。
プロローグⅠ『
リュウヤ「いっぱい体動かしたらお腹空いたな・・・」
ドライグ『ならここを出る前に職員の口座から資金を落とせるようにハッキングした。その資金から衣服やら食料を調達すると良い』
リュウヤ「青空を見る前にまずは腹ごしらえかな?ドライグはお腹とか空かないの?」
ドライグ『我は大気中のエーテルを摂取するから問題ない』
リュウヤ「いつか一緒にご飯を食べる仲間が欲しいな・・・」
ドライグ『いずれ会える、まだまだ旅はこれからだ』
リュウヤ「次回、魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia、プロローグⅡ、