「…あれ?私…え?これは…?」
突然、目の前の景色が変わり混乱するスティルインラブ。先ほどまで精神体の状態でソウジの体内にて"内なる紅"と争っていたはずなのだが…"内なる紅"共々自身の身体へと戻っていたのだ。
「「イエーイ♪作戦大成功☆」」
「…これくらいは予め言ってくれても良かったんじゃねえか?」
そのすぐそばでハイタッチをするネオユニヴァースとアグネスフライト。そのことについて静かに抗議するサンデーサイレンス(*自身の身体へ帰還済み)。
彼女たちの作戦はというと…こうだった。まずは霊体のサンデーサイレンスがスティルインラブの精神を掴み、そこからアグネスフライトがサンデーサイレンスを掴んでソウジの身体へと入れる。
次にソウジの中でスティルインラブと"内なる紅"を何とか1ヵ所に集め、先ほど同様にサンデーサイレンスに掴んでもらい、アグネスフライトが取り出して戻す。この2点である。
「…お姉ちゃん、ネオ君。それって最初にデサイレン君がソウジの身体に入って、"内なる紅"をスティル君の身体に戻せば良かったのでは?」
「それはどうだろう…スティルインラブ自身は意気消沈していた訳で…」
「もう終わったことだから深く考えないの!」
「その通り☆」
「それで…俺はそろそろ人間に戻ってもいいのか?血生臭いからさっさと戻りたいのだが?」
「待った☆」
ソウジが腕輪を付けるもネオユニヴァースが止めに入る。
「まだ終わってないよ★」
「何がだ?」
「"内なる紅"だよ、"内なる紅"☆スティル、"内なる紅"はちゃんとアナタの中にいるの?」
「…」
スティルインラブ本人へ"内なる紅"について直接確認するネオユニヴァース。しかし、スティルインラブは反応せずにただ黙る。
「…ソウジトレーナー、ちょっとじっとしててね☆えいっ★」
「なんだっ!?」
ネオユニヴァースはソウジの背中へと張り付き…自分の手でソウジの
『はぁん♡素敵な目♡』
"内なる紅"の人格が表に出てきたのだ。
「まだ終わってねぇのかよ!」
「しかし、これ以上は何をしろと…」
「まずは理事長に報告を…」
「逃げるようなら私が首輪でも付けとくけど?」
「早く人間に戻りたい…」
「今すぐ戻れソウジ…何ならその目だけスティル君に渡せ。どうせすぐに再生する。」
「タキオンちゃん!?ものすごくグロいこと言ってるわよ!?」
「しょうがないな…」
「止めてくださいねソウジさん?本当にしようものならスタンガン当てますよ?」
パチンッ!
場は混乱するものの…ネオユニヴァースが手をたたき注目を集める。
「大丈夫、これで本当に終わり☆タキオン…あと巻き込んじゃったデサイレンさん、フライトさん、ソウジトレーナー…ありがとう★ここからはワタシと生徒会長に任せて☆」
「という訳だよスティルインラブ。また話を聞かせてもらう」
『えー、面倒ね…』
「…今逃げたらフライトさんに捕まるだけだよ?」
「そうね、私のペットにしてあげる♡」じゃらっ
『ネオさん、ルドルフ会長、早く行きましょう!!』
スティルインラブは(首輪を持った)アグネスフライトから逃げるようにネオユニヴァースとシンボリルドルフを連れて部屋から出ていった。
「…ネオユニヴァース君任せになるがこれで私たちの出番は終わりだねえ。」
「スティルインラブはどうなるんだ?」
「ルドルフちゃんがいるから悪いようにはならないわよ。」
「あー、しんど…明日もプイのトレーニングだしさっさと帰るか。」
「折角4人いるんだし麻雀でもしましょう!今回こそは勝てる気がするし!」
「…お姉ちゃん、元気だねえ。」
「東風戦を1回だけな。」
「やる代わりに今日はお前らの所に泊めろ…飯付きでな。それなら俺も付き合う。」
「悪いなサンデーサイレンス。晩飯1人分追加とブリザードには伝えておくよ。」
「始めるわよ♪」
こうして、麻雀が始まったものの…
「幸先いいわね♪立直♪」
「「「ロンっ!」」」
「大三元だな。」
「四暗刻単騎だねえ。」
「国士無双!」
「全員役満!?そ、そんなぁ…」
アグネスフライトの箱点によりわずか1局で終わった。
───
場所は変わって栗東寮のネオユニヴァースとスティルインラブの相部屋。そこにシンボリルドルフも加えた3人の姿があった。
「さてスティルインラブ、君が強く思っていた"内なる紅"は取り戻せた訳だが…」
「はい…はしたない所を見せてしまいました…」
「全然はしたなくないよ☆むしろ、スティルの意外な面が見れて楽しかったよ♪」
「はうぅ…!」
赤くなった顔を伏せるスティルインラブ。
「でも"内なる紅"って言わばスティル自身の本能みたいな存在でしょ?だったら何でソウジトレーナーをあんなに意識してるの?というか話したことあったの?」
「いえ…彼についてはトレーナーさんが話しているのを聞いただけでして…」
「私も彼についてはブリザードからよく聞いていたよ。ふふふ、そこは一緒のようだねスティルインラブ。」
「その中には『人間の足じゃ満足出来ないの』とか『卒業したのになんでまた日本にいるの』とかブリザードさんに対する妬みもありましたね。」
「ユキトレーナー、未練タラタラだね…★生徒会長、ブリザードさんと同室の時は何を言ってたの?」
「えーと、その日のトレーニングのこととか…うん、普通かな。普通。お陰で今の明るい彼女になった訳で…ははは。」
「目が死んでるよ☆」
「…毎晩、部屋で延々と聞かされていたからだよ。それでも彼女が卒業した時には寂しいと思ったが…」
「スティルと一緒だね☆スティルもユキトレーナーのこといっぱい話してくれるよ!」
「ネオさん!」
ネオユニヴァースの暴露にまたスティルインラブの顔が赤くなる。しかし、今回はすぐ真顔に戻る。
「しかし、彼は私のことは3冠ウマ娘ということしか知らなかったようですが…」
「ちょうどタキオンを担当してた時だから仕方ないよ☆その時はスティルもワタシもクラシックレースで忙しかったし…それで、ソウジトレーナーのことは諦めるの?」
「諦めるも何も私が好きなのはユキトレーナーさんですし…」
「ん?別に何人好きになってもいいんじゃない?ワタシの好きなウォーエンとか栗毛の子が大好きだし☆」
「それとこれとは話が別かと…それに彼は結婚してます。」
「別じゃないよ。何人好きになってもいい…だってそれってとってもユーニヴァースなことだし★」
「ネオさん…」
「ソウジトレーナーだってタキオンと結婚してるのに、ブリザードさんとの子供もいるよ☆そうやってスティルが抑えてるから"内なる紅"で表に出てきたんじゃない?」
「なっ…!」
激しく動揺を見せるスティルインラブ。
「私はそんなこと思ってません!」
「本当に?」
「スティルインラブ。少なくとも君はソウジトレーナーに強く反応していたように見えたが?」
「私はトレーナーさんが好きなのです!そもそもソウジトレーナーは結婚してるので結ばれようと考えるのは不法行為です!」
「うんうん☆」
「だからソウジトレーナーは別に…」
「でも☆」
ネオユニヴァースは首を傾げる。
「ソウジトレーナーがユキトレーナーにキスしたって聞いた時、怒ってたよね?」
「当たり前です!それは…」
「ユキトレーナーが心配だったから?」
「…。」
「即答しないってことは…別かな?例えば…羨ましくなったとか?」
「─っ!?」
スティルインラブはネオユニヴァースを睨むとシンボリルドルフの背中へと隠れた。
「ワタシね☆」
「?」
「"内なる紅"は間違ってないと思うよ★」
「えっ?」
「だってスティルだもん☆」
「…」
「いや、さっきもスティルインラブが言ってたが法律的には間違ってるからね?」
シンボリルドルフが冷静にツッコミを入れているが2人の耳にそんな言葉は聞こえない。
「スティル、さっきも言ったけど誰かを好きになるのは自由だよ☆」
「…だから、私はもうトレーナーさんが…」
「何人好きになるのも自由☆でもね…」
ネオユニヴァースは首を振る。その声音だけが少し真面目になる。
「ワタシが言いたいのはそこじゃないよ。」
「え……?」
「スティルはずっと"内なる紅"を自分じゃないものだと思ってる。」
「それは……」
「でも違うよ☆」
ネオユニヴァースは迷わず言った。
「"内なる紅"もスティルだよ★」
「──!」
スティルインラブは言葉を失い、部屋全体が静かになる。
「ソウジトレーナーを見てドキドキしたのも、羨ましいって思ったのも、綺麗な目だと思ったのも…全部スティルの気持ち☆」
「違います!だから私はそんなこと─」
「では何故…」
叫ぶスティルインラブを遮るように今度はシンボリルドルフが口を開く。
「君はそこまでして取り戻そうとしたんだい?」
「……っ!?」
言葉が詰まる。もし本当に無関係なら…もし本当に自分じゃないなら…あそこまで必死になる理由がない。
「嫌だったんだろう?」
シンボリルドルフは静かに続ける。
「自分の一部が、自分の知らないところへ行ってしまうのが。」
「それは……」
「だったら否定する必要はない。」
ネオユニヴァースが微笑む。
「好きにならなくてもいい☆認めなくてもいい★…でも嫌わないであげて。"内なる紅"はスティルを困らせたかったんじゃない。ただ正直だっただけだから☆」
「…」
「す、少なくともワタシはそう思うな~…★」
「…」
スティルインラブは部屋の鏡へと顔を映す。そこには自分自身と…"内なる紅"の姿が重なって見えた。
「…お帰りなさい