「スティルインラブを早く見つけて欲しい、ですか?元々会長から言われて探してますけど…そうですね。私だけでなく後輩にも探すように声をかけてみますよ。」
「感謝するよジャングルポケット。」
「スティルちゃんを探してるの~?おっけー!キングちゃんやローズちゃんだけじゃなくて商店街の皆にも聞いてみるね!」
「よろしく頼むよウララ君。」
アグネスタキオンはシンボリルドルフと話し合い、まずはスティルインラブの身柄を確保することにした。アグネス家とシンボリ家から何人か捜索に出したものの、協力者は多いに超したことはない。
そこで『ジャングルポケット』と『ハルウララ』へと助けを求めた。前者はトレセン学内から、後者は学外からの情報が集まると考えたからだ。
「アグネスタキオン。君の夫や姉には協力を求めないのかい?」
「ソウジは来年デビュー予定であるスカーレット君の調整に忙しく、お姉ちゃんも担当が12月に香港のレースに出るからね。2人の仕事に支障をきたす訳にはいかなさいよ。」
「その通りだ。ところで君は今何をしているのかな?」
「スティル君の『因子』が無かったかを調べている。貰った記憶は無いが…ティアラ3冠を取ったウマ娘のを回収し忘れていたとはとても思えなくてね。」
「…そこも気になるところだな。軽く私も聞き込みをしたが、彼女の名前すら分からない生徒がいた。徙家忘妻…という訳でないと思いたい。」
「同期の『アドマイヤグルーヴ』君も分からなかったのかい?」
「…彼女に関しては『今後のレースに影響させたくないから1mmも巻き込まないでくれ』と『ニヘイ』トレーナーに土下座で頼まれた。」
「あぁ、『リンカーン』君と共に天皇賞(秋)に出走予定だからねぇ。」
パソコンの画面と睨めっこしつつ、シンボリルドルフと話をするアグネスタキオン。さらには…
「はーい☆タキオン、紅茶だよ★」
飲み物を入れてきたネオユニヴァースもいたのだ。
「そう言えばネオ君、君がスティルインラブを最後に見たのは何時だったかな?」
「んー、ラストランの翌日だよ☆起きたらいなくなっていて、引退したってニュースみてビックリ★」
「引退についてトレーナーは何と言っていった。」
「その件だが『ユキ』トレーナーはその時、トレーナー寮の自分の部屋の前で倒れてしまっていてね…何も話を聞けずに病院に搬送されたそうだ。だからスティルインラブが一方的に言ってたことになる。」
「…ユキ?あぁ、彼女が担当していたのか。」
「知り合いかい?」
「おじいちゃんのチームにいたサブトレーナーの1人だ。話したことはほぼ無いが顔くらいなら知っている……やはり彼女の『因子』は無い。私もネオ君に言われるまで忘れていたようだねぇ。」
「そうなんだ…☆」
紅茶を飲み、カップを置くアグネスタキオン。シンボリルドルフは自身の唇に指をあて首を傾げた。
「曖昧模糊、いったいどんな原理でスティルインラブは消えたのだろうか?」
「会長。それを言い出したらキリがない。私が調べている『合成因子』もそうだが、カフェの霊感。デサイレン君の他者へと乗り移る憑依能力。異世界からの帰還のカギとなるジャンポケ君の手作りぱかプチ。そしてソウジの致死量飲んでも平気なアルコール耐性、骨折しても銃弾を受けても数日後には戻る再生力、フィジカルが上である筈の私たちウマ娘をまとめてベッドの上で圧倒する精力…この世は私でも匙を投げたくなる現象ばかりだ。」
「ブリザード共々夫婦仲がよさそうで安心したよ。」
「ユーニヴァース☆異世界と言えば、
余談だがこの世界とは別のトレセン学園が存在しており、たまに向こうの生徒が迷い込むことがある。逆にこちらの生徒が迷い込むこともあり、このネオユニヴァースはそれを体験した1人でもある。
「それで…これからどうするつもりかな?」
「ジャンポケ君たちが探してる間は私たちは休む…何時まで探すかは伝えてあるのだろ?」
「勿論。とりあえず20時までとは言ってあるが…」
「なら、私たちは20時から動くとしよう…」
「何でワタシたちは20時からなの?」
「どこかにスティル君が隠れているなら捜索が去った後に行動する可能性がある…そこを狙う。今はジャンポケ君たちから目撃情報の1つでも出ることを期待するとしよう。」
そう言いつつ、アグネスタキオンは部屋の簡易ベッドへと横になる。
「明後日までスティル君が見つからなかったなら次の案だ。」
「それって…ダメで元々ってことかな☆」
「常に最悪を考えるだけだ。これで見つかったならそれでいい。」
「最悪、か。」
「正直考えたくないな…★」
「20時にまたここに来たまえ。私は寝る。」
その日と翌日、捜索したもののスティルインラブの手がかりは何一つ得ることは無かった。