魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 作:ノーザ
リュウヤ・イレイス
性別・男 年齢・13歳
あの一件から三年が経過し、感情を表せるようになって人間らしい振る舞いも出来るようになった。一人称が『俺』になり、ドライグを介してプログラミングに長ける能力を身に付けた。
炎に包まれた研究所から、一人の少年は世界へと踏み出した。
名も番号も持たなかったホムンクルスは、竜との契約によって「リュウヤ・イレイス」という名前を得た。名を授けた竜に少年は『ドライグ』と名付けた。
────それから三年。
旅を続けた彼は、次第に笑うことを覚え、怒ることを覚え、そして人を想う心を知った。
しかし、世界は何一つ変わってはいなかった。
灰色の空。
焼け焦げた大地。
終わらない侵略種との戦い。
それでも彼は歩き続ける。
いつか、自分の願った青空へ辿り着くために・・・。
彼等が流れ着いた場所は被災地の避難集落だった。白いテントには長い列ができ、配給を受ける人々の顔には生気が無かった。
幼い子供を抱く母親。
杖をつき俯く老人。
失われた家族の写真を握り締める男。
リュウヤは静かに目を伏せた。
「・・・ここも侵略種に」
『この世界じゃ珍しくもない。肉親を失った者、居場所を失った者、社会的地位を失った者・・・・・それが今の現状だ』
腰に吊るされた黒い竜のキーホルダー『ドライグ』が静かに答える。リュウヤは何も返さず、その場を後にした。
向かった先は、避難集落の外れに積み上げられた巨大なスクラップ置き場だった。
鉄骨に車の残骸。よく見ると壊れた魔導機械。そこには廃材で作った小屋に住む人々までいた。
「ここも・・・・・・生きるだけで精一杯なんだな」
呟いた直後だった。
「おい、坊主」
振り返ると、焦点の合わない男が錆びたナイフを向けていた。
「金を寄越せ」
「・・・悪いけど持ってない」
「うるせぇ!!」
狂ったように突進して来る男。対してリュウヤはため息をつく。侵略種に比べればこんな男の相手なんて大したことない。
「加減しないと怪我するぞ・・・・・・」
軽く遇らおうとそう身構えた瞬間。
「こっちだ!」
誰かが男の足を引っ掛け、勢いよく転倒した隙に腕を掴まれた。背後から男の怒号が聞こえたがそのまま全力で走り出した。
「・・・・・はぁ、ここまで来れば大丈夫だ」
スクラップの奥に建てられた小さな小屋。案内してくれた少年は、額の汗を拭きながら笑った。
「アイツ、よそから来たヤツを見るとああなんだ」
白いシャツに油で汚れたツナギ。金色のメッシュが入った黒髪に快活な笑顔。背はリュウヤとほぼ同じぐらいの少年。
「ありがとう、えっと・・・」
「あ、そういや名前言ってなかったな」
少年は胸を張る。
「おれは
「俺はリュウヤ・イレイスだ」
「そうか、リュウヤか。おれもダイチでいいぞ」
「おう、よろしくなダイチ」
二人は自然と握手を交わした。
ダイチは静かに語る。侵略種によって両親を失ったこと。その後に機械修理屋の『黒鉄コテツ』に拾われたこと。そこから苗字を貰って今の黒鉄ダイチになり、コテツから機械を直す技術を教わったこと。
そして昨年、コテツが肺炎で亡くなったことを・・・・・。
「今は直した機械を街で売って暮らしてる」
笑うが、その目はどこか寂しかった。
「でも、この街じゃ何も変わらねぇ」
彼は視線の先の作業台に目を向ける。そこには一振りの巨大な剣が置かれていた。
刀身には基板。
周囲には電子部品が散乱している。
「これは・・・デバイスか?」
大剣に近づいて一目見たリュウヤは息を呑んだ。それに対してダイチが驚く。
「分かるのか?」
「多分・・・」
近付いて内部を見た瞬間だった。
『・・・・・・繋いでみろ』
ドライグの声が小屋に響く。
「ドライグ?」
腰のキーホルダーの瞳が淡く光る。
「デ、デバイス!?まさか、お前・・・・・・」
ダイチが飛び退く。リュウヤは照れくさそうに頭を掻いた。
「まぁ一応、魔導師?やってる」
少し古びた四角い白パソコンを介してドライグを通して調べた。ドライグが内部プログラムへアクセスする。結果、元はアームドデバイスだがAIに不具合が起こって廃棄されたものだとわかった。
何処の誰だがわからないが随分と良い落とし物をしてくれたようだった。
「直せる?」
『中のデータをどうにかすれば起動出来るのかもしれん。それだけでなく武装も展開するには機能も拡張しないといけないが・・・どうする?』
ドライグの言葉に二人は笑った。
「やろう」
「ああ!」
そこから二人のデバイスの修復作業が始まった。午前中はスクラップ置き場から使えそうなパーツを漁り、昼からは都市で良さそうな電子部品探し。夜は徹夜で修復作業をするという生活を送った。
主にデータ関連はリュウヤが担当し、プログラムを再構築する。外装や内部の電子回路の取り付けはダイチが担当し、新たな武装機構を組み込む。
互いに得意分野を補い合い、一振りのデバイスは新たな姿へと生まれ変わっていった。
1ヶ月後。
蒼炎の刻印が刻まれた大剣の形をしたスケボー型のデバイスが完成した。
名は『
ダイチのアイディアを参考にしストレージデバイスのパーツ等を取り入れた複合型のデバイスだ。
内部データも再構築し、あとはダウンロードすれば起動出来る。
エンターキーを押すとパソコンのモニターからダウンロードバーが出て来て二人は嬉しそうにハイタッチする。
「ようやく起動するな」
「・・・・リュウヤ、改めてありがとうな」
「ダイチ?」
「お前がいたからこそコイツを完成する事が出来た。起動出来たのも紛れもなくお前のおかげだよ」
リュウヤは首を横に振る。
「それを言うならダイチだって足りない容量をストレージデバイスから用いて増やしたからこそ余裕が出来たんだ。ダイチがいて助かったよ」
その言葉にダイチは照れ笑いする。
「ならコイツは俺たちの合作だな」
「ああ」
何処か嬉しそうに笑う二人。世界に放浪して3年、まともに会話してこうして笑い合ったのはいつぶりだろうか。否、初めてかもしれない。
その笑顔は、紛れもなく一人の少年の笑顔だった。
だが、それは突然起こった──
遠方で爆発が起こる。何事かと思い小屋を飛び出してみると侵略種達が避難集落を襲っていた。
ここ1ヶ月は侵略種の警報すら無かったのに何故急に?と思ったがリュウヤはすぐ理解した。
「・・・・・・俺だ」
「え?」
「俺を追ってここを襲って来たんだ」
リュウヤというより強大な魔力を持つドライグに引かれて襲ってきたのだろう。
彼は何かを決意すると静かにキーホルダーを握る。
「俺が時間を稼ぐからダイチはここから逃げろ」
「え!?」
「あの程度の侵略種なら俺一人でもなんとか出来る・・・だから・・・」
「ふざけんな!お前を置いて逃げろって言うのかよ!」
「こうなったのは実質俺の責任だ・・・。それに、こう見えて俺強いんだぜ?」
そう言って腰に付けていたキーホルダーもといドライグを外して構えた。
「ドライグ、セットアップ」
『心得た』
そう告げるとリュウヤは光輝いて黒い胴着に右腕に甲冑を纏いビームグレイブを展開する。
「行け!早いところ逃げないとここが襲われるのも時間の問題だ」
そう言い残し、戦場へ飛び込んだ。その後ろ姿を見てダイチは悔しそうに噛み締める。
「(おれはこんな時でも何も出来ないのか・・・また、あの時にみたいに・・・)」
脳裏に浮かぶのは肺炎で亡くなった恩人。ここら一帯は侵略種によって襲われて医療施設も人がいっぱいな上に治療するのに莫大な資金もいる。それでもコテツはダイチを育てる事を選んだ。
自分の命が尽きようとも、次に繋げる為に。次の若者達に未来を託すように・・・。
『いいかコテツ・・・』
ふと機械を修理する時にコテツとの会話を思い出した。
『例えどんな事があっても自分じゃ出来ないと思ったらちゃんと人に助けてもらえ。そんで逆に人が足りない時には助けてやれ。』
『人ってのはそうやって生きて、支え合ったからこそ今があるんだ。人は一人じゃ生きていけない・・・。でも二人なら何かしら出来る。だから・・・』
助けてやれ
師の言葉と共にダウンロードバーが100%になった。
「今行くぞ・・・・・相棒」
決意した眼差しで大剣に触れると光り輝いた。
一方で侵略種と戦っていたリュウヤは脂汗を垂らしていた。
1体の強さはそんなに無いが数が異常だった。流石に一人はキツいかともう何体目か忘れた侵略種をビームグレイブで切り裂く。
「もう25体ぐらい倒したけどまだ沸くのか!」
『惜しい、27体だ』
「数えてたのかよ!」
ドライグにツッコんでいると疲弊して気付けなかったのか背後から別の個体の鋭い爪が迫って来た。
「チィッ!」
舌打ちを漏らしながらも迎撃しようと振り返った時だった。
上空から落雷の如く大剣が侵略種を地面へ縫い付けた。その突き刺した人物に目を見開く。頭にゴーグルを付け、黒い指抜きグローブをし、赤い半袖のパーカーを着たダイチだった。
「それ・・・」
「なんとか起動出来た。それよりやるぞ・・・」
ダイチがニヤリと笑い、一瞬だけ間が空く。
「相棒!」
その言葉にリュウヤも笑った。
「っ・・・ああ!!」
互いに背中を預けて侵略種に向き合い、口角を上げて同時に飛び出す。二人の息はピッタリ合っていた。
大剣で切り裂き、投擲すると大剣の柄が引っ込んでボードのようになり、侵略種の腹に突き刺さるとそのまま殴り付けるという喧嘩スタイルで戦うダイチ。
その後、そのボードに乗って自在に飛び回って刃の部分で切り裂くというトリッキーな戦い方もする。荒々しくて自由奔放な彼に合った戦術だった。
対するリュウヤは正確無比な槍術で敵を翻弄する。乱舞のように槍を振り回して切り裂き、ドラゴンハングを伸ばして侵略種を掴んで投げ飛ばし炎を吐いて焼き尽くす。
そして最後の一体。鋭い爪がリュウヤに迫るも股下を滑り抜け、背後からビームグレイブで敵を空へ打ち上げた。
「タイミングバッチシ!」
大剣を突き出すと先端から炎の球体が現れてみるみるうちに大きくなっていく。
「
ビリヤードの如く球体を弾くと弾丸の如く発射されて侵略種に着弾すると巨大な爆発が起こって爆散した。
全てが終わって風だけが吹く。
「すまんなダイチ」
「いいや、こういう時にはありがとうって言うんだぜ」
笑うダイチに彼も自然と笑みが漏らす。
「そうか、ありがとうダイチ・・・・・」
「あぁ、こちらこそ」
二人は固く拳を合わせた。その姿に、人々は歓声を上げた。
それは英雄ではない。
それでも確かに、二人は人々を守ったのだった。
数日後。
二人は荷物を背負い、小屋を後にする。
「本当にいいのか?」
「あぁ、ここにいても復興はだいぶ先になるだろうし、ここじゃ何も始まらないだろうし」
それにと付け加えてダイチは首に掛けた首に赤い歯車のようなペンダントになった待機状態の『罰怒ブランド』へ触れる。
「お前といるとこれから面白いことあるだろうしな」
そう言って笑うダイチ。それに彼も笑って空を見上げた。
今日も空は灰に染まっている。それでもその瞳には希望が宿っていた。
「俺は青空の下を歩きたいこんな灰色の空じゃない、澄み渡る空を・・・」
「ならその空の下で歩くように頑張ろうぜ、二人で」
「あぁ!」
そう言ったリュウヤにドライグが付け加えるように言う。
『訂正しろ、三人だ』
二人は顔を見合わせ、思わず吹き出した。
こうして、竜の力を宿す槍の魔導師のリュウヤと、鋼鉄の意志を持つ機械仕掛けの魔導師のダイチ。
二人の少年は、一体の竜と共に灰色の世界を歩き次の地へと足を運ぶ。彼らが目指すのは、まだ誰も見たことのない未来。
───澄み渡る青空が広がる世界だった。
プロローグⅡ『
ダイチ「ったく侵略種の奴らしつけぇな〜」
リュウヤ「俺が引き付けてるようなもんだからな・・・」
ダイチ「お前は悪くねぇよ。でもバケモンばっかり会ってると人間が恋しいなぁ〜。次は人間に会うといいなぁ〜」
リュウヤ「出来れば女の人とかがいいかな」
ダイチ「お、それ良いなぁ!出来れば金髪で!紅い瞳で!あとそれから・・・」
リュウヤ「そんな人いるのか?」
ダイチ「次回、魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 第一話『魔人少女と無法少年』。見てください!(シャクティ)」