魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 作:ノーザ
執筆BGM『GIRIGIRI(SonarPocket)』
戦闘イメージBGM『火花散らして(テイルズオブヴェスペリア)』
今から30年前、世界は一度滅びかけた。
侵略性外来生物──後に『侵略種』と呼ばれる存在は人類は勿論、世界の文明さえも喰らい尽くした。
大地は焼き払われ空は灰色に染まりまさに地獄と化していた。ラグナロクとはこういうものかと誰かが言っていたがそう言っても過言ではなかった。
今はなんとか人類が住める所まで生活圏が保たれているが、相変わらず魑魅魍魎と蔓延る侵略種。
世界はいつ滅びてもおかしくない。
そう思い人々は死と滅びを恐れながら、危険や災害から目を逸らすように今日を生きていた。
さて、世界がそんな事になっているのにも関わらず、とある海に沈む廃墟に二人の少年がリュックを背負って歩いていた。
「ふぃ〜、大分歩いたなぁ」
「あそこら辺とか良くないか?」
良さそうな地形をダイチが見つけ、そこまで行って二人は荷物を置く。
『ここをキャンプ地とする!』
元気よく二人の少年の声が廃墟に響く。
二人は慣れた手つきでテントを設置して中に寝袋を敷く。
折りたたみ式の小さな椅子に腰を下ろし、ホットコーヒーを作ってそれを飲んで一息つく。側から見たらスローキャンプライフを堪能する若者達だが、背景の水没した廃墟が異質さを物語っていた。
この生活をして早二年。最初は設営に時間が掛かっていたが二年も経つとお手のものだ。
ふうと息を吐いてふと空を見上げる。天候は良好で雨天の様子の無い色だが違和感を感じる。例えると真っさらなキャンパスに取り敢えず塗っておこうと乗せられた青色。まだこの空も自分が求めていたものではないと紅髪の少年『リュウヤ・イレイス』は思った。隣で同じ一息ついている金色のメッシュが入った黒髪の少年『
「あ〜疲れた」
「ずっと歩きっぱなしだったからな〜」
「時間も丁度良いし、やっちゃいますか?」
「お!やっちゃいましょうよ〜」
そう言って二人はゴソゴソと荷物からとあるものを取り出す。ある日に食糧が底を尽きた時はどうなるかと思ったが、草を食べて凌ごうと二人で道草を食べた(物理)が見事に腹を下して死にかけた。だが今回はそうならないように一味違った。
「タラリラッタラ〜♪レーション飯〜♪」
ダイチが某猫型ロボットみたいな言い方で緑色のパッケージに入った24時間軍用レーション飯を取り出す。中を出すと白い3つの箱が入っており、それぞれ朝、昼、夜と分けてあり歯ブラシも入ってる親切仕様。
二人は早速昼食用のレーションを食べようとする。昼食は缶詰が三つ、スープパスタ缶と豚肉のパテ缶とフルーツ缶、クラッカーとビタミンキャンディとクルスカタブレットの2種のタブレット。
前からこういうレーション飯を楽しみにしていた二人。早速スープパスタ缶を温めて昼食の準備に入った。
別の場所に一人の少女がいた。少し橙色が掛かった薄い茶髪に紅いセーターを腰に巻き付けて黒い指抜き手袋をして白いブラウスに黒いスカートと言った如何にも女子高生って感じの格好だが、それに不釣り合いなものを背中に背負っていた。侵略種を裕に倒せるであろうショットガン。
彼女は害獣駆除資格(ハンターライセンス)を持つ猟友会に入っている『
侵略種を駆除して生活費を稼いでいる彼女は今日も侵略種と戦う。
携帯端末で次に仕留める侵略種を索敵しているとあるものが画面に映った。
「あれ?今なんか映ったような・・・」
端末をズームしてそれを捉えると脳がそれを理解するより身体が先に早く動いた。
先程画面に映っていたのは二人の男の子だった。
しかし、二人とも倒れて蹲っていたのだ。侵略種に襲われたのか或いは別の理由かもしれない。それでも目の前の人を彼女は助けたかった。
「君たち大丈夫!?」
二人の近くまで駆けつけたシイナは紅い髪の少年に呼びかける。
救護資格も持つ彼女はまず少年の状態を確認する。
目立った外傷はナシ。襲われた形跡も無いが顔色が尋常じゃないぐらい悪い。よく見ればプルプルと震えていた。感染症の類かと落ち着いて頭で処理する。
「ねぇ、大丈夫!?私の声が聞こえているなら返事を・・・」
してと言いかけた瞬間。
グゥ〜と少年の腹部から切ない音が聞こえた。
「・・・・・・へ?」
思わず抜けた声を上げるシイナ。さっきまでの緊張感は何処にやら。
一方でもう片方からも切ない空腹音が聞こえる。近くの金のメッシュが入った黒髪の少年からも同様の音が鳴った。
「うぅ・・・」
「・・・・・・はっ!大丈夫!?一体何が・・・」
少年が意識を取り戻した事により放心から帰ったシイナは再度少年に呼びかける。
すると彼の手元にある物が落ちていた。
「何これ、クラッカー?」
拾い上げて確認すると一般で市販されているものより大きめなクラッカーだった。一部齧った箇所があってもしやと思い別の箇所を千切ってそれを口に含むと思わず吹き出した。
「ぶっ!?何これ!?」
見た目こそクラッカーだったがあまりにも麦の味が強く、とてもじゃ無いが食べれた物じゃなかった。そのクラッカーのパッケージを見てある事が判明した。
「軍用レーション!?こんなの大した栄養にもならないし食べちゃダメ!」
「あぁ〜おいし。おいしいなぁ〜うぇ、げほっ・・・」
「ウソ!全然美味しくなさそうじゃん!!」
倒れていた黒髪の少年が起き上がってボリボリとクラッカーを食べるが明らかに顔色が青白く、なんならむせ返っていた。見かねたシイナは二人からクラッカーを取り上げる。
「あぁ〜返してください・・・それを腹に入れておかないと夜まで持たないんですぅ・・・」
「・・・・・・良かったら、私の食糧少しあげようか?」
『えっ?』
その言葉を聞くとさっきまで弱っていたのが嘘のようにガバッと起き上がってシイナを見つめる二人。
その様子にシイナは苦笑いを浮かべた。
「あぁ〜うめぇ〜。めちゃくちゃ美味えよぉ〜」
「これに比べると山岡さんのクラッカーなんてカスや」
「普通の栄養バーなんだけど・・・。そんなに美味しい?ていうか山岡さんって誰?」
あげた栄養バーを美味しそうに味わう二人に怪訝そうに聞くシイナ。
二人は栄養バーの他に温めたスープパスタ缶とフルーツ缶を食べていた。他にあった物はシイナが危険そうだと判断して取り上げた。
「それにしても、君たち何処から来たの?一応ここは立ち入り禁止区域なんだけど・・・」
「え?マジすか?」
「あの時右じゃなくて左行けば良かったかぁ〜」
「しょうがないよあの時左側明らかに天気悪そうだったし」
「濡れるより汗かいた方がマシだしな」
「あの〜・・・」
「あ、すみません。えっとまぁ結構遠くからですかね。もうかれこれ2年ぐらい経ちますが」
「2年も!?えっと・・・一応聞くけど二人とも親とかは・・・?」
彼女が聞くと二人は見合わせて口籠る。その様子から察してバツが悪そうになるシイナ。
「えっと・・・ごめんね」
「?なんでオネーサンが謝るの?オネーサン何も悪くないじゃん」
「いや、聞いちゃいけなかったかなって・・・」
「もう何年も前の事ですから、大丈夫ですよ」
「それも、侵略種が?」
「・・・まぁそんな感じですかね」
「右に同じく。今はこうして相棒と放浪してる形です」
「なら、ここから早く逃げた方が良いよ。まだ侵略種が彷徨いてるかもしれないし」
「あれ?そういえばここ立ち入り禁止なんですよね?オネーサンはどうしているんですか?」
「私、こう見えても害獣駆除資格持ってるから。今回も仕事の一環で来てるの」
えへんと胸を張るシイナに二人は目を丸くする。
「え、バケモン倒すのに資格とかいるの!?メンドクさ・・・」
「しょうがないよ、そうしないと取り締まられるから」
「人取り締まる前にバケモンどうにかしろよ・・・」
「驚くところそこ!?」
達観視する二人にツッコむシイナ。見た目からして年下なのに妙に落ち着いていたり世間への当たりが強いなど子供らしかぬ反応をする二人。これも侵略種によって親を殺された影響か、世界がこうなってしまって自然とこういう思考になったからか。
どっちにしろここにいては侵略種が次第にやって来る可能性があるので二人に避難を促す。
「じゃあ私はもう行くけど、君たちは逃げてね」
「はーい」
「お姉さんご飯ありがとねー」ノシ
「は、早く逃げてよね?」
元気よく手をブンブン振って見送る二人に調子が狂うがシイナは荷物を担いで後にした。
彼女を見送った二人はそれぞれ思いを溢す。
「いやぁ〜こんな俺達に食べ物を分けてくれたり心配してくれたりして、素晴らしいオネーサンだったなぁ〜」
「だね、いつかまたあったら恩返ししてやりたいぐらいだな」
逃げろと言われたのに悠々と缶詰を食べながら先程のシイナに思いを馳せる。でも、と缶詰を食べるスプーンを止めるリュウヤ。
「あのお姉さん大丈夫かな?」
「ん、何が?」
「なんかお姉さんの周りをウロついている奴がいるような気がしてさ・・・」
そう言ってまた缶詰を食べる二人。背後から忍び寄る複数の影に気付かずに・・・。
二人と別れたシイナは引き続き侵略種討伐を進めていた。
「あの子たちちゃんと逃げたかな?まぁ多分大丈夫だと思うけど、なんかズレてるのよね・・・」
顎に手を添えて先程の彼等を思い返す。大人びていて何処かズレてる二人。
ああして年が近い子と話したのはいつぶりだろうか。
そう思っていると彼女の脳裏に一人の少女が浮かび上がった。
『久瀬セツナ』
彼女の唯一の家族で妹であった少女。確かに幸せであった日々を過ごしていたが、2ヶ月前に侵略種の力を取り込んだ『魔人』の男に襲撃され、その際にセツナを亡くしたが最期に彼女からとある力を貰った。そのお陰で死の間際から復活して侵略種に対する力を得た。今もこうして生きているのは間違いなくセツナのお陰だ。
セツナも成長したらあの二人のように大人びた少女になっていたのだろうか。そしたら学校とかにも通って友達を作って笑い合いながら遊んで・・・・・。
「・・・・・・いけない、集中しないと」
しんみりしかけたのを振り払うように頭を左右に振って気を取り直すシイナ。
全ては過去。今更たらればの話をしていたって前に進まない。
こんなのではセツナに申し訳ない。そう決意して再度足を進もうとした時だった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!」
屋内から男の声が響いた。シイナはその声の発声源である場所へと駆ける。
駆けつけた場で目にした物は2体の侵略種に追い詰められているボロ布を被った男の姿だった。
2対だけなら
「待ってて!今助ける!!」
そう言って背負っていたショットガンを取り出して手慣れてるかのように的確にヘッドショットをかました。倒した侵略種を避けて男の元に駆け寄る。
「大丈夫!?何処か怪我は・・・」
「・・・・・・」
「あの・・・?どうかしま・・・」
返事が返って来ない男に怪訝そうにしていると被っていたボロ布から鋭い紅い眼光が光った。
バッと離れると、ボロ布から黒い影が飛び掛かってきた。
飛び出してきたの同時に鋭い爪からの攻撃にバックステップで避けた。
しかし掠めたのか頬から細い鮮血が流れる。
「どうやら遭難者ってわけじゃなさそうね・・・」
伝う鮮血を舐めて襲ってきた男を確認する。
襲ってきたのは人間の皮膚とは思えない青紫色の肌を持ち、獣のような鋭い紅い瞳でスキンヘッドに赤紫の刺青のような模様をした上裸の男だ。
おそらく2ヶ月前に襲って来た男と同じ類の者だろう。
男はこちらの様子を伺うかのように不敵に笑って四足動物のように構えて首を鳴らす。
相手が魔人なら話は早い。シイナは全身に力を入れるようにすると腕からだんだん黒くなり、髪も燃えるような橙色に変色し、瞳も炎で染まったかのように橙色になって戦闘態勢に入る。
「グギャア!!」
「舐めんな!!」
素早い動きで襲い掛かる男に対してこちらはカウンターパンチを決めて吹き飛ばす。男はすぐさま立ち上がってアクロバティックな動きで翻弄し、鋭い手刀が襲い掛かる。難なく躱すが男もこちらの攻撃を軽く避ける。
前に襲って来た魔人がパワー重視ならこの魔人はスピード重視と言ったところか。
銃を使おうにもあの素早い動きで避けられる。そう思ったシイナは振り下ろされる手刀を敢えて避けずに受け止めて腕を引き込むと魔人との距離が縮む。
そこにすかさず魔人の眉間に頭突きを放った。
「グギィ!?」
「おっと、逃げんな?どりゃぁぁぁぁぁ!」
強化された身体を生かしてそのまま男を投げ飛ばす。
ガリガリと男の顔が引きづられ普通の人間ならのたうち回るだろう。
しかし男はゆっくりと立ち上がってこちらを振り返る。
「なっ!?」
彼女が目にしたのは嘲笑う男の頬が表皮のように剥がれ落ちていた。その場で男が崩れ落ちるとシイナ同様に全身に力を入れ始める。
鋭い爪が更に鋭くなり、食いしばっていた歯が剥き出しの牙となり、身体も一回り大きくなり全身にトカゲのような鱗が浮かび上がった。
紅い瞳も爬虫類のような目になり一言で言うならばトカゲ人間と言った方がわかりやすいだろう。
変身した男が大きく咆哮を上げるとゾロゾロと侵略種が現れる。さっきの2体も男が使役していたのだろう。
「増えたところで!!」
背負ってたショットガンを構えると弾丸ではなく火球が飛び出る。
これがセツナから貰った能力、『紅蓮』の力。
主に炎を使う能力で温度調整も操ることも出来、対物破壊能力も持つ。
火球を喰らった侵略種は爆散する。背後からの攻撃も炎を放って焼き尽くす。数はそこそこ多いがこの程度なら問題ない。
しかし視界に男が不気味な笑みを浮かべたの捉えた時だった。
「っ!ぐっ!?」
突如として太ももに鈍痛が走ったかと思えば中型のトカゲ型の侵略種が舌を伸ばして貫いていたのだ。
舌打ちをしながらもトカゲ型の侵略種を撃ち抜く。負傷した箇所は再生能力で治る。しかし彼女が態勢を崩したのを逃さず脇腹、右肩に同様に鋭い舌が貫く。
「がっ!?」
肩を貫かれ持っていたショットガンを手放してしまい、膝をついてしまう。地に倒れる前に男が片腕で首を掴んで持ち上げる。
不気味な笑いをあげて涎を垂らす男に歯を食い縛って睨みつける。
蹴りを入れるも硬い皮膚には効果が無くやがて視界が黒く薄れていく。
(こんなところで・・・・・やられる訳には・・・約束したんだ・・・・・・セツナと・・・・・・!)
引き剥がそうとしていた腕に力が入らなくなって意識が無くなりそうになった時だった。
「あの〜すみませ〜ん」
屋内に響く場違いのような軽い声。
男は締めていた腕を緩めて向くとそこには見た事のある者達が佇んでいた。
「その人殺すの待って貰えませんか?」
「そのオネーサン、俺らの恩人なんだよね」
先程助けた二人の少年が不敵な笑みを浮かべていた。
遡る事数刻前。
二人を襲おうとしていた一体の侵略種が隠れていた。
それは一瞬の出来事だった。一瞬のうちに二体の首が吹き飛んでもう一体は縦に裂かれた。
本能的に咄嗟に隠れたが次第に自分もやられるだろう。
そう思っていた時だった。
「道案内をしてくれないか?」
妙に落ち着いた声。その声に肩を上げて恐る恐る見上げると・・・。
「オネーサンを付け狙ってる元締めの居場所にな」
目が全く笑ってない紅髪の少年がこちらを見つめていた。
「痛ぇ思いはしたくねぇだろ!!」
片腕で首を締め上げて現在進行形で苦しい思いをさせている金色のメッシュが入った黒髪の少年が悪役のように笑う。
「案内してくれたら解放してやるが、もし嘘を教えたらお前・・・言わなくてもわかるよなぁ?」
ドス黒い黒目で見てくる少年達に従うしかなかった侵略種は必死に頷いて二人を案内した。
戦闘が行われているであろう場所の前まで案内すると。
「ご苦労、もう楽になれ」
それが侵略種が聞いた最後の台詞だった。
「お、お前ら、確か刺客を送らせていた筈・・・」
「刺客?ああ、そんな奴いたような・・・」
「いなかったような・・・」
「フン、まぁ良い。どっちにしろお前達はここで喰われるんだ」
興味を失ったのかシイナを解放して標的が二人に変わる。またゾロゾロと増えて二人の周りを取り囲む。
「ゴホッケホッ・・・ダメ!逃げて!!」
息が乱れながらも二人に避難を促す彼女に二人は感嘆の声を上げた。
「あんな状態になっても俺らのこと心配してくれるなんて。なんて優しいオネーサンなんだ」
「こりゃあその気持ちに応えないといけねぇなリュウヤ」
「ちょっと聞いてるの!?」
悠長にしている二人に思わずツッコむシイナだが、異形に囲まれているのにも関わらず彼等は落ち着いた様子だった。
「大丈夫だよオネーサン」
「俺ら強いから」
リュウヤは腰から竜の形をしたキーホルダーを、ダイチは首から下げていた掌大の赤い歯車の形をしたネックレスを外しそれぞれ前に突き出す。
「行くぞドライグ、セットアップ」
「目覚めろブランド、セットアップ」
『心得た』
『Lady・・・』
機械音がしたと思いきや彼等の足元からあるものが浮かび上がる。
リュウヤからは竜の紋様が入った赤黒い魔法陣が、ダイチからは赤い歯車を模した橙色の魔法陣が現れる。
「な、何?」
二人は眩ゆい光に包まれてその光に目が眩むとやがて光は収束する。
そこには先程までとは違う格好をした二人がいた。
リュウヤは上が黒で下が白の胴着を纏い、右腕のみ甲冑のような装甲を身につけ、ダイチは頭にゴーグルを付け、赤い半袖パーカーに黒い指抜きグローブ、下はサイドポケットの付いた黒いワークパンツになっていた。
そしてリュウヤの片手には鉄色の長い棍棒を、ダイチは蒼い炎の模様が入った大剣を肩に預けていた。
「え、ええぇぇぇぇぇぇ!?」
突然の出来事に思わず目を丸くして声を上げてしまうシイナ。
漫画とかアニメでしか見た事ない変身ヒーローのような事が目の前で起きたのだ。
魔人がリュウヤを捉えた瞬間、爬虫類の眼光が見開く。
「っ!そうか・・・お前か!!とてつもないエネルギーが発していたのはお前だったのか!!」
「そーゆこと。そのオネーサンより俺の方を取り込んだら美味しいと思うけど・・・」
「なら話は早い!やれェェェ!」
魔人の指示で2体の侵略種が飛び掛かって来るが二人はそれぞれ棍棒と大剣を振るって吹き飛ばし、切り裂く。
「まぁ、
不敵に笑うリュウヤに男は激昂し仲間を呼び寄せる。
「さぁてバケモン共」
コンッと棍棒を地面を突くと先端から緑色の魔力刃が発生し、棍棒から薙刀へと変化する。
「絶滅タイムだ」
ダイチのニヒルな笑いが合図になるかのように侵略種が一斉に襲い掛かる。それと同時に二人も飛び出す。
迫り来る侵略種の攻撃を躱して槍を突き刺し、大剣で切り裂く。
リュウヤが槍を乱舞し纏めて薙ぎ払う。その姿は何処か踊っているかと錯覚するほどに。
対してダイチは大剣を大きく振るい、投擲すると柄が引っ込んでそれにスケボーのように飛び移ると乗ったまま侵略種を切り裂く。
それぞれ違った戦闘スタイルで侵略種を殲滅する二人にシイナは圧倒していた。
「す、すごい・・・」
「あ、オネーサンちょいと失礼」
「きゃ!?な、何!?」
突然大剣に乗ったダイチに拾われる形で抱き抱えられるシイナ。
そのまま彼女を安全な場所まで移動させる。
「ほい、じゃあオネーサンは巻き込まれないように何処かに避難してね」
「え、あ、あの・・・」
「じゃそゆことで。お〜いリュウヤ!俺の分も残しておけ〜い」
ついでに拾っておいたシイナのショットガンを渡し、蛮族のように片手で大剣をブンブン振り回して戦闘に再介入する。
暫く呆気に取られているとハッとして現実に戻る。
「いけない、援護しないと!」
何か自分に出来る事をしようと二人の援護に入ろうとショットガンを構える。
「うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!死ねぇぇぇぇぇい!」
「援護を・・・」
「でぇりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!斬殺ッ!!」
「援護・・・」
「いっけぇぇぇぇぇハイパーオーラ斬りだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ハイパーオーラ斬りだぁぁぁぁぁぁ!(高音)」
「・・・・・・私いるかな?」
援護の必要が無いと言わんばかりの二人の暴れっぷりに戦慄するシイナ。
するとリュウヤの背後から一体の侵略種がじわりじわりと近づいているのを目にした。
「危ない!」
「お?」
彼女は援護しようとショットガンを構えるがリュウヤは振り返って右腕を突き出すと右腕の装甲が変形して竜になった『ドラゴンハング』をグンッと射出されて侵略種の頭部をガッチリ掴む。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「よいしょっと!」
掴んだまま横に薙ぎ払うと4体以上を纏めてドミノ倒しの如く薙ぎ倒す。
「汚物は消毒だぁぁぁ!」
そして竜頭の両サイドの口腔から灼熱の炎が放たれ焼き払う。
「うぇぇぇぇ!?腕から炎が出た!?」
驚愕の声を上げるが彼女も似たような事出来るだろというのはツッコまないでおこう。
リュウヤに驚愕していると今度はダイチの背後から侵略種が近づいている事に気づく。おまけに大剣を投擲した直後なので今の彼は丸腰だ。
「マズイ!今度こそ援護を・・・」
「おっと」
ショットガンで援護しようとするが彼はサイドポケットからとあるものを取り出す。
先端に円盤状の物が取り付けられたメリケンサック『バーストナックル』を装備する。
「オラァ!!」
それを侵略種の腹部に目掛けて殴り付けると巨大な爆炎を起こして消し炭にした。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
今日何度目かわからない驚愕の声を上げるシイナ。
対してダイチはニヤリと黒い笑みを浮かべる。
「俺の背後を取るとはいい度胸だなぁ?くらえ、豪熱マシンガンパァァァンチ!!brrrrrrrrrrr!!」
飛び上がると数十体の侵略種に目掛けて右腕ストレートを放つとオレンジの螺旋を生み出して無数のパンチが放たれる。
鉄拳の雨をくらった侵略種は跡形も無く爆散した。
「もう、好きにして・・・」
若干飽きれ気味にポツリと吐いて援護を諦める彼女に今度は魔人本人がリュウヤに襲い掛かった。
「グオォォォォ!!」
「うおっ!?」
薙刀を横にして防ぐが段々と力負けして組み伏せられそうになる。このままだと彼が押し潰される。勝ちを確信した魔人が笑みを浮かんでいると。
「笑ってる所悪いけど前方注意ね」
「あ?何を言っtry「うわっ!前から魔人が!!」グブェ!?」
飛び込んできたダイチに大剣をバットのように剣身を男の顔面にぶち当て、後ろにのけ反った男に態勢を整えたリュウヤが腹部に鋭い蹴りを入れ込んで吹き飛ばす。
「互いを補填し合って戦う、それがMAV戦術だ」
「マブ・・・なんて???」
さもご存知だろうというリュウヤに何の事やらと首を傾げるシイナ。もうツッコむのも疲れた様子である。
蹴り飛ばされた魔人は起き上がって怒りを露わにして咆哮を上げて侵略種を増やす。
どうやら男が咆哮を上げる度に仲間を呼び寄せるようだ。
あまり長く相手をしていると物量で押されて消耗戦に持ってこられたそうだ。だから・・・。
「アレやるよ、すごいの」
「ですね☆」
「また何かしようとしてる・・・」
明らかに悪巧みの笑みを浮かべる二人を怪訝そうに見るシイナ。
向こうを先程よりも多い侵略種が待ち構えて彼等を迎え討とうとする。
対して二人はそれぞれ槍と大剣を構えて今にも駆け出す状態に入る。
「一気に!」
「コイツらを!」
「倒して!!」
『駆け抜ける!!!』
槍で薙ぎ払い、大剣で斬り裂いてジグザグに交差しながら紅と橙の軌跡を描いて侵略種を一気に倒す。
しかし魔人の男は無傷で何が起きたのか分からずにいた。
そして背後から何かを感じ取って振り返ると目を見開く。
リュウヤの右腕の装甲が展開されて竜頭が現れ、その手に持つ槍の魔力刃は緑から赤く、ダイチの左手に持つ大剣の剣身はオレンジ色に輝いていた。
『ユニゾンレイド!!!』
二つの輝く刃を交差させると赤と橙の業火が交差して螺旋を描いて放たれる。
魔人は絶叫を上げる事も許されずに消し炭にされ、残りの侵略種も炎の渦に飲まれて爆散していった。
「え!?ちょっと、待って待って!!」
二人より生じた爆風が凄まじい勢いでシイナに向かって来た。
爆風はその願いを聞き入れずに彼女を屋外へと吹き飛ばす。
「いやァァァァァァァァァァ!?」
悲鳴を上げながら落下していくシイナ。
およそ5階ほどの高さ。普通の人間ならこのまま死ぬ。だが彼女は手足から炎を噴射して飛ぶ事が可能。なんとか体勢を立て直そうした直後、急に視界に影が現れた。
影の正体はリュウヤだった。彼は覆い被さるようにシイナを包み込む。
「ふぇっ・・・・・・!?」
突然の事で動揺する彼女。だが次の瞬間、彼の腕が自分の身体をしっかりと抱き寄せていることに気づく。
(ち、近いっ・・・)
心臓が跳ねる。息がかかる程の距離。年下のはずなのに、妙に落ち着いた表情が視界に入り込む。
その腕は驚くほどしっかりしていて、怖いはずの落下の感覚が、少しだけ遠のいていく。
(なにこれ・・・変なの・・・)
なのに、安心してしまう。
自分でも分からない感情が胸の奥で揺れた。
リュウヤは左腕で彼女を抱えたまま、空いた右腕のドラゴンハングを伸ばし、突き出た建物の鉄筋をガッチリ掴んだ。
落下が止まり、二人に静寂が流れる。
「あ、あの・・・・・・」
シイナはようやく声を絞り出す。自分でも驚くほどのか細い声だった。そして顔が熱い。耳まで赤くなっているのも感じる。
(なにこれ、なんなのこの状況!?)
今まで戦場で何度も死線をくぐってきたはずなのに、こんな状況の方が、よっぽど心臓に悪い。
今の二人は完全に密着している。息が触れる距離。心臓が早まっていく彼女に対してリュウヤの瞳はまっすぐ自分を見ていた。安否を確認した彼はドギマギしているシイナと違って落ち着いた声色で静寂を切り出した。
「ごめんねオネーサン。火力強すぎちゃった」
「んぇ・・・あっ、そ、そうだよ!」
シイナは思い出したかのように慌てて言い返す。
「(落ち着け、落ち着け私!!)危ないでしょ!人がいるのにあんな範囲技なんて!」
「ごめんって。でも、こうして助けたじゃん」
「そういう問題じゃ──」
言いかけて、言葉が詰まる。
(私、助けられてる・・・・・・)
その事実が、今さら胸に落ちてくる。頬がさらに熱くなるのを感じた。
「お~い、大丈夫か~?」
声がした方を向くと、ダイチがボードのように大剣に乗って空中に浮かんでいた。
「お、良い絵」カシャリ
「あ、ちょっ」
二人の状態を見たダイチは何処から持って来たのかカメラを出して写真を撮る。
「お〜撮れてる撮れてる」
「ほんと?後で現像お願い」
「おう、任せとけ~」
「ちょっとやめてよ! て、ていうかそろそろ……!」
「あぁ、ごめんね」
紅潮した彼女を見て察すると一旦ダイチに彼女を預け、掴んでいたドラゴンハングを離して彼は落下する。
腕を収納して素早く背中に携えていた槍を取り出して魔力刃を壁に突き刺してガリガリと落下の速度を緩めて静かに着地する。
ダイチ達もゆっくりと地面に近づいてシイナを降ろす。
(・・・・・・なにこれ)
戦場で感じたことのない種類の動揺。胸の奥が、まだ落ち着かない。
「オネーサン怪我とかは無い?」
「う、うん。なんとか・・・・・・」
「そっか。じゃ、そういう事だから」
「気を付けてね〜」
「え、いやちょっと待って!!」
安否を確認した二人は流れで帰ろうとするのを彼女は慌てて止めた。
「一体何なの!?腕が伸びたり、剣に乗ったり、挙げ句の果てには炎を出したりして・・・一体、君たちは何者なの!?」
シイナの問い掛けに二人は見合わせる。
「何者って言っても・・・俺たちって何だろ?」
「魔法を使うから・・・魔法少年?」
「なんかしっくりこないよな〜。魔法少女はしっくり来るのに魔法少年ってイマイチ決まらないよなぁ〜」
「う〜ん・・・なんだろ・・・」
「ちょっと真面目に答えて!」
考え込む二人にツッコむシイナ。暫く考えた後、思いついたのかリュウヤがポンと手を叩いてダイチに耳打ちするとニヤリと笑って二人は彼女の方へと向きかえる。
「いいよ、教えてあげる・・・」
太陽を背にしてそれぞれ槍と大剣を肩に担いで不敵に笑う。
「俺たちは・・・無法少年だ」
「無法・・・少年・・・?」
聞いた事もない肩書きに彼女は困惑する。しかし先程までの戦い方に妙に納得した。自由奔放で戦場を駆け巡り堅実な強さを持つ、矛盾しているような二人に似合うフレーズだった。
これが魔人少女と無法少年たちの初めての出会いだった。
だが、この時まだ知らなかった。そんな彼等と今後、共に戦う仲になるなんて今の彼女には知りもしなかった。
シイナ「私、久瀬シイナ。私が助けた男の子二人は無法少年?だった!その次は魔法少女!?私の人生、どうなっちゃうの〜!?」
リュウヤ「タイヘンデスネ〜アナタ」
ダイチ「タイヘンダタイヘンダ」
シイナ「ちょっと!?なんでここにいるの!?」
リュウヤ「あ、そうそう貴女に一つだけ言っておく」
シイナ「な、なに?」
ダイチ「白い悪魔には気をつけろ・・・」
シイナ「白い悪魔?それって一体?」
リュウヤ「それは・・・」
シイナ「そ、それは?」ゴクリッ
ダイチ「次回の魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 第二話『遭遇、魔法少女』でわかる」
シイナ「サラッと予告取られたぁぁぁぁ!?」
リュウヤ「見てください☆(シャクティ)」
シイナ「誰ぇぇ!?」