はくねこの愛した日々   作:meigetu

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1単位 はくねこ 

やにねこは、その日、ふらっと外に出ていた。

特に用事があったわけではない。

暇だったから外に出たただそれだけだった。

 

「はい、これ。今月分ね」

「了解です」

「合成系は、あなたたち経由でしか原料が買えないから、そこだけお願い」

「分かりました」

「あと、この量だと見つかっただけで二十年だから。くれぐれも気をつけて、ボスのところまで届けて」

「はい」

 

やにねこは、階段の上でそんな言葉を聞いた。

たしか、この声ははくねこの方だろう。

そう思い階下に目線をやるとそこには、見覚えのある二人の人間と、はくねこがいた。

何やらごついカバンを渡しあっているようだった。

 

二人とも身なりは悪くない。

むしろ、妙にきちんとしている。

片方は人当たりのよさそうな笑顔を浮かべ、もう片方も愛想よく頭を下げている。

 

ただ、どうにも、この部屋にいるには場違いだった。

そして、その二人と向かい合っているのは、

白い獣人。

 

アルビノの毛並みに、左右で色の違う瞳。

はくねこだった。

はくねこは、いつものように煙草をくゆらせている。

 

「ん? ああ、やにねこくんか。」

 

はくねこが、こちらの存在に気が付いたのか挨拶をしている。

 

「こんばんはにゃ」

「こんばんは、やにねこさん」

「どうも」

 

二人の人間の男も、にこやかに頭を下げてくる。

やにねこも軽く頭を下げた。

 

「ん? ああ、仕事関係の人かにゃ?」

「そうとも」

 

はくねこは、何でもないことのように答えた。

 

「姐さん。こちらを」

「ああ、ありがとう」

 

男の一人が、足元に置いていたジュラルミンケースを持ち上げる。

とても重そうだ。

その金属製のケースを、男は両手で丁寧にはくねこへ差し出した。

 

「いつもの分です」

「ご苦労さま」

「いえいえ。こちらこそ、いつもありがとうございます」

 

男は笑った。

その笑顔だけを見れば、どこにでもいる気のいい営業マンにも見える。

ただ、ジュラルミンケースの中身についてだけは、誰も口にしなかった。

はくねこはケースを受け取る。

 

「では、やにねこさん。また」

「失礼します」

「どうもにゃ」

 

二人の男は、最後まで愛想よく振る舞いながら、そそくさと玄関から出ていった。

残されたのは、はくねことやにねこ。

そして、はくねこの手元にあるジュラルミンケースだけだった。

しばらく沈黙が続く。

はくねこは煙草の灰を落とした。

 

「ところで、やにねこくん」

「何かにゃ?」

「せっかくだ。お茶でも飲んでいくかい?」

 

今日は日向ぼっこの気分だ。

 

「うーん……今日はいいかにゃ」

「そうか」

 

はくねこは、少しだけ笑った。

 

「振られちゃったか。また今度でも」

 

そう言うと、はくねこはジュラルミンケースを持ち上げた。

そのまま、部屋の中へ入っていく。

 

「じゃあね」

「はいにゃ」

 

はくねこはケースを抱えたまま、奥の部屋へ消えていった。

やにねこは、その背中を見送る。

 

「…………」

 

妙な獣人だ。

昔から変な獣人だとは思っていた。

でも。

 

「まあ……はくねこだし」

 

やにねこは、深く考えないことにした。

 




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