大まかな流れだけ決めて、あとはライブ感で書いているので中々話が安定しません。次回以降はもう少し練ってから投稿頑張ります。
結局あの日から特に何か変わるわけでもなく、俺とサイトウさんは互いに稽古に明け暮れていた。
「もう一回いきます! カイリキー、クロスチョップ!」
「キリキザン!出される前にふいうちや!」
「今です!マッハパンチ!!」
二匹が激しく技をぶつけ合うのを横目に見ながら、俺は汗を拭う。
サイトウさんが本調子を取り戻してからも、共同特訓は続いていた。相変わらず俺はサイトウさんの稽古に付き合い、空いた時間でサイトウさんは俺にガラル空手を教える。
「サイトウさん、前よりも判断が鋭なったんとちゃう?」
「そうですか?そう言ってもらえると嬉しいです。しかしササギさん、今のマッハパンチは読める場面では?」
「ちょっと待ってや!流石に今のは無理やって!」
「ふふ。」
しかし、一つだけ明確に変わった事がある。
サイトウさんは稽古中、よく笑うようになった。それに、以前のように無茶な指示を出す事もなくなり、道場の皆と話す時間も増えた。カイリキーたちの表情も、どこか明るくなったように思う。
「いやでもほんまにサイトウさん強なったわ。そのうち俺じゃ受けきれんくなるかもしれんなぁ。」
そういうと、彼女は何を言っているのか分からないという風に首を傾げる。
「でも、ササギさんは受け止めてくれますよね?」
かくとう弱点やで?勘弁してやーー
と言いたいところだが、彼女のまっすぐな目を見ると、そんな軽口を叩く気も失せてしまい
「もちろんや!はがねは何でも受け止めたるで!!」
などと柄にもない事を言ってしまった。
とはいえ、このままではサイトウさんの成長に俺がついていくことができない。何か策を講じなければ。
そう思った俺は、息抜きがてら休みの日にルミナスメイズの森へと足を運んでいた。
何か現状を打開するきっかけでも掴めないかと思っていたのだが…
「なんで当たり前のように着いてきてるん?」
「……!!さすがササギさん。私の気配はお見通しでしたか。」
そこには、道着姿のサイトウさんがいた。
「いや、隠れてたつもりなんかもしれんけどめっちゃ髪見えとったで。」
「……そうですか。」
少し彼女は残念そうだった。
「ところで、今日は何を?ルミナスメイズの森に用でもあるんですか?」
「いや、特にはないで。なんかおもろいもんでもないかと思っただけや。サイトウさんこそどうしたん?今日別に稽古休みちゃうやろ?」
すると彼女はバツが悪そうな顔で
「…ササギさんがラテラルタウンから出るのを見かけた、と聞いたので。少し心配になって。」
「そやったんか、ありがとう。でも、別にそこまで心配する場所でもないやろ?」
「わかりませんよ?ルミナスメイズの森は、観光客がよく迷う事で有名です。」
「え?せやったん??めっちゃ危ないやん。」
「えぇ、ですから念の為にと。」
彼女の優しさが身に染みる。俺一人で行動していたら、最悪の場合遭難していたかもしれなかったのだ。
……しかし、俺は誰にもルミナスメイズの森に行く事を話していない。彼女はなぜ、俺の居場所が分かったのだろうか。
(まぁ、ラテラルタウンから出て行く所なんてここに決まってるよな。)
そう思い、気にしないことにした。
「あれ?結局稽古は?」
「………私はジムリーダーですよ。私が休みといえば今日はお休みです。」
「めっちゃ無理やりやん…。」
彼女にも案外、強情なところがあるらしい。今日は休む事を伝えられた道場の皆の顔を思い浮かべると、少し笑ってしまった。
「じゃあ今日はもう何も予定ないんや?」
「えぇ。」
「それやったらせっかくやし、この森案内してや!観光客来るぐらいやし、なんか綺麗なスポットとかあるんやろ?」
当初の予定とは大きく変わるが、せっかくサイトウさんと食事以外で外出しているのだ。新しい彼女の一面が見たいと思った俺は、彼女に森を案内してもらうことにした。
「えぇっ!?私と、ササギさんの二人でですか?」
「もちろんやで。もしかして何か用事ある?」
「いえ、ぜひ行きましょう。迷ったら危ないですから、私から離れないでくださいね!」
そういうと彼女は、意気揚々と俺の前を歩き出した。
心なしか道場でいる時よりも、少し嬉しそうに見える。毎日稽古に明け暮れている彼女も、新しい刺激の一つや二つ欲していたのかもしれない。
「待ってやサイトウさん!歩くの速いって!」
そう言いつつ、俺は笑いながら彼女に着いていくのだった。
そしてそろそろ日も暮れようかという頃
「なぁ、なんかさっきから同じとこグルグルしてへん?」
「まっまさかそんなことは…。」
「でもあのキノコさっきも見たで?」
「うっ……」
俺たちは迷ってしまったのかもしれない。
「すみません……私が案内すると言ったのに」
「別に謝らんでええで。森で迷うなんてしゃーないやろ。むしろ、こっからが腕の見せ所よ。」
そういうと俺はアイアントを繰り出す。
「アイアント、俺らが元来た道探せるか?」
「ギギッ」
顎をカチカチと噛み合わせ、俺に答える
「ええ返事や、ほな頼むで」
「大丈夫なんですか?この森を棲み家にしているポケモンでもなければ迷ってしまう気がします。」
「任してといてください。あいつは俺が見てきた中で一番、探索に向いたやつです。」
アイアントはしばらく触覚をモゾモゾと動かしながら周囲を探り、やがて一方向へと歩き出した。
どうやら、俺たちの来た道を見つけたらしい。
そのままアイアントの案内通りに歩くと、俺がサイトウさんを見つけた道まで戻ってくることができた。
「いや〜、ここまで来たら安心やな。」
「すっかり遅くなってしまいましたね…。せっかくの休日だったのに…。」
サイトウさんの顔が少し曇る。案内を申し出た手前、責任感を感じているのかもしれない。
「まぁ、なんだかんだ楽しかったしええんちゃう?」
「楽しかった…ですか?」
「夜の森も綺麗やったし、サイトウさんのポンコツな一面も見れたしな。」
「ポンコツじゃありません!今日は調子が悪かっただけです!!」
「お、なんや明るい顔できるやん。ほな帰りましょ、あんまり遅いとまた皆に心配かけることになるかもやし。」
「そうですね。今日はどこに寄りますか?」
元気を取り戻したサイトウさんと、今日の晩飯について話しながら、俺たちは帰路につこうとしたその時、草むらから何かが飛び出してきた!!
「ん?なんやこのキノコみたいなやつ。めっちゃ細身やなぁ」
俺が近づくと、そのポケモンは右手を挙げた。なんだ?挨拶?案外穏やかなポケモンなんだなと思っているとーー
「ササギさん危ないッ!!」
サイトウさんに後ろから引っ張られる。
「痛ッッ!ちょっ!どうしたん?」
と、俺が尋ねるのと同時に、キノコポケモンの右手から光る胞子が放たれる。
俺は大慌てでそのポケモンから大きく距離を取った。
「なんやあいつ!?いきなり変なもん飛ばしてきよったで!?」
「あれはマシェード。夜に彼らの出す怪しい光に惑わされると二度と森から出られなくなると言われています。」
「めっちゃヤバいやつやん!ありがとうなサイトウさん。助かったわ!」
…モロバレルといいマシェードといい、キノコ型ポケモンにはつくづく碌なのがいない。
逃げようと後ろを振り向くと、5匹のマシェードが近づいてきている。
「囲まれてるやん…。」
かくなる上は、彼らを倒して逃げるしかない。俺はモンスターボールを構え、サイトウさんを見る。彼女も同じ気持ちらしい。その手には既にモンスターボールが握られている。
「ほないくで!これ切り抜けて、後でゆっくり飯食べましょ!」
そう言って、俺たちは互いのポケモンを繰り出した。
だが、思っていたよりも呆気なくマシェード達を追い払う事ができた。彼らもまさかここまで抵抗されるとは思ってもみなかったのだろう。反撃を喰らってしばらくすると、胞子を散らしながら姿を消した。
「案外大したことなかったな。」
「そうですね。ケガがなくてよかったです。」
そう言いながらお互いにポケモンを戻していると、彼女が突然よろけ、地面に倒れ込んだ。
「どうしたん!?実はさっきあいつらの攻撃喰らってたんか!?」
「いえ、先程彼らが散らした胞子の中に、どうやらしびれごなが混じっていたようです。それを吸い込んでしまったのかもしれません。」
「大丈夫?一人で立てそう?」
「いえ、吸ったばかりなので体に力が入りません…。でも大丈夫です。カイリキーに頼めば…って何してるんですか!?」
彼女の慌てたような声が背中から聞こえてくる。
「ササギさん!私なら大丈夫ですから!カイリキーに抱えて運んで貰えばいいだけです!」
「カイリキー結構技喰らってたで?今日はもう休ませた方がええやろ。別に俺はまだまだ元気やし、気にせんでええよ。」
「そういう事ではないのですが…。そこまで言うのなら仕方ありません。」
どうやら、納得してもらえたようだ。
そのまま彼女を背負って、森を抜ける。
「重かったら、いつでも言ってくださいね。」
「全然重いなんてことないで。むしろ軽すぎるくらいや!」
「そうですか?それならこの後たくさん食べないといけませんね。」
背中で彼女が小さく笑う。
「ササギさんの背中、大きいんですね。」
「お、そう思う?筋トレの成果出てんのかな。」
「えぇ、大きくて…安心します。」
「それはよかった、筋トレ冥利につきるわ!」
眠くなったのか彼女はそれ以上喋ることはなかった。
ただその代わり、俺の背中を掴む力が強くなったように感じた。
少しずつ執着し始めましたね。