「なるほどねぇ。」
アグネスタキオンはスコープを覗きながら呟く。
「状況はだいたい把握した。」
「アグネスタキオン、君には何が見えてるんだい?」
「争う2人のスティル君…と言ったところかな。煽りにソウジを使っている所はいただけないが…」
『…』じー
「何だい?その何か言いたそうな目は…?」
シンボリルドルフが尋ねる。するとアグネスタキオンが答えたものの…ソウジの身体を通してサンデーサイレンスが微妙な顔を向けてくる。それに反応したアグネスタキオンであったが…サンデーサイレンスよりとんでもない返答が返ってきた。
『争いの内容を簡単に言うとだな。元のスティルは自分の身体に帰ってほしい、"内なる紅"は帰りたくない…その言い争いだ。』
「何故、"内なる紅"は帰りたくないと?」
『ソウジに惚れたらしい。』
「は?」
「え?」
「ユーニヴァース?」
ネオユニヴァースを除き、その場の全員の目が点になる。
『ソウジの紅い目が綺麗だから傍にいたいんだと…』
「なんだそれは。」
シンボリルドルフが頭を抱える。
『俺もそう思う。プイといい、コイツのどこがいいんだか…』
「とか言いながらサンデーサイレンスさんってソウジさんに尻尾を解いてもらうの好きですよね?」
『…普通に上手いからな。他の担当も手入れしてもらってるのに俺だけしないのも不公平だろ…ってそんな話はどうでもいい!』
アグネスフライトからの茶々を流し、サンデーサイレンスは軽く息を吐く。
『それで、ソウジは"内なる紅"に今の『合成因子』を回収したら消える存在だから出ていけって言ってる。』
「つまり三者三様ということだねぇ…全く。お姉ちゃんといいブリザード君といい、これ以上ソウジに女が増えて堪るか。」
アグネスタキオンは呆れたように肩を竦め…同時に黒いオーラが身体中から溢れだす。
「さて…どうやって説得したものかな。」
「ユーニヴァース☆」
そんな中、ネオユニヴァースだけが楽しそうに笑っていた。
───
『最後まで見ていたい…貴方の目を♡』
ソウジは盛大なため息を吐いた。
「お前なぁ…」
『何?』
「俺、結婚してるし子供もいるぞ。」
『知っているわ。』
「それでも好きだって言うなら聞くけどさ…」
ソウジは"内なる紅"へ顔を向ける。
「俺は別に好きじゃない。お前のことは3冠取ったくらいしか知らないし…それでもか?」
『構わないわ。』
即答だった。
『嫌われてもいい。拒絶されてもいい。だって大事なのは気持ちじゃないから。』
"内なる紅"は一歩前へ出る。
『ワタシは貴方の紅い目が好き。』
「……。」
『だから傍にいたいの。』
その言葉に嘘は無かった。まるで告白…それも見返りを求めない、一方通行の。
『ねぇソウジ。』
"内なる紅"は手を伸ばす。
『もう少しくらい一緒にいてくれてもいいじゃない。』
そしてソウジの腕へと抱きつき、右手をソウジの顎へと添える。
「ちょっ──!?」
『だって好きになったんだもの。』
「やめなさい!!」
スティルインラブの悲鳴にも似た声が響く。
『何よ。』
「離れなさい!!」
『嫌。』
「離れろと言っているのです!!」
『嫌よ。』
「…何回やるつもりだこのやり取り。」
"内なる紅"はさらにソウジへ身体を寄せる。ソウジはただ両手を上げるだけだ。
『ワタシは好きな人の傍にいるだけ。』
「やめて!!」
スティルインラブが駆け出した。そのままソウジを突き飛ばす。
どんっ!
「うおっ!?」
『あぁ!?』
ソウジは後ろへ吹き飛ぶ。そして今度はスティルインラブは"内なる紅"の胸ぐらを掴むと"内なる紅"も掴み返す。
「何を考えているのですか!?」
『こっちの台詞よ!離しなさい!』
「嫌です!」
『苦しいんだけど!?』ぎちぎち
「私もです!!」ぎちぎち
"内なる紅"もスティルインラブも互いに譲る気はない。今度は互いの肩を掴み合う。
「貴女は私なんです!」
『違うわ!』
「違いません!」
『離しなさい!!』
「嫌です!!」
先ほどとは逆の取っ組み合いになる2人。その瞬間、ぐらりとソウジの姿が揺らぐ。
「……あ?」
『うわっ!?』
次の瞬間。そこに立っていたのはサンデーサイレンスだった。
『ここで替わるのかよ!?』
突然の交代に本人が一番驚いている。だが目の前では二人がまだ揉み合っていた。
『お前らいい加減にしろよ!』
サンデーサイレンスは二人へ近付き、まとめて頭を鷲掴みにして持ち上げた。
『落ち着け!!』がしっ
「痛い…サンデーサイレンスさん離してください!悪いのワタシだけですよ!!」
『違うわ!アナタが悪いのよ!!』
『両方だバカ!!』
二人とも抵抗をする。だがサンデーサイレンスも力ずくで頭を掴み続ける。
『フライト!今だ!』
「は~い♡」
次の瞬間、スティルインラブと"内なる紅"はサンデーサイレンスと共にアグネスフライトに引っ張られ…ソウジの身体を通り抜けて…意識の無いスティルインラブの身体へと叩き込まれた。