アグネスタキオン、ネオユニヴァース、シンボリルドルフは今日もスティルインラブの捜索をしようと集まっていた。
「どおしてだよぉぉ!プイィィ!何俺よりアイツを選んでんだよぉぉ!!」
さらには嫉妬に狂い、血の涙を流しながら、ハンカチに歯を立てるサンデーサイレンスの姿もそこにはあった。
「本当に来てたね☆運命じゃなくてハンカチを噛んじゃってるね★」
「…だな。」
「さて、では早速始めて行こうじゃないか。デサイレン君、いいかな?」
「ソウジの野郎、俺からプイを奪う気か?させねぇ…絶対にさせねぇ!奪われるくらいなら!アイツを…」
「…ソウジさんをどうするつもりですか、サンデーサイレンスさん。」ぼそっ
「ひいっ!?…ってフライトじゃなくてタキオンかよ!心臓に悪いことすんなよなっ!?10年くらい寿命が縮まったぞコラァ!」ビクッ
姉の真似で無理やりサンデーサイレンスを落ち着かすアグネスタキオン。そのまま胸ぐらを掴まれたものの、ため息1つで流した。
「プイ君はソウジのトレーニングを選んだのだろ?なら君はこちらを手伝ってくれる約束じゃないか。」
「ユーニヴァース☆早く、見つければいい話でしょ★」
「我々もアナタが忙しいことは承知している…だが、それ理解した上でもアナタの力が必要と判断した。」
「…って言ってもな…」
サンデーサイレンスはシンボリルドルフから期待の目を向けられると…アグネスタキオンから手を離して気まずそうに頭をかく。
「君は昨日ネオ君に憑依してたじゃないか…それをスティル君にも実行すればいいだけだろ?」
「確かにそれ自体はスティルに対して出来る。しかし1回入ったくらいじゃ、誰がどんな感じだったか流石に覚えきれねぇ。
「なるほどなるほど…確かにこの学園は私とネオ君を含めて君の『因子』を持つウマ娘は多い。学内での捜索は止めておいた方がいいだろう。」
「ってことは…学園の外で探すことになるかな☆ユーニヴァース☆」
「憑くことの出来るウマ娘に片っ端から試してみてくれ。」
「お前ら、他人事だと思って…!」
サンデーサイレンスは少し苛つくも諦めてため息をついた。
「最初に言っとくが1日に何度も憑けるかどうかなんて分からねぇぞ?」
「なら実験と行こうじゃないか!」
「ユーニヴァース☆」
「ったく。しゃーねぇな…」
「…と言いつつも協力はしてくれるのだね。」
「お前らのためじゃねぇ…プイとさっさとトレーニングするためだ。」
こうして4人は学園の外へと捜索を始めた。
───
「…!憑けそうなウマ娘が近くにいるぞ!」
「本当かい!?」
「行ってくる…その間、俺の身体を頼んだぞ。」
「勿論だ。お願いするよサンデーサイレンストレーナー。」
「ユーニヴァース☆」
学園の校門を後にして30分ほどの時が流れる。サンデーサイレンスからスティルインラブ(と思えしウマ娘)を感知したとの報告が入った。それと同時にサンデーサイレンスの体勢が崩れ…シンボリルドルフがすぐに支えた。
「杯中蛇影…やはり信じられない現象だ。」
「ユーニヴァースだね☆」
「さて、彼女はどこにいるのか……なっ!?」
「「──!?」」
『待たせたな!』
ウマ娘へと憑依したサンデーサイレンスが合流するも…3人は目を丸くした。
「…デサイレン君、彼女はスティル君じゃない。」
『…違ったか。悪い、早く憑くことしか考えてなかったわ。』
「ユーニヴァース…あんまりその姿で喋らない方がいいかも…☆」
「早く彼女を解放してはくれないか…」
「『デュランダル』!急にどこに行くのよ!!」
「ス、スイープ…速い速い!」
サンデーサイレンスが憑依したウマ娘はスティルインラブではなくデュランダルだったのだ。憑依後にそのままアグネスタキオンたちの元へと走って行ったため、一緒に行動していたチームメイトの『スイープトウショウ』と担当トレーナーの『ハジメ』が追いかけてきたのだ。
「ってタキオンじゃない。こんなところで何してんのよ?」
「確かスティルインラブを探してるのだったよな。生徒会長のシンボリルドルフはともかく、ネオユニヴァースまで協力してたとは…」
「私からすればネオ君が発端だけどね…協力者はもう1人いるよ。」
シンボリルドルフが背中を向けると、背負われたサンデーサイレンスの姿が見えた。
「サンデーサイレンス!?ディープインパクトのトレーニングはいいのか!?」
『俺だって好きでやってる訳じゃねぇよ!!』
「何でデュランダルが答えるの……えぇ!?ちょっと使い魔!?デュランダルが喋ってるわよ!?」
「本当だ!?デュランダルお前…俺っ娘だったのか!?」
「そこじゃないでしょ!」
ここでデュランダルについて説明しておこう。短距離、マイルのG1を鋭い末脚で勝利した栗毛のウマ娘。そんな彼女だが…ウイニングライブやボイトレ以外では喋らないことで有名なのだ。それが乱暴な口調で喋ってるとなれば、誰もが唖然とした顔にもなる。
余談だが、異世界から来たデュランダルは騎士を名乗る忠犬のようなウマ娘だったらしい。
「混乱させてしまってすまないねぇ。スティル君の捜索にデサイレン君も協力してもらえることになり、スティル君を見つけたとのことで取り憑いてもらったのだが…」
「待ってくれアグネスタキオン。…取り憑くって何?」
「あぁ、自身の身体から幽体離脱して、他の身体に入り込む操ることが出来るそうだ。」
「そんな非現実なことがありえるのか!?」
「いや、現在進行形でデュランダルの身体を操ってるじゃない!凄い魔法よ!アタシも習得したいわ!」
目を輝かせ
「それよりも週末の天皇賞(秋)に向けてトレーニングして欲しいのだけど…」
「うるさいうるさいうるさーい!何回言われたってそんな気分になれないんだから!それに本番でちゃんと走るからいいでしょ!」
「…これで本当に宝塚記念を勝ったから強く言えないんだよな。」
スイープトウショウとハジメのやり取りをよそにサンデーサイレンスはデュランダルを解放する。それと同時にデュランダルはスイープトウショウの背中へと隠れ、ハジメの足へと尻尾を絡めた。
「…!」
「デュランダル、アンタ大丈夫?まぁ、取り憑かれた本人は溜まったもんじゃないわよね…よしよし。」
「…」
スイープトウショウに頭を撫でられ、デュランダルは少しずつ落ち着きを取り戻す。タイミングをみて、シンボリルドルフが頭を下げた。
「ハジメトレーナー、邪魔をしてしまって申し訳ない。」
「いや、スイープの刺激にはなったかな…多分。」
「とりあえず、デュランダルの感覚は思い出した…もう俺が憑くことはねぇ。」
「よく分からないけど分かったよ。スティルインラブの捜索、頑張ってね。」
「では失礼しよう。」
4人はスイープトウショウらと別れ、別の場所へと捜索を再開した。
なお、後日に行われた天皇賞(秋)本番でスイープトウショウは本バ場入場後にターフの上から完全に動かなくなってしまい…ゲートまでハジメが歩いて連れていくことなったのはまた別の話。