魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 作:ノーザ
執筆BGM『アシタノヒカリ(AAA)』
『My World(SPYAIR)』
某日、その日は森林にテントを立てて釣った魚を串にさして焼くと言うシンプルながらもキャンプの定番の料理を食べていた二人にドライグから一つの情報が入った。
「国連の白い悪魔?」
「なんだ?ガ◯ダムの話か?」
焼き魚をもぐもぐと食べていたリュウヤとダイチが聞き返す。
『機械信奉国家ダルナザで起こった記録によると、たった一人の魔導師が暴走兵器達を鎮静化したらしい』
「はぇ〜世の中にはそんな強い奴いるんだなぁ〜」
「ソイツはどんな野郎なんだ?」
『警備隊の情報によると13歳の人間の女らしい』
その言葉を聞いて二人の食べる手が止まった。
「・・・・・・え、13歳?」
「の、女の子?」
『そうだ』
淡々と答えるドライグに二人は目を見合わせる。
「いやいや、流石にそれは盛ってない?13歳って俺らより歳下じゃん」
「その警備隊員がロリコンなだけで実際は違うと見た」
「それだ。実際はきっと範馬勇次郎みたいな野郎かもしれへんし」
「地上最強だもんな」
『実際の映像があるが見てみるか?』
ハックした戦闘記録があると聞いて二人はその映像を見ることにした。
鑑賞後、テーブルに置いてあったホットドリンクを飲んで一息つき、テーブルに戻して一拍置いた。
「・・・・・・コラだろ?」
『本物だ』
「・・・・・・流石にフィクションでしょ?」
『実際の戦闘記録だ。他の記録もあるぞ』
そう言って今見たのと違うアーカイブが出てくる。それにはどれもその少女が戦っている映像が映っていた。
「・・・・・・これマジなのか。こんな小さな子がデカい敵を薙ぎ倒してるのか・・・・・・」
「しかもどれも本当の実力を出していない・・・・・・これぐらい余裕ですと言わんばかりの戦い方だ・・・・・・」
画面に映る少女に二人は戦慄する。二年間侵略種を相手にしてきた二人でもこの少女はどれも無駄な動きなど無く堅実で洗練された戦い方で、そしてなによりも・・・・・・。
「なにこの弾幕量・・・・・・13歳の女の子が出して良い火力じゃないだろ・・・・・・」
「最早、魔法少女ならぬ魔砲少女だな・・・・・・」
画面には桜色の雨の魔力弾を降り注ぐシーンが映されそれを白いジャケットを羽織った少女がやってのけているのが更に恐怖感が増す。
「ま、まぁでもおれ達には関係ない事だし・・・・・・」
「だね、俺らただ侵略種殺してるだけで国連にはちょっかい出してないから向こうから来ることは無いよね・・・・・・」
『いや、そうとは限らない』
安堵しているダイチにリュウヤも便乗して自分らに関わることは無いと言うがドライグがその安堵を断ち切る。
『お前達が使用しているデバイスは未認可デバイス、所謂政府から認可が降りて無いデバイスを行使している。更には国連の管轄を脅かしたり、出所不明の力を使用したりすると違反・捕縛の対象になる。故に、近いうちに国連の奴らとやらに出くわすかもしれんぞ』
それを聞いて押し黙る二人。リュウヤが使用しているドライグは非人道的な研究機関に作られたデバイス。片やダイチが使用している罰怒ブランドは廃棄処分されていたアームドデバイスを改修及び改造を施した魔改造デバイス。
どれも一発アウトものでそんな者を国連は黙ってはいられまい。今も捜索してるのだろう。
「で、でもでも仮に国連の白い悪魔と出くわしてもおれとリュウヤならなんとか切り抜けるんじゃない?」
『否、それも難しい』
「なんでだよ!確かに相手はロボット軍団を一掃出来る強さだけど流石に二人がかりなら・・・・・・」
意見を否定するドライグに噛み付くように反論するダイチ。それでもドライグは淡々と返答する。
『この少女を倒すと仮定してよう。この少女一人を倒すのにお前達合わせて100人は必要だ。それで仮に倒せたとしても99人は死んで生き残るのはどちらか一人だ。最も100人で足りるか怪しい話だが・・・』
それを聞いて渋々食い下がるダイチ。ドライグは冗談を言うような事は無いのでそれが事実だという事もあり、彼は相手の力量を見誤るような男ではないので無謀な戦いは基本的にしない。
それに相手は国連だ。仮にその少女を撒けたとしても今度は総力を上げて来るだろう。
暫くパチパチと焚き火の音が空間を支配する。その静寂を破るようにドライグが再び切り出す。
『しかし相手は人間だ。話の通じない侵略種ではない。記録によるとこの人間は言葉が通じる者には基本的には話し合いを持ちかける事が多いそうだ。まずは武力ではなく言霊でどうにかする事だ』
ドライグの言う通り、今まで二人が相手をして来たのは人語を話さない怪物だが白い悪魔と言えど同じ人間だ。下手に力技で突破するよりも交渉で活路が開く道だってある。
考えが同じになったのか二人は目を見合わせる。
「まぁ、この先も侵略種を倒さにゃいかんのに流石に国連も敵に回したくないからなぁ」
「それに向こうから話し合いを持ちかけたのに下手に戦ったら最悪の場合豚箱行きにもなる可能性もあるし」
「豚箱かぁ・・・メシとか不味そうだからヤだなぁ・・・・・・」
「青空も見れなさそうだしなぁ・・・・・・」
昇っていく焚き火の煙と共に空を見上げる。木々から覗くのは煌びやかに光る星屑。刑務所に入ればこんな絶景も見れないし、質素な食事をする事になるだろう。出られるのは何十年後かそれ以上かもしれない・・・。
「とにかくその白い悪魔に遭遇したら戦闘は絶対に避けよう。いつかソイツに出くわすかもしれないから容姿とかも覚えておかなきゃ」
「ええと、特徴はと・・・・・・」
そう言って二人はその姿を目に焼き付けるかの如く、改めてアーカイブに映る少女を見る。
画面に映るのは一見普通の13歳の少女。しかし彼等にとっては今後の運命を決めるかもしれない存在となりつつあった。
今、彼等はとある者の前に正座していた。
栗色の髪をサイドテールで纏め、その身に白いジャケットを羽織り、片手には身の丈程の白い杖。
間違いなく、記録映像と同じ国連の白い悪魔こと『高町なのは』だった。
「えっと、もう少し楽にしても良いんですよ?そんなわざわざ正座なんて・・・・・・」
「いえお構いなく。これは我々には抵抗の意思なんて無いと言う意思表示みたいなものなので」
「わ、わかりました・・・・・・」
心なしか少々困惑気味ななのは。側から見れば13歳の少女の前で正座している15歳の少年二人というシュールな絵面に見えるが、相手は国連の人間だ。
武装を即解除した後に正座して話を聞くという。これまで数々の激戦を経験して来たなのはも流石に珍しいケースだった。だが、戦闘や逃走せずに話し合いに応じてくれるのはこちらとしても逆にありがたい事である。
気を取り直してコホンと咳払いをし、改めて二人に話しかける。
「先程の戦闘をお見受けしたところ、貴方達は約二年前から侵略種を殲滅している二人組という事で間違いありませんね?」
「はい、その通りです」
「それと、そちらが所持されているデバイスは未認可のデバイスであるという事も違いありませんね?」
「はい、間違いありません」
彼女の質問に恐ろしく静かで冷静に答える二人。その態度になのはの後ろから見ていたシイナが隣にいるフェイトに耳打ちをする。
「ねぇ、あの二人さっきから凄く大人しいんだけど・・・なにかやらかしたの?」
「ええと、彼等が使用しているデバイスは政府の認可が降りてない未認可のデバイスなんです」
実は魔導師の誰もがデバイスを使って良いというわけではない。使用者本人がデバイスを安全に制御できるだけの魔導適性や精神適性を持っているかどうかの審査や検査をし、それが通ったら政府への申請を出して、正式な免許を得てからようやくデバイスが使える。
という一連の流れを踏まえる必要があるのだが・・・。
「・・・・・・あの二人はそれをやっていないと?」
「はい。久瀬さんの所で言うと自動車の免許を持っていないのに車を運転していたり、危険物取扱資格を持っていないのに火器を使用したりしているようなものですね」
「え、それめっちゃヤバいじゃん!」
それを聞いたシイナが目を丸くしてギョッとする。
彼女が所持しているショットガンも「銃砲所持許可」および「特殊銃砲所持許可」の免許を取得した上で使用している。これらは、地域の警察署や行政窓口(自治体の環境課や生活安全課など)を通じて厳格な審査と手続きを経て交付されたものである。
それだけでなく実際にそれを『侵略種駆除』という目的で使用するためには、民間ハンターとしての活動許可や狩猟者登録のような手続きも合わせて必要でありそれらを通して民間ハンターのライセンスを持っているのだが──。
「仮にこの手続き等を怠って市役所や警察の許可なくデバイスを用いたり、侵略種に向けて使用したりした場合は、『密猟』や『銃刀法違反(未認可の武器不法所持)』にあたり、取締りの対象となってしまいます」
「なんか私の想像してた魔法使いと違いすぎる・・・・・・。それを聞くとすごい現実味の感じるなぁ・・・・・・」
「アタシ達魔導師にとってはデバイスはあくまで魔法を使用する為の道具ですので」
自身の想像していた魔法使いと言えばファンタジー世界であるような帽子を被っていたり、大窯を煮込んで秘薬とか作ってそうなイメージだったが実際は国連機関だったり、ビームを出したりしてだいぶ近代寄りで戦慄するシイナに苦笑いするフェイト。
以前二人に何者だと問いた際に二人はカッコよく『無法少年だ』と名乗っていたが・・・。
「ほんとに無法少年だったんだ・・・・・・」
「無法少年?」
「ううん、なんでもない・・・・・・」
カッコつけて名乗ってたいた事を今となって笑ってしまう。フェイトは聞き慣れない言葉に首を傾げる。
そんな無法少年達は現在国連の少女の前で正座して職質されているのだが彼等の中では一つ一つの質問に対して選択を間違えないように脳をフル回転していた。
「通常なら未認可デバイス所持の容疑で捕縛及び拘束の対象になりますが、貴方達は先程の未確認の侵略種を撃退に協力してくれた件もあります」
「え、それってtry「ですがこちらとしては貴方達を見逃すというわけにはいきません」ア、ハイ・・・・・・」
一途の希望が見え立ち上がりそうになったが、すぐさまなのはの一言により現実を突きつけられて再び座り直す二人。
『EXCEEDS』には危険生物の調査・駆除だけでなく強力な法執行権を持っている。
世間一般の強盗や窃盗といった日常的な犯罪は地域の警察が担当をするが、『侵略種やデバイス、魔人の力が絡む特殊な犯罪』に関しては、国際的な権限を持つEXCEEDSが優先的な捜査・逮捕権を行使して介入する。情報統制や報道のコントロールを行ったり、国家の警察機構の上位、あるいはそれらと深く連携できる強力な立場にある。つまり部署が違うが警察となにも変わらない機関である。
更に緊迫した空気の中、リュウヤが恐る恐る片手を上げた。
「あの〜質問をしても良いでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「俺達ってこのまま行けばやっぱ拘置所行きでしょうかね・・・?」
「或いは地下世界で強制労働とか・・・?」
「えっと、地下世界はわかりませんけど、このまま行けば拘置所行きは間違いありませんね。一応銃刀法違反の部類入りますので・・・・・・」
それを聞いて一気に顔色が悪くなる二人。もし仮にここから逃げ出そうものなら目の前の少女から繰り出される魔力弾の雨を浴びる事になるだろう。
そこで、となのは人差し指を立てる。
「こちらから一つ提案があるのですが」
「と、言いますと?」
「お二方、EXCEEDSに入隊してみては如何でしょうか?」
『え!?』
彼女の提案に思わず背後にいたシイナと驚愕の声が重なる。その中でダイチだけが僅かに眉をひそめた。
「我々EXCEEDSは拘束・捕縛の権限だけでなくこちらの管轄下で保護や身柄を確保する事が出来るので、そのまま入隊すれば問題なくEXCEEDSの魔導師として活動する事が出来ますよ」
「え、でも俺達戸籍とか無いんですが・・・」
「それもこちらの権限で新しい身分や登録情報を用意出来るので大丈夫ですよ」
それを聞いて肩の荷が少し軽くなるを感じた。
このままだと銃刀法違反で二人仲良く拘置所行きだが、国連側に入ってしまえばこれまでの問題を一気に解決出来る。追われる事もなければ存分に暴れる事ができ、国連側の方も戦力増強が出来てどちらもWin-Winな状況になる。
中々悪くないなのはの提案に好印象を持っているとダイチが口を開いた。
「それってアンタら国連の犬になれって言ってるようなもんすよね?」
「い、犬だなんてそんな!わたしはただ貴方達を少しでも立場を良くしようと・・・」
「そう言ってる時点でおれ達の足下を見ているんだよ。人の弱みをつけ込むヤツらの下で働くなんておれは御免蒙るね。人を裁く暇あるなら人殺しまくってるバケモノどうにかするんだな。今もこうして話してる間にも人が殺されてるかもしれないってのに」
今まで我慢していた分を全て吐き出すかの如くなのはに噛み付くダイチ。
こうなる可能性があるから国連側に入る案を懸念していたのだ。第一彼は誰にアゴで使われる事を嫌うタイプなのでこの案が通る線は薄いと感じていた。
段々と雲行きが怪しくなってきたこの空気をどうにかしようと考えているとふとリュウヤの視界にある人物に目が止まった。
「あ、あの〜もう一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「え、あ、はいどうぞ」
「そちらのオネーサンは一体・・・・・・?」
「え、私?」
半ば強引に話題を切り替えるようになのはの背後にいたシイナに振る。
「ああ、この方は久瀬シイナさんで、彼女もEXCEEDSに入隊予定なんです」
「私もう入る事確定してるの!?」
「え、違うんですか?」
「まだ入るって言ってないわよ!?」
「そこをなんとか・・・・・・」
「その顔やめてってば!」
困った顔で頼むなのはに叫ぶシイナ。二人のやりとりを見て彼は顎に手を添えてある事を思いついた。
「あの、EXCEEDSに入隊する提案なんですが、自分はそれに賛同しようと思っています」
「本当ですか!」
「おいリュウヤ!」
「あと、言える立場でないのは承知の上で一つお願いがあるのですが・・・」
「お願い?」
声を荒げるダイチを片手で制しながらなのはに一つ頼みをするリュウヤ。そしてその手をなのはの背後にいたシイナに向ける。
「そちらのオネーサンの事は見逃してくれませんか?」
『えぇ!?』
この場にいた女性陣の声が重なる。
「えっと、見逃すとは・・・?」
「実は自分達は先程の戦闘より少し前にも侵略種と戦ったのですが、その時もオネーサンを巻き込んでしまって・・・。今回も危険な目に遭わせてしまいましたし、個人的にこれ以上オネーサンを巻き込みたくないです。
それにお見受けしたところ、オネーサン自体も国連に入りたくなさそうなので無理に誘うのは良く無いと思います」
至極真っ当な彼の意見に全員が押し黙る。
こんなにも擁護するのは彼女には助けて貰った恩がある。一度目は自らの食糧を分けてくれた事。他の者から見ればほんの些細な事かもしれない。
だが、リュウヤにとってはその些細な事でも初めてダイチ以外の者から物を授けられた事が心に残っていた。
二度目は先の戦闘で援護を施してくれた事。実はあの時仕掛けた罠魔法を突破された時は結構不味かった。足払いで撃退は出来るものの、放とうとしていた魔法は少しでも体勢崩せば魔力の流れにズレが生じて威力が半減したり魔法自体が安定しなかったりしていた。
そこをシイナの援護射撃によって突破された蜂を撃ち落としてくれた事により万全な状態で魔法を発動することが出来た。今思えばあの時彼女がいたからこそ倒す事が出来たのだ。
だからこそ何かしてあげたいし、自分達二人は所謂犯罪者に類する者なので巻き込みたくないという思いがリュウヤにはあった。
「えっと・・・フェイトちゃんどうしよう・・・?」
「あ、アタシに言われても・・・」
彼の頼みに助けを求めてフェイトを見るが彼女も困惑気味になる。
そもそもなのは達は本来ならシイナをスカウトしにここまでやって来たのだが、そこに国連からマークされていたリュウヤとダイチに遭遇し、二人もEXCEEDSに入れようとしていたところを、入っても良いがその代わりシイナを見逃して欲しいという申し出を出して来たのだ。
ここでそれを飲まなければ二人はEXCEEDSに入らず国連側に追われる身となる。だが逆に飲んでしまったらシイナをEXCEEDSに入隊する事が出来なくなる。
まさに二者択一。どちらを選んでも片方は入隊出来なくなってしまう。そんな選択を13歳の少女に迫られてしまってはこうもなろう。
話の行き先が怪しくなっていくところを意外な人物が名乗り出た。
「あ〜、ちょっと良いかな?」
「久瀬さん?」
「ようは貴女的にはどっちもそのEXCEEDSに入って欲しいって話なんでしょ?」
「まぁ、はい・・・」
「良いよ、私EXCEEDSに入隊するよ」
「え、良いんですか!?」
「その代わり・・・・・・」
なのはの背後から追い越すように抜け、そのままゆっくりとリュウヤの後ろまで行くと身を翻して彼の背後から腕を首に回してまるで優しく包み込むようにする。
「この子達を私と同じぐらいの待遇にする事を約束して」
『え!?』
シイナ以外の声が重なる。
リュウヤとダイチは謂わば犯罪者。EXCEEDSに入隊しても監視の目やらが付く事可能性は大いにある。そこで彼女はEXCEEDSに入る条件として二人を自分と同じ待遇にする事で監視やら不自由な事なく活動出来ると思ったのだ。
そんな彼女に首を上に向けて怪訝そうに言う。
「良いの?オネーサン入りたくなかったんじゃ・・・」
「いーの。どのみち入隊させるまで追いかけ回されるだろうし、歳下にあんな風に言われたら年長者の立場が無くなるし、それに私が入る事で君たちも好待遇で迎え入れて貰えると思うから」
「でも・・・」
「んもう!歳下は歳上の言う事を聞きなさい!」
「わ、わかった・・・」
彼の頬を両手でムニッと挟んで顔を覗き込む。
彼女の青空のような空色の瞳。彼のエメラルドの宝石のような紅色の瞳。それぞれの瞳が重なって互いの姿が瞳の中に映る。
「それにまだ借りも返せてないし・・・」ボソッ
「オネーサン?」
「な、なんでもない!」
「ぶぇ」
誤魔化すようにまたムニッさせる。
彼には二度助けられ、一度目の借りは援護射撃で返せたが、まだ二度目の借りが返せていない。
このまま見逃されるとまた彼に借りを作る事になるで返すには丁度良い。
「それともう一つ」
「?」
「・・・あの時助けてくれてありがとね」
「・・・・・・うん、こちらこそありがとう」
中々言えなかったお礼がようやく言えた。
リュウヤも今擁護してくれた事を含め、食糧を分けてくれた事や援護射撃の事に感謝を述べた。
思わず口元が緩むシイナに釣られて笑うリュウヤ。
緊迫した空気から和やかな雰囲気になっている中、一人だけ納得していない人物がいた。
「おれはヤだぜ、政府の犬になるなんて!」
「まだ言ってるの!?」
「ジャブローのオフィスは快適だよ」
「わたくしはエアコンと言うものが苦手でしてな」
「何の話!?」
二人の意味不明なやり取りにツッコんでいると今度はなのはの後ろからフェイトが現れ、ダイチの前まで行くと屈んで正座している彼と目線を合わせる。
「ごめんなさい。貴方が国連を嫌う理由はよくわかります。ですが、ここはどうか我々に協力をお願い出来ませんか?」
若干上目遣いでダイチに協力するように要請するフェイト。国連を毛嫌いしてる男がそんな風に頼んでも頷いて貰えるのだろうか。逆に突き返されるのではとシイナはダイチを見ると・・・。
「是非自分をEXCEEDSで働かせてください」
「えぇ!?さっきと言ってる事と逆じゃない!アンタ国連の事嫌いじゃなかったっけ!?」
「何言ってんだよ?こうやって言い争う前にまずは手と手を取り合って協力する事が大事なんだよ?平和が一番!」
「ラブ&ピース!」
「手のひら返すのはや!?」
先程とまるで別人の如くあっさり賛同するダイチ。それもその筈、ここに来る前に美少女に会いたいとダイチは言っていた。しかも『金髪で紅い瞳』というまさに今目の前にいるフェイトがそれに完璧に当てはまっていた。
そんな美少女に上目遣いで頼まれたら誰だって首を縦に振るだろう。逆に断る者はいるのだろうか?否、いない。
「では、三人ともEXCEEDSに入るという事でよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「右に同じく」
「あぁ、うん私も・・・」
『ありがとうございます!』
ぱぁと花が咲いたように和やかな笑顔になるなのはとフェイト。その笑顔から溢れる成分を摂取して御満悦な顔になるダイチ。現金なヤツと彼を見ているとふと包み込んでいた手にリュウヤがそっと触れた。
「リュウヤ?」
「・・・・・・オネーサン、ありがとう」
優しく微笑むリュウヤに思わずドキッとする。
歳下から繰り出される爽やかな笑みに不意打ちを喰らって頬が熱くなっていくのが感じる。
(な、なにドキドキしてんのよ私!相手は歳下よ!何とか歳上としての威厳を・・・)
「どしたのオネーサン?」
「な、なんでもないわよ!」
「それ流行ってるの?」
また誤魔化すように彼の頬を両手でムニッと上げる。
シイナ曰く結構モチモチしてて癖になりそうとかなんとか──。
その後一行は廃墟からEXCEEDSの極東支局に赴いた。見慣れない巨大な施設や設備に呆気に取られているとやがて一同はある一室に辿り着く。
「失礼します。高町調査員、只今帰還しました」
「あぁおかえりなさい!ようこそ、久瀬シイナさん!それとリュウヤくんにダイチくんやね?」
その部屋の中央にはロングの茶髪に金色の髪留めが特徴的であまり聞き慣れない訛りの女性が出迎えてくれた。
「はじめまして、EXCEEDS総督の八神はやてと申します」
「久瀬です、こちらこそどうも・・・」
「支局長のルーク・アンダーソンです」
「あ、どうも・・・」
端にいた銀髪を七三分けした男性が会釈をしている間にダイチがリュウヤに耳打ちをする。
「すげぇな、EXCEEDSってあんな美人さんがトップなんだな」
「・・・・・・」
「リュウヤ?」
(なんだろうこの感じ・・・あの人だけなんか・・・変・・・?)
彼はシイナと握手するはやてに疑問を抱いた。一見するとロングの茶髪の美人だが、彼女から纏っているものを僅かに感じた。
何か靄が掛かっているような、見えない何かを着ているような・・・・・・。
そう思っているとはやてがこちらに向けてにこやかな笑みを送られてそれに応えるように会釈をするリュウヤとダイチ。
(気のせいか・・・)
挨拶を済ませてシイナ、リュウヤ、ダイチの3人についての話に入る。
まずはシイナから。彼女は現在、妹のセツナ由来の特殊な能力をその身に宿している。
一部の侵略種が持つ超常的な能力を獲得した人間『魔人』。魔人は事故や偶然の獲得といった先天的なケース以外にも薬物による人為的に生まれる場合がある。
彼女が以前滞在していた島『瑞穂』に現れ襲ってきた男も違法薬物によって魔人と化した者だった。
ウィンドウ状に厳ついオールバックの男性が表示され彼女は顔を強張らせる。この男によってこれまでの生活を壊され、セツナを奪われたのだ。
殆どの侵略種は人間の体を侵食して行き、多く見られるものとして肥大化、異形化、精神の異常など様々な病理症状がある。
そして同種に対する強烈な捕食欲求。侵略種に精神を侵された魔人は人間と魔人を喰らうだけの異形と化す。
だが、シイナのように記憶や人格はそのままで侵略種の能力だけを意のままに扱える者は非常に珍しいタイプだということ。
(オネーサンも訳アリって事だったか)
リュウヤ達は行動を共にして二年経過したが、これまで戦ってきたのは侵略種のみで魔人と戦ったのは実はシイナと遭遇したトカゲ人間が初めてだったりする。トカゲ人間もリュウヤ自身から発せられていた魔力を求めていたし、シイナを付け狙っていた理由も同族であるが故に喰らいたいという欲求があったのだろう。
ルークが端末を操作してウィンドウに大型の侵略種が映し出される。侵略種は共通として他の侵略種の力を取り込むほどその特性が混合し、大型化していく。
巨大化した侵略種は世界各地に巣を作って幼体の侵略種を産み落とし、一定周期で『大発生』と呼ばれる大規模な繁殖を行う。それが今の世界に侵略種が蔓延っている原因である。
特にこの世界に最初に飛来してきた個体、通称『原種』は他の侵略種とよりも強力で繁殖力も再生能力も上位に位置する。たとえ薬剤や近代兵器を持ってしても駆除は困難だとの事。
強大な侵略種を倒せるのはより強大な侵略種の力しかない・・・。
「そう!そんな力を健全な心と体に宿した人間が組織の支援を受けて、強力な侵略種を倒して力を付け、世界中全ての原種を駆除して、この世界から侵略種による災害を消し去る!そんな計画を実現出来そうな人材がやっと見つかったんです!」
(この人ほんとに大人か!?)
突然年柄も無く大袈裟に身振り手振りするはやてに疑問を抱くリュウヤ。精神年齢が13歳ぐらい下がってた気がしたが黙っておく事にした。
「そうです!久瀬さんの力はすごい可能性を秘めているんです!」
「強い侵略種を倒して吸収しても久瀬さんは久瀬さんのまま、何処までも強くなれる!」
「どんな兵器より、どんな侵略種より誰よりも強くなれるかも!」
はやての後ろからなのはとフェイトがシイナを絶賛する。
「そうなんだ・・・でも君らもめっちゃ強いわけでしょ?リュウヤ達もいるし・・・私いる?」
「入ります!必要です!」
「そうだよオネーサン。バレーボールでも1人のエース級の選手よりも6人で強い方が強いってよく言うじゃん」
「いや、なんで急にバレーボールの話になるの!?」
「え、知らないのオネーサン。今この瞬間もバレーボールやぞ!」
「なんでそんなバレーボール押しなの!?」
「そうやね、諦めたらそこで試合終了っても言うし」
「それスポーツ変わってません!?」
「安西先生・・・バスケがしたいです・・・」
「そこはバレーしなさいよ!!」
「若林先生・・・」
「最早誰よソイツ!?」
「主食が溶岩と水銀って本当ですか?」
「若林先生バケモノじゃないの!!!」
二人のボケに思わずツッコむシイナに腹を抱えて笑うはやて。どうやら彼女的にウケたらしい。
「話を戻しますが、あたし達は海外の機関ですし、活動期間も限られていますから。継続可能な対処としても現地の方の協力が欲しかったんです」
「なるほど、だから私をスカウトしに来たんだ・・・」
「久瀬さん!我々EXCEEDSと一緒に世界を救いませんか!?」
はやての言葉に顎に手を添えるシイナ。世界を救うという普段聞き慣れない言葉にピンと来ない。
だが、これまでの出来事が脳裏に浮かぶ。侵略種達に襲われた事、セツナの事・・・。
「・・・・・・侵略種災害とか、それで悲しむ人がいなくなれば良いなって思ってます。あとはまぁ・・・」
『?』
「どうせ逃げても無駄だろうし」
そう言われて苦笑いするなのはとフェイト。あのしつこさは身を持って味わったからこそ言える。
「私に出来る事があるなら、私なりに頑張ります!」
「ありがとうございます!」
シイナの手を改めて握ってはやての背後にいたなのは達も喜ぶ。これで一旦シイナがEXCEEDSに入る事は確定したのだが、次の議題に入る。
「次に君達についてなんやが」
『はい』
ピシッと先程ふざけていた態度と打って変わり腕を後ろに組んで背筋を伸ばすリュウヤとダイチ。
「君達は二年前から国連の方で度々話題になっております。高町調査員の話によると君達は未確認の侵略種の殲滅に協力してくれたそうやけど、二人の使っているデバイスは未認可のデバイスですね?一体それは何処で入手したのか教えて下さりますか?」
はやての質問にリュウヤ、ダイチの順番に挙手をしてその質問に答えた。
「拾いました」
「作りました」
『作ったぁ!?』
思わずなのはとフェイト、はやての声が重なる。
「ちょ、ちょっと待ちぃ!?拾ったは100歩譲ってまだわかるわ、作ったって1から作ったん!?」
「厳密に言えば廃棄されてあったアームドデバイスを改修、修理して使えるようにした感じですね。外装とコード面は自分が。内部のデータはリュウヤがやってくれました」
そう言われて静かに右手をピースをするリュウヤ。
三人は空いた口が塞がらなかった。二人は二年前から活動していたので実質13歳でデバイスの内部構造を理解して使えるようにしたのだ。通常なら専門のエンジニアが必要なデバイス改修をたった二人でやってのけた点も驚きを隠せなかった。
「ひ、一先ず作ったのはわかりました。そしたらリュウヤくんは拾ったと言いましたが、何処で拾ったか教えていただきますか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「あの・・・?どうかしましたか?」
長い沈黙が続いてその重い口をゆっくり開いた。
「・・・・・・マギストスのエリア0って言えばわかりますか?」
それを聞いた途端ルークを含めたEXCEEDS側が目を見開く。その様子にシイナは首を傾げダイチは少し気まずい顔になる。
「・・・・・・わかりました、一旦その事は保留させていただきます。
そして本題に入りますが、先程も言ったように我々は久瀬さんのような方の力が少しでも欲しいです。今後発生する侵略種災害に向けて、どうかEXCEEDSに入っていただけませんか?」
はやての言葉に一瞬だけ目を伏せてこれまでの旅路を思い出す。
世界から解き放たれたあの日、戦友との出逢い、侵略種との戦い、そしてシイナとの出逢い・・・。
「・・・・・・俺はこれまで、数々の出逢いがありました。この終わりかけている世界を歩み出し、仲間との出逢い、侵略種との戦闘。この先、どうしようもない事が必ず起こる。そして今日、ガムシャラだけでは越えられない壁があると知りました」
今まで二人でならと思っていても国連という巨大な組織に、白い悪魔ことなのはという強大な魔導師の存在。更に見た事もない侵略種との戦い。あの時もシイナの援護がなければ倒せていなかったであろう。
「その時に必要になるのは知識、理性、そして思考・・・。自分がそれらを上手く使ってこの先の問題を解決出来るかまだわかりませんが・・・。
それで、この濁った空を払って青空の下を歩めるのなら、自分はEXCEEDSに入ろうと思います」
「おれは元々国連は嫌いだ。この世界にいるバケモンほったらかして人を取り締まるヤツらなんてって思ってたけど、逆におれが国連に入ってバケモン殲滅して平和に出来るならおれもそれで良いと思ってます」
「それじゃあ二人も入隊って事で?」
「これ以上逃げてもムショ行きになると思うので」
「右に同じく」
「おおきに!EXCEEDSは皆さんの入隊を歓迎します!」
リュウヤの手を取って喜ぶはやて。やっぱこの人歳の割にはなんか子供っぽいと内心思った。
二人の後ろでシイナは何処か嬉しそうに口元を緩めていた。
EXCEEDSの入隊手続きを済ませ、用意された職員寮に案内された後、シイナは二人がいる部屋に向かっていた。
「いい子にしてるかな」
用意された部屋はとても広くて快適だったので年甲斐もなくはしゃいでいる姿が目に浮かんだ。二人もこれまでテント暮らしだったのでこんな綺麗な部屋に住む事になったらさぞテンションも上がるだろう。思わずクスリと笑ってしまい二人のいる部屋まで来た。
二人は相部屋だが本人達は全然気にしてないらしい。
「入るよ〜、君達いい子にして・・・」
ドアをノックして扉を開けた先にあったのは・・・。
リュウヤは机でウィンドウを表示してプログラミングしており、反対側にいたダイチは机の上に何なら分解した機械を広げて電子盤やら配線をはんだごてで接合して各自机の上で作業をしていた。
「何してんの君達!?」
思わずツッコむシイナにノック音に気が付かないぐらい集中していたのか二人は作業の手を止めて暫く見合わせる。
「破壊と・・・」
「創造?」
「カッコつけて言うな!」
わかりにくい言い回しをされてまたもやツッコむ。
「いや、ほんとに何やってるの!?」
「それが聞いてよ〜おれらが使ってたデバイス取り上げられちゃって」
二人は一応民間協力者として受け入れて貰えたがやはり未認可のデバイスは所持出来ないとの事で、認可が降りるその間まではEXCEEDS側が用意されたデバイスを支給されたのだが・・・。
「これまた渡されたデバイスが曲者でね」
「曲者?」
「うん、はっきり言って・・・」
「言葉選んだ上で・・・」
「性能がカス/中身がクソ」
「めちゃくちゃ言う!?」
「これからも仲良くやっていけそうだなダイチ」
「おれもだぜリュウヤ。お前もコレをそう評価する着眼点を持ってて嬉しいぜ」
変なところで意気投合する二人。
支給されたデバイスは一般的な魔導師が使うストレージデバイスだった。
デバイスにも幾つかの種類がある。
1つ目はインテリジェントデバイス。高性能AIが搭載されている型で、AIが思考して自身の使用者に合わせて微調整してくれたり、魔法の発動のサポートをしてくれる。自動修復機能も搭載されており、自身の判断で使用者を守るオートガード機能も搭載されている柔軟性が高いデバイスでデバイスの中だと上位に位置する優れもの。
2つ目はアームドデバイス。対人戦向けで質量で相手を直接叩く近接格闘型で主に槍や剣といった武器に近いデザインが多く。他のデバイスが無改造で激突すれば拮抗すら許されないぐらいの堅牢さを誇る。インテリジェントデバイスが魔法特化ならこちらは質量特化のデバイスである。更に変形機構を搭載されてる型も存在しており、瞬間的な攻撃力を生み出す『カートリッジシステム』も搭載されている。
このカートリッジシステムは魔力の弾薬を炸裂させ、一時的に爆発的な魔力を放つという如何にもアームドデバイス向きなものである。その反面AIの能力は低く、待機状態ではほぼ何もしなく、そもそもAIが搭載されていない型もしばしば。
そして3つ目が先述したストレージデバイス。これはインテリジェントのような高性能AIやアームドデバイスのような堅牢さや変形機構など持ち合わせていないが、魔法を記憶し発動の際の演算補助を行ってくれる、魔法使用に特化した型。
AIが搭載されていない為、自発的に使用者の補助は出来ない分魔法の処理速度に優れている。
中には効率化のため単純なAIを搭載したものもある。一流の魔導師の中にも『AIの勝手な判断が邪魔で処理速度も心配』という理由で好んでストレージデバイスを使用する者もいる。
使用者の実力がダイレクトに反映されるもので初心者から一流まで幅広い需要に応えてくれる万能機。
・・・・・・なのだが。
「容量は一丁前のくせに変形機構も無く稼働と待機しかなくて耐久性もインテリジェンスより下位互換ってなんなん!?俺流石にコラなんじゃないかと思って中のデータ確認したら本物で横転したわ!」
「AI外して自動修復機能とかの余計な機能を搭載せず魔法の保存と発動に特化しました?その努力と労力は能力に持ってこい!!一見十分な能力を持っているように見えながらその実態は全てが『虚』。どれをとっても何かの劣化にしかならないのがコイツです」
「それにこんなに無駄に容量あるんならせめて魔力刃ぐらい付けろよ!お前ら今のバケモン相手に悠長に魔法だけで勝てると思うなよ!接近されたらいよいよ本体で殴りつける事になるぞ!」
「しかもその本体も貧弱だし、仮に殴って折れたらそれで終わり!?それだったらコイツに爆弾括りつけて使い捨てにした方がまだ良いわ!!」
マシンガンの如く文句を垂れる二人に一瞬呆気に取られる。そんな彼等に一つの提案をする。
「そんなに言うならそのいんてりじぇんと?デバイスってのに変えて貰ったら?或いはあーむどデバイスってのにも・・・」
それを聞いた二人は信じられないと言わんばかりに目を見開いて唖然とする。
二人の視線に流石の彼女もたじろぐ。
「えっ、なに?私なんか変な事言った?」
「・・・・・・オネーサン知らないと思うけどインテリジェントデバイスってめっちゃ高価なものなんだよ?」
「そ、そうなの?」
「コイツが中古の軽自動車ならインテリジェントデバイスは最新のスポーツカーぐらいの差がある」
「そんなに!?」
「アームドデバイスも物によってはそんぐらいする」
リュウヤの言う通り、インテリジェントデバイスはAIが搭載されている分、一つ一つが緻密で高価なパーツで構成されているので費用面でも上位ランクに位置する。
アームドデバイスもカートリッジシステムを搭載している分構成されているパーツもインテリジェントデバイス並に高価である。
一方でストレージデバイスはAIや変形機構が無い分安価なパーツで組めて、簡素なものなら誰でも作れる。
「それに普通に考えてみて。入って1日も経ってない奴が一番良いデバイスくださいとか言ってみ?は?殺されてぇか?って言われるよ」
「そんな物騒な組織じゃないでしょEXCEEDS!」
「そもそもおれらって一応前科ものだからそんな強気に意見言えないと思うし」
「ならいっそあの二人に相談したら?ここで働く為には必要不可欠なものなんだし」
シイナの言うあの二人とはなのはとフェイトだろう。あの二人に話して貰ったらはやてを介してスムーズに意見が通るだろう。
それを聞いて一瞬黙るが・・・。
「・・・・・・いや、そうしたらなんか負けた気分になるからやらなくていい」
「どこで競ってるのよ!?」
「多分あれだ、『デバイス改造出来るならストレージデバイス渡しとこw』とか思われてるんだ」
「だとしたら人の事ナメすぎ。ガキの玩具じゃないんだから」
「それで違うのにしてくれって言ったら『あぁw無法少年(笑)でも難しいかwいや〜流石にストレージデバイスは無理だよね(笑)』って思われるな」
「いや思わないから誰も!」
「は?出来るわ、見てろよマジで。ガキに玩具渡したらどうなるか思い知らせてやるわ」
「ナメきってる大人達に無法少年の恐ろしさを味わらせましょう!(鮫)」
「物騒な事言わないの!!」
妙な闘争心を燃やして作業を再開する二人。
動機はアレだが何かに熱心になって取り組む姿は年相応の男の子で何処か安心するシイナ。
家族も亡くし、帰る場所も無く二年間も侵略種と戦って放浪して子供らしい感性を失っているのではと思っていた事もあったがどうやらそれは杞憂だったらしい。
そんな彼等と・・・。
「・・・・・・ねぇ、ちょっと良いかな?」
「ん?」
「どったの?」
「・・・・・・もう少しだけ、ここに居てもいい?」
少しでも一緒にいたいと思ってしまった。
セツナを失ったあの日から、彼女の心には何処かぽっかり穴が空いていた。
今までは時折セツナの事を思い出しては震える身体を抱いて悔し泣きしそうな所を下唇を噛み締めて抑えていた。
あの時こうしていれば、ああなっていればセツナは生きていたのかもしれないと思ってしまう。
今更こういう事を思ってもしょうがないというのはわかっている。それでも彼女と過ごした日々を時々思い出して泣きそうになってしまう。
襲ってくる侵略種と戦ってそれを忘れるようにしても一人になった時はやっぱり何処か寂しかった・・・・・・。
そんな時に、彼等と出逢った。
お腹を空かせて行き倒れていたという衝撃的な出会い方で、彼等も侵略種によって人生を狂わされた子達だと思っていた。感性も何処かズレていて、侵略種なんてものが無かったら今頃普通の人生を歩めていたのだろう。
そう思っていた。
だが彼等は堅実的で、何処かデタラメな強さを持つ。自らを『無法少年』と名乗って戦う魔導師。
トカゲ男に殺されかけた時、廃墟から落ちそうになった時、見た事ない侵略種に撃墜されかけた時、颯爽と現れて助ける。
彼等とのやり取りが心の空洞を埋めていくように感じた。彼等といると悲しい事なんて思い出す暇もなく引っ掻き回してくれるのが楽しいと思えるようになっていった。
「・・・・・・良いけど、特に何もないよ?ただ野郎二人が作業してるだけの空間だし」
「いーの。どうせ私この後一人でやる事ないし、手伝おうとか思ってないから・・・ダメ、かな?」
やや上目遣いで聞いてしまう彼女に二人は見合わせる。
「まぁ、別におれは大丈夫だけど」
「うん、こっちも特に問題ナシ。ここにいても大丈夫だよオネーサン」
「ん、ありがとね」
いても良いと言われて思わず口元が緩んでしまう。
そして二人はまた黙々と作業に戻る。その姿を背中越しで観察するシイナ。普段何処かおちゃらけている者とは思えないぐらい集中していた。
(こんな顔もするんだ・・・)
ウィンドウと向き合ってプログラミングするリュウヤの横顔を見てふと思ってしまう。
画面には構築されたネットワークが表示されてそこにひたすら打ち込んでいた。
「これは何をしているの?」
彼の肩越しに顔を覗かして質問する。本人は特に気にせずに彼女の質問に答えた。
「コイツの空いている容量に使用者の相性を優先するニューラルネットワークを構築してる。今のコイツの状態は言わば何も覚えていない赤ん坊みたいなもんなんだ。そこに俺独自のプログラムを入力してより使いやすくする」
「今のままだと使いにくいの?」
「新品だと馴染むのに時間が掛かるから前使ってたデバイスの感覚をコイツにも取り入れて違和感を無くす感じかな」
「へぇ」
専門的な用語を使って話す彼が新鮮に感じる。こういう面も持ち合わせているのかと思っていると・・・。
「うん、やっぱこうなると・・・キャブレーションを取りつつゼロモーメントポイント及びCPGを再設定。擬似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結。ニューラルリンゲージネットワーク再構築。メタ運動野パラメータ更新。フィードフォワード制御再起動。伝達関数、コリオリ偏差修正。運動ルーチン接続、システムオンライン、ブーストラップ起動」
「り、リュウヤ!?」
「無茶苦茶だ!こんなOSで戦わせようなんて!内包魔力圧が逃げるなら合わせりゃ良いんだろ!逃げる圧力を想定し、係数をマイナス20に設定!」
突然呪文のように呟くのと同時に恐ろしい速さでタイピングしていく彼にやや引き気味になる。
兎に角デバイスのプログラミングというのは大変なんだなぁと自己完結し、視線をダイチの方へと映す。
「そっちは何をしてるの?」
「コイツに変形機構取り付けて変形出来るようにしてる」
彼の机には細かく分解された白い杖に電子盤やら配線が散乱していた。
「こんなバラバラにして元に戻せるの?」
「んにゃ、とりま分解して仕組みがどうなってるか確認して一から作り直す」
「そんな事出来るの!?」
「そうしないとまともに運用出来ないし、コイツのままでブン回したら簡単に折れそうだし」
「杖ってブン回すものだっけ・・・・・・」
「おれらどちらかと言うとインファイターだからな。魔法を直接相手に叩き込んでド突き回す感じ。あ、そういえばリュウヤ。良いもん入ってた」
「んぁ?」
ガサゴソと床に置いてあった大量のパーツが入ったグレーのコンテナボックスから黒いバッテリーのようなものを二つ取り出す。
「タラリラッタラー♪パワーエクステンダ〜♪(のぶ代ドラ節)」
「おお〜!!よくあったなそれ!」
「なにそれ?」
「容量を増やす外付け型の高出力パワーパック。これで変形に足りない容量をコイツで補える。これインテリジェントデバイスにも使われているヤツだから一般で買うとめっちゃ高いんだよね〜。この他にも使える魔法とかも増えるからめっちゃ重宝する」
ふと先程取り出したコンテナボックスを見て質問した。
「これ・・・何処で手に入れたの?」
「あぁ、ここに来る前にデバイス渡された所で掻っぱら・・・貰ってきた」
「今掻っ払ったって言いかけたわよね!?それって横領じゃないの!!」
「実際このジャンクパーツの山から幾つか貰って良いですかって聞いたら好きにしても良いよって許可貰ったからセフセフ」
「そういう問題じゃない!」
「オネーサンちょっと良い?」
彼の破綻した倫理観にツッコんでいると背後からリュウヤに呼びかけられる。
「な、なに?」
「これに向かって『セットアップ』って言ってくれない?ちょっと起動テストしたいんだ」
そう言ってマイク機能が付いた黒いイヤホンを向けられる。
「え、じゃあ・・・セットアップ・・・・・・これでどう?」
「うん、大丈夫。じゃあ次は・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと待って、それ何に使うの?」
指を指した先にはウィンドウだったが、先程の画面とは違って音響の編集画面が表示されていた。
「オネーサンの声をデバイスの認識システムの音声として組み込もうと思ってて」
「ダメェェェェェェ!?」
さらりと答える彼に顔を真っ赤にして掴み掛かった。
「何しれっと恥ずかしい事させてんの!?そんなのダメに決まってんでしょうがぁぁぁぁぁぁ!」
「イイじゃん。別に死ぬわけじゃないんだし」
「私が社会的に死ぬのよぉぉぉぉ!私じゃなくて自分達の声でやりなさいよぉ!?」
「ええ〜野郎の声組み込むのなんかヤじゃない?」
「だからって私声を組み込んで良いってわけないでしょ!?」
「なんならぶっちゃけると、初めからオネーサンの声を組み込もうと思っててどうしようかなぁって思ってたら丁度良いタイミングで来たからオネーサンがこの部屋に入ってきた時点で録音してたんだよね」
「はぁ!?」
「あとは今まで録ったオネーサンの声紋を機械音に加工してと・・・」
慣れた手つきでタイピングしあっという間に編集して音声ソフトを作り上げた。
「これで良しと」
言語を入力して再生ボタンを押すとシイナのような女性の機械音が鳴る。
『セットアップ』
「再生させるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あばばばばばばばばばばばばば!?」
「こりゃ〜まだ掛かりそうだな」
耳まで赤くなって絶叫するシイナ。
その彼女に肩を掴まれて高速でシェイクされるリュウヤ。
その二人に対して何処か他人事のように笑って作業を再開させるダイチ。
EXCEEDSに入隊して1日目は騒がしくカオスな幕引きとなった。
今日も、これからも孤独だったシイナの日常をかき回す事になるだろう・・・・・・。
都内某所───。
『報告、ポイント107ニ転送シタ改良型侵略者『ゼグダリア』ノ信号ガ途絶』
無機質な機械音と共に画面に表示された八枚羽根を生やした女王蜂に『SIGNAL LOST』と表示される。
その画面をゲーミングチェアに座って見ていた少年は落胆する事なく目を細めて口角を上げていた。
(このタイミングでエンカウントするのは良いタイミングだ。この後は国連に入ってトントン拍子だ。後は・・・)
顎に手を添えて考えていると背後からノック音が響く。
「入るよ〜」
「ど〜ぞ〜」
互いに軽いやり取りをして入って来たのは紫のチューブトップに、ワインレッドのストールをはだけるように纏い、鮮やかなグリーンのクラゲヘアの独特な髪型の女性だった。
その女性からは何処か妖艶で甘い蜜のような雰囲気を併せ持ち、老若男女の誰もが求める美貌も持っていた。
しかしその実態は毒々しく、その瞳の奥は得体の知れないナニカを宿しているように見えた。
彼女の名は『篠宮マナ』。裏の世界で流通している魔人化薬なる物を牛耳っている一人である。
マナはゲーミングチェアに鎮座する少年に近づく。
「どう?改造した侵略種の調子は?」
「その事なんだけど、壊されちゃって信号が途絶えちゃった」
座ってまま画面の『SIGNAL LOST』の文字を指した。
「あらら、ザンネン」
「ごめんね、折角作って貰ったのに」
「いーのいーの。オカネなら腐るほどあるからまた作れば良いし、なんならそれより強いのを作れば良いんだし。今回のって一応偵察型なんだから壊されても仕方ないよ」
「ありがとう、
『姉さん』と呼ばれてニコニコと笑顔を溢すマナ。
紫がかった赤い髪のショートヘアに頭頂部から跳ね上がった2本の触角のようなアホ毛が立っており、外側に流れるようにセットされ、全体的に刺々しさとスマートさが同居したシルエットで桜の花びらのような麻呂眉が特徴。
そしてセレブな見た目な彼女に対して何処かの国の高官を彷彿とさせる格式高い紫の軍服を纏い、彼女のストールと同じワインレッドのマントを肩から流れるように広がっていた。
そして彼の瞳の奥にもマナと同じ、否それ以上のナニカを宿しているように感じる。
彼の名は『篠宮ユーリ』。篠宮マナの弟である。
篠宮の
特殊な環境下で数奇な運命から彼女の弟となり、マナも本当の弟のようにユーリを可愛がっている。
「でもアレを壊すなんて何処の誰かしら?」
「破壊したのはコイツらだね」
カタカタとタイピング音を鳴らして別の画像が表示され、それを覗き見るマナ。
そこには数人の男女が映し出され、そこに紅髪の少年と緋色の髪と瞳を持つ少女が送り込んだ侵略種と戦っていた。
「あれ?この子って・・・・・・」
「うん、数年前から侵略種を殺し回ってるヤツだね。今は二人組で活動してるっぽいけど」
「うわ〜めちゃくちゃ暴れてるね」
画面では金色のメッシュが入った黒髪の少年と共に空を駆け抜けて侵略種を撃墜していた。二人の暴れっぷりに流石のマナも少々引いていた。
そして緋色の少女が紅髪の少年を援護する場面に切り替わった。マナはその少女を品定めするように見る。
「ねぇユーリ、ワタシこの子が欲しい!この子を取り込んだら今よりもっと強くなれる気がする!!」
「良いねぇ、僕も強くなった姉さんを是非見てみたいよ」
目を煌めかせて子供ようにはしゃぐマナに静かに賛同するユーリ。
「ただ姉さん、今はまだ様子を見ておこうよ」
「まだ?」
「そ。この人は例えるならまだ熟れてない果実だ。今食べても硬くて酸っぱいから頂くのなら成熟してる頃にしようよ」
「う〜ん確かに今食べるよりも食べ頃になってからの方が良いかも?」
「人間の言葉で『果報は寝て待て』ってあるし気長に待とうよ。その間僕が様子を見て上手い具合に熟すようにやっておくよ」
「わ〜お、ありがとうユーリ!流石ワタシの弟〜!」
抱きついて頬を擦り寄せて可愛がるマナを抱き止めるユーリ。思わず彼の口元が緩む。
「あ、そうだ!折角だから久々に一緒にゴハン食べようよ!たまには息抜きも大事って人間の言葉で言うじゃない?」
「いや、僕は・・・・・・」
大丈夫と言いかけたが彼女の期待に満ちた笑顔を見て思い止まる。
「そうだね改造侵略種の開発に大分骨を折れてたし、僕も姉さんと食事がしたいな」
「やった!じゃあ決まり!美味しい料理の他にもデザートもあるからね!」
「久々にカクテルとかも頂こうかな」
「ユーリったらオシャレ〜♪」
二人で部屋を出て軽い足取りで楽しそうに笑うマナ。その姿を彼女の後ろで歩みながら静かに笑う。
(安心してね姉さん)
彼女には数え切れない程の恩がある。存在意義を与え、居場所も与え、自由も与えてくれた。
だからこそ──。
リュウヤ「ここをこうして・・・」
ダイチ「ここをああして・・・」
シイナ「凄い集中してる・・・」
リュウヤ「そりゃするでしょ。一応納期明後日までだし」
シイナ「え、それ納期とかあるの!?」
ダイチ「俺ら明後日から初任務だから実質納期みたいなもんでしょ」
シイナ「なんじゃそりゃ!?え、ていうかもう任務入ってるの!?」
リュウヤ「そりゃ俺ら無法少年なので」キリッ
ダイチ「無法少年の力が必要だからやってやりますか〜」
シイナ「天才少年なのか無法少年なのかよくわからない子達・・・・・・。あれ?ていうか思ったんだけど」
リュウヤ・ダイチ『ん?』
シイナ「それって勝手に改造とかして良いの?なんか資格とか必要なんじゃ・・・・・・」
リュウヤ・ダイチ『・・・・・・』
シイナ「え?」
リュウヤ「サーテ、ハヤクサギョウニモドラナイト」
ダイチ「タイヘンダータイヘンダー」
シイナ「ちょっと待って!なんでそんな急にカタコトになったの!?やっぱりそれ資格とかいるんじゃないの!?」
ダイチ「支給品って好きにしても良いって事じゃないの?」
シイナ「そんなわけないでしょうがぁぁぁぁぁぁ!?」
シイナ?『次回、魔法少女リリカルなのはEXCEEDS Outlaw of Magia 第四話『始動、無法騎士』。次回も楽しみしてくださいね♪ジャンケン、ポン。ウフフフフフ♪』
シイナ「サ◯エさん風に喋らせるなぁぁぁぁ!」
リュウヤ「あばばばばばばばばばばば!?」