ユキが入院した後のスティルインラブの行動は早かった。URAへトゥインクルシリーズを引退することを連絡し、トレセン学園には退学届を提出…そのまま1人で何処かへと姿を消そうとしたのだ。したのだが…倒れたままユキのことが気になり、気付けば病室で彼女をじっと眺めていたのだ。
ここで幸運だったのはスティルインラブは影が薄く…病院の病人や看護師らに気付かれなかったこと。そして不幸だったのが…自身の捜索にアグネスタキオンとサンデーサイレンスが加わったことである。
アグネスタキオンは『因子』の研究をしており、以前からトリプルティアラを取ったスティルインラブの『因子』を求め、準備をしていた。さらにサンデーサイレンスはスティルインラブへと憑依が出来るため逃走が出来なくなる。そんな2人がユキの病室へと来たのだ。
最初に感じたのはサンデーサイレンスによる憑依…これにより自身の居場所が特定された。慌てて病室から出ようとしたものの入り口にはアグネスタキオンがおり、今度はユキのベッドの下へと姿を隠す。それと同時にアグネスタキオンらが部屋へと入ってきた。
「…ユキ、かなり痩せたねぇ。」
「あれ?スティルはどこ?いたんだよね☆」
「…あぁ。見てろ!」
眠ったユキの顔を見るアグネスタキオン…それをよそにネオユニヴァースがキョロキョロと辺りを見渡した。スティルインラブは全員が部屋から出るまで息を殺して潜んでいたものの…サンデーサイレンスが憑依したことにより再び身体の主導権を奪われた。サンデーサイレンスはそのまま3人の前へと移動した。
「…あれ?デサイレンさんってスティルに憑いた筈だよね?姿が見えないけど…☆」
「私も見えないな…」
それでも影の薄さからかネオユニヴァースとシンボリルドルフは気付かない…だがアグネスタキオンは別だった。スコープを通してスティルインラブを見ており…そのまま腕輪を付けられる。電子音と共に『因子』が回収され…同時にネオユニヴァースとシンボリルドルフの2人がスティルインラブの存在に気づいた。もう逃げ場は無い。
「さて、スティル君…話をしようか。」
そのまま学園へと連れ戻されたのだった。
───
「スティル久しぶり☆ご飯はちゃんと食べて…無いね。」
「…」
「スティルインラブ、これを飲むといい。ゼリー状だから摂取しやすい筈だ。」
「…」こくっ
「それでまずは今までの君の行動について聞きた…」
「Zzz…」
アグネスタキオンとサンデーサイレンスと別れ、スティルインラブはネオユニヴァースとシンボリルドルフと共に栗東寮の自室へと帰ってきた。ここ数日は何も食べなかったのもあり、シンボリルドルフより受け取ったエネルギー食を一気に飲む。そして、話が始めるも眠気が来たため…スティルインラブはそのままベッドへと倒れて眠ったのだった。
………
「…んん。ここは…?」
「あ…起きた…★おはよう、スティル…☆」
「ネオさん、おはようございます。その…もしかして一睡もしてないでは?」
「ユーニヴァース…☆起きてまたスティルがいなくなってたら嫌だからね☆…安心し…Zzz★」ポチポチっ
「ネオさん…」
目の前には大きなクマを作ったネオユニヴァース…自分が原因で寝ることが出来なった罪悪感がスティルインラブへと刺さる。ネオユニヴァースはスマホを操作し、机の上へ置くと自身はベッドの枕へと沈む。それと同時に部屋の扉が開く…シンボリルドルフだった。
「やぁ、スティルインラブ。よく眠れたかな?」
「ルドルフ会長…昨日は途中で眠ってしまってすみません。」
「状況が状況だ。気にするのであれば…ここまでの君の状況について話してくれるかい。」
「…分かりました。」
スティルインラブは全てを話す。レースに勝てなくなったこと、自分の中にある内なる紅が出てくれないこと、ユキが心配だったこと、退学しようとしたもののその後はノープランだったこと。それら全てをシンボリルドルフは黙って聞き…スティルインラブへと質問をした。
「君はこれからどうしたい?」
「…はい?」
「私の個人の感想として、君は自分が何をしたいかを見失っているのだと思ってね。だから、今の君が1番強く思っていることを口に出してみるといいさ。」
「1番強く思っていること…」
スティルインラブは考える。最初に出てきたのは自身へ全てを捧げると約束したユキのこと。ユキがスティルインラブを愛してるようにスティルインラブも彼女を愛してるのだ。けれど、彼女にとって捧げた対象はいつものスティルインラブではなく"内なる紅"のスティルインラブ。となれば…
「
「…そうか。であれば、今後はどうするべきか…」
自身でもドン引きする解答を口にしたスティルインラブ。しかし、シンボリルドルフは否定せずプランを考え始めた。
「それなら簡単だよ☆」
「ネオさん…!?」
「起こしてしまったか…」
ここでネオユニヴァースは起き上がる。
「強い相手と勝負すればいいんだよ☆例えば、今だと…ディープインパクトとか!」
「…アポも無しで相手にしてもらえるでしょうか?」
「そこはえーと…ユーニヴァース☆」
「…」
「スティルインラブ、相手はディープインパクトだ。なら…こちらもインパクトのあることをする、というのはどうだろうか?」
「ルドルフ会長…分かりました!やってみます!」
それ聞いたスティルインラブはすぐに実行へも移した。トレセンのジャージへと着替え、内なる紅のふりをしながらトレーニングコースへと乱入し、ソウジとディープインパクトに勝負を挑んで模擬レースをする。
作戦は成功し、模擬レースが行われたが…結果はあっさりと2人に敗れた。
「ユーニヴァース☆スティル、伸びなかったね…」
「…なんでなんでなんで?」
「明明白白。やはり、その力はもう…」
「…ユーニヴァース★」
強者とのレースでまた出てきてくれると思っていたスティルインラブはショックを隠せず青い顔でガタガタと呟くだけとなる。
「まだよ!」
「…え?トレーナーさん…何でここに…?」
そこへ入院しているはずのユキが姿をみせた。