狂愛を取り戻せ   作:アマノジャック

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狂愛に魅せられた幸せ

時は数年前…数多くの担当ウマ娘とサブトレーナーを持つ大規模なチームがあった。そのチームの名は『パシフィック』…ベテラントレーナーのチヒロが率いており、メジロラモーヌやダイイチルビーなどG1ウマ娘も所属していた。

 

それもあってかウマ娘やトレーナーからのチーム加入希望が多く、日々のトレーニングですらも多くの見学者が集まっていた。しかしこのチームはサブトレーナーに担当を持たせ、独立を流す役割もあり、理事長が目を付けたトレーナーだけがサブトレーナーとして加入させられる仕組みであった。

 

それにより本来は加入する=何か危ないトレーナーという意味になってしまうのだが…それを口に出すウマ娘やトレーナーは特にいなかった。ユキもそんなチームのサブトレーナーの1人だった。

 

「…ふぅ。」

「お疲れ様ラモーヌ。今日も素晴らしい走りで…」

「タオル。」

「はい、どうぞ。後、蹄鉄見せて…途中で歪んで走りにくかったでしょ?調整はすぐに終わるからさ…ね。」

「……!ふふっ…お願いするわユキ。」

「うん、ありがとう!」

 

各サブトレーナーはチヒロの担当しているウマ娘のトレーニングを指導する…特にG1級ウマ娘を指導するとなれば少しのミスも許されない。その中でもユキはチームのエースとも言えるメジロラモーヌを任させるほどトレーナーとして成長していたのだ。

 

「あーあ、このままラモーヌの担当になれたらな…引退までずっと走りが近くでみれるのにな。」

「ならチヒロ様(あの人)以上に私に愛されることね。」

「…ちなみに私とチヒロトレーナーの愛の現状は?100点満点で教えて。」

「チヒロ様が100点だとすれば…あなたは10点ね。」

「がーん…でも、チヒロさんが退職するまでに絶対に超えるから!それまで引退しないでよ!」

「…無理ね。」

「ちょっと!?」

 

サブトレーナーの中では1番メジロラモーヌと打ち解けていたユキ。しかし、そんな彼女も1人のウマ娘と契約することとなる…スティルインラブだ。

 

「見つケたァ♡アナタの全てを──頂戴(チョウダイ)♡」

「……いいよ。」

 

きっかけはユキが深夜の見回りをしていると…無断でトレーニングコースを走っていたスティルインラブを発見。止めようとしたものの…ユキはスティルインラブの走りに…、紅い瞳に…、狂気に魅せられた。そして、ユキはスティルインラブと契約し…チームから独立した。

 

───

 

スティルインラブと契約して時が経ち、デビューのために本格的なトレーニングを始めようとしていた頃…チヒロがメジロラモーヌを連れてユキの前へと現れた。

 

「チヒロトレーナー!?それにラモーヌまで…一体どうしたのでしょうか?」

「何…俺のトレーナー退職が決まってな…担当の引継ぎ先を探している。」

「…」

「えぇ!?それはまた急な話ですね…」

「それでユキ。お前にはラモーヌを担当して欲し…」

 

「ダメです!」

 

「…スティル?」

「あ!いえ…その……ごめんなさい。」

 

自身の発言に戸惑い、慌ててその場から去っていくスティルインラブ。それを無視してチヒロは淡々とユキへと話を続けた。

 

「お前にはラモーヌを任せたいと思っている…どうだ?」

「ラモーヌを…」

「…」

 

ユキはメジロラモーヌをちらっと見る。メジロラモーヌは終始無言のまま他人事かのように自身の爪を眺めていた。そして、チヒロへと頭を下げた。

 

「ごめんなさい、お断りします。」

「…!」

 

一瞬…ほんの一瞬だけメジロラモーヌの目線がユキへと向いた。

 

「…嘘だろ?ユキお前…ずっとラモーヌを担当したいって言ってただろ?」

「本音を言うとしたいですよ。けど今は…スティルの担当です。だから…あの娘の意志が1番です。」

「…それがアナタの答えかしら?」

「うん…スティルを愛してるから。スティルが嫌と言ったなら…それが私のトレーナーとしての答え。だからごめん…は違うか。ちゃんとチヒロトレーナー以外とも上手くやるのよラモーヌ。」

「……そう。行きましょうチヒロ様。」

「おい、ラモーヌ!いいのか!おいっ!」

「…」

 

無言で去っていくメジロラモーヌとチヒロにユキは頭を下げた。

 

「おいでスティル。」

 

「…」

 

それらの様子を見ていたスティルインラブにユキは声をかける。スティルインラブの表情は自己嫌悪により暗い。

 

「ごめんなさい。」

「何を謝ってるのよ…今の私はスティルのモノ。アナタが嫌って言ったらそれで決まり。」

「こ、後悔しますよ?」

「もうしてる。ほら、そんなこといいからトレーニング始めるよ!」

「…はい。」

「そうだ!レースの目標とかある?それに向けたトレーニングとかも考えたいしね。」

「……ァラ。」

「ん?」

「トリプルティアラを取りたいです!ラモーヌさんに続く2人目の!」

「ふーん…ラモーヌに続いてね?」

「えぇ。ラモーヌさんのよりも……ワタシ(・・・)、強くなるわ。」

「──っ!?」びくっ

 

突然の変化にビックリするユキ…それと同時に顔が蕩けた。

 

「いい瞳ねスティル…一緒に強くなっていきましょう♡」

「フフフ…アナタの中、ワタシ1色で染めてあゲる。」

 

その後、スティルインラブは史上2人目となるトリプルティアラを達成した。

 

───

 

『勝ったのはタップダンスシチー!

ついにG1へと手が届いた!!』

 

『今年もアドマイヤグルーヴだ!

アドマイヤグルーヴ、連覇達成!』

 

『何とスイープトウショウ!

ティアラウマ娘のスイープトウショウが…春のグランプリを勝ち取った!』

 

───

 

「はぁっ…はぁっ…つ、次こそ…スティルを…」

「トレーナーさん!?早く病院へ…」

「行ったよ。特に異常は無かったわ…チヒロさんが言ったんだよ。間違いなんて絶対に無いわ。そんなことよりも次のレースついてだけど…()ちゃんに代わってくれる?」

「…」

「早く代わって。代われ。代われ代われ代われ代われ代われ…」

「っ!?」ダッ

「あ…逃げた。とりあえず、代わったら戻ってきなさい……ふうっ。」

 

トリプルティアラを達成後、スティルインラブは勝利から遠のいていた。原因は豹変したスティルインラブのもう1人の"ナニか"が表に出なくなったから…とユキは思っている。故に何としても再び"ナニか"を呼び出すことでレースでの勝利をと考えていた。

 

しかしスティルインラブは違う。元々、スティルインラブ自身はそれを醜いと思っており出なくなったことに不安は無く、寧ろ安心すら覚えていた。だが困ったことにユキはスティルインラブの"ナニか"を求めていた。その影響かスティルインラブとの折り合いが悪くなり、日を追う毎にユキの身体は弱っていった。

 

そして、先週の府中ウマ娘ステークスにてスティルインラブは最下位に敗れ…同時にユキは倒れた。

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